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第9章 情報社会革命の推進に向けて

第9章 総論

 社会の情報化が急速に進展する中で,分かりやすい授業の実現,教職員の校務負担の軽減,児童生徒の情報活用能力の向上などを図り,子どもたちに質の高い教育を提供するために,教育において情報通信技術を活用することは重要です。
 第1部第2章2(5)で述べたように,情報通信技術を活用する場合にはそうでない場合よりも客観テストの結果が高い傾向があることが示されています。また,熊本県が実施した教員と事務職員の勤務実態調査では,校務の情報化を図ることにより,教員が直接に児童生徒の指導を行う時間が増加したことが示されています。
 一方で,文部科学省の調査によれば,「教科書の内容に即した教材コンテンツ」「無料または安価な教育用ソフトウェア」「教員や児童生徒が操作しやすい教育用ソフトウェア」を増やしてほしいと考える学校が8~9割に達しており,使いやすいデジタル教材などの提供・活用の促進が求められています(図表2‐9‐1)。

図表2‐9‐1 デジタルコンテンツに関する学校の要望

図表2‐9‐1 デジタルコンテンツに関する学校の要望

(出典)文部科学省「地域・学校の特色等を活かしたICT環境活用先進事例に関する調査研究」(平成18年度)

 また,学校における情報通信技術の環境整備や教員のICT活用指導力は十分とは言えず,地方自治体間における相当の格差も見られます(図表2‐9‐2)。

図表2‐9‐2 情報通信技術環境の整備状況及び教員の情報通信技術活用指導力

コンピュータ1台当たりの児童生徒数(人/台)

図表2‐9‐2 情報通信技術環境の整備状況及び教員の情報通信技術活用指導力 コンピュータ1台当たりの児童生徒数(人/台)

普通教室のLAN整備率(%)

図表2‐9‐2 情報通信技術環境の整備状況及び教員の情報通信技術活用指導力 普通教室のLAN整備率(%)

授業中にICTを活用して指導する能力を有すると回答した教員の割合

図表2‐9‐2 情報通信技術環境の整備状況及び教員の情報通信技術活用指導力 授業中にICTを活用して指導する能力を有すると回答した教員の割合

校務にICTを活用する能力を有すると回答した教員の割合

図表2‐9‐2 情報通信技術環境の整備状況及び教員の情報通信技術活用指導力 校務にICTを活用する能力を有すると回答した教員の割合

(出典)文部科学省「平成20年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」

 さらに,「授業における情報通信技術の活用が進まない理由」として「活用をサポートしてくれる人(同僚,外部専門家など)がいない」と回答している学校が,小中学校,高等学校とも約7割に達しており,学校におけるICT活用のサポート人材が求められています。(図表2‐9‐3)

図表2‐9‐3 授業における情報通信技術の活用が進まない理由

図表2‐9‐3 授業における情報通信技術の活用が進まない理由

(出典)文部科学省「地域・学校の特色等を活かしたICT環境活用先進事例に関する調査研究」(平成18年度)

 情報化の急速な進展は,情報社会革命ともいうべき情報通信技術による社会全体の変革につながるものであり,学校教育においても,21世紀にふさわしい新たな学校と学びを作り出すことが重要な課題となっています。このため,文部科学省では,平成22年4月に「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催し,今後の学校教育の情報化に関する総合的な推進方策について議論しています。

第1節 世界最先端の情報通信技術国家に向けて

1 政府の情報通信技術政策の推進

 我が国の情報通信技術政策については,「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」の下,「e‐Japan戦略」,「e‐Japan戦略2.」,「IT新改革戦略」,「i‐japan戦略2015」などに基づき,各府省が連携して積極的に進めてきました。そして,22年5月には,国民本位の電子行政の実現,地域の絆の再生,新市場の創出と国際展開を柱とする,新たな情報通信技術戦略が策定されました。

2 電子政府の推進

 国民がより利用しやすいシステムの開発・整備に努めるとともに,情報通信技術の進化に対応した業務改革を図るために,「電子政府推進計画」に基づき,主に次の施策に取り組むことにしています。

(1)行政ポータルサイトの整備・連携強化

  1. 掲載情報の一層の充実と高齢者や障害者に配慮したホームページの作成など
  2. 電子政府の総合窓口(e‐Gov)(参照:http://www.e-gov.go.jp/)を通じた,手続案内,組織・制度の概要,パブリックコメントなどの情報提供

(2)業務・システムの最適化

 「本省情報基盤システム」や「研究開発管理業務」,「文部科学省ネットワーク(共通システム)」について,最適化計画に基づき開発されたシステムの運用を行い,職員などにおける業務処理の効率化や運用経費の削減を推進しています。

第2節 将来の情報社会を担う子どもたちのために

 社会の情報化が急速に進展していく中で,子どもたちが情報や情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的な資質(情報活用能力)を身に付け,情報社会に主体的に対応していく力を備えていくことがますます重要となっています。学校においても,情報化への対応が強く求められており,子どもたちがコンピュータやインターネット,デジタルカメラなど,情報通信技術を活用して学習することが日常的になりつつあります。
 また,「確かな学力」の向上につなげるため,わかりやすい授業を実現する指導方法の一つとして,教員が情報通信技術を効果的に活用した授業を展開することが重要となっています。
 さらに,教員の校務事務の多忙化により,子どもたちと向き合う時間に充てる時間が不足していることが指摘されている中で,情報通信技術を活用した校務の効率化が求められています。
 本節では,将来の情報社会を担う子どもたちのために,これからの学校に求められる教育の情報化に対応するための各種取組について紹介します。

1 情報社会を生き抜くための教育の充実

 子どもたちの情報活用能力を育成する情報教育は,子どもたちが「生きる力」を身に付ける上で重要であり,教育活動全体を通じて横断的に実施する必要があります。
 学習指導要領においては,情報教育を小・中・高等学校の各段階を通して体系的に実施することとしており,総合的な学習の時間や「技術・家庭科」の技術分野,高等学校の共通教科「情報」などにおいて実施されています。
 この中で,小・中学校については平成21年度から,高等学校については22年度から,新学習指導要領が一部先行実施され,情報教育の充実が図られました。小学校の新学習指導要領では,コンピュータなどの基本的な操作を身に付けることや,各教科の授業において情報手段を適切に活用すること,道徳の時間の中で情報モラルの指導に留意するなどにより,情報モラルを身に付けることなどが明記されました。また,中学校の新学習指導要領では,小学校の学習を通じて習得したことを基盤として,コンピュータなどを主体的に活用できるように学習活動を充実すべきことや,教科「技術・家庭」の技術分野で,情報モラルに関する指導を重視することなどが明記されました。
 さらに,高等学校の新学習指導要領では,普通教科「情報」において,情報活用能力を確実に身に付けさせるために,小・中・高等学校を通して体系化された情報教育の指導内容を受けて,一部重複させるなどして指導を充実するとともに,内容に「情報モラル」を項目立てし,情報モラルを身に付けさせる学習活動を重視することとされました。
 さらに,新学習指導要領のもとで教育の情報化が円滑かつ確実に実施されるよう,教員の指導をはじめ,学校・教育委員会の具体的な取組の参考に供するために,「教育の情報化に関する手引」が作成されました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm)。

2 わかりやすい授業の実現と,子どもたちの興味・関心を高めるために

(1)情報通信技術を活用した教育の推進のための環境整備

 学校のICT環境整備については,教育用コンピュータ整備,普通教室における校内LAN(校内ネットワーク)整備などに取り組んでいます。平成21年3月現在での進捗状況は,教育用コンピュータ整備については1台当たり児童生徒数7.2人,超高速インターネット接続については全公立学校の61%,また,普通教室における校内LAN整備については64%となっています。しかしながら,都道府県別に見ると,例えば校内LANの整備率は,最大91%から最低37%まで格差が見られます。
 平成21年度補正予算において,スクール・ニューディール構想の一環として学校のICT環境整備を進めたことにより,このような状況は大幅に改善されることが期待されますが,文部科学省としては,今後とも,地方公共団体の取組を促進,支援していきます(学校のICT環境の整備状況については,参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1286417.htm)。

(2)教員のICT活用指導力の向上

 子どもたちの学習内容や学習形態に応じて,5つの大項目と18の小項目に分類した「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/02/07021604.htm)を活用し,公立学校を対象として教員のICT活用指導力の実態調査を行っています(図表2‐9‐4,図表2‐9‐5)。この調査では,このチェックリストに基づき,項目別に4段階(「わりにできる」「ややできる」「あまりできない」「ほとんどできない」)の自己評価を行う形で実施しており,平成21年3月現在の調査結果は,「わりにできる」もしくは「ややできる」と回答した教員の割合が高い項目がある一方で,低い割合を示す項目も複数あることから,更なる取組が求められます。文部科学省では,教員のICT活用指導力を向上させる方策のひとつとして,「先導的教育情報化推進プログラム」の中で,「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」に基づいた内容で構成されたe‐ラーニング型研修システム「教員研修Web総合システムTRAIN」(参照:https://train.code.u-air.ac.jp/about.php?1265801076)の開発や,上記のチェックリストを踏まえ研修テキスト及び自己のICT活用指導力をチェックするためのシステム(参照:http://training.t-ict.jp/)等の開発を行いました。これらは,集合研修,教員養成講座,個人研修といった幅広い教員研修などで活用されることが期待されています。このほか,各種調査研究事業などを通じて,地方公共団体や学校の取組を促進しています(教員のICT活用指導力の実態については,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1286417.htmを参照)。

図表2‐9‐4 教員のICT活用指導力の状況

図表2‐9‐4 教員のICT活用指導力の状況

(出典)文部科学省「平成20年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」

図表2‐9‐5 教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)

図表2‐9‐5 教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)

(3)「確かな学力」の向上につながる情報通信技術活用

 平成17年度から2年間にわたり実施した,「ICTを活用した指導の効果に関する調査研究」では,情報通信技術を活用することにより授業に対する子どもたちの興味・関心,満足度が高まることや学力の向上につながること,に加えて教員の指導面でも,授業の質の向上などに効果があることが示されました。
 文部科学省では,この効果について,平成19年度に実践事例に基づいて紹介する教員や保護者などを対象としたフォーラムを全国展開するとともに,児童生徒の学習場面における情報通信技術の活用や指導のポイントを分かりやすくまとめた「学力向上ICT活用指導ハンドブック」(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08070107.htm)を20年7月に作成・公開するなど,情報通信技術活用の効果について一層の普及を図っています。

(4)先導的かつ効果的な取組に関する実践的な調査研究の実施

 教育の情報化を一層推進するためには,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報通信技術の急速な進展を見据えた,先導的かつ効果的な教育情報化の可能性について検証を行うことが必要不可欠です。
 このため,これまで取り組んできた調査研究の成果などを受けて,平成19年度から21年度の間,教育の情報化に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施する「先導的教育情報化推進プログラム」を実施し12の採択団体において,実践的な調査研究を行いました。22年3月には,成果の普及を目的として,東京で成果発表会を実施し,教育委員会や学校関係者など200名を超える参加がありました。

(5)教育用コンテンツの充実・普及

1.理科ねっとわーく

 科学技術振興機構は,科学技術・理科教育の充実を図るため,学校で利用できるデジタル教材を「理科ねっとわーく」というウェブサイトを通じて無償で配信しています(参照:http://www.rikanet.jst.go.jp/)。平成22年3月現在,129タイトルの教材を提供し,約4万8千人の教員が利用しています。また,17年1月からは児童生徒の自宅学習のため,一般家庭で利用が可能な一般公開版も提供しています(参照:http://rikanet2.jst.go.jp/)。

2.インターネット活用教育実践コンクール

 平成12年度から,地域社会や学校などの教育における様々な活動の中で,インターネットを有効に活用している優れた実践事例を表彰し,全国に広く紹介することにより,教育の情報化の推進を図ることを目的とする「インターネット活用教育実践コンクール」を実施しています(参照:http://www.netcon.gr.jp/)。

3.文化デジタルライブラリー(参照:http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/

 インターネットを通じて舞台芸術の魅力を紹介する教育用コンテンツを学校などの教育機関をはじめとして広く一般に公開しています。また,国立劇場各館の自主公演に関する上演記録や錦絵,番付などの収蔵資料に関する情報をデータベース化して公開しています。この事業は,平成12年度から日本芸術文化振興会が中心となって進めています。

(6)教育情報ナショナルセンター(NICER)の整備

 インターネット上には教育に役立つ情報がたくさんあります。しかし,目的の情報を見付けることは簡単ではなく,また,有害サイトなどへのアクセスの危険性があるなど子どもが利用するには様々な課題があります。
 国立教育政策研究所は,我が国の教育に関する中核的なWebサイトである教育情報ナショナルセンター(NICER参照:http://www.nicer.go.jp/)を運用しています。このサイトでは,インターネット上にある教育・学習に関する情報を幅広く体系的に整理し,「中学校」,「先生」,といった利用者分類に応じ,目的とする情報を簡単に検索できるようになっています。また,教材や授業実践事例なども紹介しています。
 NICERは,平成22年3月現在で約30万件の情報を提供しています。21年9月にさらなるシステムのリニューアルを行い,利便性や検索速度が向上しました。
 また,新学習指導要領に対応した情報の更新なども進めています。

(7)「eスクール2009」の開催

 平成21年11月に開催された第21回全国生涯学習フェスティバル「まなびピア埼玉2009」で,「eスクール2009」を実施しました。これは,子どもたちがコンピュータやインターネットに慣れ親しみながら学ぶ様子や学習の成果を広く紹介することを通じ,教育の情報化を一層推進するため,民間企業の協力を得て行ったものです。具体的には,オープン教室(情報通信技術を活用した模擬授業),ブース展示を通して,教育現場における情報通信技術を効果的に活用した「わかる授業」の実践事例を多数紹介しました。なお,平成22年11月に開催される第22回全国生涯学習フォーラム高知大会で,「eスクール2010」を実施することとしています(参照:http://e-school.nicer.go.jp/)。

eスクール2009

eスクール2009

(8)デジタルテレビの教育活用の促進

 デジタルテレビは,従来のアナログテレビでは表現することのできなかったきめ細やかな美しい映像や,高音質で迫力ある音響を表現することができます。また,パソコンや実物投影機との連携など,デジタルテレビを教育現場で活用することにより,わかりやすい授業を広げることが可能となります。(図表2‐9‐6)。
 平成21年度予算において,学校のテレビのデジタル化の取組を促進するために,公立小中学校,特別支援学校におけるアンテナなどの施設整備に要する所要の経費が計上されました。また,21年度第一次補正予算において,デジタルテレビの整備が大きく進展しました。

図表2‐9‐6 デジタルテレビでひろがる授業

図表2‐9‐6 デジタルテレビでひろがる授業

(9)障害のある子どもたちへの支援

 障害のある児童生徒については,情報活用能力を育成するとともに,障害を補完し,学習を支援する補助手段として,情報通信技術などの活用を進めることが重要です。
 国立特別支援教育総合研究所においては,障害のある子どもの情報活用能力の育成に資するため,平成21・22年度に「障害の重度化と多様化に対応するアシスティブ・テクノロジー(※1)の活用と評価に関する研究」を実施しています。また,各都道府県の指導的立場に立つ教職員を対象とした「特別支援教育専門研修」において,情報手段を活用した教育的支援に関する内容の充実を図っています。このほか,各教育委員会などの研修の支援のための各種研修講義の配信や,発達障害教育情報センターWebサイトにおける発達障害のある子どもの教育的支援に関する各種教育情報の提供や教員向けの研修講義の配信,ポータルサイト「障害のある子どもの教育の広場」(参照:http://www.nise.go.jp/portal/index.html)からの総合的な情報の提供を行っています。


※1 アシスティブ・テクノロジー(Assistive Technology:支援技術)
 障害による物理的な操作上の不利や,障壁(バリア)を,機器を工夫することによって支援しようという考え方であり,そのための支援技術を指している(文部科学省「情報教育の実践と学校の情報化」P.147より)。広義には,支援機器にとどまらず,その利用技術やサービスまでを含む。代表的な支援機器として,音声出力装置(VOCA)や点字ディスプレイなどがある。

3 校務の情報化の推進

 教員の校務を効率化し,児童生徒に対する教育の質の向上を図ることが求められています。このため,校務の情報化を推進することが必要です。平成21年3月時点での教員の校務用コンピュータ整備率は62%ですが,平成21年度補正予算における整備により,この状況は大幅に改善されることが予想されます。校務の情報化は,情報共有・発信による保護者や地域との連携にも役立つものと考えられ,その推進は重要な課題となっています。このため,文部科学省としては,校務の情報化に向けた地方公共団体の取組を更に促していくこととしています。また,この推進に当たっては,「教育の情報化に関する手引(本章第2節1)」に記載されているとおり,教育委員会や校長がリーダーシップをとることが重要です(図表2‐9‐7)。

図表2‐9‐7 校務の情報化のイメージ(例)

図表2‐9‐7 校務の情報化のイメージ(例)

4 学校における情報通信技術の活用に関するサポート体制の整備

 学校のICT環境の整備や教員のICT活用指導力の向上のためには,計画的なICT環境整備や教員の支援体制など,教育の情報化を計画的かつ組織的に展開するためのサポート体制を整備する必要があります。しかし,多くの学校や教育委員会において,体制整備が不十分となっています。
 このような状況から,平成20年度より,「教育情報化総合支援モデル事業」を実施しました。本事業では,学校や教育委員会におけるCIO(情報化の統括責任者)の配置,そのCIOを核としたICT支援員の効果的な活用,コンピュータなどのICT環境の計画的整備,教員のICT活用指導力の向上に向けた研修など,地域における学校教育の情報化推進体制の構築に意欲的に取り組む5つの自治体を採択して,支援を行いました。

Column No.10 学校における情報通信技術の活用 ~「新しい学校経営における熊本型Web統合校務支援システムの実践」より~

 熊本県では,教員が子どもと向き合う時間を確保し,学校経営の効率化・高度化を図るため,校務の情報化に積極的に取り組んでいます。
 同県では,先導的教育情報化推進プログラムの指定を受けて,平成19年度より,生徒に関する情報共有や服務の電子決裁を行うためのグループウェア,成績処理や指導要録の電子化を行うための教務支援システム,学校にある個人情報や各種書類を管理する文書セキュアシステムといった校務支援システムの開発・導入を進め,教職員の校務負担の軽減を着実に実現してきました。
 この結果,システム導入前と比較すれば,平成21年度においては,教員が直接的に生徒の指導を行う時間が1日30分以上増加したほか,持ち帰り業務時間についても,勤務日は1日約5分,休日は1日約20分の削減を達成できたことが明らかになりました。また,報告書作成や旅費事務等事務職員の業務についても,従事時間が約67分減少し,目標である1校当たり0.5人分程度の削減効果が実証されました。
 なお,校務のうち,指導要録を含めた学習評価における情報通信技術の活用については,中央教育審議会初等中等教育分科会において,「情報通信技術を活用した場合の効果や具体的な活用事例等を踏まえつつ,学習評価における情報通信技術の活用について,指導要録及びその抄本や出席簿等の関連する文書の様式を含めて,各学校の設置者においても検討を進めていくことが重要である。」と報告されています。
 熊本県の取組により校務の情報化の効果が確実に証明されたことから,熊本県では,今後,県内の全県立高校にそのノウハウを提供していくこととしています。
(参照:http://219.120.60.46/public_html/login.html

5 情報モラル教育の推進

 インターネットや携帯電話などの普及に伴い,子どもたちが違法や有害な情報にさらされたり,トラブルに巻き込まれる危険性が増大しています。
 時には,子どもたち自身が加害者となるケースも見受けられることから,適切に情報を取り扱う能力を育成するための情報モラル教育の重要性が指摘されています。
 このような状況を踏まえ,文部科学省では,小・中・高等学校の学習指導要領を改訂し,情報モラル教育の充実を図ることとしました。
 小・中学校については平成21年度から,高等学校については22年度から,一部先行実施している新学習指導要領において情報モラルが含まれています。
 具体的には,小・中・高等学校の新学習指導要領の「総則」では「情報モラルを身に付け」ることを明記するとともに,高等学校の共通教科「情報」においては,社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育成する観点から,従来の3科目の内容を再構成し,「社会と情報」「情報の科学」の2科目構成(選択必履修)としたところです。「社会と情報」においては,情報の特徴,情報化が社会に及ぼす影響の理解及び情報モラルを身に付ける学習活動を重視した内容とし,「情報の科学」においては,情報社会を支える情報技術の役割や影響の理解及び情報モラルを身に付ける学習活動を重視する内容としました。
 また,平成20年7月には情報モラルの指導実践事例や指導に役立つリンク集などを紹介する『情報モラル指導ポータルサイト~やってみよう情報モラル教育~』(参照:http://kayoo.info/moralguidebook-2007/)を作成し,インターネット上で公開するとともに,21年度には「学校における情報モラル等教育の推進事業」として,地域に専門員を派遣する事業や情報モラルに関する専門的な研修を実施するなど,学校における情報モラル教育の一層の充実を図っています。
 さらに,通信業界団体や総務省などと連携し,主に児童生徒を保護する立場にある保護者や教職員向けに,インターネットの安全・安心利用に関する講座(「e‐ネット安心講座通信業界キャラバン」,通称「e‐ネットキャラバン」)を実施しています(参照:http://www.e-netcaravan.jp/)。

6 子どもをインターネット上の有害情報から守るための取組の推進

 近年の情報通信技術の発展に伴い,特にインターネットや携帯電話が急速に普及し,我々の生活に欠かせないものとなっています。
 しかし,その一方で,インターネット上の違法・有害情報の問題や,ネット上のいじめなど,インターネット上で子どもが被害に遭う事態が大きな社会問題となっています。
 こうした背景を踏まえ,平成21年4月1日に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が施行されました。この法律では,民間事業者にフィルタリングの提供が義務づけられるとともに,保護者に対しても,青少年のインターネットの利用を適切に管理し,青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得の促進に努めるなどの責務が規定されています。
 同年6月30日には,この法律に基づき,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」が策定されました。この中には青少年のインターネットの適切な利用に関する教育及び啓発の推進が掲げられています。
 文部科学省では,平成19年11月「ネット安全安心全国推進会議」を設置し,全国規模の学校関係団体やPTA,通信関係団体など関係業界・団体の連携強化を図っています。同会議の取組として,平成22年3月には「ネット安全安心全国推進フォーラム」を開催し,地域のネットパトロール等の先進的な取組を紹介するとともに,有識者や保護者・中学生の代表が,子どもの携帯電話利用の在り方について意見交換する機会を設けました。
 また,地域におけるネットパトロールやフィルタリング普及活動など,地域において有害環境から子どもを守るための推進体制の整備を支援しています。
 さらに,昨年度に引き続き携帯電話利用に際しての犯罪・被害・トラブルの対応事例を集めた意識啓発DVD「ちょっと待って,ケータイ2」を作成し,都道府県教育委員会に配布して利用を促しています。
 また,携帯電話利用に際しての留意点などを盛り込んだ啓発リーフレットを作成し,全国の小学6年生全員(約120万人)に配布するとともに,携帯電話の使用時間の制限を設けるなどの,携帯電話利用に関する親子のルール作りを促すリーフレット「ちょっと待って!はじめてのケータイ」を作成し,都道府県教育委員会・PTA団体に配布して,利用を促しています。
 なお,学校における携帯電話の取扱いに関して,小中学校では原則持込禁止とすべきなどの指針に沿って,学校・教育委員会において指導方針を定め,児童生徒への指導を行うよう「学校における携帯電話等の取扱いについて」(平成21年1月30日,初等中等教育局長通知)を通知しています。

有害情報意識啓発DVD

有害情報意識啓発DVD

啓発リーフレット

啓発リーフレット

親子のルールづくりリーフレット

親子のルールづくりリーフレット

第3節 国民一人一人の多様な学習活動の機会の拡大に向けて

 文部科学省においては,社会構造の変化や技術の進歩の中で,専門的な知識と同時に多様な知識を備えるような個人としての資質・能力の向上や,個人の特性に応じた的確な学習機会の充実のため,情報通信技術を活用した学習を振興しています。また,高等教育機関などにおけるeラーニングをはじめとする情報通信技術を活用した教育の普及・促進などにより,社会人を含めた学生への継続的な教育機会の提供を図っています。

1 豊かな生涯学習社会の構築

 文部科学省では,国民一人一人がいつでもどこでも学習に取り組む機会を得て,その成果が適切に評価されるような環境づくりを目指し,情報通信技術を活用した学習機会の提供を推進しています。

(1)エル・ネットによる教育・学習機会の拡充

 文部科学省では,近年のインターネットの急速な普及やパソコン利用の高まりなどに対応し,平成20年4月より,エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)をこれまでの衛星の利用による運用からインターネットを利用したシステムへと移行しました(参照:http://www.elnet.go.jp)(図表2‐9‐8)。

図表2‐9‐8 エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)

図表2‐9‐8 エル・ネット(教育情報通信ネットワーク)

 このことにより,これまでの公民館,生涯学習センター,図書館や学校などの施設などにおける学習機会の提供を主体としたものから,インターネットにつながった環境であれば,自宅でも,外出先でも場所を特定することなく学習することが可能となりました。また,学習コンテンツも時間割による配信カリキュラムからオンデマンド方式となることにより,学習したい時間帯に好きなだけ繰り返し学習できるようになりました。現在,多様な学習コンテンツを1から10チャンネルで配信しています。また,これまでどおりリアルタイムでの講義や研修,会議などのライブ配信も継続して利用できます。
 今後ともインターネットの活用により,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができる生涯学習の理念を実現する一つの方途として学習機会の提供を行ってまいります。

(2)メディアを活用した学習機会の提供

 文部科学省では,平成21年度には,「地域の教育力の再生に資するもの」などのテーマに基づき,素晴らしい「人間力」を持つ人物を取り上げ,その生き様を全国に発信する生涯学習ドキュメンタリー番組「発見!人間力」を制作・放送しました。また,教育上価値が高く,学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められる映画その他の映像作品や紙芝居を文部科学省選定とし,そのうち,特にすぐれたものは文部科学省特別選定として普及・促進に努めています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/movie/main9_a1.htm)(図表2‐9‐9)。

図表2‐9‐9 平成21年度文部科学省特別選定作品一覧

図表2‐9‐9 平成21年度文部科学省特別選定作品一覧

(3)情報通信技術を活用した生涯学習プラットフォームの構築支援

 生涯学習プラットフォームは,地域の大学・民間企業・NPO・行政や市民の参加により,国民一人一人がその生涯にわたり,いつでも,どこでも学習できる又は学習に関する相談などを継続的に行える環境や集合学習の場を提供する運営基盤のことです。
 文部科学省では,インターネットなどの情報通信技術を活用した生涯学習プラットフォームの構築を推進するため,「学び直し」やスキルアップが可能となるような学習コンテンツの提供,学習に必要な相談や学習者同士のコミュニティの場の設定などができる学習支援システム(基本管理アプリケーションソフトウェア)の委託開発を行いました。
 今後は,この学習支援システムを活用して,各地域において大学,企業,民間団体などが連携して運用を行うことにより,様々な人たちが生涯学習の場に参加することができる環境づくりが進んでいくことが期待されます。
 なお,このような取組の市民による先行事例として「富山インターネット市民塾」(参照:http://toyama.shiminjuku.com/)などがあります。

2 高等教育における情報通信技術の導入活用と環境の整備

 近年の情報通信技術の発展により,インターネットなどの新しい技術を活用することで,大学などの授業内容の多様化・高度化や授業時間外の学習支援の更なる充実が期待されており,教育内容・方法の改善・充実をはじめとする様々な改革が進められています。
 情報通信技術の進展に伴い,インターネットなどの高度なメディアを活用した教育の取組を行う大学などが増えてきています。例えば,複数の大学や分散されたキャンパスの間での合同授業の実施や,時間的・地理的な制約を受けずに授業が受けられるeラーニングなども行われています。さらに,インターネットを通じて学習情報を提供したり,電子メールや携帯電話での質疑応答を行ったりする大学なども増えてきています。
 このほかにも,私学助成によって,インターネットを活用したサイバーキャンパス整備事業を推進するとともに,マルチメディア装置や学内LAN(学内ネットワーク)の整備など,私立大学等における高度情報化への各種の取組に関する支援を行っています。

第4節 世界に誇れる国づくりに向けた人材育成と文化発信

 21世紀を迎え,急速なグローバル化,情報化が進展する中で,世界に誇れる国づくりに向けて,情報通信分野における高度な人材を育成するとともに,世界最高水準の科学技術創造立国の実現のため,積極的に情報通信技術を活用していくことが重要となっています。また,我が国の文化をホームページで紹介するなど,文化発信にも,情報通信技術を活用しています。

1 高度な情報通信技術人材の育成の推進

 文部科学省では,世界をリードする創造的な人材の育成に向けて,高等学校段階において,将来,情報通信分野の最先端で活躍する高度な人材の育成を推進するとともに,大学などの高等教育機関における,創造性豊かな人材の育成に対する支援を実施しています。

(1)ICT人材育成プロジェクト

 高等学校段階から情報通信分野における高度な人材育成を進めていくため,平成16年度から平成21年度まで,「ICT人材育成プロジェクト」を実施しました。
 このプロジェクトでは,情報通信技術に関する知識・技能を有する高校生に,発想力や独創性などを伸ばすきっかけを与えるため,情報通信分野の最先端で活躍する研究者などの指導・助言の下,合宿形式で,コンテンツなどの創作活動を行うスクールを実施しました。

(2)専門的で創造性豊かな人材の育成に向けて

 情報通信分野における人材の脆弱性は,我が国の国際競争力にかかわる深刻な問題です。文部科学省では,これに対応するため,平成18年度から「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を実施しています。本プログラムは,産学により教育内容・体制を強化した教育拠点を形成し,この拠点において,企業などで先導的役割を担い得る実力を備えた世界最高水準の情報通信技術人材の育成を目指すものです。
 また,一般情報処理教育の充実を図るため,国公私立学校を通じた情報処理教育施設・設備などの整備を行うとともに,大学・高等専門学校で情報処理教育を担当する教員を対象とした研究集会等の開催を支援するなど,教員の資質向上に努めています。

2 諸外国に誇る我が国の文化発信

 急速に進展する情報通信技術は,文化行政においても大きな役割を果たすものとなっています。文化庁では,文化行政の情報化と情報発信の強化のため,文化庁ホームページなどを窓口とし,文化財や美術品,舞台芸術,メディア芸術,日本語教育,国語施策などの各種情報を広く国内外に提供しています。例えば,海外からも高い関心を集めるメディア芸術については,その創作活動と発展を支援するため,WEBサイト「文化庁メディア芸術プラザ」を開設しており,メディア芸術祭の作品募集や受賞作品発表,受賞作品展情報のほか,アーティストや評論家へのインタビュー,国内外のメディア芸術関連のフェスティバル・展覧会情報などを掲載し,日本語,英語,韓国語にて情報を提供しています(参照:http://plaza.bunka.go.jp)。
 また,デジタルコンテンツなどの知的財産の創造・保護・活用を図るため,文化庁において,映画・アニメなどのコンテンツ制作などへの支援,海賊版(違法複製物)対策や情報化の進展に対応した著作権施策の推進などの様々な施策を実施しています(参照:第2部第7章第3節,第8節)。

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生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --