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第8章 国際交流・協力の充実に向けて

Topic 現職教員による国際協力とその海外教育経験の日本での活用~青年海外協力隊(※1)・日系社会青年ボランティア(※2)「現職教員特別参加制度」~

 自分の技術・知識や経験を開発途上国の人々のために活かしたいと望む青年を公募し派遣するのが国際協力機構(JICA)が実施する青年海外協力隊や日系社会青年ボランティア(以下「青年海外協力隊など」)です。文部科学省が主導して開始した「現職教員特別参加制度」は,公立学校などの現職の教員が,その身分を保持したまま青年海外協力隊などに参加できる制度です。制度創設以来8年間で594名の教員が参加し,80以上の国々で現地の人々と協働しながら,開発に向けた国づくりに協力しています。

(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/genshoku/main6_a9.htm

ネパールで活動する青年海外協力隊現職教員

ネパールで活動する青年海外協力隊現職教員

○これまでの経緯

平成12年度国際教育協力懇談会にて,現職教員に対象を絞った制度の創設を提言
平成13年度青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」を創設
平成14年度制度創設後初の派遣(63名)
平成20年度日系社会青年ボランティアに本制度の適用を拡大

○主な特徴

本制度は,現職教員が参加しやすいよう,以下の特徴があります。

  • 教育委員会,文部科学省を通じて教員を推薦することで,一次選考の技術試験を免除
  • 学業年度を考慮し,派遣期間が4月から翌々年3月までの2年間(通常2年3カ月)
○開発途上国での活動

 現職教員は,日本の教育現場において,指導案作成,教材開発,きめ細やかな指導,授業研究の実践をするなど,開発途上国で必要とされる教育経験や能力を持っています。
 派遣先の開発途上国ではその経験や能力を活かし,現地の言葉を使って,現地の子どもに算数,理科,体育などを教えたり,現地の教師に教材作成や教授法の指導を行ったりします。
 また,派遣先での活動や生活の様子を学級だよりなどにまとめ,定期的に日本の学校に送り,そこから派遣先と日本の子どもの国際交流が生まれた例もあります。

○帰国後の活動

 開発途上国での経験は,異文化への適応能力,問題への対処能力など,様々な面で教員の資質向上につながると考えられます。帰国後は,その経験・能力を活かし,グローバル化が進む中で,将来を担う日本の子どもの教育においても活躍が期待されます。既に国際理解教育,在日外国人児童生徒への教育などにおいて顕著な活動を行う例も報告されています。

○制度の普及に向けて

 文部科学省は,毎年度100名の現職教員派遣を目指し,本制度の周知,広報に努めるとともに,派遣前研修や帰国教員報告会の実施,「国際協力イニシアティブ教育協力拠点形成事業」(参照:本章第3節2)による派遣前から帰国後までの支援体制の整備を行っています。具体的には,教員の派遣前の研修用教材や,派遣中に開発途上国で使用可能な教材の開発,帰国した教員の海外での教育経験を我が国の教育現場へ還元するためのシステムの構築などを行っています。また,現在,派遣教員の経験を日本の教育現場へ活かす取組について,帰国教員や教育委員会を対象に調査を行っており,その結果は広く公開する予定です。


※1 青年海外協力隊
 技術を有する20歳から39歳の青年男女が,開発途上国地域住民と生活を共にしつつ,当該地域の経済及び社会の発展に協力することを支援する事業。
※2 日系社会青年ボランティア
 青年海外協力隊と同種の活動を,活動対象地域を中南米地域の日系人/日系人社会に限定して実施する事業。

第8章 総論

 昨今の教育や科学技術,文化行政等を取り巻く国際環境は,新興国の台頭,頭脳循環の進展などを受けて,大きな変化にさらされています。このような状況の下,我が国の知恵と経験を活かし,国際機関や各国との協力や連携により,国際的な取組を進めていくことが重要です。文部科学省においては,国際社会で活躍できる人材の育成に努めるとともに,外国人の子どもに対する教育の充実,留学生交流の推進,国際機関を通じた国際貢献,開発途上国への開発協力などを通して,教育・科学技術・文化・スポーツの各分野において,国際的な教育活動を推進しています。
 さらに東アジア共同体構想なども踏まえた東アジア地域における協調や協力が不可欠となっています。文部科学省においても,東アジア地域における交流の促進や域内の相互理解を深めるための施策について検討を進めています。今後,「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ」での検討を進め,戦略的に施策を展開していきます。

第1節 国際社会で活躍する人材の育成

1 国際理解教育の推進

(1)国際理解教育の現状と施策

 国際社会においては,子どもたちが日本人としての自覚を持ち,主体的に生きていく上で必要な資質や能力を育成することが大切です。また,我が国の歴史や文化,伝統などに対する理解を深めるとともに,広い視野を持って異文化を理解し,異なる習慣や文化を持った人々と共に生きていくための資質や能力を育成することも重要です。こうした観点から,現在,各学校において,社会科などの各教科,道徳,特別活動や総合的な学習の時間を通じて国際理解教育が行われています。例えば,地域に住む外国人から,その国の郷土料理や民族舞踊などを教わったり,体験したりすることで,異文化に対する理解を深めるなどの活動があります。
 文部科学省では,毎年,全国の都道府県・指定都市教育委員会の指導主事などを対象に,連絡協議会を開催し,国際理解教育の推進に努めています。
 また,平成18年度から「国際教育推進プラン」を実施して,市町村や学校などにおける国際教育の推進のための取組を支援しています。具体的には,委嘱地域に中核校を指定し,当該学校と地域のNPOなどが連携しながら,国際教育推進のための授業開発やワークショップ(参加型集団研修)の実践などを通して,国際社会で主体的に活躍できる人材の育成を目指します。

(2)高校生交流の現状と施策

1.高校生の留学

 平成22年1月に公表した,「平成20年度高等学校等における国際交流等の状況」によれば,20年度に外国の高等学校へ3カ月以上留学した者は3,190人,海外研修旅行者(語学などの研修や国際交流などを目的として,外国の高等学校などに3カ月未満の旅行に出た者)は2万7,025人となっています。
 文部科学省では,高校生留学の教育上の意義を考慮し,関係機関に対し,安全で有意義な留学ができるよう指導・助言しています。また,平成15年度からは「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」の加盟団体が実施する海外留学プログラムに参加する者に対して留学費用の一部を支援しています。
 さらに,著名な科学者による講義や他国からの参加高校生との交流を深めることなどを目的とする「オーストラリア科学奨学生事業」(主催:オーストラリア・シドニー大学内物理学財団)に高校生を派遣するための選考なども行っています。

2.高校生の海外への修学旅行

 平成20年度において海外修学旅行を行った高等学校は延べ1,357校(公立529校,私立828校)で参加生徒数は17万9,573人となっています。海外への修学旅行は,外国人との交流の機会や外国の歴史・文化などに接する機会を得ることにより,国際理解を深めるなどの意義がありますが,実施に当たっては,安全確保などに万全を期する必要があります。このため,「海外修学旅行の安全確保について」(平成17年6月30日初等中等教育局長通知)を全国の都道府県・指定都市教育長,知事,附属学校を置く国立大学法人学長あてに送付し,計画段階における準備の万全を求めています。また,万一事故が発生した場合,大使館等関係在外公館において迅速かつ適切な対応を図れるよう,外務省と連携し,安全確保と情報提供体制の整備に努めています。

3.「フレンドシップ・ジャパン・プラン」について

 文部科学省では,初等中等教育段階の青少年交流を促進するため,「フレンドシップ・ジャパン・プラン(外国人青少年受入倍増計画)」を策定しました。文部科学省では,日本語を専攻する外国人高校生を短期招致する事業の実施や国土交通省をはじめとする他の関係省庁などとの連携を通じて,22年度までに,我が国の学校を訪れる外国人青少年の人数が,プラン策定当時の年間約4万人から約8万人となるよう努めています。

2 海外子女教育の充実

(1)海外子女教育の現状

 我が国の国際化の進展に伴い,多くの日本人が子どもを海外へ同伴しており,平成21年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子どもの数は6万1,488人となっています(図表2‐8‐1,図表2‐8‐2)。
 文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校(参照:コラム9)の教育の充実・向上を図るため,日本国内の義務教育諸学校の教員を派遣しています(平成21年度は1,327人)。また,指導上あるいは運営上の諸問題に対応するため,日本人学校の校長を対象に,校長研究協議会を定期的に開催しています。さらに,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材の整備,通信教育などを行っています。
 また,海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する総合ホームページの開設(通称「クラリネット」。
参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm)などを行っています。

図表2‐8‐1 海外の子ども(学齢段階)の就学形態別数

図表2‐8‐1 海外の子ども(学齢段階)の就学形態別数

(出典)外務省「管内在留邦人子女数調査」平成21年4月15日

図表2‐8‐2 海外の子ども(学齢段階)の地域別就学状況

図表2‐8‐2 海外の子ども(学齢段階)の地域別就学状況

※1.( )内は下から,中東,アフリカの数値である。
※2.数値は外務省調査によるもので,各年4月15日現在の数である。ただし,平成12年以前は5月1日現在)。
(出典)外務省「管内在留邦人子女数調査」平成21年4月15日現在

Column No.9 海外にいる日本の子どもたちの学び舎

 海外に在留する日本人の子どものために,国内の学校教育に準じた教育を実施することを主な目的として海外に設置された在外教育施設には,「日本人学校」,「補習授業校」,「私立在外教育施設」の三つがあります。日本人学校,私立在外教育施設は,文部科学大臣より認定・指定を受けており,その卒業生には国内の上級学校への入学資格が認められます。

〈日本人学校〉
 日本人学校とは,国内の小・中学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする全日制の教育施設です。一般に,現地の日本人会などが設置主体となって設立され,日本人会や保護者の代表などからなる学校運営委員会によって運営されています(平成21年4月15日現在88校(休校中の1校を除く))。

〈補習授業校〉
 補習授業校とは,現地校,国際学校などに通学している日本人の子どもに対し,土曜日や放課後などを利用して日本国内の小・中学校の一部の教科について授業を行う教育施設です(平成21年4月15日現在204校)。日本人学校と同様,現地の日本人会などが設置運営主体となっています。

〈私立在外教育施設〉
 私立在外教育施設とは,国内の学校法人などが母体となり,国内の学校教育と同等の教育を行うことを目的として設置する全日制の教育施設です。小学校段階から高等学校段階までの課程を置くものから,高等学校段階の課程のみを置くものなど,その形態は様々ですが,一般に国内の学校と連携を図りつつ,教育を行っています(平成21年4月15日現在9校(休校中の1校を除く))。

生活科の授業でマルシェへ出かけた時の様子(ブラッセル日本人学校)

生活科の授業でマルシェへ出かけた時の様子(ブラッセル日本人学校)

ペトロナス・ツインタワーの前で1年と6年の合同遠足(クアラルンプール日本人学校)

ペトロナス・ツインタワーの前で1年と6年の合同遠足(クアラルンプール日本人学校)

(2)豊かな国際性を培う教育活動の推進

 日本人学校などにおいては,海外という特性を十分に活かし,現地社会との交流を進め,異文化への理解を深めて,国際性豊かな日本人の育成を図っていくことが期待されています。このため,日本人学校などでは,所在国の言語や歴史・地理など現地事情に関する指導を取り入れたり,現地校との交流活動を教育課程の中に日常的に位置付け,相互理解の推進に努めたりしています。また,国際学級や日本語講座を設けるなどにより,外国人の子どもを受け入れているところもあります。
 文部科学省では,日本人学校などにおける現地理解教育や,交流活動などを一層推進するため,在外教育施設国際交流ディレクター(※3)を派遣しています(平成21年度は7人)。さらに,その所属する学校を国際教育・文化交流推進校に指定することにより,指定校を拠点とした国際交流を促進しています。


※3 在外教育施設国際交流ディレクター
 在外教育施設を拠点とした国際交流活動を積極的に推進することを任務とする。所属する在外教育施設の実情に応じて,現地関係諸機関などとの連携を図りながら,教育,文化,スポーツを通じた国際交流に関する事業の企画・実施について総合調整を行う。

3 海外から帰国した児童生徒に対する教育の充実

 平成20年4月1日から21年3月31日までの1年間で,海外に1年以上在留した後に帰国した児童生徒は,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校を合計して,1万1,749人います。文部科学省では,このような帰国児童生徒について,国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく,帰国児童生徒の特性の伸長・活用など,海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため,以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 各教育委員会・学校に対して,高校や大学の入試において,特別枠の設定や試験の実施回数の増,入試手続の簡素化,入試情報の提供のための特別な配慮を行うよう要請
  2. 帰国児童生徒に対する日本語指導の充実を図るため,教員定数の加配措置を実施(教員の給与費の3分の1を国庫負担)
  3. 帰国児童生徒の日本語指導のための支援員の学校への配置など個に応じた指導のための事業を実施

4 外国人に対する教育の充実

(1)外国人児童生徒の教育に対する支援

 平成21年5月現在,我が国の公立の小学校,中学校,高等学校などに在籍する外国人児童生徒の数は7万5,417人となっています。また,これらの公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒の数は,20年9月現在で2万8,575人となっており,前年度より3,164人(約12.5%)増加しています。
 我が国では,外国人については就学義務は課されていませんが,その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には,無償で受け入れており,教科書の無償給与や就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障しています。外国人の子どもの公立学校での受入れに当たっては,適切な日本語指導や適応指導を行うための体制を整備する必要があり,文部科学省では,以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 外国人児童生徒に対する日本語指導の充実を図るため,教員定数の加配措置を実施(教員の給与費の3分の1を国庫負担)
  2. 教員研修センターとの共催により,外国人児童生徒に対する教育に携わる教員や校長・教頭などの管理職,指導主事を対象として,日本語指導法などを主な内容とした実践的な研修を実施
  3. 日本の教育制度や就学の手続きなどをまとめた就学ガイドブックや概要版をポルトガル語,中国語など7言語で作成し,教育委員会などに配布
  4. 就学前の外国人の子どもへの初期指導教室(プレクラス)や学校での日本語指導の補助,学校と保護者との連絡調整などを行う際に必要な外国語の分かる人材の配置などを行う事業を実施

(2)外国人の子どもの教育環境の整備

 我が国に在留する外国人が,我が国の生活環境に円滑に適応できるように,外国人児童生徒の公立学校への受入れ体制の整備に加え,日本語教室の設置などを行う事業や母国政府との協議会などを実施しています。
 また,景気後退により,ブラジル人学校などに通っている子どもの就学が困難になりつつある状況を受けて,「定住外国人の子どもの就学支援事業」を実施することにしました。この事業は,緊急措置として3年間の予定で国際移住機関(IOM)において実施し,不就学や自宅待機などとなっているブラジル人などの子どもに対して,日本語などの指導や,学習習慣の確保を図るための場を設け,主に公立学校への円滑な転入を目的としています。平成21年度は,34件(32団体)が採択され,事業を実施しています。
 外国人の子どもの就学環境の整備については,更に施策の充実を図るため,外部有識者との意見交換などを行う「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」を開催しました。今後,提言の取りまとめを行う予定となっています。

第2節 相互理解を進める国際交流

1 留学生交流の増進

(1)留学生受入れの現状

 留学生交流は,諸外国との相互理解の増進と人的ネットワークの形成,途上国などの人材育成・知的国際貢献,我が国の大学の国際化,国際競争力の強化など,多くの面で意義があります。我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は,平成21年5月1日現在で13万2,720人となっています。これらの留学生は,その約9割がアジア地域より渡日した留学生であり,中でも中国,韓国,台湾の3カ国(地域)で全体の約80%を占めています(図表2‐8‐3,図表2‐8‐4,図表2‐8‐5)。留学生受入れの推進のため,平成20年7月に文部科学省ほか関係省庁(外務省,法務省,厚生労働省,経済産業省,国土交通省)で,留学生受入れ拡大のための方策をまとめた「留学生30万人計画」骨子を策定しました。これに基づき,留学の動機づけから大学などや社会での受入れ,就職など卒業・修了後の進路に至るまで体系的に施策を実施しています。

図表2‐8‐3 主要国における留学生受入れの状況

図表2‐8‐3 主要国における留学生受入れの状況

図表2‐8‐4 留学生数の推移(各年5月1日現在)

図表2‐8‐4 留学生数の推移(各年5月1日現在)

注)我が国の大学,大学院,短期大学,高等専門学校,専修学校(専門課程)及び我が国の大学に入学するための準備教育課程において教育を受ける外国人留学生で,「出入国管理及び難民認定法」別表第1に定める「留学」の在留資格により在留する者について集計。日本学生支援機構調べ。

(2)留学生受入れ支援体制の充実に向けた取組例

1.留学情報提供体制の整備

 日本学生支援機構は,国内外に留学情報センター(日本2カ所,海外4カ国)を開設し,留学に関する内外からの様々な照会に対応するとともに,海外において,日本の大学などの参加を得て,「日本留学フェア」や「日本留学セミナー」を実施し,現地の学生,進学指導担当者などに対して日本への留学に関する情報の提供を行っています。平成21年度は,台湾,韓国等16カ国・地域,26都市で開催しました。

2.日本留学試験の実施

 従来,我が国の大学への留学生の入学選抜においては,受験のために渡日する必要があるなど,欧米諸国の大学への留学に比べて手続が煩雑で,留学希望者にとって負担が大きいと指摘されてきました。このため,文部科学省では,日本学生支援機構と協力して,海外で広く実施され,渡日前に入学許可を得ることを可能とし,留学希望者にとって利用しやすい試験として「日本留学試験」を,平成14年度から実施しています。
 本試験は年2回(6月と11月),国内では15都市,海外ではアジア地域を中心に16都市で実施しています。平成21年度の受験者数の合計は,国内3万7,051人,海外7,345人の計4万4,396人でした。また,本試験の利用大学は397大学,88短期大学となっており,さらに,本試験を利用した渡日前入学許可制度を導入している大学は66大学,8短期大学となっています(平成22年4月1日現在)。

3.留学生に対する支援措置

(ア)国費外国人留学生の受入れ
 国費外国人留学生制度は,文部科学省(当時の文部省)が,諸外国の次代を担う優れた若者を我が国の高等教育機関に招へいし,教育・研究を行わせる制度として昭和29年に創設されました。現在,研究留学生(大学院レベル)や学部留学生,ヤング・リーダーズ・プログラムなど7種類のプログラムにより実施されており,これまでに約7万9,000人の国費外国人留学生を支援してきました。

(イ)私費外国人留学生などへの援助
 文部科学省では,私費外国人留学生に対して,従来から,優れた私費外国人留学生の国費外国人留学生への採用,授業料減免措置を講じた学校法人への助成などの施策を実施しています。また,日本学生支援機構では,私費外国人留学生や大学進学を目指して日本語教育機関で学ぶ就学生に対して学習奨励費(奨学金)を給付しており,私費外国人留学生が安定した生活の中で勉学に専念できる環境の整備に努めています。

(ウ)宿舎の安定的確保
 日本学生支援機構では,国際交流会館の設置・運営他,留学生宿舎の建設などを行う地方公共団体などに対する「留学生宿舎建設奨励金」の交付や,大学などが民間アパートなどを借り上げる際の「留学生借り上げ宿舎支援」を実施しています。
 このほか,財団法人留学生支援企業協力推進協会などの留学生関係公益法人では,民間企業の社員寮に留学生を受け入れるプログラムや入居者の損害賠償などを目的とした「留学生住宅総合補償制度」などの取組を実施しています。

(エ)留学生の就職支援
 日本学生支援機構では,日本企業に就職を希望する外国人留学生の就職・採用活動について,有益な情報を提供するとともに,学校側・企業側が情報交換を行う「外国人留学生就職指導ガイダンス」や日本で学ぶ外国人留学生が,それぞれのキャリアデザインに沿った就職ができるよう,留学生の就職・採用活動に関する有益な情報を提供する「外国人留学生就職活動準備セミナー」を実施しています。

4.留学生のための教育プログラムの充実

 我が国への留学形態が多様化する中,留学生の需要に応じた魅力ある教育プログラムを提供する大学が増えています。学部レベルでは,30の国立大学と36の公私立大学において,短期留学生のために英語によるプログラムや特別コースを開設し,英語による授業を実施しています。また,大学院レベルでの国費外国人留学生について,「国費外国人留学生(研究留学生)の優先配置を行う特別プログラム」として44大学109プログラムを選定し,国際的に魅力ある留学生受入れプログラムを実施する大学から,当該プログラムにより受け入れる留学生の一部を国費外国人留学生(研究留学生)として優先的に採用しています。

5.地域における留学生支援

 留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進するため,全道府県に,大学,地方公共団体,経済団体,民間団体などによって構成される地域留学生交流推進会議が設置されています。また,地域における交流や在籍管理,就職など社会における留学生受入れの推進のため,有識者,企業,学校,留学生支援団体(NPO,ボランティア団体),留学生(現役及びOB)の関係者による全国レベルの「留学生交流総合推進会議」を開催しています。

6.帰国留学生に対する援助の充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,日本学生支援機構では,短期研究のための帰国留学生招へい事業,研究支援のための指導教員の派遣など援助を行うとともにJapan Alumni e News(日本留学ネットワークメールマガジン)を発行し,帰国外国人留学生等に対し必要な情報を提供しています。

図表2‐8‐5 出身国・地域別留学生数(2009年)

図表2‐8‐5 出身国・地域別留学生数(2009年)

(出典)日本学生支援機構調べ

(3)日本人学生に対する海外留学の支援

1.海外留学の現状

 各国などの統計によれば,平成19年に海外に留学した日本人は,約7万5,000人です。留学先別に見ると,その約7割が欧米諸国となっています(図表2‐8‐6)。

図表2‐8‐6 日本人の主な留学先・留学生数(2007年)

図表2‐8‐6 日本人の主な留学先・留学生数(2007年)

(出典)アメリカ合衆国はIIE“OPENDOORS”,中国は中国教育部,台湾は台湾教育部,その他はOECD“Education at a Glance”による。

2.海外留学に関する施策

 文部科学省では,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。
 平成21年度からは,日本人の学生などを海外の大学院に派遣し,学位を取得させることにより,国際化する社会に対応できる優秀な人材の養成を支援する「留学生交流支援制度(長期派遣)」を実施しています。
 また,外国政府などの奨学金により,平成20年度は32カ国に約500人の日本人学生などが留学しており,文部科学省では,その募集・選考に協力しています。
 さらに,海外留学の大半を占める私費留学について,日本学生支援機構の留学情報センターを通じて,留学情報の収集・整理を行い,また,「海外留学説明会」を開催するなど,留学希望者に対する情報提供を行うとともに,留学に関する相談に応じています。

(4)留学生相互交流(受入れ・派遣)の推進

 大学間交流協定などに基づき,母国の大学に在籍したまま,他国・地域の大学で1年間程度,教育を受けて単位を修得したり,研究指導を受けたりする短期留学は,大学間交流の活性化と大学の国際化や日本社会のグローバル化と国際化する社会に対応できる人材の育成,国際理解・知識の拡大,国境を越えた幅広い人的ネットワークの形成が可能となるなど,非常に有意義なものです。こうした短期留学を推進するために,大学間交流協定などに基づき,諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生や諸外国の大学へ派遣される日本人学生を支援する日本学生支援機構の奨学金制度として,平成21年度から「留学生交流支援制度(短期受入れ・短期派遣)」を設けています。これらの制度により,平成21年度には,4,242人の留学生を受け入れ,2,661人の日本人学生を派遣しました。

2 教育の国際交流

(1)国際交流の推進

 グローバリゼーションの進展を背景に,東アジアが一つの大きな経済圏としてとらえられるようになってきています。この圏域の中で人材の流動性を高めることが,その経済発展に資するほか,地域の平和や安定にもつながると考えられます。このため,域内における人材育成や研究の推進について協力関係を強化することが必要となっています。
 文部科学省では,「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ」(※4)を開催し,東アジア共同体構想も視野に,大学間交流も含め,教育,科学技術,文化,スポーツなどの分野において,どのような指針や施策を打ち出すべきか,有識者の方々の協力を得て,検討を進めています。今後,定期的に会合を開き,今年の夏ごろまでに議論の取りまとめを行う予定です。

(2)教員などの国際交流

 文部科学省では,相互理解の増進と指導力の向上を図るため,関係機関の協力を得て,毎年中国及び韓国に教員を派遣しています。
 また,中国及び韓国から,初等中等教育教職員を我が国に招へいし,我が国の教育制度や教育事情,生活,文化等について幅広く理解を深める機会を提供するとともに,我が国の教職員との交流や家庭訪問により,相互理解と友好親善を図る教職員招へいプログラムを実施しています。平成21年度は,中国及び韓国から約300名の教職員を我が国に招へいしました。
 日米間では,昭和26年に発足した「日米教育交流計画」(フルブライト計画。日米両政府が経費を分担して運営。日米教育委員会が実施主体)により,両国の研究者・大学院生・ジャーナリストなどの交流が行われています。

(3)青少年の国際交流事業

 文部科学省では,我が国の青少年や青少年指導者の海外派遣,海外の青少年や青少年指導者の招へいを行う交流事業を実施しています。
 また,国立青少年教育振興機構においても,国内外の青少年や青少年指導者の国際交流や関係機関の連携促進を図ることを目的とした事業を実施しています。


※4 教育,科学技術,学術,スポーツ及び文化分野などにおける今後の国際交流・協力の指針について議論を行う国際交流政策懇談会の下に開催。

3 国際機関その他国際的枠組みにおける取組

(1)ユネスコ事業への参加・協力

 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関(UNESCO),事務局長:イリーナ・ボコバ氏(ブルガリア))は,教育・科学・文化の分野における国際協力の促進を通じて平和に貢献することを目的とする国連の専門機関であり,現在193カ国が加盟しています。ユネスコが取り組んでいる主要な課題の一つに,我が国の提案により始まった,持続可能な社会の担い手を育む教育である「持続発展教育(ESD)」があります。文部科学省や日本ユネスコ国内委員会では,ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため,国際的な連携を実践する学校)をESDの推進拠点と位置づけ,その加盟校増加に取り組んでいます(平成22年3月1日現在136校)。21年11月には,第1回ユネスコスクール全国大会を開催しました。また,教育分野においては他にも,識字率の改善などを目標とした「万人のための教育(EFA)」の推進なども,信託基金の拠出などを通じユネスコと連携して事業を実施しています。
 科学分野では,国際水文学計画(IHP)や政府間海洋学委員会(IOC)をはじめとする持続可能な発展のための国際科学プログラムや,生命科学の倫理的側面に関する考察などのユネスコの諸活動に積極的に参加・協力しています。
 文化分野では,「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づき,人類の共通財産である世界の文化や自然遺産の保護のための国際協力・援助を推進しています。また,2009(平成21)年9月には,「ユネスコ無形文化遺産保護条約」に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に我が国提案の雅楽など13件が新たに記載されました。
 これらの他にも我が国では,ユネスコの目的を実現していくため,国・地方公共団体・民間がそれぞれ協力して,あるいは独自に活発な活動を行っています(図表2‐8‐7)。

図表2‐8‐7 我が国が協力しているユネスコの主な事業

図表2‐8‐7 我が国が協力しているユネスコの主な事業

(2)経済協力開発機構(OECD)教育事業への参加

 OECDは,先進30カ国を加盟国として,様々な分野における政策調整・協力,意見交換などを行っています。教育分野に関しては,加盟各国における教育改革の推進や施策の実践に寄与することを目的として,教育統計や指標の開発と分析,「生徒の学習到達度調査(PISA)」などの事業を実施しており,我が国も参加・協力しています。2009(平成21)年には4回目のPISA調査が行われ,2010(平成22)年12月に結果が公表される予定です。このほか,実社会で必要となる総合的な力や高等教育分野での国際比較調査の準備を進めています。

(3)アジア・太平洋経済協力(APEC(エイペック))教育事業への協力

 APEC(エイペック)は,アジア・太平洋の21カ国・地域が参加する地域協力の枠組みです。貿易・投資の自由化などの経済問題とともに,教育を含む人材養成の分野に積極的に取り組んでいます。教育分野については,加盟国・地域の主導により,教育政策上の諸課題に関する活動を実施しています。日本はタイと協力して,授業研究を通じた算数・数学の授業改善に関する活動を行っています。

(4)国連大学への協力

 国連大学は,東京(青山)に本部を置く国連機関です。2009(平成21)年には,本部に「サステイナビリティと平和研究所」が開設され,グローバルな変化とサステイナビリティ,国際協力と開発,平和構築と安全保障という国連における3つの重要議題にまたがる広範な課題の解決に向け,活動を開始しました。国連大学では,2010(平成22)年秋から世界各国の大学と連携して,学位を提供する大学院プログラムを新たに開始する予定です。我が国は,国連大学本部施設の提供や国連大学基金への拠出とともに,毎年,事業費などの拠出を行っています。

(5)世界知的所有権機関との協力

 世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)は,知的財産権の国際的保護の促進などを目的として1970(昭和45)年に設立された国連の専門機関です。WIPOは,国際条約の作成・管理を行うとともに,各国の法令整備の支援や開発途上国に対する法律・技術上の援助,情報の収集・提供などを行っています(参照:第7章第8節4(2))。
 我が国はWIPOに対して,平成5年度から毎年継続的に信託基金を拠出し,アジア・太平洋地域各国の著作権法制度整備や普及・啓発を促進しています。また,WIPOに職員を派遣するなど,協力・連携して各種セミナー,研修,専門家派遣を実施しています。

4 スポーツの国際交流

 スポーツは人類共通の文化であり,スポーツを通じた国際交流は,諸外国との相互理解と友好親善の促進に大きな役割を果たすものです。
 文部科学省では,スポーツの国際交流を推進するため「武道指導者等派遣交流事業」を実施するとともに,財団法人日本体育協会が行うアジア地区とのスポーツ交流事業や財団法人日本オリンピック委員会が行う国際競技力向上のためのスポーツ交流事業に対して支援を行っています。

第3節 開発途上国への協力

1 国際教育協力における取組

 国際社会において,貧困や災害,紛争,感染症,気候変動など地球的規模の課題が山積しており,先進各国には,課題解決のための資金面での貢献のみではなく,リーダーシップの発揮と知的貢献が求められています。
 教育開発の面では,2015(平成27)年までの初等教育の完全普及等を目指すEFA(Education for All:万人のための教育)目標達成に向けた取組を進める中で,教育の質的向上,持続的発展が大きな課題となっています。一方,初等中等教育就学率が向上した国では,次の課題としての高等教育・職業教育開発の需要が高まっており,我が国に対する期待も増大しています。こうした背景に基づき,
 以下のような取組を実施しています。

2 「国際協力イニシアティブ」

 文部科学省では,国際教育協力懇談会報告「大学発知のODA~知的国際貢献に向けて~」(平成18年8月)を受けて,平成19年度から,「国際協力イニシアティブ」を実施しています。同事業では,大学など我が国の教育関係者が有する教育研究上の知見を整理・蓄積・体系化して,国内外の援助関係者が開発途上国の国際協力の現場で活用可能な教材,カリキュラム,教授法その他の成果物(モデル)を作成しています。
 具体的には,学校保健の改善について日本が有する知見を開発途上国の現地向けに整理し,品質管理手法などを用いた「学校保健改善実践マニュアル」を作成,これを用いた数回の研修や臨地実習により,医師がいない地域で教員が中心となって子どもの健康管理や学習環境の整備に取り組む方法を提案するなどの取組を行っています。
 昨年から開始した「持続可能な発展のための教育(ESD)の推進」,「知的支援ネットワークの構築」の分野については,前者では,今年度9件の活動が行われ,内5件は第4回アフリカ開発会議(TICAD4)フォローアップ・メカニズムの対象案件とされており,後者では,全国的な「農学知的支援ネットワーク」が正式に発足するなどの成果が現れています。
 これらの活動を通じて収集・蓄積された成果物や情報は,「国際協力イニシアティブ・ライブラリー」
(参照:http://e-archive.criced.tsukuba.ac.jp/)に登録され,世界各国の人達に活用されています。

3 現職教員による国際協力とその海外教育経験の日本での活用

 教員は,教育経験を活かした国際教育協力を進めるための重要な人材として期待されています。また,国際教育協力による,教員の資質能力の向上や帰国後の国際教育などの実践における効果も期待されています。「現職教育特別参加制度」創設以来,8年間で594名の現職教員が派遣され,様々な国で活躍しています(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/genshoku/main6_a9.htm)。

4 紛争終結後の国づくりにおける国際教育協力の取組

 アフガニスタンなどの国・地域に対して,相手国のニーズに十分留意しながら,関係機関と連携して,我が国の経験を活かした復興支援に取り組んでいます。

第4節 科学技術外交の推進

1 科学技術外交の意義

 近年のグローバル化の進行や,中国やインドなどの新興国の台頭による世界の多極化,環境問題や資源・エネルギー問題などの地球規模課題の顕在化など,世界を取り巻く諸情勢は大きく変動しています。また,世界的な頭脳循環が加速し,国際的な頭脳獲得競争がますます激しくなっています。これらの状況において,我が国は国際的な協調下で,より一層の科学技術の推進による諸問題の解決や新しい知の創出を図るとともに,世界における我が国の国際的存在感を向上させることが求められています。
 先進国との国際科学技術協力においては,我が国の科学技術水準の向上に資するとともに,地球規模課題の解決や国土安全保障につながる技術の開発などにより,我が国の持続的な成長・発展を促すことが期待されています。また,開発途上国との協力においては,今後著しい発展が見込まれるアジア諸国との抜本的な協力強化を科学技術面で先導するとともに,各国で顕在化している地球規模課題の解決や相手国の人材育成,相手国・我が国の科学技術の発展による緊密な科学技術コミュニティの構築が期待されています。
 また,現在,我が国の研究者の海外派遣や外国人研究者の受入れ数は伸び悩んでおり,我が国の科学技術コミュニティが世界の人材流動の動きから取り残されてしまうという危惧があります。我が国の頭脳循環の流れを活性化させることにより,我が国が世界規模の頭脳循環の中で一角を占めることが必要です。海外への研究者派遣は,海外の先端研究に参画することで,研究能力を高めるとともに,国際研究ネットワークに入り込み,その核として活躍できる力をつけることが期待されます。また,優秀な外国人研究者の受入れを進めることで,新たなイノベーションの創出や,我が国受入れ機関の国際化の促進,将来の海外における我が国とのネットワークの構築が見込まれます。
 これらの状況を踏まえ,文部科学省は,地球規模課題の解決への貢献,先端科学技術分野での戦略的な国際協力の推進による多様で重層的な協力の推進や,国際的な人材・研究ネットワークの強化などに取り組み,科学技術の国際活動を戦略的に推進しています。

2 科学技術外交を推進するための国の取組

(1)分野や相手国に応じた多様で重層的な協力

 現在我が国では世界の51の国・機関と科学技術協力協定などを締結または署名しており,各国と定期的に合同委員会を開催し,互いの協力を深めています。また,先進国から途上国まで多層的な国際ネットワークを発展させていくためには,相手国・地域の特性や分野の特性に応じた協力をしていく必要があります。文部科学省では以下の取組により分野や相手国に応じた多様で重層的な協力を推進しています。

1.アジア諸国との協力

 近年著しい成長を続けるアジア諸国との協力関係を強化すべく,アジアを中心とした科学技術コミュニティを構築し,将来の東アジア共同体構想を科学技術面で先導する「アジア・リサーチ・エリア構想(仮称)」などの検討について,科学技術・学術審議会などから提言がされています。

(ア)日中韓科学技術協力担当大臣会合
 日中韓3カ国の科学技術協力を促進すべく,2007(平成19)年1月に初の会合が韓国(ソウル)で開催されました。2009(平成21)年5月には第2回日中韓科学技術協力担当大臣会合が東京で開催され,同会合では,3カ国の「共同研究協力プログラム(JRCP)」の創設や「若手研究者のワークショップ」の開催(第1回は2010(平成22)年韓国で開催予定)などが合意されました。

(イ)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力
 東南アジア10カ国が参加するASEANと日本との間で,科学技術分野での人材育成などの研究協力が進められています。また,ASEAN科学技術委員会(COST)は,日本・中国・韓国を加え,アジア地域における科学技術協力の推進のため,高級実務者級のASEANCOST+3会合を設けているほか,2009(平成21)年度には,COST+日本の協力枠組みとして,日・ASEAN科学技術協力委員会が発足しました。

(ウ)「センチネル・アジア」プロジェクト
 衛星画像などの災害関連情報をインターネット上で共有することを目的とし,2005(平成17)年に我が国が提案し,2006(平成18)年10月から開始された国際協力プロジェクトです。このプロジェクトは,2010(平成22)年1月現在22カ国56機関9国際機関の協力の下で行われています。

(エ)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
 アジア諸国との原子力分野の協力を効果的に推進するため,日本が主導し,各国の原子力開発利用を担当する大臣クラスの意見交換を毎年行っています。研究炉利用や放射線安全・廃棄物管理,人材養成などの各分野において,意見交換や情報交換を行っています。

2.地球規模課題対応の分野での開発途上国との協力

 アジア諸国はもとより,アフリカを含む開発途上国と地球規模課題の解決や科学技術の更なる発展に資する科学技術協力を推進しています。
 特に,我が国の優れた科学技術とODAとの連携により,日本とアジア・アフリカ等の開発途上国の研究者が連携して共同研究を行い,新しい技術の開発・応用や新しい知見の獲得により国際貢献をもたらすことを目指しています。

(ア)地球規模課題対応国際科学技術協力事業
 低炭素エネルギー領域を含む環境・エネルギー分野,防災分野,生物資源分野,感染症分野の地球規模課題を対象とし,将来的な社会実装の構想を有する国際科学技術協力をODAと連携して推進しています。具体的には,文部科学省・科学技術振興機構(JST)と,外務省・国際協力機構(JICA)が連携し,我が国・相手国の大学・研究機関などを支援することにより,我が国と開発途上国との共同研究を促進しています。

(イ)科学技術研究員派遣事業
 文部科学省及び日本学術振興会(JSPS)と,外務省及び国際協力機構(JICA)が連携し,開発途上国からの要請に基づき,開発途上国で現地の研究者と共同研究を行う日本人研究者をJICA専門家として派遣しています。日本人研究者のマッチング・コーディネートは,日本学術振興会が行っています。

(ウ)新興・再興感染症研究拠点形成プログラム
 平成15年に流行したSARSや,平成21年に流行した新型インフルエンザなど,新興・再興感染症に対する社会不安が増大しています。文部科学省ではアジア・アフリカの8カ国12カ所に整備した海外研究拠点における共同研究を通じて,感染症に対する基礎的知見の集積,人材育成などを推進しています。

地球規模課題対応国際科学技術協力事業

地球規模課題対応国際科学技術協力事業

3.先端分野での先進国との協力

 欧米を中心とした先進国とは,我が国の科学技術水準を向上させていくため,幅広い協力を進めていくことが不可欠です。文部科学省では,政府合意に基づき,国が特に重要なものとして設定した協力対象国・地域と分野における研究交流や共同研究を支援する「戦略的国際科学技術協力推進事業」をはじめとした科学技術協力を推進するとともに,国際機関や国際的な枠組による多国間の協力も推進しています。

(ア)G8に基づく国際協力
 2009(平成21)年7月に開催されたラクイラ(イタリア)サミットでは,世界経済,環境・気候変動,開発・アフリカ,政治問題などが議題となりました。また,2008(平成20)年に新たな枠組みとして,G8科学技術大臣会合が沖縄で開催され,G8の科学技術担当大臣がはじめて一堂に会しました。

(イ)経済開発協力機構(OECD)
 OECDでは,科学技術活動に関して,科学技術政策委員会(CSTP),原子力機関(NEA),国際エネルギー機関(IEA)などの下で,科学技術政策立案に役立つ意見交換,情報・人材の交流,統計資料などの作成,共同研究の実施などを行っています。

(ウ)ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)における協力
 HFSPは生体の持つ複雑な機能の解明のための国際共同研究などの推進を目的に1987(昭和62)年のベネチア・サミットにおいて我が国が提唱した国際的な研究助成プログラムであり,現在は14極で運営されています。具体的には,国際共同研究チームへの研究費助成,若手研究者が国外で研究を行うためのフェローシップの支給などを実施しています。2009(平成21)年度までの研究費助成者の中から,16名がノーベル賞を受賞するなど,国際的にも高く評価されています。

4.国際協力プロジェクトへの取組

 技術の発展,研究の大規模化に伴い,先端分野での大規模な国際プロジェクトが増えており,我が国としても各国と協力し,積極的に取り組んでいます。

(ア)国際熱核融合実験炉(ITER:イーター)計画
 エネルギー資源の乏しい我が国にとって,将来のエネルギーの安定確保は重要な課題です。
ITER計画は,人類究極のエネルギーである核融合エネルギーの実現を目指して,現在,日本,EU,ロシア,米国,中国,韓国,インドの7つの国・地域により進められている国際協力プロジェクトです。我が国はITER機構に対し,機構長をはじめ積極的に人員を派遣するほか,ITERの建設に当たり,欧州に次ぐ割合で機器を製作するなど,その推進に大きな役割を担っています。また,ITER計画を補完・支援する先進的研究開発プロジェクトである幅広いアプローチ活動(※5)を日欧協力により,我が国で実施しています。

(イ)国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)計画
 地球周回軌道上に有人の宇宙ステーションを建設することを目的として,日本,米国,欧州,カナダ,ロシアの5極が共同で行う国際協力プロジェクトです。我が国は,日本実験棟「きぼう」やISSへの物資補給を担う宇宙ステーション補給機(HTV)の開発・運用,日本人宇宙飛行士のISSへの搭乗による科学実験などの活動を行っています。2009(平成21)年7月には若田光一宇宙飛行士が「きぼう」船外実験プラットフォームを取付け,「きぼう」が完成しました。また,同年12月から,野口聡一宇宙飛行士がISSに約5カ月半の長期滞在を行い,宇宙実験などに従事したのに加え,2010(平成22)年4月には,山崎直子宇宙飛行士がISSへの物資補給組立作業に参加するなど,我が国は世界でも重要な役割を担っています。

(ウ)統合国際深海掘削計画(IODP)
 地球環境変動や地震発生メカニズム,地殻内生命圏の解明などを目的とした国際協力プロジェクトで,日本は地球深部探査船「ちきゅう」,米国は科学掘削船「ジョイデスレゾリューション号」,欧州は特定任務掘削船を運用しています。現在は世界各国から24カ国がプロジェクトに参加しています。地球深部探査船「ちきゅう」は,平成19年9月から国際運用を開始し,紀伊半島沖熊野灘において東南海・南海地震の発生メカニズム解明やそれによる防災・減災への貢献を目的とした研究航海を進めています。

(エ)大型ハドロン(※6)衝突型加速器(LHC)計画
 LHC計画は,欧州合同原子核研究機関(CERN)において,周長27kmにも及ぶ巨大な円形加速器を用いて陽子を2方向からほぼ光速まで加速し,それらの陽子同士が衝突する際に生じる膨大なエネルギー領域において宇宙創成時(ビックバン直後)の状態を再現し,未知の粒子の発見や宇宙創成の謎,物質の究極の内部構造を探る人類共通の謎に挑む壮大な実験計画です。我が国は,学術的な意義に加え国内の先進技術分野の発展が期待できることから,加速器建設に資金拠出を行うなどLHC計画の推進に貢献しており,2008(平成20)年に加速器が完成,現在世界最高のエネルギー領域において実験研究が行われています。我が国からは,LHC計画の主要実験であるATLAS(※7)実験等に,約200名の研究者らが参画しています。

(オ)国際科学技術センター(ISTC)における協力
 旧ソ連邦諸国の大量破壊兵器開発などに関係した科学者に平和的研究活動に従事する機会を与え,旧ソ連邦諸国内と国際的な技術問題の解決に寄与することなどを目的とした国際協力プロジェクトを,ISTCを通じて支援しています。2009(平成21)年現在,13極が加盟しており,これまで約7万人以上の研究者が本活動を通じて研究を行っています。

国際宇宙ステーション(平成22年2月撮影) 提供:米国航空宇宙局(NASA)

国際宇宙ステーション(平成22年2月撮影)
提供:米国航空宇宙局(NASA)

地球深部探査船「ちきゅう」 (提供:海洋研究開発機構)

地球深部探査船「ちきゅう」
(提供:海洋研究開発機構)

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部 (提供:高エネルギー加速器研究機構)

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の一部
(提供:高エネルギー加速器研究機構)


※5 幅広いアプローチ活動
 核融合エネルギーの実用化に向けて,ITERだけでは十分に把握できない核融合炉工学分野やプラズマ物理分野などの研究開発を,日欧協力により,我が国(青森県六ヶ所村,茨城県那珂市)において行う取組。
※6 ハドロン
 ハドロン物質を構成している最小の単位である粒子の一種,クォークによって構成される複合粒子(陽子や中性子など)の総称。
※7 ATLAS:AToroidalLHCApparatuS

(2)国際的な人材・研究ネットワークの強化

1.日本の研究者などの海外派遣の拡充・活躍促進

 我が国の研究者の海外派遣は減少傾向にあり,特に欧米への1カ月(30日)を超える派遣が8年連続で減少し,ピークであった平成11年度(6,142人)に比べ半数以下(2,859人)に落ち込みました。また,1カ月(30日)を超える派遣研究者全体(3,972人)についても,7年連続で減少し,13年ぶりに4,000人を割り込みました。(平成19年度「国際研究交流状況調査」)
 これらの状況を踏まえ,将来,国際ネットワークの核として活躍できる研究者を育成するため,日本学術振興会(JSPS)において,以前から実施している「海外特別研究員」に加え,22年度予算では,新規事業「最先端研究開発戦略的強化費補助金」により,頭脳循環を活性化する海外への若手研究者派遣を推進することとしています。また,平成21年度第1次補正予算の「若手研究者海外派遣事業」では,日本学術振興会に基金を創設して,若手研究者の海外への派遣を集中的に推進しています。

2.外国からの研究者の受入れの拡充

 研究者の受入れについては,1カ月(30日)以内の受入れ研究者数は増加している一方,1カ月(30日)を超える受入れ研究者は減少しており,受入れ研究者全体の3分の1を下回っています。(平成19年度「国際研究交流状況調査」)
 これらの状況を踏まえ,日本学術振興会では,優秀な外国人研究者を我が国に招へいし,我が国の研究環境の高度化や国際的な研究者ネットワークの発展・強化をはかるため,研究者のキャリアステージ・招へい目的に応じた,多様なプログラムを実施しています。また,招へい事業などの経験者の組織化を図るとともに,再来日の機会の提供などによる,我が国と諸外国の研究者ネットワークの維持・強化を図っています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --