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第4章 私立学校の振興のために

Topic 私立学校に対する寄附について

 近年の少子化の進展などに伴って私学の経営環境が厳しさを増す中,各私立学校が特色ある教育研究活動をさらに充実させるためには,学生納付金や私学助成に加えて,多様な財源を確保することが必要です。学校法人に対する寄附は,そのための重要な手段の一つであり,平成20年度には,大学・短大を設置する学校法人への寄附金は,1,920億円に上っています。寄附の促進を図るため,学校法人に対する寄附には,税制上の優遇措置が設けられています。優遇措置の具体的内容は,以下の通りです。

<個人が学校法人に対して行う寄附>
 個人が教育や科学の振興など,公益の増進に著しく寄与するとの証明を受けた学校法人(特定公益増進法人)への寄附を行った場合,寄附額から一定額(適用下限額)を差し引いた額の所得控除が受けられます。この度,平成22年度税制改正により,適用下限額が5千円から2千円に引き下げられました。この改正により,従来より少額の寄附も控除対象となることから,寄附に向けた意識や意欲が高まり,少額寄附や継続的な寄附の増加が期待されます。
 個人の寄附に関しては,近年では次のような制度改正が行われています。平成17年度税制改正では所得控除の上限が所得の25%から30%へ,19年度税制改正では同30%から40%に引き上げられました。また,18年度税制改正では適用下限額が従来の1万円から5千円に引き下げられました。さらに,20年度改正により,個人住民税においても,所得税の寄附金控除の対象となっている学校法人が地方自治体の条例で指定を受けたときには,当該法人への寄附が税額控除の対象(控除対象限度額は総所得の30%,適用下限額5千円,控除率は道府県民税4%・市町村民税6%)とされました。

<法人が学校法人に対して行う寄付>
 株式会社や公益法人などの法人が学校法人に対して行う寄附については,1.学校法人に対して直接行う場合と,
 2.日本私立学校振興・共済事業団を経由して行う場合(受配者指定寄附金制度)の2通りがあります。
 1.については,平成20年度税制改正において,特定公益増進法人である学校法人に対する寄附について,損金算入限度枠が拡大されました(資本金×0.25%+当該年度所得×2.5%から資本金×0.25%+当該年度所得×3.75%へ)。
 2.は,受配者指定寄附金制度と呼ばれ,日本私立学校振興・共済事業団が寄附の公益性などを確認した場合には,寄附を行った法人は,寄附金の全額を損金算入することが認められます。

 各学校法人にあっては,税制上の優遇措置を積極的に活用・広報して寄附を募り,さらに魅力的な教育研究活動が行うことが期待されます。また,個人や法人においても,学校法人への寄附を通じて,国民全体で我が国の学校教育を支えていくことが期待されます。

第4章 総論

 私立学校に在学する学生・生徒などの割合は,大学・短大で約8割,高等学校で約3割,幼稚園で約8割,専修学校・各種学校で9割以上となっており,私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献しています。また,グローバルな知識基盤・学習社会の中で,各私立学校は,多様化する国民のニーズ(需要)に応じた特色ある教育研究の推進が求められており,それぞれが建学の精神に基づく個性豊かな活動を積極的に展開しています。このように,私立学校は,我が国の学校教育の発展にとって質・量の両面にわたり重要な役割を果たしています。
 このため,文部科学省は,私立学校の振興を重要な政策課題として位置付け,その教育研究条件の維持向上と在学する学生生徒などの修学上の経済的負担の軽減を図るとともに,経営の健全性を高めるため,次の施策をはじめとする振興方策を行い,その一層の充実に努めています。

  1. 教職員の人件費や教育研究に関する経費などの経常費や施設整備費に対する補助
  2. 日本私立学校振興・共済事業団における貸付
  3. 税制上の優遇措置
  4. 学校法人の経営改善支援

 さらに,学校法人が近年の急激な社会状況の変化に適切に対応し,様々な課題に対して主体的,機動的に対応していくため,平成17年4月1日から1.学校法人における管理運営制度の改善,2.財務情報の利害関係人への公開,3.私立学校審議会の構成の見直しを主な内容とする改正「私立学校法」が施行されています。
 各私立学校においては,それぞれの自助努力により,経営基盤の維持・強化を進め,教育研究内容や財務状況に関する情報公開を積極的に行いつつ,国民の要請にこたえる個性的で魅力あふれる学校づくりを進めることが期待されています。

第1節 私立学校に対する助成

1 私立大学等に対する助成

(1)経常費に対する補助

 文部科学省は,私立の大学,短期大学,高等専門学校における教育研究に必要な経常的経費(教職員の給与費,教育研究経費など)に対して補助を行っており,平成21年度予算では,約3,218億円を計上しています。この補助には,大きく分けて「一般補助」,「特別補助」があります。(図表2‐4‐1)

図表2‐4‐1 私立大学等経常費補助金予算額の推移

図表2‐4‐1 私立大学等経常費補助金予算額の推移

(出典)文部科学省調べ

 一般補助は,教職員の給与費や基盤的な教育研究経費,教職員の所定福利費,厚生補導費などを対象としています。配分に当たっては,1.学生の定員の管理状況,2.専任教員一人当たりの学生数,3.学生納付金の教育研究経費への還元状況など,教育条件や財政などの客観的な指標に基づき補助金額を増減し,効果的・効率的な配分を行っています。また,平成19年度より,各大学等の経営の効率化を促すため,定員割れ大学等への減額の強化を段階的に行っています。
 特別補助は,各大学等における特色ある教育研究などを対象にし,その取組を支援しています。平成21年度においては,教育の質向上,地域活性化への貢献,国際化の推進,学生の修学・就職支援や自主的な経営改善に対する取組を重点的に支援しています。

(2)施設・設備等の整備に対する補助

 私立大学などが実施する施設・設備などの整備については,次のような補助を行っています。

  1. 各大学の経営戦略に基づいて行う研究基盤の形成を支援するため,研究プロジェクトに対し,施設等整備費と研究費を総合的に補助(「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」)
  2. 教育や学術研究に必要な機器の整備及び低炭素社会の実現に向けた施設整備に対する補助
  3. 校舎などの耐震補強工事,アスベスト対策工事やバリアフリー化工事に対する補助

 平成21年度予算では,これらの事業に合わせて約191億円を計上しています。このうち,1.,2.に関する補助金の配分に当たっては,外部の学識経験者から構成される委員会において審査・選定を行っています。

2 私立高等学校等に対する助成

(1)経常費助成費に対する補助

 私立の高等学校,中等教育学校,中学校,小学校,幼稚園,特別支援学校の運営のために必要となる経常的経費については都道府県が助成しており,初等中等教育の全国的水準の維持向上のため,都道府県に対し地方交付税措置が講じられています。文部科学省では,都道府県が行う経常的経費の助成(経常費助成費)などに対して国庫補助を行っています。国庫補助金の配分に当たっては,都道府県の助成水準に応じた配分をすることとし,都道府県における積極的な取組を促すよう配慮しています(図表2‐4‐2)。

図表2‐4‐2 私立高等学校等経常費助成費等補助の推移

図表2‐4‐2 私立高等学校等経常費助成費等補助の推移

(出典)文部科学省調べ

 平成21年度では,約1,039億円の国庫補助金を措置するとともに,地方交付税についても充実が図られています。
 国庫補助金については,教育振興基本計画や新学習指導要領を踏まえた特色ある取組や幼稚園における預かり保育,子育て支援推進事業,保護者の失職・倒産による家計急変や生活保護世帯を対象とした授業料減免措置に対する補助の充実も図っています。
 また,経済情勢の悪化を踏まえ,平成21年度第1次補正予算で高校生修学支援基金(約486億円,21~23年度の3カ年分)を措置し,都道府県が行う経済的理由により修学困難な高校生への奨学金事業や私立高校生に対する授業料減免補助に対して緊急的な支援を行っています。
 なお,各都道府県は,経常費助成費の配分に当たり,教育条件の整備状況などに応じた傾斜配分や特別補助の実施により,私立学校の経営努力を促しつつ,特色ある教育が推進されるよう配慮しています。

(2)施設・設備の整備に対する補助

 校舎施設の機能をより高めることを目的として,私立学校が実施する施設整備に対して補助をしています。具体的には,

  1. 耐震化など施設の防災機能・安全機能強化のための施設整備
  2. 低炭素社会の実現に向けて環境へ配慮した施設づくりのための施設整備
  3. 校内LAN,施設のバリアフリー化など教育内容・方法の改善を目的とした施設整備

 などに対する補助を行っています。特に,平成20年6月の「地震防災対策特別措置法」の改正を踏まえ,地震による倒壊の危険性が高い(Is値0.3未満)学校施設の耐震改修については,補助率の引き上げ(1/3→1/2)を行っています。21年度には,これらの取組に対して約37億円の予算を計上しています。

 また,IT教育の充実を図るため,コンピュータなどのIT教育設備の購入に要する経費の一部を補助する「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」を実施しており,平成21年度は約13億円を計上しています。

(3)教員研修事業費等に対する補助

 私立学校における教育指導の充実を図るため,財団法人日本私学教育研究所が実施する,私立高等学校などの新任教員を対象にした初任者研修事業と10年経験教員を対象にした経験者研修事業などに要する経費の一部を補助しており,平成21年度は約4,161万円を計上しています。

3 私立学校施設高度化推進事業

 現在,多くの私立学校施設が老朽化しています。そのため,私立学校施設の高度化・近代化を計画的に推進し,教育研究条件の充実向上を図るため,日本私立学校振興・共済事業団からの融資を受けて実施される,築30年以上の老朽校舎や危険建物と認定された旧耐震基準の学校施設(昭和56年以前の建物)の建替え整備事業について利子助成を行いました。また,平成15年度からは,8年度以前に実施された学校施設整備事業についても,教育方法などの改善計画の円滑な遂行を支援するため,その金利負担の一部を利子助成の対象としており,21年度は合わせて約12億円を計上しています。

4 私立専修学校に対する助成

 文部科学省では,専修学校がその柔軟な制度の下で,社会の多様なニーズに対応した実践的な職業教育,専門的な技術教育などを行う教育機関として発展していくため,様々な施策を実施しています。
 専修学校(専門課程)における教育環境の充実を図るため,教育装置や情報処理関係設備の整備に要する経費の補助,教員研修に対する補助などの助成を行っています。また,意欲的に教育の質の向上に取り組む専修学校に対しては,社会的要請の高い課題に対応する教育方法などの重点的な研究開発等を委託するなど,専修学校教育の一層の振興を図っています。

第2節 私立学校振興方策の充実

1 日本私立学校振興・共済事業団の事業

 日本私立学校振興・共済事業団では,私立学校の教育の充実・向上と経営の安定を図るための助成業務と,私立学校教職員の福利厚生を図るための共済業務を総合的に行っています。
 具体的には,私立学校振興のための施策として,文部科学省から私立大学等経常費補助金の交付を受け,これを私立大学等を設置している学校法人に交付しており,平成21年度は約3,218億円を交付しています。
 さらに,私立学校の施設・設備の整備などに必要な資金について,長期・低利の有利な条件で学校法人への貸付けを実施しており,平成21年度においては,私立大学附属病院の施設整備に対する貸付け枠の授業料減免などの学生への経済支援を行う私立大学等や緊急融資を必要とする小規模学校法人に対する無利子貸付けを実施するなど,平成21年度は合わせて約910億円の貸付けを計画しています。
 また,私立学校教職員のための共済制度として,1.加入者とその家族の病気・けが・出産・死亡又は災害などに対して給付を行う短期給付事業,2.加入者の退職・障害又は死亡に対して年金の給付を行う長期給付事業,3.病気の予防,病院や宿泊施設の運営,資金の貸付け,貯金の受入れなどを行う福祉事業を実施しています。

2 私立学校に関する税制

 私立学校教育の振興や学校法人の公益性の観点から,種々の税制上の優遇措置が講じられています。
 私立学校を設置する学校法人については,収益事業を行う場合を除き,法人税・事業税等は非課税とされ,収益事業から生ずる所得についても,法人税は軽減税率が適用されています。また,学校法人が自ら直接保育又は教育のために使用する不動産に関しては不動産取得税・固定資産税・登録免許税が非課税とされています。
 特定公益増進法人の証明を受けた学校法人に対して寄附を行った場合,個人の場合には所得控除,企業などの法人の場合には一般の寄附金とは別枠の損金算入が認められています。(参照:本章Topic)
 また,一定の要件を満たす学校法人に対し,相続財産をその申告期限までに寄附した場合には,その相続財産に関する相続税は非課税とされています。さらに,土地や建物をはじめとする資産を一定の要件を満たす学校法人に対して贈与した場合には,譲渡所得が非課税とされています。
 各私立学校においては,これらの税制上の特例措置を積極的に活用して経営基盤強化を図り,魅力ある教育研究を進めることが期待されています。

3 学校法人に対する経営改善支援

 近年における少子化などの影響もあり,学校法人をめぐる経営環境は全体として厳しい状況にあります。平成21年度において入学定員を満たしていない私立学校が,大学で265校(約46.5%)短期大学で246校(約69.1%)に上っています。また,平成20年度決算においては,帰属収入で消費収支を賄えない学校法人(大学,短期大学を持つ学校法人)が46.5%に上っています。各学校法人においては,新しい時代の要請に応じた学部・学科の見直しや特色ある教育研究活動の展開はもとより,経費の削減など経営の効率化を図り経営基盤の安定のための努力を積極的に行っていくことが求められています。
 文部科学省では,平成17年に経営困難な学校法人への対応方針として経営分析の実施と学生に対するセーフティネットの考え方を示すとともに,「学校法人経営指導室」を設け,学校法人に対する経営指導の強化・充実を図りました。また,平成19年度より私立大学等経常費補助金において,経営改善を促進するための特別補助を設け,学校規模の適正化及び経営の改善・効率化に取り組む私立大学等に対し支援を行っています。
 日本私立学校振興・共済事業団においても,経営分析・経営相談体制の整備を図り,平成19年には,定量的な経営判断指標に基づく経営状態の区分とそれぞれの区分に応じた経営改善などの取組への支援の在り方などをまとめました。
 文部科学省としては,学校法人運営調査などを活用するとともに,日本私立学校振興・共済事業団とも緊密に連携しつつ,学校法人の経営改善や再生などに向けた具体的な方策の検討を行い,各学校法人の実情に即した改善・再生策の策定・推進など,学校法人の経営改善への取組に対する支援を進めていきます。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --