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第3章 大学等の多様な発展のために

Topicアジアにおける質の保証を伴った大学間交流について

 平成21年10月10日,鳩山総理大臣(当時),温家宝・国務院総理(中国),李明博大統領(韓国)の出席の下開催された第2回日中韓サミット(中国・北京)において,成果文書として採択された「日中韓協力10周年を記念する共同声明」に,大学間交流の推進が盛り込まれました。また,鳩山総理より,今後の人と人との協力として大学間交流が重要であり,3国の大学の間で単位の互換や交流プログラムなどの質の高い交流を行うために有識者会議を設置する提案,さらにはアジアで大学間交流を強化するため国際会議を共催するという提案を行い,中韓両国の賛同が得られたところです。これを受け,日中韓・ASEAN首脳会議(ASEAN+3)や東アジアサミットなどの首脳会合における成果文書においても,大学間交流の推進が盛り込まれました。
 日中韓において教育の質の保証を伴う大学間交流を拡大していくことは,東アジア地域における学生・教員の移動の活発化,経済活動の一体化が進展する中,地域全体を視野に入れた人材育成を実行するため不可欠であるとともに,東アジア共同体の実現にも貢献するものです。

日中韓共同記者会見(提供:内閣広報室)

日中韓共同記者会見(提供:内閣広報室)

 これらを踏まえ,文部科学省としては,中国,韓国の当局と話し合いながら,日中韓有識者会議を開催し,日中韓の大学間における連携枠組みの構築に向けて取り組むこととしています。22年度は,東アジア地域における質の保証を伴った大学間協力の促進に関する国際シンポジウムを開催します。
 各国の大学や単位・学位プログラム,単位互換・成績評価のプロセスについては,国内外で十分に情報が可視化・体系化されていないとの指摘がなされており,国際的な高等教育の質の保証への関心が高まる中で,国際的に活躍する人材の学習成果を正当に評価することは,学生や教員を保護するために不可欠です。文部科学省では,今後,有識者会議や国際シンポジウムを通じて,日中韓をはじめとするアジア諸国と連携・協力を図りながら,質の高い交流の在り方などに関する検討が行われるよう取り組んでいきます。
 また,質の保証を伴った大学間交流推進の一環として,22年3月に日中韓の主立った質保証機関の代表が初めて一堂に会し,タイのバンコクにおいて第1回目となる連絡協議会を開催しました。各機関の認証評価に関する情報発信や共有化など,3国における質の保証を伴った大学間交流の飛躍的な増加に向けた合意がなされました。
 これらの取組を通じて,我が国の学生が,アジア各国の多様な文化や背景を知る機会がますます増えていくことが望まれます。また,我が国の大学にとっては,アジアの様々な地域出身の学生・教員が集まり,グローバルな社会で活躍できる国内外の人材が養成される場となることを通じて,アジアにおける交流の中核として一層飛躍することが期待されます。

第3章 総論

 大学や短大,高等専門学校などの高等教育機関は,我が国の高度な教育と研究の中核を担っており,幅広い教養と,各学問分野の専門的知識・技能を有する人材の育成や高度な研究を通じて,広く社会経済の発展に貢献しています。

 文部科学省では,「事前審査」に相当する大学の設置認可制度と,「事後評価」に相当する認証評価制度により,大学の質の保証と教育力の向上を図るとともに,個性や特色に応じた大学づくりや国際競争力の強化などに取り組む各大学の改革を支援しています。また,大学が公的な機関としての責任を果たすとともに,外部からの評価を通じて教育研究水準の向上を図ることができるよう,教育情報の積極的な公表を推進しています。
 大学院についても,日本の社会・経済・文化を牽引し,国際社会に通用する人材を育成する「知の拠点」として,研究者養成を中心とした研究指導に偏ることのない組織的・体系的な教育の充実を図るとともに,世界をリードする教育研究拠点の形成などに取り組んでいます。

 グローバル化が大学教育においても急速に進展している中,アジアや欧米を中心に学生や教員の流動性の高まりや,国際的な競争と協同に関する活発な取組がみられており,我が国の大学の国際化や国際競争力の向上が極めて重要な課題です。
 詳細は前ページの〈Topic〉でも取り上げましたが,平成21年10月には,日中韓の各国首脳が出席した第2回日中韓サミットにおいて採択された「日中韓協力10周年を記念する共同声明」に質の保証を伴った大学間交流の推進が盛り込まれました。現在,日中韓において東アジア地域における質の保証を伴った大学間交流を促進するための取組を進めているところです。

 一方,我が国のさまざまな社会的課題に対応するための取組も進めています。現下の厳しい経済情勢を踏まえ,大学による就職支援や学生自身の就業力を強化する取組などのほか,医療人や法曹などの高度専門職業人の養成や,地域医療の中核としての大学病院の機能強化も積極的に行っています。

 さらに,学ぶ意欲と能力のある学生が経済的理由によって学業を断念することがないよう,大学が行う授業料減免措置に対する支援や,奨学金事業の一層の充実に取り組んでいます。この他にも,大学入学者選抜の改善,高等専門学校の充実など,高等教育の多様な発展のための様々な取組を推進しています。

第1節 個性が輝く大学を目指して

1 高等教育改革の状況

 高等教育機関,とりわけ大学は,我が国の高度な教育と研究の中核を担っており,幅広い教養と,各学問分野の専門的知識・能力を有する人材の育成に重要な役割を果たしています。また,大学教育の成果は,そこで学んだ個人の利益にとどまらず,広く社会経済の発展に貢献するものです。
 我が国の大学・短大への戦後の進学率は,昭和50年代から平成2年頃までほぼ横ばいだった期間を除くと上昇を続け,現在は大学・短大あわせて56.2%,専門学校を含めれば77.6%に達しています(図表2‐3‐1)。このような中,社会人や留学生も含めて,様々な背景を備えた学生の入学が見られ,大学教育の質を保証した上で,各大学が,それぞれの実情を踏まえつつ,社会や学生からのニーズに応える教育を実施していくことが求められます。

図表2‐3‐1 18歳人口,進学率等の推移

図表2‐3‐1 18歳人口,進学率等の推移

(出典)文部科学省「学校基本調査報告書」 (資料)平成34~38年度は総務省「人口推計」より作成

 また,社会経済のグローバル化が急速に進み,大学間の国境を越えた協働と競争が活発になっており,大学の質保証には,国内だけでなく,諸外国の動向を踏まえた国際的な視野からの検討も不可欠です。
 これらを背景とする高等教育改革の内容は,極めて多岐にわたります。
 昭和62年に設置された大学審議会,平成13年に大学審議会に替わって,中央教育審議会の大学分科会が,大学改革に関する様々な審議を行っており,大学設置基準の大綱化,自己点検評価の導入,専門職大学院制度の創設,設置認可の弾力化と認証評価制度の導入などが進みました。
 中でも,平成17年の中央教育審議会の答申「我が国の高等教育の将来像」は,中長期的に想定される高等教育の将来像を全体的に示した重要なものです。この答申では,大学の機能として7種類(1.世界的研究・教育拠点,2.高度専門職業人養成,幅広い職業人養成,4.総合的教養教育,5.特定の専門的分野(芸術,体育等)の教育・研究,6.地域の生涯学習機会の拠点,7.社会貢献機能(地域貢献,産学官連携,国際交流等))を挙げ,各大学が,これらの各機能への比重の置き方の違いによって,緩やかに機能別分化していくことを想定しました。
 現在,中央教育審議会の大学分科会では,平成20年9月に「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問がなされたことを受けて,大学の質保証システムの在り方など,様々な事項に関し,総合的な審議を行っています(図表2‐3‐2)。
 昨年6月,8月,そして,本年1月には,それぞれの時点での審議経過概要を公表しています。
 また,大学を取り巻く諸情勢を踏まえた法令改正を随時提言しています。昨年度は,以下が提言されており,文部科学省において必要な法令改正を行っております。

  1. 教育や学生支援の共同利用拠点の制度を創設し,大学間の連携を促すよう,学校教育法施行規則の改正を提言(昨年8月)。
  2. 大学設置基準に,医学教育の定員増のための専任教員数と校舎面積の規定を整備し,地域の医師確保等に早急に対応するよう答申(昨年10月)。
  3. 雇用情勢が厳しい中で,学生の就業力の強化を念頭に置き,大学設置基準に「社会的・職業的自立に関する指導等」を明確化するよう答申(本年1月)。
  4. 法科大学院の諸課題に関連し,法学未修者の学修を充実するよう専門職大学院設置基準の改正を答申(本年1月)。
図表2‐3‐2 「中長期的な大学教育の在り方について」の審議事項

図表2‐3‐2 「中長期的な大学教育の在り方について」の審議事項

2 大学の国際化と国際競争力の向上

(1)卓越した教育研究拠点の形成

 グローバル化が一層進展し,国際競争が激化する今後の社会においては,国際競争力のある大学づくりをさらに推進し,世界に伍する教育研究を積極的に展開することが求められています。
 このため,文部科学省では,「新時代の大学院教育」(平成17年9月中央教育審議会答申)や14年度から実施している「21世紀COEプログラム」の成果などを踏まえ,我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化するため,平成19年度より,若手研究者の育成機能の強化や拠点の国際性をより重視した「グローバルCOEプログラム」を実施し,国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援しています(21年度実績:申請145件,採択9件)。
 また,平成21年度には,平成19年度採択63拠点の中間評価を実施し,一部の拠点において一層の努力を要するところも存在するが,全ての拠点において順調に計画が進捗していると評価されています。

(2)国公私立大学を通じた大学教育改革の支援

 個性輝く大学づくり,国際競争力の強化などが求められる中,大学における教育の質の充実や世界で活躍し得る人材の養成は,極めて重要な課題であり,各大学における大学教育改革の取組を一層促進していく必要があります。
 このため,文部科学省では,以下のプログラムを実施し,国公私立大学を通じた競争的環境の下で,個性・特色ある優れた取組を選定し,重点的な支援を行うとともに,社会に広く情報提供することにより,大学教育改革の促進を図っています。

1.大学教育の質保証のための主体的な取組への支援

 大学教育・学生支援推進事業(平成21年度から実施)
 大学等における学士力の確保や教育力向上,就職支援態勢の強化を図るための取組の中から,達成目標を明確にした効果が見込まれる取組を支援しています(21年度実績:(大学教育推進プログラム)申請649件,選定96件/(学生支援推進プログラム)申請450件,選定400件/(就職支援推進プログラム)申請100件,選定65件)。

2.社会的ニーズに対応する人材養成と大学の多様な機能の展開

 (ア)社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム(平成19年度から実施)
 大学,短期大学,高等専門学校における教育研究資源を活用した,社会人の再就職やキャリアアップ等に資する短期間の実践的教育プログラムの開発・普及を行う優れた取組を支援しています(21年度実績:継続155件)。
 (イ)専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム(平成20年度から「専門職大学院等教育推進プログラム」として実施)
 高等教育機関における高度専門職業人養成などの一層の強化を図ることを目的として,国公私立大学が行う,産業界などとの連携に基づいた教育方法等の充実に資する先導的な取組を支援しています(21年度実績:継続26件)。

3.大学院教育の抜本的強化

 組織的な大学院教育改革推進プログラム(平成19年度から実施)
 産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を養成するため,明確な人材養成目的に沿った組織的・体系的なカリキュラムの構築や,コースワーク(※1)の改善など大学院教育の充実・強化を図るための優れた取組を支援しています(21年度実績:申請163件,選定29件)。

4.大学間のコンソーシアムによる優れた教育の実現

 大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(平成20年度から実施)
 国公私立大学間の連携を推進し,教育研究資源を有効活用することにより,教育研究水準の高度化,教育活動の質保証,個性・特色の明確化に伴う機能別分化の促進と相互補完などとともに,地域と一体となった人材育成の推進を図る取組を支援しています。(21年度実績:申請119件,選定38件)。

5.医師不足対策と地域医療を支える大学病院の機能強化

 (ア)大学病院連携型高度医療人養成推進事業(平成20年度から実施)
 複数の大学病院がそれぞれの得意分野による相互補完を図りつつ緊密に連携し,質の高い専門医及び臨床研究者を養成するための優れた取組を支援しています(21年度実績:継続支援19件,申請4件,選定2件)。

 (イ)がんプロフェッショナル養成プラン(平成19年度から実施)
 がん医療の担い手となる高度な知識・技術を持つがん専門医師など,がんに特化した医療人を養成する優れた取組を支援しています(19年度実績:申請22件,選定18件)(平成23年度まで継続支援)。

 (ウ)周産期医療環境整備事業(平成21年度から実施)
 大学病院における周産期医療体制の強化を図るため,NICU(新生児集中治療室)などの医療環境を整備し(21年度実績:33件),併せて若手医師の教育環境整備や女性医師の勤務継続・復帰支援(21年度実績:申請52件,選定15件),助産師養成環境の整備(21年度実績:申請16件,選定7件)を支援しています。

 (エ)看護職キャリアシステム構築プラン(平成21年度から実施)
 大学病院と自大学看護学部が連携し,体系立てられた看護職の教育体制を構築させるための優れた取組を支援しています(21年度実績:申請48件,選定8件)。

6.産学連携による高度人材育成の充実

 (ア)産学連携による実践型人材育成事業
 多様な社会の要請に対応できる人材や,新たな産業を創出する創造性豊かな人材など,実践的な人材を育成するため,産学連携による実践的な環境下での教育プログラムの開発・実施を支援しています。(21年度実績:継続60件)。
 (イ)先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム(平成18年度から実施)
 高度IT人材の不足に対応するため,大学間・産学間連携により拠点を形成し,教育研究機能の強化を図る教育プロジェクトの実施を支援しています。(21年度:継続支援8件)。


※1 コースワーク
 学問の基礎を身につけるため,学修課題を講義,フィールドワーク,実験など複数の科目の組みあわせを通して体系的に履修すること。

(3)大学の国際化

 社会のグローバル化が進む中,大学の国際化,すなわち,国の内外から広く優秀な学生,教員・研究者を集め,大学の教育・研究機能を国際的なレベルに高めることを通じて,我が国の国際競争力の向上や世界的課題の解決に貢献することが求められています。また,国際的な状況に目を向ければ,国境を越えた高等教育の提供機会が増えていることから,高等教育の質の保証は国際的な課題となっており,我が国においても各国と連携を進めています。アジアにおける質の保証を伴った大学間交流を推進するため,我が国は中国,韓国,ASEAN諸国と連携して,単位互換や成績評価のプロセスについて共通の枠組みを検討するための取組を始めています(参照:本章Topic)。
 こうした中,我が国の大学においては,海外の大学との交流協定数が平成20年度は約1万5千件に上っており,学生や教員の相互交流,単位互換及び共同プログラムの実施などが盛んに行われています。
 文部科学省においては,国際的な大学間競争に対応するとともに,大学間の協力を促進し,国際的に活躍する人材を育成・確保していくために,国際化に取り組む大学への重点的な支援を行っています。
 平成21年度より開始された「国際化拠点整備事業(グローバル30)」においては,英語で授業を受け,英語でも学位が取得できるような体制の構築や,留学生受入れに関する体制の整備,さらには留学生を受け入れるためのワンストップサービスを行うほか,我が国の大学や我が国への留学等に関する情報発信を行う海外拠点の設置など,我が国を代表する国際化拠点としての総合的な体制整備を図る大学の取組を支援しています。また,22年度は,日本の強みを活かした成長分野について日本人学生が中国や韓国等から受け入れた外国人学生と切磋琢磨する環境の下,産業界と連携して,実践的教育を提供する大学の取組を重点的に支援する「日中韓等の大学間交流を通じた高度専門職業人育成事業」を進める予定です。
 また,近年,単位互換制度の活用により,諸外国の大学との間で一定期間の教育や研究指導を行い,最終的に双方の大学が学位を授与するダブル・ディグリー・プログラムなど,他大学との連携を前提とした学修プログラムを導入する大学が増えています。こうしたプログラムは,大学にとって,相互の大学の優れた取組の融合による相乗効果が期待できるほか,学生にとっても短期間で複数の学位を取得でき,将来のキャリア形成に役立つなど大きな利点があります。平成20年度は単位互換実施が246大学,ダブル・ディグリー制度導入が85大学と着実に増加しています。一方,このようなダブル・ディグリー制度など,組織的・継続的な教育連携関係の構築に当たっては,プログラムの質保証が図られることが重要であることから,中央教育審議会大学分科会においてガイドラインを作成し,各大学によるプログラム構築に当たっての拠りどころとなる留意点を示すこととしています。今後も,高等教育の質を保証する観点からその推進に取り組んでいきます。
 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)及び経済協力開発機構(OECD)においては,各国の質保証制度を前提としながら,高等教育と国際的な流動性の向上を図るためのガイドラインが策定されたほか,各国において認定された高等教育機関についての情報提供を図るため,ユネスコによるポータルサイトの運用などの取組が行われています。我が国は国際的な質保証の動きに積極的に参画する中で,国際的な枠組みづくりを主導し,我が国の高等教育機関の質の向上を図っていくこととしています。

3 教育内容・方法の改善・充実

 平成20年12月にとりまとめられた中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」では,各大学が教学経営において「学位授与の方針」「教育課程編成・実施の方針」「入学者受入れの方針」を明確に示し,学士課程教育を組織的・総合的に運用するとともに,教職員の職能開発や積極的な情報公開を進めることで,学士課程教育の全体の質を保証する仕組みを実質化することを提言しています。現在中央教育審議会では,「中長期的な大学教育の在り方について」の審議の中で,大学教育の質保証システムに関する議論が引き続き行われています。
 これらを参考にして,各大学における教育内容・方法の改善・充実にあたっては,学位授与の方針や教育研究上の目的を定め,それらと整合性・一貫性をもった,教育課程編成・実施の方針を明確化する必要があります。
 具体的には,以下のような取組が重要です。

  1. 体系的な教育課程の編成
  2. 単位制度の実質化
  3. 教育方法の改善
  4. 厳格な成績評価
  5. 教職員の職能開発
  6. 大学関係団体による自主的・自律的な質保証
  7. 積極的な情報公開

4 社会に開かれた高等教育

(1)社会人受入れへの対応

 「教育振興基本計画」においては,だれもが生涯のいつでも必要な時に学び,また,何度でも新たな挑戦を行うことができる社会の実現に向けて,大学等において社会人をはじめとする幅広い学習者の要請に対応するための取組が求められています。このため,文部科学省では,社会人の受入れを一層促進できるよう以下のように制度の弾力化などに取り組んできており,職業を有しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会が拡大しています(図表2‐3‐3)。

図表2‐3‐3 社会人受入れの推進に関する制度等の概要と実績(主なもの)

図表2‐3‐3 社会人受入れの推進に関する制度等の概要と実績(主なもの)

(出典)文部科学省調べ

 また,平成19年度には「学校教育法」を改正し,大学の学生以外の者に大学等で高度かつ専門的な内容を体系的に学べる機会を提供するとともに大学等の積極的な社会貢献を促進するため,大学等が社会人など学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し,その修了者に対して履修証明書(サーティフィケート)を交付できる制度(履修証明制度)を創設しました。現在,離職中の保育士らが新しい能力を身につけて現場に復帰できるよう支援する「HPSJapan養成教育プロジェクト」を開設した静岡県立短期大学や,小・中・高等学校から生涯学習に至るまでの情報教育支援士を養成する「初等中等教育及び生涯学習のための情報支援士養成プログラム」を創設した九州工業大学などをはじめ,様々な大学等が積極的に履修証明プログラムの開設・実施に取り組んでおり,平成20年度現在,39大学で48プログラム,7短期大学で8プログラムが実施されています。
 さらに,文部科学省では,平成19年度から「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」を実施し,大学・短期大学・高等専門学校における教育研究資源を活用した,社会人の再就職やキャリアアップなどに資する短期間の実践的教育プログラムの開発・普及を支援しています。具体的には,出産や育児等の理由により離職している看護師の再就業を支援する取組や,農業関係者が農業経営に必要なノウハウや先端生産技術などを身に付けることができる取組などが実施されています。
 これらの取組を活用することで,社会人などの多様なニーズに応じた体系的な教育,学習機会の提供が促進されることが期待されます。

(2)産業界との連携

 近年,社会,経済が高度化,複雑化し,グローバル化が一層進展する中で,今後も我が国が活力ある社会を築き,国際社会での競争力を維持・強化していくためには,多様な社会の要請に対応できる人材や,新たな産業を創出する創造性豊かな人材の養成が不可欠となっています。
 このため,文部科学省は,インターンシップ(就業体験)の推進,産学連携による教育プログラムの開発・実施といった,大学等と産業界との連携・協力による教育の充実を図るための支援を行っています。
 また,産学連携による実践的な環境下で,大学院における質の高い長期インターンシップの実施による知識基盤社会を多様に支える高度専門人材の育成,ものづくり過程の全体を見渡し技術の目利きをすることのできる技術者の育成,サービスにおいて生産性の向上やイノベーション創出に寄与し得る資質を持った人材の育成プログラムを開発・実施する「産学連携による実践型人材育成事業」を実施しています。
 さらに,大学界と産業界が人材育成における対話と行動を行う場として,文部科学省と経済産業省は,「産学人材育成パートナーシップ」を推進し,20年7月に「中間とりまとめ」を公表しました。
 このように高等教育段階における地域社会・産業界との連携が,社会の要請を的確に反映し,多様性と質を高めながら一層推進されることにより,これからの知識基盤社会を支える高度で有為な人材を育成していくことが期待されています。

第2節 高等教育の更なる発展に向けて

1 大学の質の保証と向上のための制度改革の取組

(1)設置認可制度の的確な運用

 大学の設置や組織改編は,大学の質の国際的な通用性の確保や学生保護のため,設置審査などの所定の手続を経て行われます。
 文部科学大臣は大学の設置などの申請を受けると,申請内容が大学設置基準などの法令に適合しているかどうかについて,学識経験者などからなる大学設置・学校法人審議会に諮問し,教学面や財政計画・管理運営面を審査します。審議会による審査を経た後,各種法令などの基準に適合していると認めたものについて,文部科学大臣が認可を行います。
 他方,大学の組織改編を機動的に行うことができるよう,文部科学省では,平成15年度から,授与する学位の種類や分野を変更しない学部・学科などについて,原則として届出による設置を可能とするなど,設置認可制度の大幅な弾力化を進めました。その結果,多くの大学が各大学の理念や目的に応じ,様々な学部などを設置するなど,魅力ある大学づくりを積極的に行っています。(参照:本章第4節1(1))。
 こうした組織改編が容易になった一方で,一部の大学から準備が不足していたり,大学の設置に関する基本的理解を欠いたりする設置申請や届出がなされた結果,設置認可申請の取下げや審査の継続(保留),不認可となった件数が以前と比べ増加するとともに,当初の計画策定が甘かったため,開設後数年も経たないうちに再び届出により新たな学部などに転換するなど,安易な組織改編と言わざるを得ない事例も出てきています。
 文部科学省では,新しく設置された大学などが最初に卒業生を送り出す年度(完成年度)まで,設置計画履行状況調査(アフターケア)として,毎年授業科目の開設状況や教員組織の整備状況などの報告を求め,書面,面接又は実地により調査を行っています。その結果,特に課題が見られる大学に対しては,各大学の教育水準の維持・向上につながるよう,留意事項を付したり,助言を行ったりして,大学に対して主体的な改善を促しています。
 各大学においては,入学する学生のことを第一に考え,十分に将来の見通しが立てられた大学などの設置の認可申請や届出をすることが求められています。

(2)認証評価制度

 平成16年度に始まった第三者評価制度により,「学校教育法」に基づいて,国公私の全ての大学,短期大学,高等専門学校は,7年以内に1回(専門職大学院は5年以内に1回),文部科学大臣の認証を受けた機関(認証評価機関)による第三者評価(認証評価)を受けることが義務付けられています。これは,国による事前規制を最小限のものとし,設置後の大学等の組織運営や教育研究活動などの状況を定期的に事後確認する体制を整備する観点から導入されたものです。
 また,認証評価制度は,1.各認証評価機関が定める評価基準に従って評価を実施すること,2.自ら評価を受ける機関を選択することが挙げられ,大学等の自主性・自律性に配慮しつつ,各大学等の教育研究の特性に応じて適切に評価される仕組みになっています。
 評価機関を認証する場合には,教育に関する有識者の意見を踏まえつつ適切に認証を行うことが必要であることから,文部科学大臣は,学校教育法第112条第1号の規定に基づき,中央教育審議会へ諮問することとされており,平成22年3月31日までに11機関が認証されています。
 これらの機関は平成21年度末までに,大学548大学,短期大学263大学,高等専門学校58校,法科大学院74専攻,法科大学院を除く専門職大学院34専攻の認証評価を行い,その結果を公表しています。

(3)教育の高度化に向けた大学間連携

 平成20年11月に「大学設置基準」を改正し,「大学における教育課程の共同実施制度」を創設しました。これまで,学生が単位互換制度などを利用して複数の大学で学んでも,卒業した際にはその在籍する一つの大学からしか学位が授与されませんでしたが,この制度によって,複数の大学が共同で教育課程を編成し,その課程を修了した学生に対して複数大学の連名による学位を授与することができるようになりました。平成22年4月からは,早速3つの共同大学院がスタートしています。
 また,平成21年8月には「学校教育法施行規則」を改正し,「教育関係共同利用拠点制度」を創設しました。この制度は,各大学が有する人的・物的資源を大学等が共同で利用することを促し,多様化する社会と学生のニーズに応えつつ質の高い教育を展開することを可能とするものです。平成22年4月現在,8つの拠点が「教育関係共同利用拠点」として文部科学大臣の認定を受けています。
 これらの施策によって,大学は「知の拠点」として,各地域の活性化へのより一層の貢献や,国際的な大学間競争の中で新たな学際的・先端的領域への先導的な対応が可能となります。また,教育研究資源を有効に活用することで,さらに質の高い教育研究が提供されることが期待されています。

2 理工系人材の養成

 我が国が「科学技術創造立国」を目指し,発展していくためには,今後さらに,先導性・独創性を発揮し,国際社会に貢献していくことが期待されており,このような我が国の科学技術を支える理工系人材として,倫理観を備え,創造性豊かな質の高い人材の育成が強く求められています。
 平成18年度から22年度における我が国の科学技術の基本方針を示した「第3期科学技術基本計画」においても,知の創造と活用において,創造性豊かで国際的にリーダーシップを発揮できる広い視野と柔軟な発想を持つ人材を育成するため,大学における人材育成機能の強化について言及されています。それとともに,技術者の養成についても,この計画の中で,大学,高等専門学校,専修学校などにおいて,将来のものづくり人材を含めた技術者養成のための実践的教育を進めるとしています。
 大学,高等専門学校における取組として,技術者教育プログラムの認定制度を利用するケースが増えています。これは,日本技術者教育認定機構(JABEE)が大学・高等専門学校などにおける技術者教育の質的向上や技術者教育の国際的な通用性・共通性を担保する観点から行っているもので,平成20年度までに409のプログラムが認定されています。
 また,技術者養成の一層の充実を図ることを目的として,「大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議」を開催し,技術者に必要な資質能力の育成方策や技術者教育の質の保証について検討しています。

3 医療人の養成

 医師不足による地域医療の崩壊,高齢化による疾病構造の変化,患者のニーズの多様化,生命科学や医療技術の急速な進歩などを背景として,国民の期待にこたえる「良き医療人」の養成が一層重要となっています。文部科学省としても,医療人の養成を担う各大学と協力しながら,様々な改革を進めています。

(1)医学教育の改善・充実

1.医師不足への対応

 医師不足の解消が喫緊の課題であることから,平成22年度の医学部入学定員については,ア)都道府県が地域医療に将来従事することを返還免除の条件とする奨学金を活用し,地域医療を担う医師の養成・確保に一貫して取り組む定員増(313人),イ)複数の大学と連携し研究医養成の拠点を形成し,優れた研究医養成・確保に取り組む定員増(17人),ウ)歯学部入学定員の削減を行う大学の特例による定員増(30人)の3つの枠組みで,合計360人増(平成31年度までの10年間)の8,846人となりました。

図表2‐3‐4 医学部医学科における入学定員(募集人員)の推移

図表2‐3‐4 医学部医学科における入学定員(募集人員)の推移

2.医学教育改革の推進

 医師については,人間性豊かで高度な臨床能力を持ち,患者中心の医療を実践できる医療人の養成に大きな期待が寄せられています。これまで,各大学において,医学生が卒業までに最低学ぶべき教育内容を精選して作成された「医学教育モデル・コア・カリキュラム(※2)」に基づくカリキュラム改革などを進めてきました。また,卒後臨床研修制度の見直しを踏まえて,「医学教育カリキュラム検討会」を開催し,平成21年5月,総合的な診療能力の基礎を育成する臨床実習の充実や卒前・卒後教育,生涯教育を担う大学が地域医療機関や自治体などと連携して,地域全体で医師を養成・確保するシステムの構築などについて提言が取りまとめられました。今後,制度の詳細について検討を行います。


※2 医学教育モデル・コア・カリキュラム
 各大学のカリキュラム改革に資するよう,平成13年3月に文部科学省の「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において,すべての医学生が卒業までに最低限習得すべき教育内容をガイドラインとして示したもの

(2)歯学教育の改善・充実

 歯学教育に関しては,モデル・コア・カリキュラムの作成を通じて診療参加型の臨床実習の強化を図るなど,歯科医師となる者の資質能力の向上に向けた取組が進められています。
 平成20年7月に,「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」を開催し,国民から信頼される確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成する質・量ともに適正な歯学教育について議論を行いました。21年1月には,「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議 第1次報告~確かな臨床能力を備えた歯科医師養成方策~」がとりまとめられ,ア)歯科医師として必要な臨床能力の確保,イ)優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施,ウ)歯科医師の社会的需要を見据えた優れた入学者の確保,エ)未来の歯科医療を開く研究者の養成,の四つの観点から提言がなされました。また,これに基づき,各大学の歯学教育改善方針などを把握するとともに,それを参考とした具体的な改善促進を図っています。

(3)薬学教育の改善・充実

 医療技術の高度化,医薬分業の進展などに伴い,医療の担い手として活躍する薬剤師の養成と薬学の研究者などの多様な分野に進む人材の養成に取り組んでいます。平成18年から6年制の薬学教育が始まり,22年度からは,モデル・コア・カリキュラムに基づく実務実習(病院・薬局それぞれで約11週間)が開始されます。各大学では,実務実習事前学習及び薬学共用試験の実施,実習施設との緊密な連携による実習指導体制の構築などの準備を進めています。また,薬学教育の改革の推進を図るため,「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」を開催し,21年3月に薬学教育における大学院教育の在り方が第1次報告で取りまとめられました。今後は,社会的要請を踏まえた教育の内容や質の保証を図るため,学士課程における薬学教育の在り方などについて,引き続き議論を行います。

(4)看護師等医療技術者教育の改善・充実

 看護師など医療技術者の養成に関しては,質の高い医療技術者,教育者,研究者の養成を目的とした大学・大学院の設置が増えています。特に保健師・助産師・看護師については,良質な看護などを国民に提供することの必要性を考慮して,国家試験受験資格取得の要件を保健師・助産師は,修業年限6カ月から1年以上に,看護師は,大学卒業者を明示することなどを内容とする改正保健師助産師看護師法が平成22年4月から施行されます。
 今後,大学が養成する看護系人材の役割に大きな期待が寄せられる一方で,保健師・助産師・看護師を養成する大学数の急激な増加は,実習場所の確保が困難になるなど教育面での質の低下が懸念されています。このため,21年3月から大学における看護系人材養成の在り方について有識者による検討を実施し,同年8月にこれまで看護系大学の学士課程で教授することとされてきた保健師国家試験受験資格の取得に必要な教育内容については,看護師養成に特化した教育課程を編成できることなどを内容とする第1次報告が取りまとめられました。今後,学士課程や大学院における看護系人材養成の望ましい在り方についてさらに検討を進めていきます。

(5)がん医療への取組

 がんは,我が国の死亡率第1位の疾患である一方,放射線療法や化学療法など複数の治療法を組み合わせたがん治療ができる専門家が全国的に少なく,その育成が急務とされています。また,近年の高度化したがん医療の推進は,医師のみにより可能なものではなく,高度ながん医療に習熟した看護師,薬剤師,その他の医療技術者などが参画し,チームとして機能することが何より重要です。
 そのため,文部科学省では,平成19年度から,大学と大学病院が連携して,優れたがん専門家を養成するための横断的な教育プログラムを構築する「がんプロフェッショナル養成プラン」を実施し,平成21年度現在,18件(94大学)の取組を支援しています。

(6)大学病院の充実

 大学附属病院は,学生・研修医などの教育や先端的な医療研究を担うとともに,採算性が低い医療や高度医療など,診療面でも重要な役割を果たしています。
 平成16年度から国立大学は法人化され,附属病院については自主・自律的な運営により効率的な経営を求めるとともに,教育・研究・診療機能の維持・充実の観点から運営費交付金などの財政措置を行っています。平成22年度予算では,国立大学法人運営費交付金の1%削減方針を見直しつつ,地域医療のセーフティネット構築のための医療機器の整備充実や医師・看護師をサポートする臨床工学技士等の配置に必要な経費を支援するなど附属病院に対する予算を拡充しました。
 また,この他にも,国公私立大学を通じて,以下のような課題に対しても重点的に取り組んでいます。

1.周産期医療体制等の整備

 深刻な医師不足の中で,周産期医療の人材養成の充実は重要な課題となっています。そこで,我が国の周産期医療体制の強化に貢献するため,「大学病院の周産期医療体制整備計画(平成20年12月5日)」を策定し,21年度から大学病院の周産期医療体制の整備と周産期医療に関する人材養成の強化に取り組んでいます。

2.大学病院における医師等の勤務環境の改善

 大学病院における医師などの厳しい勤務環境が深刻な問題となっています。そこで,医師以外の医療補助者などの補充による関係職種間の役割分担の促進,看護師の技術向上を図り,医師などの業務軽減を含む勤務環境の改善に取り組んでいます。

第3節 大学入試の改善

 各大学では,大学進学希望者の能力・適性などの多様化や高校教育にも配慮しつつ,大学入試の改善に取り組むことが求められています。
 これまでにも中央教育審議会などにおいて大学入試の改善に関する様々な提言が行われてきました。これらの提言を踏まえ,文部科学省では大学入試の改善に向けた様々な施策に取り組んでいます。

1 大学入試センター試験の改善・充実

 大学入試センター試験は,大学入学志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定するため,各大学が大学入試センターと共同して平成2年度入試より実施している試験です。各大学は,入学者受入方針と創意工夫に基づき,利用する教科・科目を自由に定めることができます。(平成22年は651大学,160短期大学が利用)
 平成24年1月に実施される試験からは「地理歴史・公民」,「理科」における科目選択の弾力化などが行われる予定です。

2 高大接続の改善

 これまで各大学では,過度の受験競争の緩和のため,中央教育審議会の提言などを踏まえ,面接・小論文などの活用による評価尺度の多元化,アドミッション・オフィス(AO)入試(※3)や推薦入試の導入・拡大といった入試方法の多様化が進められてきました。
 しかし,いわゆる大学全入時代を迎え,入試の選抜機能が従来ほどは期待できなくなっている中,大学では,入学者の学力水準の担保が困難になってきており,高等学校でも,大学入試により大学進学希望者の学習意欲を喚起することが困難になってきています。
 このため,平成20年12月の中央教育審議会の答申「学士課程教育の構築に向けて」では,高等学校と大学は,選抜だけでつながっていたこれまでの関係から,客観的できめ細やかな学力の把握とそれに基づく適切な指導による生徒・学生の学力向上のため,共に力を合わせて取り組む関係への転換が求められています。
 その方法の一つとして,現在,高校・大学の関係者の間で,高等学校の指導改善や大学の初年次教育,大学入試などに活用可能な「高大接続テスト(仮称)」に関する協議・研究の取組が進められています。


※3 アドミッション・オフィス(AO)入試
 詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって,入学志願者の能力・適性や学修に対する意欲,目的意識等を総合的に判定する入試方法。

第4節 高等教育機関の多様な展開

1 国公私立大学の充実

(1)国公私立大の整備充実

【国立大学】

 国立大学は,我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに,全国的に均衡のとれた配置により,地域の教育,文化,産業の基盤を支え,学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど,重要な役割を果たしています。
 平成16年には,大学の自主性・自律性を向上させ,教育研究活動を活性化する観点から,従前は国の組織の一部であった国立大学が法人化されました。これは国立大学を国の人事や予算等の枠組みから外し,大学自らの責任と判断で運営できるよう,その裁量を大幅に拡大するためのものです。

1.法人化後の国立大学法人の取組について

 法人化後,各国立大学法人は,その個性や特色を生かした取組を積極的に展開しています。
 学長のリーダーシップによる戦略的・重点的な資源配分を実施するため,全ての法人で学長裁量経費が設定されるとともに,教員の任期制も平成12年度では44大学516人であったのが,平成20年度では83大学14,287人と約28倍に拡大しています。
 教育の質の向上や開かれた大学に向けた取組も進んでおり,学部における厳格な成績評価(GPA制度)の実施を進めている国立大学の割合は平成12年度から平成20年度にかけて7%から62%に増加しており,また,教員の教育面の業績評価を実施している国立大学の割合も平成12年度から平成20年度にかけて28%から87%へと増加しています。大学院における社会人入学者数も平成12年度には4,641人であったのが,平成20年度には8,016人まで増加しています。
 また,各法人の自助努力による資金調達を拡大するため,一定収入があり,長期借入金を償還できる見込みのある施設について,民間金融機関からの長期借入金による整備が可能となるよう平成17年度に法令改正を行っています。この制度の活用により,動物病院(東京農工大学),学生寮(宇都宮大学,豊橋技術科学大学,大分大学)などが整備されています。
 産学連携も積極的に推進しており,共同研究は平成13年度から平成20年度にかけて,5,264件(112億円)から14,303件(362億円)に,受託研究は平成13年度から平成20年度にかけて5,701件(351億円)から10,682件(1,336億円)に増加しています。また,特許についても,平成13年度から平成20年度で,発明届出は2.3倍,実施料収入は3.7倍に増加しています。
 また,経営改革の取組例として,愛媛大学では,城北地区4学部の教務事務及び学生支援事務を集中化し,学生が気軽に立ち寄れる図書館1階に「学生サービスステーション」を設置して学生の利便性を高めるとともに,業務合理化を推進しています。筑波大学では,教育研究基盤校費,謝金,旅費などの区分から教育研究経費,事務経費に整理し,教育研究業務に機動的に管理・配分が可能となるよう見直しを行い,事務量の大幅減,財務部門などのスリム化につながっており,各法人で様々な経営改革に向けた取組がなされています。

2.大学院の整備充実

 平成21年度においては,複合領域,学際領域等,先端分野や新規分野に対する教育研究の需要が高まる中,大学院における教育研究体制の充実がもとめられています。京都大学大学院においては,環境問題や貧困問題に代表されるような地球社会全体や複数地域にまたがる諸問題の解決のために,地域研究に立脚した地域間比較,超域的な研究を行うため,新たに「グローバル地域研究専攻」を設置するなど,8大学が9研究科等(地域教育文化研究科など)を,19大学が70専攻(電気電子工学専攻など)を開設しました。

3.組織及び業務全般の見直し等

 平成22年度より,第二期中期目標期間が開始しますが,文部科学大臣は,中期目標期間終了時に,各国立大学法人の組織および業務全般にわたる検討を行い,所要の措置を講じるものとされており,各国立大学法人に対して,第二期中期目標などに盛り込むべき内容を「見直し内容」として21年6月に提示しています。「見直し内容」においては,大学の機能別分化を進めるため,各法人の目指す方向性や個性化が一層明確となる中期目標・中期計画とすることや,目標の達成状況が事後的に検証可能となるよう具体的な取組内容を可能な限り定量的に明らかにすること等を基本的な方向性として,大学院博士課程,法科大学院,教員養成系学部等の組織の見直しや,教育研究等の質の向上,業務運営の改善及び効率化,財務内容の改善等の業務の見直しについて示しており,それらを踏まえ,第二期中期目標・中期計画が策定されています。
 また,平成22年1月より,国立大学の法人化以降約6年を経ていることなどから,各国立大学法人が引き続き,社会・地域の期待に応えつつ,継続的・安定的に教育研究を実施し,充実した学生支援を行っていくことができるよう,国立大学法人化の検証を行っています。

【公私立大学】

 公私立大学においては,平成15年度(16年度開設)4月から学部・研究科などの設置について広く届出制を導入しており,16年度(17年度開設)以降,活発な組織改編が行われています(図表2‐3‐5)。
 また,構造改革特別区域制度により,16年度から株式会社による大学などの設置も行われていますが,21年度は学部の設置が1校あったのみでした。

図表2‐3‐5 設置認可・届出の総件数の推移

図表2‐3‐5 設置認可・届出の総件数の推移

(出典)文部科学省調べ

1.学部の整備充実

 平成21年度に設置認可された大学(22年度開設)は5校でした。設置形態としては新規に参入するものが1校,既設の短期大学を廃止したり定員を減らしたりして大学を新設するものが4校で,4年制大学志向の高まりから,短期大学から4年制大学への転換が進んでいます。
 そのほか,看護師や管理栄養士を養成する看護学科や管理栄養学科,また,教員免許の取得が可能な子ども教育学科など将来の職業を見通した学部・学科が多く設置されているのが21年度の特徴です。

2.大学院の整備充実

 平成21年度に設置認可された大学院(22年度開設)は8校でした。また,研究科・専攻を設置するもののうち,専門職大学院は知的財産研究科の1校でした。
 平成21年度は,看護学研究科,スポーツ健康科学研究科,環境学研究科といった多様な研究科などが設置されています。

3.公立大学を取り巻く動き

 公立大学は,地方公共団体が設置・管理するという性格から,地域における高等教育機会の提供と,地域社会での知的・文化的拠点として中心的役割を担っています。その数は,看護・保健系など地域に密着した分野を中心に大学数,学生数ともに増加傾向にあり,平成元年度は39大学6万人であったものが,21年度は77大学13万7千人と倍増しています。
 近年は,再編統合や私立大学から公立大学への移管など,公立大学を取り巻く高等教育再編の動きも活発化しているほか,平成16年度の公立大学法人制度の導入により,21年度現在で42法人45大学と,自主自律的な環境の下,魅力ある教育研究を積極的に展開しています。
 公立大学の財源は,寄附金や委託金などの小規模なものを除くと,授業料などの学生からの納付金と,その設置者である地方公共団体からの拠出に大別されます。文部科学省としては,地方公共団体に対する地方交付税交付金の算定の際に考慮されている公立大学分について,地方財政措置に関する拡充要望を毎年実施しており,平成22年度の学生一人当たりの単位費用は,前年比21,000円増の248,000円となっています。

(2)専門職大学院の新たな展開

 社会が多様に発展し,国際的競争も激しくなる中で,多様な経験や国際的視野を持ち,高度で専門的な職業能力を持つ人材が多く必要とされるようになってきています。このような社会のニーズに対応するため,高度専門職業人の養成に目的を特化し,理論と実務を架橋する実践的な教育を展開する専門職大学院を平成15年に創設しました。
 平成21年4月現在,法曹養成(法科大学院),教員養成(教職大学院),会計,経営管理,MOT(技術経営),公共政策などの多様な分野で計182専攻が開設され,それぞれの個性・特色に応じた教育を実施しています。法科大学院においては,「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」(平成21年4月17日中央教育審議会法科大学院特別委員会)を踏まえ,教育の改善に取り組んでいます。

(3)短期大学教育の充実

 短期大学は,学校教育法において4年制大学と目的や修業年限を異にする大学として位置付けられており,制度創設以来,特に女子の高等教育の普及や実践的職業教育の場として大きな役割を果たしてきました。
 短期大学の個性・特色は,地域の身近な高等教育機関として,短期間で,大学としての教養教育やその基礎の上に立った専門教育を提供する点にあり,短期大学への自県内進学率(入学者のうち,短期大学の存在する県内高等学校卒業者の割合)は,平成21年度では64%となっています。このような特徴を明確化するよう,平成17年に短期大学卒業者に対する「短期大学士」の学位制度が創設され,諸外国と同様に学位が授与されることになり,短期大学卒業という学歴や知識・能力が適切に評価され,学生の国際交流にも資するものとなっています。
 また,短期大学は様々な方面の人材を養成していますが,とりわけ,幼稚園教諭や保育士などの教育に携わる人材,栄養士や介護福祉士などの健康や保健に携わる人材などについて,有為な専門的職業人を養成する機関として,大きな役割を担っています(短期大学の分野別学生数(平成21年度):教育45,946人,家政31,730人,それ以外77,451人)。

2 高等専門学校の充実

 高等専門学校は,中学校卒業後という早い年齢段階からの,実験・実習を重視した,5年間一貫の専門的・実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関です。
 その教育成果は,産業界から高い評価を受けており,最近の平均求人倍率は20倍前後に達し,例年100%近い就職率となっています。(図表2‐3‐6,図表2‐3‐7,図表2‐3‐8)。
 卒業後には,大学3年次への編入学制度などによる進学の道が開かれており,平成21年3月の高等専門学校卒業者のうち約43%に当たる4,504人が,専攻科や長岡,豊橋の技術科学大学をはじめとする国・公・私立大学などに進学しています。
 ほとんどの高等専門学校には専攻科が設置されています。大学評価・学位授与機構が認定した専攻科の修了者は,一定要件を満たせば,同機構から学士の学位を授与されることとなっており,高等専門学校の専攻科はすべて同機構の認定を受けています。また,専攻科修了後の大学院進学率も最近では約30%となっています(図表2‐3‐9)。
 各高等専門学校においては,地域活性化や地域貢献への取組が積極的に行われており,地元企業・各種団体との共同研究・技術支援などを通じて,地域産業の振興に貢献しています。
 近年,科学技術の高度化が進むなど,高等専門学校をめぐる状況は大きく変化しています。これらに対応するため,平成21年10月に複数の国立高等専門学校の教育研究資源を集結し,スケールメリットを活かしつつ学科の多様化や,専攻科の充実を通じた高度化,産学連携の強化などの実現を目指すことを目的に,宮城・富山・香川・熊本4地区各2校の国立高等専門学校について,学校の改組,専攻科の拡充などを含む再編整備を行いました。

図表2‐3‐6 設置者別学校・学科・学級数及び入学定員(平成21年度)

図表2‐3‐6 設置者別学校・学科・学級数及び入学定員(平成21年度)

図表2‐3‐7 分野別学科数・入学定員(平成21年度)

図表2‐3‐7 分野別学科数・入学定員(平成21年度)

図表2‐3‐8 卒業者の進路状況の推移

図表2‐3‐8 卒業者の進路状況の推移

(出典)文部科学省「学校基本調査」(求人倍率は文部科学省調べ)

図表2‐3‐9 高等専門学校専攻科修了生の大学院進学状況

図表2‐3‐9 高等専門学校専攻科修了生の大学院進学状況

3 専門学校の現状と最近の施策

(1)専門学校の現状

 専修学校は,社会の変化に合った実践的な職業教育,専門的な技術教育などを行う教育機関として発展してきました。特に,高等学校卒業程度を入学対象とする専門課程(専門学校)の生徒数は,平成21年5月現在約55万人となり,新規高等学校卒業者の約14.7%が進学しており,大学への進学(約47.3%)に次ぐ割合となっています。専門学校は,我が国の高等教育の多様化・個性化を図る上でも重要な役割を果たしています。

(2)最近の施策

 専修学校教育の振興策として,社会的要請の高い課題に対応する教育方法などの重点的な研究開発,留学生の日本での就職・生活を支援する事業などを実施するとともに,高校生などに対する多様な職業体験の機会の提供や,専修学校の職業教育機能を活用して,若者・社会人・女性などの就職困難者に対して,就業能力の向上を支援する学習機会の提供などの推進に取り組んでいます。

第5節 学生に対する経済的支援の充実と学生の就業力の向上

1 学生に対する経済的支援の充実

(1)日本学生支援機構の奨学金事業

1.奨学金事業の現状

 国の奨学金事業は独立行政法人日本学生支援機構が実施しており,経済的理由により修学に困難がある優れた学生などに対し奨学金を貸与するとともに,卒業後の返還金の回収などを行っています。この奨学金事業は,昭和18年度に創設され,平成20年度までの66年間に奨学金の貸与を受けた奨学生の総数は約893万人,貸与総額は約10兆107億円に達しています。日本学生支援機構の奨学金には,無利子奨学金(第一種奨学金)と有利子奨学金(第二種奨学金)の2種類があり,有利子奨学金は,在学中は無利子で,卒業後は年利3%を上限とした利子が課されるものです。

2.学生の学ぶ意欲にこたえる事業の充実

 学ぶ意欲と能力のある学生などが経済的な面で心配することなく,安心して学べるようにするため,平成21年度においては,事業全体で約115万人(対前年度6万人増)の学生などに対して,約9,475億円(対前年度462億円増)の奨学金を貸与することとしています(図表2‐3‐10,2‐3‐11)
 また,家計支持者の失業や災害による被害などによって家計が急変し,緊急に奨学金を必要とする学生に対応するため,「緊急採用奨学金制度(無利子奨学金)」「応急採用奨学金制度(有利子奨学金)」を年間を通じて随時受け付け,これまで希望者全員を採用しています。
 なお,高等学校及び専修学校高等課程の生徒に対する奨学金事業については,平成17年度の入学者より,都道府県に移管されており,各都道府県において確実に事業が実施できるよう,平成21年度は高等学校等奨学金事業交付金約281億円を措置しています。

図表2‐3‐10 奨学金事業規模の推移

図表2‐3‐10 奨学金事業規模の推移

(出典)文部科学省調べ

図表2‐3‐11 奨学金事業費総額

図表2‐3‐11 奨学金事業費総額

3.返還金回収業務の改善

 日本学生支援機構の奨学金事業は,卒業した奨学生からの返還金を奨学金の原資として活用する貸与制により実施しており,現在,事業費総額の約4割が返還金で賄われている(他の財源は,無利子奨学金については政府貸付金,有利子奨学金については財政融資資金及び財投機関債等)ため,返還金が確実に回収されることが,奨学金事業を実施していく上でますます重要となっています。このため,日本学生支援機構では,平成21年度からの第2期中期目標・中期計画において,平成25年度までに総回収率を82%以上にすることや平成23年度までに大学・大学院等に係る平成19年度末の3カ月以上の延滞額の半減を目指すことを明記するとともに,(ア)民間委託の拡大(新たにコールセンターを設置,試験的に導入した回収業務の民間委託を本格的に実施),(イ)延滞者に対する法的措置の早期化(延滞1年以上から9カ月以上に3カ月早期化),(ウ)住所不明者に対する住所調査の強化,(エ)個人信用情報機関の活用など,返還金回収業務の強化に努めています。

(2)大学における授業料減免事業の支援

 文部科学省では,経済的理由などにより,授業料などの納付が困難である者などを対象に,修学継続を容易にし,教育を受ける機会を確保するため,国立大学法人や私立大学などが実施する授業料減免措置に対し,国立大学法人運営費交付金の算定や,私立大学等経常費補助金の特別補助を通して支援しています。また,公立大学については,地方財政措置を通して支援しています。
 現在,全ての国立大学法人において授業料減免制度を設けており,平成20年度の授業料免除実施額は約190億円,免除人数は約6万人(のべ10万5千人)となっています。
 公立大学では,現在,すべての大学が授業料減免制度を設けており,平成20年度実績で約8,500人に対して25.5億円の減免措置がなされています。
 また,私立大学などが実施している授業料減免事業に対しては,平成21年度に29億円,約2万8千人分を補助しています。

(3)奨学団体等の奨学金事業

 我が国の奨学金事業は,日本学生支援機構のほかに特例民法法人や地方公共団体,大学や民間会社などによって,多様な形態で幅広く実施されています。平成19年度の日本学生支援機構の調査によると,約2,800の奨学団体などが,約13万4千人の奨学生に対し,総額で約548億円を支給しています。
 これらの奨学団体などは,それぞれの設立目的に基づいて特色ある事業を行っており,教育の機会均等と優れた人材の育成の観点から一層の充実が図られることが期待されます。また,一定の要件を満たす奨学団体に対する寄附金については,現在,一定の税制上の優遇措置が講じられています。

(4)大学院生の経済的支援の拡充

 大学院生に対する経済的支援として,文部科学省では,グローバルCOEプログラム等を通じてTA(ティーチング・アシスタント)(※4)やRA(リサーチ・アシスタント)(※5)の充実を図る取組を行っています。


※4 TA(ティーチング・アシスタント)
 優秀な大学院学生に対し,教育的配慮の下に,学部学生などに対するチュータリング(助言)や実験・実習・演習など教育補助業務を行わせ,大学院学生への教育訓練の機会を提供するとともに,これに対する手当の支給により,大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。

※5 RA(リサーチ・アシスタント)
 大学等が行う研究プロジェクトなどに,教育的配慮の下に,大学院学生等を研究補助者として参画させ,研究遂行能力の育成,研究体制の充実を図るとともに,これに対する手当の支給により,大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。

2 学生の就業力の向上

(1)学生の就職活動

1.就職率の動向

 文部科学省と厚生労働省が共同で実施した就職状況調査によると,平成20年度大学等卒業者の就職率は次表のとおりです(図表2‐3‐12)。12年以降,就職率は8年続けて上昇していましたが,昨今の雇用情勢を反映して,学生などの就職率は下落に転じております(図表2‐3‐13)。平成22年3月大学等卒業予定者の就職内定率(2月1日現在)も79.7%(昨年同期比6.2ポイント減)と,学生の就職活動は厳しい状況です。

図表2‐3‐12 平成20年度大学等卒業者の就職状況(平成21年4月1日現在)

図表2‐3‐12 平成20年度大学等卒業者の就職状況(平成21年4月1日現在)

図表2‐3‐13 就職率の推移

図表2‐3‐13 就職率の推移

(注)数値は,各年4月1日現在の大学,短期大学及び高等専門学校全体の値を示す
(出典)大学等卒業者の就職状況調査(文部科学省,厚生労働省調べ)

2.秩序ある就職・採用活動への取組

 平成22年度(23年3月)卒業予定の学生の就職・採用活動については,21年度と同様に,大学側(国公私立大学などで構成される「就職問題協議会」)が「平成22年度大学,短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について」の申合せを行い,企業側(社団法人日本経済団体連合会)が「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者などの採用選考に関する企業の倫理憲章」(「倫理憲章」)を定め,双方がそれぞれを尊重する形で行われています(図表2‐3‐14)。
 また,大学側から企業側に対し,「倫理憲章」の趣旨に沿った採用活動を別途要請し,企業側では,会員企業の賛同を得て,秩序ある就職・採用活動の実現に向けた「倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」を公表しました。

図表2‐3‐14 「申合せ」及び「倫理憲章」

図表2‐3‐14 「申合せ」及び「倫理憲章」

(2)学生の就職支援と就業力向上

 学生の厳しい雇用情勢を受け,文部科学省では,就職相談員などの配置や企業の求人に関する情報検索システムなど,大学などにおける就職支援体制の強化を図る取組に対して支援しています。
 さらに,政府全体としては,平成21年10月の「緊急雇用対策」に基づき,平成21年12月には,社団法人日本経済団体連合会などの経済団体・業界団体などに対して,文部科学,厚生労働,経済産業の3大臣より,新規学校卒業者の採用拡大に関する要請を行うなど,新卒者支援チーム関係府省が連携しつつ,大学等卒業予定者の支援に取り組んでいます。
 また,学生の資質能力に対する社会からの要請や,学生の多様化に伴う卒業後の職業生活などへの移行支援の必要性が高まっていることから,大学などが教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に関する指導などに取り組む体制を整えることについて,平成22年2月に「大学設置基準」が改正され,平成23年月から全ての大学で取り組まれることになります。これを踏まえ,文部科学省では,各大学が教育課程内外にわたり就業力の育成などを目指す取組などを総合的に支援することとしています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --