ここからサイトの主なメニューです

第2章 子どもたちの教育の一層の充実のために

Topic 公立高校の授業料無償化及び高等学校等就学支援金の創設

 高等学校等への進学率は約98%に達し,国民的な教育機関となっており,その教育の効果は広く社会に還元されるものであるため,その教育費については社会全体で負担していく必要があります。また,高等学校等については,家庭の経済状況にかかわらず,すべての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう,家庭の経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっています。さらに,多くの国で高等学校教育段階の教育を無償としており,国際人権A規約*1にも中等教育における「無償教育の漸進的な導入」が規定されるなど,高校無償化は世界的な常識となってきています。
 このようなことから,本制度は,保護者の教育費負担の軽減を図るため,公立高等学校については授業料を不徴収とするとともに,私立高校等については新たな支援制度を導入するものです。なお,本制度に所得制限や年齢制限はありません。
 本制度の対象となる学校は,国公私立の高等学校,中等教育学校の後期課程,特別支援学校の高等部,高等専門学校の1年生から3年生,専修学校・各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として文部科学省令で定めるものです。
 このうち,公立の中等教育学校と特別支援学校を含む公立高等学校については,授業料の無償化を確実かつ事務負担の少ない方法によって達成するために,授業料を不徴収としています。
 ただ,本制度では,例えば,既に高等学校等を卒業したことがある場合や,修業年限を超えて在学している場合などについては,学校設置者の判断により,授業料を徴収される場合もあります。
 また,授業料についても,本制度の対象とするのは,正規の生徒の授業料のみであり,科目履修生・聴講生は対象とはなりません。入学金,教科書代や修学旅行費など,授業料以外の学費も対象とはなりません。
 公立高等学校以外の高等学校の生徒(私立高等学校等の生徒)については,「高等学校等就学支援金」として授業料の一定額(年額11万8,800円)を助成します。また低所得世帯の生徒については,就学支援金の支給額を増額します。具体的には,市町村民税所得割が非課税世帯の生徒には2倍,市町村民税所得割が1万8,900円未満の世帯の生徒には1.5倍の額を上限として助成します。これらの就学支援金の増額に関しては,必要な手続きとして,申請書の提出があり,さらに保護者の所得を確認できる書類の提出が必要となります。
 これらの施策を実施するために要する経費を平成22年度予算において,3,933億円計上しており,また,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」が22年3月31日に成立しました。22年の4月から本制度が開始されています。
 対象となる高校生に対しては,本制度の意義について周知する予定であり,自らの学びが社会に支えられていることの自覚を醸成し,国家・社会の形成者としての成長を目指して,学習意欲を維持向上する効果が期待されます。


※1 国際人権A規約
 A規約(経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約)とは,人権に関する規約の一つ。世界人権宣言の内容を基礎として,
 B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)とともに条約化,昭和46年(1971年)に国連総会で採択され,昭和51年(1976年)に発効した。我が国は昭和54年(1979年)に批准。締約国は160か国(平成22(2010)年3月現在)。
条文〔第13条2(b)〕
 2 この規約の締約国は,1の権利の完全な実現を達成するため,次のことを認める。
 (b)種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,一般的に利用可能であり,かつ,すべての者に対して機会が与えられるものとすること。

第2章 総論

 教育は子どもたち一人一人の人格の完成を目指すものであり,子どもたちが将来に渡って幸福な生活を営んでいく上で不可欠なものです。また,教育には将来この国や社会を担っていく子どもたちを育てていくという使命があり,このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。また,国際競争が激化するなど,社会が急速に変化していく中にあっては,子どもたちへの教育の重要性はますます高まっています。
 このような子どもたちへの教育を一層充実していくために,文部科学省では様々な政策を実施しています。
 まず,子どもたちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために,幼稚園から高等学校までの教育課程の大綱的基準として学習指導要領等を定めています(参照:第1節)。知・徳・体のバランスを重視した「生きる力」をはぐくむため,平成20年3月に幼稚園教育要領と小学校,中学校の学習指導要領を,平成21年3月に高等学校と特別支援学校の学習指導要領などを改訂したところであり,小学校は平成23年度から,中学校は平成24年度からの全面実施に向けて,現在,算数・数学,理科などで先行実施するとともに,指導体制や教材などの条件整備を行うなど,新しい学習指導要領の円滑な実施に向けた準備を進めています。
 また,次代を担う科学技術系人材を育成するため,理数好きな子どもの裾野の拡大や子どもの才能を見出し伸ばす施策を充実するなど科学技術・理数教育充実のための施策を総合的に推進する(参照:第2節)とともに,平成23年度から全国の小学校で外国語活動が導入されることを受けた条件整備をはじめ,外国語教育の充実に取り組んでいます(参照:第3節)。
 さらに,学校における教科の主たる教材として,児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たす教科書の質・量の充実を図ることは不可欠であり,新しい学習指導要領に対応できるよう,教科書の検定を行っているところです(参照:第4節)。
 一方,学校におけるあらゆる活動の中で,子どもが社会的な資質や能力,態度などを修得し,発達するように指導・援助を行っていくことも学校教育の役割です。近年,学校における暴力行為やいじめ,または不登校の問題などが生じていますが,これらの問題に適切に対処し,子どもたちにとって学校生活が有意義かつ充実したものとなるよう,文部科学省では,各学校現場における取組の参考となりうる事例集等の作成,また,教育相談体制の充実などに努めています(参照:第5節)。
 近年,若者の勤労観・職業観の希薄化や高い早期離職率,フリーター・ニートの存在が社会問題となっている中,子どもたちが発達段階に応じた勤労観・職業観を身に付け,明確な目的意識を持って人生を切り開くことができるよう,学校教育におけるキャリア教育・職業教育が重要となっています。
 このため,今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について平成20年12月に中央教育審議会に諮問し検討を進めているところであり,その結果も踏まえ,キャリア教育の充実を図っていくこととしています(参照:第7節)。
 また,学校は,子どもたちの健やかな成長と自己実現を目指して学習活動を行うところであるため,安全で安心な環境を整えることは重要と考えます。このため,文部科学省では,学校における食育の推進,心と体の健康問題への対応,登下校時を含めた学校における子どもの安全確保に向けた施策に取り組んでいるところです(参照:第8節)。
 このほか,生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期である幼児期の教育の充実(参照:第9節)や,障害のある子どもについて,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うために一人一人の障害の状態などに応じて行う特別支援教育の充実(参照:第10節),更に,現在進学率が約98%に達し,国民的な教育機関となった高等学校については,その進学率の上昇に伴い,生徒の能力・適性,興味・関心,進路などが多様化していることから,生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育の充実に努めているところです(参照:第11節)。
 これらの学校における教育活動の成否は,何にもまして現場の教員の資質,能力や熱意に負うところが極めて大きく,教員の資質能力の向上は子どもたちの教育の充実を図る上で大変重要な政策課題です。教員の資質能力の向上は,大学などにおける教員の養成,各都道府県教育委員会などによる採用,または採用されてからの研修などの各段階において様々な施策が講じられています(参照:第12節1)。また,現在,さらなる質の高い教育の実現を目指し,教員の資質能力の総合的な向上方策について検討しているところです。

第2章 総論

 そして,学校の教育力の向上のためには,教員の資質能力の向上と並んで,教員の数の充実も,重要な課題です。わが国は一学級当たりの児童生徒数や教員一人当たりの児童生徒数が国際的に見ると多くなっており,教員の数の充実についても本格的な検討を開始しています(参照:第12節2)。
 全国的に優れた教員を必要数確保し,教育水準の維持向上を図るためには,それを支える教育財政制度をどのように構築するかということも重要な政策課題です。憲法の規定により,我が国においては義務教育は無償とされているところですが,この財源を保障するため,義務教育費の大半を占める公立の義務教育諸学校の教職員給与費について,国と都道府県の負担によりその全額を保障する義務教育費国庫負担制度が設けられています(参照:第12節2)。
 学校教育環境の改善や教育の質の向上は,学校だけの取組で達成されるものではなく,保護者や地域住民と学校の信頼関係を深め,保護者や地域住民が,学校と共に地域の教育に責任を負うとの認識の下,学校運営に積極的に協力していくことが重要です。このため,学校が,地域や子どもたちの実情に応じて主体的に創意工夫のある教育活動を展開し,自主的・自律的な学校運営ができるよう教育課程,予算などについての学校の裁量を拡大するとともに,コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の活用などを通じ,保護者や地域住民等から理解と参画を得て,学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを促進することとしています(参照:第13節)。
 以上のように,子どもたちの教育をめぐる政策課題は数多くあります。第2章では,このような子どもたちの教育の一層の充実を図っていくための取組を詳しく紹介します。

第1節 新学習指導要領が目指す教育の実現

 学習指導要領とは,全国的に一定の教育水準を確保する観点から,学校が編成する教育課程の大綱的基準として,国が学校教育法に基づいて定めるものです。平成20年3月に改訂した幼稚園教育要領,小学校学習指導要領,中学校学習指導要領,平成21年3月に改訂した高等学校学習指導要領,特別支援学校学習指導要領では,
 ○基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力(「確かな学力」)
 ○自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心などの「豊かな人間性」
 ○たくましく生きるための健康や体力(「健やかな体」)のバランスを重視した「生きる力」をはぐくむことを目指しています。

1 確かな学力をはぐくむ

 学校教育法や新学習指導要領には,1.基礎的・基本的な知識・技能,2.知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力,3.学習に取り組む意欲という「学力」の3つの重要な要素が示されています。これら3つの要素が有機的に結びついた「確かな学力」をはぐくむため,文部科学省としては,全国学力・学習状況調査などを通じて子どもたちの学力・学習状況を適切に把握するとともに,新学習指導要領の円滑な実施のために必要な条件整備を進めます。

(1)我が国の子どもたちの学力・学習状況

1.全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では,国際学力調査の結果において学力や学習意欲の低下など,学校教育の現状や課題について十分に把握する必要性が増すとともに,義務教育の質を保証する仕組みの構築の要請が高まっていることなどを背景に,全国的に児童生徒の学力・学習状況を把握する「全国学力・学習状況調査(「全国調査」)を平成19年度から実施しています。3回目となる21年度調査は21年4月21日に実施し,同年8月27日に調査結果を各教育委員会,学校などに提供するとともに,公表しました。
 全国調査は,3年間の悉皆調査の結果,1.知識や技能を活用する力は全般的に課題が見られた,2.大都市,中核市,町村,へき地等ごとの状況については,大きな差は見られない,3.「数学・算数が好き」,「国語がよくわかる」など,関心・意欲・態度については,多くの点について改善傾向が見られる,4.習熟度別少人数指導の効果や個に応じた指導の必要性が明確になった,などの事項が明らかになりました。平成22年度は,これまでの3年間の実績を踏まえ,悉皆調査との一定の継続性を保ちつつ,全国の学力等の状況の変化や学力向上の取組の成果を,抽出調査により把握します。学校単位で抽出することとし,抽出率については,都道府県別の信頼性のあるデータが得られるよう約30%に設定しています(95%の確率で,各都道府県の平均正答率が誤差1%以内となる精度。都道府県毎に抽出率は異なる。小学校約25%,中学校約44%,小中加重平均約32%)。また,抽出調査対象外となっても学校設置者が希望すれば調査を利用できることとしています。

2.平成22年度全国学力・学習状況調査の概要

 平成22年度の調査方法については,平成21年12月28日に「平成22年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」を決定するとともに,都道府県等に通知し,各市町村・学校等に周知を行いました。その概要は以下のとおりです(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/1288480.htm)。

(ア)調査の目的

 義務教育の機会均等と水準向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,改善を図るとともに,そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること,また,学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善などに役立てること

(イ)調査の対象学年,調査の内容

 国,公,私立学校の小学校第6学年,中学校第3学年の児童生徒を対象として,国語と算数・数学について,主として「知識」に関する問題,主として「活用」に関する問題を出題する教科に関する調査と,生活習慣や学習環境に関する質問紙調査を児童生徒と学校に対して行うこと

(ウ)調査の方式

(1)文部科学省が調査対象として抽出した学校における対象学年の全児童生徒を対象とした抽出調査

(2)抽出調査対象外の学校では,学校設置者の希望により,調査を利用することができること,国が国費で抽出調査と同一の問題の提供(印刷,学校への配送まで)を行い,問題提供後の採点等は,学校設置者の責任と費用負担の下で行い,希望利用の結果は,抽出調査の集計には用いないこと

(エ)調査日時を平成22年4月20日(火曜日)とすること

(オ)調査の実施体制

 文部科学省が,学校設置者である都道府県教育委員会,市町村教育委員会,学校法人,国立大学法人等の協力を得て実施

(カ)調査結果の取扱い,留意事項

(1)文部科学省は,国全体の状況,国・公・私立学校別の状況及び都道府県ごとの域内の公立学校全体の状況に関して結果を示すこと(各市町村の抽出対象校の集計や学校ごとの結果は集計しない)

(2)文部科学省は,教育委員会に,設置校の各児童生徒に関する調査結果等を提供し,学校に各児童生徒の調査結果と個人票を提供すること,また,学校は当該児童生徒に個人票を提供すること

(3)教育委員会・学校が,抽出調査の結果を独自に集計する場合,本調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること,学校における教育活動の一側面に過ぎないことなどを踏まえるとともに,説明責任,情報公開条例,序列化や過度の競争につながらないようにすること,個人情報保護などの点に十分配慮すること

(4)各教育委員会,学校等は,教育及び教育施策の改善,各児童生徒の全般的な学習状況の改善などに取り組むにあたり,抽出調査の結果を活用すること,また,各教育委員会は,学校における取組などに対して必要な支援を行うこと

(5)希望利用による調査の結果の示し方,公表,提供,取扱いの配慮事項,活用は,学校設置者が判断すること,特に,(3)に記載の点は希望利用による調査でも十分配慮すること

(6)希望利用による調査を行う場合は調査の実施前までにあらかじめ作業方法などを定め,必要な措置を行うこと

(7)文部科学省は,抽出調査の実施後,速やかに,調査問題,正答例,問題趣旨,解答類型を公開すること

3.平成21年度調査の結果

 小学校第6学年,中学校第3学年の全児童生徒を対象とし,教科に関する調査は,国語,算数・数学について,主として「知識」に関する問題と,主として「活用」に関する問題を出題するとともに,生活習慣・学習環境などに関する質問紙調査を児童生徒と学校に実施し,約3万3千校の約235万人の児童生徒が参加しました。

(ア)教科に関する調査の結果

(1)「知識」に関する問題の結果
 平均正答率が概ね70%台(小学校:国語・算数,中学校:国語)ですが,一部課題がありました(中学校:数学は60%台)。

(2)「活用」に関する問題の結果
 平均正答率が概ね50%台(小学校:国語・算数,中学校:数学)であり,全般的に課題がありました(中学校:国語は70%台)。

図表2-2-1 平成21年度全国学力・学習状況調査の平均正答数・正答率
小学校調査 中学校調査
国語 数学 国語 数学
A B A B A B A B
平均正答数 12.6問/18問 5.1問/10問 14.2問/18問 7.7問/14問 25.6問/33問 8.3問/11問 20.9問/33問 8.6問/15問
平均正答率 70.1% 50.7% 78.8% 55.0% 77.4% 75.0% 63.4% 57.6%

(出典)文部科学省・国立教育政策研究所「平成21年度全国学力・学習状況調査」

(イ)地域の規模・都道府県などの状況

 大都市,町村,へき地など地域の規模ごとの状況については,平成20年度と同様,大きな差は見られません。また,都道府県(公立)の状況については,20年度と同様,ばらつきが小さいですが,一部の都道府県に差が見られました(ほとんどが平均正答率の±5%の範囲内)。さらに,公立学校間の状況については,20年度と同様,全体としてはそれほど大きなばらつきは見られず,平均正答数が全国平均を大きく下回る学校はごく少数でした。

(ウ)質問紙調査の結果

(1)児童生徒質問紙の結果

 関心・意欲・態度については,算数・数学の勉強が好きな小中学生の割合は平成13・15年度に比べると増加,朝食を食べている小中学生の割合は毎年増加傾向,携帯電話を持たない小中学生の割合は前年度よりやや増加するなど,多くの点について改善傾向が見られました。

(2)学校質問紙調査の結果

 全国学力・学習状況調査の分析・活用,国語・算数・数学の宿題をよく与える,PTAや地域の人々の参加など,学力向上のための取組が増加しています。また,学力低位層の割合が減少した学校では,学習規律の維持の徹底や,国語の宿題を与えている学校の割合が増加しています。さらに,自分で調べたことや考えを分かりやすく文章で書かせる指導,書く習慣を身に付ける指導(国語),実生活との関連を図った指導(算数・数学)を重視している学校,PTAや地域の人々が参加している割合が高い学校などの方が平均正答率が高い傾向が見られました。(平成21年度調査の結果の詳細については参照:http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm)。

(2)学校質問紙調査の結果

4.調査結果の活用

 調査の目的・ねらいをより良く達成するためには,各教育委員会,学校が調査結果を活用し,子ども一人一人の学力向上への取組につなげるなど,継続的なPDCAサイクルの確立を図っていくことが重要です。文部科学省としては,結果を提供・公表した平成21年8月27日に調査結果の活用を進めるための初等中等教育局長通知を発出しました。
 本調査においては,文部科学省,教育委員会,学校が,調査結果を把握・分析し,教育施策・指導方法の改善につながるよう活用していくことが必要不可欠です。文部科学省としても,引き続き,調査結果の分析・検証を積極的に推進し,全国的な教育及び教育施策の改善に取り組むとともに,教育委員会などの取組への支援の一層の充実や調査結果の分析・検証の強化などに努めています。国立教育政策研究所において,平成21年度の調査結果を踏まえて授業を改善する際の参考となるよう,「全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた授業アイディア例(小学校編,中学校編)」を作成しました(参照:http://www.nier.go.jp/09jugyourei/09jugyourei.htm)。また,過去2回の学力調査の結果から,正答率が高いなどの特徴ある結果を示した学校を対象として,それらの学校が指導方法や授業に係る校内研修などで,結果に寄与したと考えている取組を「特徴ある結果を示した学校における取組事例集」としてまとめ(参照:http://www.nier.go.jp/08zireishuu/0908zireishuu.htm),アイディア例と共に各教育委員会・学校へ配布したところです。これらの資料を,各学校が今後の教育指導や児童生徒の学習状況の改善などの一助としていただきたいと考えています。

5.調査結果の追加分析

 文部科学省では,「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議」を中心に,教育学,心理学,統計学などの専門家の方々のご協力をいただきながら,全国学力・学習状況調査の結果データを用いた様々な観点からの追加分析を行い,その成果を発信しています。
 平成20年度の調査結果を用いた追加分析については,平成20年12月と平成21年3月に公表したところですが,平成21年8月には,(1)児童生徒の家庭背景等を考慮しながら,効果的な指導方法等を明らかにする分析手法,(2)学校周辺情報を補完データとした分析や教育の情報化実態等に関する調査と全国学力・学習状況調査の結合によるICTに関する分析を更に公表しました(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/08/1285548.htm)。

6.国際的な学力調査

 経済協力開発機構(OECD)では,義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生が相当)が持っている知識や技能を,実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価するため,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA調査)」を実施しています(参照:第1部特集1第2章2(1))。調査では,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーについて調査しており,2009年の調査では,2000年調査と同様に,読解力を中心に,数学的リテラシー,科学的リテラシーについて調査が実施されており,2010年12月にその結果が公表される予定です。
 国際教育到達度評価学会(IEA)では,小学校4年生,中学校2年生を対象とし,初等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し,学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を実施しています。最近では平成20年12月に2007年の調査結果が公表されたところです(参照:第1部特集1第2章2(1))。
 平成20,21年に改訂された新しい小学校・中学校・高等学校学習指導要領では,基礎的・基本的な知識・技能の定着や習得した知識・技能を活用する力の育成を重視し,算数・数学,理科などの授業時数の増加を図るなど,これまでの国際学力調査の結果も踏まえた理数教育などの充実を図っており,文部科学省としては,これらを着実かつ円滑に実施することにより,更なる学力の向上につなげていくこととしています。

7.教育課程の実施状況を把握するための取組

 学習指導要領に基づく教育課程の状況を不断に評価・検証し,教育課程の基準の改善などに反映させる観点から,文部科学省において各学校の教育課程の編成の状況を把握しているほか,国立教育政策研究所教育課程研究センターなどにおいて,(ア)教育課程実施状況調査,(イ)研究指定校による調査,(ウ)特定の課題に関する調査など,子どもたちの学力の状況を総合的に把握する取組を行っています。
 このうち,特定の課題に関する調査については,平成21年度に新たに図画工作・美術の調査を実施し,指導の改善に幅広く役立てています。

(2)新学習指導要領の基本的な考え方

 「確かな学力」をはぐくむためには,「ゆとり」か「詰め込み」かではなく,基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着とこれらを活用する力の育成をいわば車の両輪として伸ばしていくことが必要です。このため,新学習指導要領では,授業時数を増加し,教育内容を改善します。

1.授業時数の増加

 小学校では,週当たりの授業時数が低学年で2コマ,中・高学年で1コマ増加します。特に,国語,社会,算数,理科,体育の授業時数は,6年間で約1割増加します。また,中学校では,週当たりの授業時数が1コマ増加します。特に,国語,社会,数学,理科,外国語,保健体育の授業時数は,3年間で約1割増加します。これらの授業時数の増加は,つまずきやすい内容の確実な習得を図るための繰り返し学習や観察・実験やレポート作成,論述などの学習活動の充実が目的です。
 なお,高等学校の卒業までに修得させる単位数は,引き続き74単位以上としています。

2.教育内容の主な改善事項

(ア)言語の力をはぐくむ教育の充実

 言語は,論理や思考などの知的活動,コミュニケーション,感性・情緒の基盤です。このため,国語をはじめ各教科などで記録,説明,批評,論述,討論などの言語活動を充実しました。例えば,「国語」では,経験したことを記録・報告する活動や,相手を説得するために意見を述べ合う活動,知識や経験を活用して論述する活動を行うとともに,「算数」・「数学」でも,言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて考えたり,説明したり,表現したりする力の育成を重視しています。

(イ)理数教育の充実(参照:本章第2節)

(ウ)伝統や文化に関する教育の充実

 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国や郷土の伝統や文化を受け止め,そのよさを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため,各教科などで我が国の伝統や文化についての理解を深める学習を充実しました。例えば,「国語」では,神話・伝承や古文・漢文に関する学習(小学校)を充実するとともに,「美術」では我が国の美術文化に関する学習(中学校)を,「音楽」では我が国の伝統的な歌唱や和楽器に関する学習(中学校)を充実しています。

(エ)体験活動の充実(参照:本章第1節2(2))

(オ)道徳教育の充実(参照:本章第1節2(1))

(カ)外国語教育の充実(参照:本章第3節)

3.実施スケジュール

 小学校では平成23年度から,中学校では平成24年度から新学習指導要領が全面実施されます(平成21年度から算数・数学,理科などで先行実施されています。)。高等学校では,平成25年度入学生から年次進行で実施されます(小・中学校における学習の成果を生かすため,数学,理科は平成24年度入学生から先行実施されます。)。特別支援学校も小・中・高等学校に準じて実施されます。

図表2-2-2 新学習指導要領実施スケジュール(概要)

図表2-2-2 新学習指導要領実施スケジュール(概要)

4.学習評価

 平成14年度以降,小・中・高等学校における学習評価は,学級などにおける順位ではなく,ある課題ができたかできないかなど,一人一人の子どもの達成度に基づく評価(目標に準拠した評価)を中心として行われています。
 各学校は,保護者などに対し,どの程度達成できていればどのような成績とするのかなどを事前に説明するとともに,通信簿などを通じ,子どもたちの成績についてより丁寧に説明することが求められており,実際にそのような取組に努めています。また,日常の子どもたちの学習状況をより丁寧にとらえ,授業の改善や個別指導の充実などにも努めています。文部科学省では,中央教育審議会がとりまとめた「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」などを踏まえ,今後,学習評価に関する事例の提示などを通じ,各学校における学習評価が一層円滑に進むよう取り図らっていきます。

(3)新学習指導要領の円滑な実施に向けた支援策

 新学習指導要領を円滑に実施するためには,指導体制や教材など教育条件の整備が必要です。文部科学省では,平成22年度予算において,

  • 7年ぶりに純増で平成21年度の5倍強(800人→4,200人)となる教職員定数の改善,
  • 算数・数学,理科の先行実施に伴い新たに必要となる補助教材の作成・配布,
  • 武道場の整備への支援

などを行うことにしています。

 また,教材に関しては,理科の実験用機器などの購入経費を補助するほか,「新学習指導要領の円滑な実施のための教材整備緊急3ヵ年計画」により,新たに導入される外国語活動(小学校)や武道の必修化(中学校),和楽器の指導の充実など各教科等の教育内容の改善に対応した教材の整備促進に向け,平成21年度から23年度に総額で約2,459億円の地方財政措置を講じることとしています。

(4)学習指導要領によらない教育課程編成を認める制度

 文部科学省では,今後の学習指導要領の改訂に役立てるための実証的な資料を得るため,学習指導要領によらない教育課程の編成・実施を認め,新しい教育課程や指導方法について実践研究を行う「研究開発学校」制度(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenkyu/)を設けています。これまでも,例えば平成元年(小学校)の生活科や,10年(小・中学校)及び11年(高等学校)の「総合的な学習の時間」,20年(小学校)の「外国語活動」の導入に向けた検討をする際に,実証的な資料として活用されました。
 また,学校が,地域の実態に照らした,より効果的な教育を実施するため,学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める「教育課程特例校」制度(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokureikou/index.htm)を設けています。具体的には,東京都品川区の「市民科」,世田谷区の「日本語科」など,学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。

2 豊かな心をはぐくむ

(1)道徳教育の充実

 学校教育においては,人間として調和のとれた育成を目指して,子どもたちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 幼稚園では,各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では,道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として,各教科,道徳,外国語活動,総合的な学習の時間,特別活動それぞれの特質に応じて適切な指導を行い,学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では,人間としての在り方生き方に関する教育を,学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図ることとしています。
 我が国の児童生徒については,生命尊重の精神や自尊感情の乏しさ,基本的な生活習慣の未確立,規範意識の低下,人間関係を形成する力の低下など,心の活力が弱っているとの指摘がなされています。このため,生命を尊ぶとともに,いじめを許さないといった規範意識などの確立の根底となる道徳教育の一層の充実が求められています。
 「改正教育基本法」では,教育の目標として,新たに「豊かな情操と道徳心」を培うことなどが盛り込まれ,さらに,「改正学校教育法」では義務教育の目標として「規範意識」や「公共の精神」,「生命及び自然を尊重する精神」などを育成することが新たに盛り込まれるなど,道徳教育の充実を図っています。
 教育基本法などの改正を受け,平成20年3月に改訂した小・中学校の新学習指導要領では,次のような改善を図っています。

  1. 小学校では,あいさつなどの基本的な生活習慣,人間としてしてはならないことをしない,法やきまりの意義など,中学校では,主体的に社会の形成に参画するなど,児童生徒の発達の段階を踏まえた指導の重点化を図ること
  2. 先人の伝記,自然,伝統と文化,スポーツなどを題材とした児童生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用の推進
  3. 校長の方針の下に,道徳教育の推進を主に担当する教師(道徳教育推進教師)を中心とした指導体制の充実

 また,平成21年3月に改訂した高等学校の新学習指導要領では,全教師が協力して道徳教育を展開するため,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の全体計画の作成を義務づけるなど,道徳教育の充実を図ったところです。
 これらの新学習指導要領は,小学校は平成23年度から,中学校は24年度から,高等学校は25年度入学生から順次実施されることになりますが,道徳教育については,小中学校は21年度から,高等学校は22年度から先行して実施されます。
 文部科学省においては,新学習指導要領の周知・徹底を図るとともに,学校・地域の実情などに応じた多様な道徳教育を支援するため,全国的な事例収集と情報提供,特色ある道徳教育や教材活用など自治体による多様な事業への支援を行うことにより,引き続き道徳教育の充実に努めていきます。

(2)体験活動の推進

 近年,都市化や少子化,地域社会における人間関係の希薄化などが進む中で,児童生徒の豊かな人間性や社会性などをはぐくむためには,成長段階に応じて,自然体験活動をはじめ,様々な体験活動を行うことが大切です。
 平成18年12月に改正された「教育基本法」では,公共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画する態度(第2条第3号),生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度(同条第4号)が教育の目標として規定されました。さらに,19年6月には,学校教育法が改正され,同様の趣旨が義務教育の目標として規定され,学校教育において様々な体験活動の充実を図っていくことが必要とされています。
 文部科学省では,「豊かな体験活動推進事業」において,自然の中での宿泊体験活動などの体験活動の推進を図っています。平成20年度からは,農林水産省・総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し,小学生の農山漁村での民泊(※2)を取り入れた自然体験活動などを推進しています。これらの取組の成果は全国を6ブロックに分けた交流会の実施や,事例集の作成・配布を通じて普及を図るとともに,21年12月には,「農山漁村での長期宿泊体験による教育効果について」(報告)を取りまとめました。
 これらの取組結果や「教育基本法」などの趣旨を十分踏まえ,引き続き学校における体験活動の推進に努めていきます。


※2 民泊
 農山漁村へのホームステイ,もしくはそれに近いきめ細やかな対応が可能な農林漁家民宿でのホームステイ形式の宿泊。

(3)国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために,学習指導要領に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され,国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ,学校教育における国旗・国歌に対する正しい認識が更に進められました。
 新学習指導要領では,引き続き,小・中学校社会において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ,これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしており,また,小・中・高等学校特別活動において「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。さらに,小学校音楽において,国歌の指導に関する充実を図っています。
 文部科学省としては,引き続きすべての学校において,学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導しています。

3 健やかな体をはぐくむ

 これからの社会を生きる児童生徒に,健やかな心身の育成を図ることは極めて重要です。体力は,人間の活動の源であり,健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わっており,生きる力を支える上で重要な要素です。
 このため,教科としての体育科・保健体育科において,基礎的な身体能力の育成を図るとともに,運動部活動などを相互に連携させながら,学校教育全体として効果的に取り組んでいます。(学校体育・運動部活動などについては,第2部第6章第5節「学校体育の充実」参照)

第2節 科学技術・理数教育の推進

 「知識基盤社会」の到来とともに,科学技術に関する世界的な競争がこれまで以上に激化しており,我が国においても,次代を担う科学技術系人材の育成が不可欠です。
 それと同時に,科学技術の成果が社会の隅々にまで活用されている今日,国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上が極めて重要です。
 この2つの観点から,科学技術の土台となる理数教育の充実を図ることは喫緊の課題です。
 また,平成18年に実施のOECDのPISA調査の結果からは,科学的リテラシーについては,国際的に見て上位にあり,平成15年の同調査との同一問題での比較では,変化がなかったものの,「科学的証拠を用いること」に比べ,「科学的な疑問を認識すること」や「現象を科学的に説明すること」に課題があること,論述式問題での無答率が高いこと,科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が低いことなどの課題が改めて明らかになりました。
 このような課題も踏まえ,平成20年3月に改訂した小学校学習指導要領,中学校学習指導要領,21年3月に改  訂した高等学校学習指導要領では,観察・実験やレポートの作成,論述,自然体験などに必要な時間を十分確保するため,理科や算数・数学の授業時数を増やしました。また,国際的な通用性や小・中・高等学校の学習の円滑な接続などを図る観点から,例えば小学校算数では台形の面積(第5学年)や反比例(第6学年),小学校理科では,物と重さ(第3学年)や骨と筋肉の働き(第4学年),食物連鎖(第6学年),中学校数学では二次方程式の解の公式(第3学年),中学校理科ではイオンや遺伝の規則性(第3学年)などを指導することにしました。
 これらの新学習指導要領は,小学校では平成23年度から,中学校では平成24年度から全面実施されますが,理科や算数・数学については,平成21年度から一部を前倒しして先行実施しています。また,高等学校については,小・中学校における学習の成果を生かすため,数学,理科は平成24年度入学生から順次実施されます。
 また,「理科教育振興法」に基づき,公・私立の小・中・高等学校等における理科,算数・数学教育に必要な実験用機器などの設備の計画的な整備を進めています。
 このほか,将来の科学技術関係人材を育成するため,以下の施策をはじめとする科学技術・理数教育充実のための取組を総合的に推進しています。

1 理数好きな子どもの裾野の拡大

(1)外部人材を活用した体験的な学習機会の充実

 科学技術振興機構では,理科授業における観察・実験活動の充実と,教員の資質向上を図るため,研究者・技術者や大学(院)生,退職教員などの外部人材を「理科支援員」や「特別講師」として小学校に配置する取組を支援しています。平成21年度は,全国65都道府県・指定都市において本事業を実施しています。また,子どもの科学技術,理科・数学に関する興味・関心と知的探求心を一層高めるため,学校や教育委員会などと大学・科学館などが連携した体験的・問題解決的な取組を支援しています。
 具体的には,第一線の研究者・技術者を講師とする観察,実験などの学習活動(1,037件)や,最先端の研究現場における合宿型の学習活動(サイエンスキャンプ)(79件)などが行われています。

(2)理数教育を担う教員の指導力向上

 科学技術振興機構は,科学技術や理科,数学に関する観察や実験などの体験的・問題解決的な活動に係る教員の指導力を向上させるため,教育委員会と大学・科学館などの連携により実施される研修を支援しています(平成21年度は計282件)。また,大学・大学院が教育委員会と連携して,理数に優れた指導力を有し各学校や地域の理数指導において中核的な役割を果たす小・中学校教員を養成するための取組を支援する事業を平成21年度から新たに実施しています(平成21年度は計7件)。

(3)デジタル教材の開発

 科学技術振興機構では,児童生徒の知的好奇心,探求心に応じた学習の機会を提供するため,理科教育用デジタル教材等を開発し,インターネットなどを通じて全国の学校などへの提供を行っています(平成21年12月末時点の登録教員数48,432名)。

2 子どもの才能を見出しのばす取組の充実

(1)先進的な理数教育を実施するスーパーサイエンスハイスクールの充実

 文部科学省では,平成14年度から,先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し,科学技術振興機構を通じて,観察・実験などを通じた体験的・問題解決的な学習や課題研究の推進,理数に重点を置いたカリキュラムの実施などを支援しています。平成21年度においては,全国106校の高等学校等が特色ある取組を進めています。

(2)国際科学技術コンテストの支援

 科学技術振興機構では,数学,物理,化学,生物学,情報などの国際科学技術コンテストの国内大会の開催や,国際大会への日本代表選手の派遣,国際大会の日本開催に対する支援を行っています(平成21年度に国際生物学オリンピックがつくば市で開催された。また,平成22年度には国際化学オリンピックが東京で開催予定)。平成21年度は,数学,物理,化学,生物学,情報の5分野の国際科学オリンピックに参加した日本代表選手全員がメダルを受賞するという過去最高の成績でした。

(3)大学等による発展的な学習環境等の提供

 科学技術振興機構では,理数に関して卓越した意欲・能力を有する児童生徒に対して,学校外で高度で発展的な学習環境を年間通して継続的に提供する大学等の取組を支援することにより,質の高い科学者の卵の育成を図る事業を実施しています。平成21年度は計14大学において,講義や実験などを通じ,児童生徒の選抜・育成が行われています。
 さらに,文部科学省では,将来有為な科学技術関係人材を育成するため理系学部を置く大学において理数分野に関して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力をさらに伸ばすことに重点を置いた取組を行う事業を実施しています。平成21年度は,計20大学において,理数分野に優れた学生を選抜するためのAO入試(※3)の検討や本プロジェクト対象学生の早期研究室配属などが行われています。


※3 AO入試
 詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって,入学志願者の能力・適正や学修に対する意欲,目的意識等を総合的に判定する入試方法。

第3節 外国語教育の充実

1 確かな学力をはぐくむ小学校外国語活動の導入及びその円滑な実施に向けた条件整備

 平成23年度から全国の小学校で新たに導入される外国語活動に関して,教育の機会均等や中学校への円滑な接続などの観点から全国で一定の教育水準の確保を図るため,国が作成する共通教材である「英語ノート」,付属の音声教材(CD),「英語ノート」教師用指導資料をそれぞれ印刷・複製・配布しました。また,平成21年度には423校の小学校を指定し,これらの教材を用いた効果的な指導と評価の在り方などに関する実践研究を行いました。

2 英語教育改善のための調査研究

 小学校段階の英語教育の早期必修化や授業時数の増加など,英語教育を抜本的に強化するため,英語教育に重点的に取り組む小・中・高等学校などを「英語教育改善のための調査研究学校」に指定しました。指定を受けた学校では,英語教育改善に向けて国が設定した各学校段階における研究課題に沿った実践的な研究を行っています。平成21年度は234校において,調査研究を実施しました。

3 語学指導などを行う外国青年招致事業(JETプログラム)の推進

 JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)は,外国語教育の充実や,地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに,我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。この事業は,文部科学省,総務省,外務省,さらに財団法人自治体国際化協会の協力の下に,地方公共団体が実施しています。JETプログラム参加者の職種には,ALT(Assistant Language Teacher :外国語指導助手),CIR(Coordinator for International Relations:国際交流員),SEA(Sports Exchange Advisor:スポーツ国際交流員)の三つがあります。平成21年度の参加者は,36か国からALTが4,063人,CIRが366人,SEAが7人となっています。
 文部科学省では,この事業により招致したALTの指導力の一層の向上を図るため,ALTに対する各種の研修,指導,カウンセリングを実施しています。ALTと日本人外国語担当教員によるティーム・ティーチング(※4)は,生徒の外国語によるコミュニケーション能力の育成において大きな成果を上げています。


※4 ティーム・ティーチング
 複数の指導者による協同授業のこと。

4 英語担当教員の資質向上

 英語の授業で適切に英語を用い,生徒がコミュニケーションを行う活動を多く取り入れるような授業を展開していくためには,英語担当教員が一定の英語力及び教授力を備えていることが非常に重要です。
 このため,教員研修センターにおいて,英語担当教員の海外派遣研修を実施しています。

第4節 より良い教科書のために

 教科書は,学校における教科の主たる教材として,児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し,全国的な教育水準の維持向上を図るため,「学校教育法」により,小・中・高等学校,中等教育学校,特別支援学校においては,文部科学大臣の検定を経た教科書又は文部科学省が著作の名義を有する教科書を使用しなければならないことになっています。教科書は次のような過程を経て,児童生徒の手に渡り,使用されています(図表2-2-3,図表2-2-4)。

図表2-2-3 教科書が使用されるまで

 図表2-2-3 教科書が使用されるまで

図表2-2-4 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

図表2-2-4 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は,民間が教科書の著作・編集を行うことにより,著作者の創意工夫に期待するとともに,検定を行うことにより,客観的かつ公正で,適切な教育的配慮がなされた教科書を確保することをねらいとしているものです。
 教科書検定は,学習指導要領や教科用図書検定基準に基づき,各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会(「検定審議会」)の委員によって,専門的・学術的な審議を経て厳正に行われています。
 新しい学習指導要領が実施されることなどを踏まえ,教科書の質・量両面での充実については,平成20年12月,検定審議会から文部科学大臣に「教科書の改善について(報告)」が提出されました。同報告では,

  • 教育基本法で示す目標などを踏まえた教科書改善
  • 知識・技能の習得,活用,探究に対応するための教科書の質・量両面での格段の充実
  • 多面的・多角的な考察に資する公正・中立でバランスのとれた教科書記述
  • 教科書記述の正確性の確保
  • 児童生徒が意欲的に学習に取り組むための,教科書編集上の配慮・工夫の促進
  • 教科書検定の信頼性を一層高めるための検定手続きの改善

の6項目の教科書改善の基本的な方向性が示されました。
 同報告に基づき,文部科学省では平成21年3月には「教科用図書検定規則」と「義務教育諸学校教科用図書検定基準」を,同年9月には「高等学校教科用図書検定基準」を改正し,21年度の小学校の教科書検定から適用しています。
 また,国民の教科書に対する関心にこたえるため,検定の結果を公開しています。平成21年度は,20年度に検定を行った教科書の公開を行いました。
(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/kekka.htm

2 教科書の採択

 教科書の採択とは,地域や児童生徒の実情に応じて,学校で使用する教科書を決定することであり,公立学校では設置者である都道府県や市町村の教育委員会,国・私立学校では校長が行っています。
 公立小・中学校の教科書については,都道府県教育委員会が,市町村の意見を聞いて市・郡の単位で採択地区を設定します。複数の市町村からなる採択地区では,地区内の市町村の教育委員会が共同で,種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書の採択は,採択権者の権限と責任において,適正かつ公正に行われることが重要であり,1.教科書の内容に関する十分な調査研究,2.適切な手続きにより行われるとともに,採択の公正を確保すること,3.保護者の参画など開かれた採択の推進などが求められています。文部科学省では,各都道府県教育委員会に対して,内容を考慮した調査研究のより一層の充実,採択に関する事務をルール化するなど採択手続きの明確化,採択地区の適正規模化,静ひつな採択環境の確保など,採択のより一層の改善に努めるよう指導しています。

3 教科書の無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は,憲法第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として,昭和38年度以来実施されています。この制度は,次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり,同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは,国・公・私立の義務教育諸学校の全児童生徒であり,使用する全教科の教科書です。
 平成21年度における無償給与に関する予算額は約394億円であり,約1,074万人の児童生徒に対して,合計約1億1千万冊の教科書が給与されました。

4 拡大教科書等の普及充実

 いわゆる「拡大教科書」は,文部科学省の検定を経た教科書の文字や図形を拡大して複製したもので,弱視の児童生徒が使用する教科書です。教科書の文字などを拡大するため分量が増えて,一冊の検定済教科書が数冊の分冊になることもあります。「拡大教科書」は,これまでも特別支援学校や特別支援学級において,いわゆる「一般図書*5」として無償給与されてきました。また,平成16年度からは通常の学級に在籍する弱視の児童生徒にも無償給与されるようになり,20年度には,全国で約640名の児童生徒に,約13,000冊の「拡大教科書」が無償給与されています。この「拡大教科書」は,個人によって見え方の異なる弱視の児童生徒の一人一人のニーズに応じた様々な工夫を行うことが必要なため,その多くがボランティア団体などによって製作されており,「拡大教科書」を必要とする児童生徒に行き渡るようにすることが課題となっています。
 こうした背景から,平成20年6月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(20年9月17日施行)が制定され,「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等*6の発行の促進を図るとともに,その使用の支援について必要な措置をすることなどにより,教科用特定図書等の普及の促進等を図る」ことが明記されました。
 弱視の児童生徒が「拡大教科書」を使用できるようにすることは,教育の機会均等の観点からも重要であり,文部科学省では,必要とする児童生徒に「拡大教科書」が速やかに,かつ,確実に給与されるよう,法律の施行や有識者会議の報告を受け,「拡大教科書」の標準的な規格を定め,教科書発行者による「拡大教科書」の発行を促しています。また,「拡大教科書」などを製作するボランティア団体などを支援するため,ボランティア団体などが希望する教科書デジタルデータの提供を行っています。組を通じて,拡大教科書等を必要とする全ての児童生徒に対して普及するよう必要な措置を行っています。


※5 一般図書
 学校教育法附則第9条では,特別支援学校や特別支援学級などにおいて,文部科学省の検定済教科書,文部科学省の著作教科書以外の教科書を使用することができるとされている。
※6 教科用特定図書等
 視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため文字,図形等を拡大して検定教科用図書等を複製した図書(いわゆる「拡大教科書」),点字により検定教科用図書等を複製した図書その他障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため作成した教材であって検定教科用図書等に代えて使用し得るものとされている。

第5節 暴力行為,いじめ,不登校の解決を目指して

1 生徒指導上の諸問題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は,児童生徒にとって学校生活が有意義かつ充実したものになることを目指して行われるものです。すべての児童生徒を対象として,学校におけるあらゆる教育活動の中で,児童生徒が社会的な資質や能力,態度などを修得し,発達させるような指導・援助が行われています。
 しかし,いじめの社会問題化や少年による重大事件の続発,小・中学校における暴力行為の発生件数の増加など,児童生徒の問題行動などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では,毎年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を実施し,暴力行為の発生件数やいじめの認知件数,不登校児童生徒数などについて,各都道府県教育委員会などを通じて調査を行っており,児童生徒の問題行動などの実態把握に努めています。平成20年度の調査結果では,暴力行為の発生件数は約6万件であり,小・中学校においては過去最高の件数に上るとともに,いじめの認知件数は,約8万5千件と,前年度より減少しているものの依然として相当数に上っています。
 学校においては,日常的な指導の中で,教師と児童生徒との信頼関係を築き,すべての教育活動を通じて規範意識や社会性をはぐくむ,きめ細かな指導を行うとともに,問題行動への対応については,まず第一に未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,このような指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応をとる必要があります。児童生徒の問題行動については,学校が,問題を隠すことなく,教職員が一体となって対応し,教育委員会は家庭や地域社会,その他関係機関などの理解と協力を得て地域ぐるみで取り組める体制づくりを進めていくことが重要です。文部科学省では,「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日,初等中等教育局長通知)を発出し,こうした趣旨の徹底を図っています。
 また,小学校段階から高校段階までの組織的・体系的な生徒指導の取組を進めるために,平成21年より「生徒指導提要の作成に関する協力者会議」における検討を重ね,平成22年3月には生徒指導の概念・取組の方向性などを整理した生徒指導に関する学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を取りまとめました。今後,各教育委員会及び学校などに配布することとしています。

(2)暴力行為

 平成20年度において,全国の国・公・私立小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は,学校内で発生したものが全学校の約22.6パーセントに当たる8,739校において5万4,378件,学校外で発生したものが全学校の約7.8パーセントに当たる3,029校において5,240件となっており,18年度調査から把握の仕方について,軽微な事案も含めて計上するなど,調査内容・方法の見直しを行ったことの影響もあるものの,憂慮すべき状況であり,教育上の大きな課題となっています(図表2-2-5)。

図表2-2-5 学校内外における暴力行為発生件数の推移

図表2-2-5 学校内外における暴力行為発生件数の推移

(出典)児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査

 文部科学省では,平成19年度から「問題を抱える子ども等の自立支援事業」において,暴力行為などの未然防止,早期発見・早期対応などの児童生徒の支援を行うため,サポートチーム(※7)など関係機関とのネットワークを活用した取組などを実施しています。


※7 サポートチーム
 ここでは,問題行動などを起こす個々の児童生徒の状況に応じ,学校,教育委員会,関係機関などが連携して対応するチームを指す。

(3)いじめ

 平成20年度において,全国の国・公・私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は,8万4,648件,いじめを認知した学校数は1万6,107校で学校総数に占める割合は40.0%となっています。いじめの認知件数は,前年度よりも約1万6千件減少しているものの,依然として相当数に上っており教育上の大きな課題となっています。
 いじめは,どの子どもにも,どの学校においても起こり得るものであり,いじめの認知件数が多いか少ないかの問題以上に,問題の早期発見に努めるとともに,問題が発生した際には早期に対応することが大切です。
 文部科学省では,平成20年4月から,学校だけでは解決困難ないじめなどの問題行動などに対応するため,外部の専門家などからなるチーム設置の在り方などや,いじめの未然防止に向けて,特に小学生期における適切な人間関係の構築方法等に関する優れた教育実践などについて調査研究を行う「いじめ対策緊急支援総合事業」を実施しています。
 文部科学省としても,引き続き実態把握に努めるとともに,いじめ問題への取組を推進していきます。
 また,近年では,インターネットや携帯電話を利用した「ネット上のいじめ」という新しい形のいじめが生じていることから,文部科学省では,1.児童生徒や保護者向け啓発リーフレットなどの作成,2.学校・教員向けの「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集の作成などに取り組んでいます。
 なお,子どもの携帯電話をめぐる問題については,「学校における携帯電話等の取扱いについて」(平成21年1月30日,初等中等教育局長通知)を発出し,小中学校への携帯電話の原則持込み禁止,高等学校の校内での使用制限などの指針を示し(参照:第2部第9章第2節),学校・教育委員会の取組の充実や家庭・地域へ働きかけるよう促しています。

(4)不登校

 平成20年度において,「不登校」を理由に年度間に連続又は断続して30日以上学校を欠席した全国の国・公・私立の小中学校の児童生徒数は,12万6,805人,高等学校の生徒数は5万3,024人となっており,依然として教育上の大きな課題となっています(図表2-2-6)。
 文部科学省では,平成19年度から「問題を抱える子ども等の自立支援事業」によって,不登校などの未然防止,早期発見・早期対応など児童生徒の支援を行うため,教育委員会が設置・運営し,不登校児童生徒の指導・支援を行う教育支援センター(適応指導教室)を活用した取組などを支援するとともに,17年度からは「不登校への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業(21年度は「問題行動等への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業」に事業名を変更)」において,不登校児童生徒に多様な支援を行うため,NPO等の学校外の機関などに対して,不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラムの開発などを委託しています。

(5)高等学校中途退学

 平成20年度の国・公・私立高等学校における中途退学者数は,6万6,243人であり,また,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は約2.0パーセントとなっています(図表2-2-7)。中途退学の理由は,「学校生活・学業不適応」が39.1パーセントで最も多く,次いで「進路変更」が32.9パーセントとなっています。また,「経済的理由」は3.3パーセントとなっています。
 高等学校中途退学への対応については,各高等学校において,生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに,一層きめ細かな教育相談,ガイダンスを実施することなどが重要です。また,就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。

図表2-2-6 国・公・私立小中高等学校における不登校児童生徒の推移

図表2-2-6 国・公・私立小中高等学校における不登校児童生徒の推移

(出典)児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査

図表2-2-7 高等学校における中途退学者数の推移

図表2-2-7 高等学校における中途退学者数の推移

(出典)児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査

(6)自殺

 文部科学省の調べでは,平成20年度の国・公・私立小・中・高等学校の自殺者数は136人です。
 児童生徒の自殺については,いじめによる自殺や連鎖的な自殺,ネット上の問題など,教育上大きな課題があります。
 「自殺対策基本法」に基づく「自殺総合対策大綱」(平成19年6月閣議決定)においては,児童生徒の自殺予防についての調査研究の推進や自殺予防に資する教育の実施,教職員に対する普及啓発などの実施,学校における心の健康づくり推進体制の整備,いじめを苦にした子どもの自殺予防,自殺が起きたときの学校での事後対応の促進などが盛り込まれています。
 文部科学省では,命の大切さを学ばせる教育やいじめ対策などを通じて児童生徒の自殺防止に取り組んできましたが,児童生徒の自殺の特徴や傾向などを踏まえた対策を検討するため,平成18年8月から「児童生徒の自殺防止に向けた取組に関する検討会」を開催しています。19年3月に取りまとめた「子どもの自殺予防のための取組に向けて(第一次報告)」を踏まえて,専門家や学校現場の関係者による「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する調査研究」を実施し,21年3月には,教師向けマニュアルとして「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」を作成し,配布しました。平成21年度においては,児童生徒の自殺が起きてしまった後の残された他の子どもたちや家族に対するケアや,第三者調査も視野に入れた背景調査といった事後対応の在り方について調査研究を行い,平成22年3月に学校・教育委員会向けに事後対応のマニュアルを取りまとめるとともに,背景調査についての論点整理を行ったところです。

(7)校則

 校則とは,児童生徒が健全な学校生活を営み,より良く成長・発達していくために,各学校の責任と判断の下に定められる一定の決まりです。校則自体は教育的に意義のあるものですが,その内容と運用は,児童生徒の実態,保護者の考え方,地域の実情,時代の進展などを踏まえたものとなるよう,各学校において積極的に見直しを行うことが大切です。

(8)体罰・懲戒

 文部科学省の調査では,平成20年度に体罰に関して懲戒処分を受けた教員数は140人(前年度比16人増)となっています。
 体罰は,学校教育法により厳に禁止されており,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また,教師と児童生徒との信頼関係を損なう原因ともなり,教育的な効果も期待できないと考えられます。
 一方,体罰とはどのような行為であり,児童生徒への懲戒がどの程度まで認められるかについて機械的に判定することは困難であり,このことによって,ややもすると教員などが,自らの指導に自信を持てない状況が生まれ,実際の指導において過度の萎縮を招いているとの指摘もなされています。
 こうしたことから,学校が問題行動に適切に対応し,生徒指導の一層の充実を図ることができるよう,懲戒・体罰に関する裁判例の動向なども踏まえ,懲戒・体罰に関する解釈・運用の考え方を示した「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(19年2月5日,初等中等教育局長通知)を発出し同通知の趣旨について周知に努めています。

「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(要点)

1 生徒指導の充実について
 未然防止と早期発見・早期対応が重要。学校は問題を隠さず,教職員一体の対応をし,決断をして採った措置については,教育委員会,関係機関が一体となって,家庭,地域社会の理解と協力を得る。

2 出席停止制度の活用について
 出席停止は,懲戒行為ではなく,秩序の維持や他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために行われるもの。教育委員会は期間中個別の指導計画を立てるなど,教師や学校をサポートする。

3 懲戒・体罰について
 「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」について取りまとめた。

2 教育相談体制の充実

 児童生徒の不登校や問題行動などに適切に対処するためには,子どもたちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切です。
 文部科学省では,平成13年度から,学校における教育相談体制などの機能の充実を図るため「スクールカウンセラー活用事業補助」を開始しました。児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有する臨床心理士などをスクールカウンセラーとして配置(21年度は中学校に約1万校,小学校に3,650校)するために必要な経費の補助を各都道府県・指定都市に対して行っています。
 また,教員OBなどの地域の人材を子どもと親の相談員などとして不登校などの未然防止や早期発見・早期対応のための小学校配置,教育委員会における24時間体制での電話相談事業に対し,必要な経費の補助を各都道府県・指定都市に対して行っています。
 加えて,平成20年度には,「スクールソーシャルワーカー活用事業」を実施し,教育分野に関する知識に加えて,社会福祉などの専門的な知識・技術を用いて,児童生徒が置かれた様々な環境へ働き掛けたり,関係機関などとのネットワークを活用して支援を行う専門家であるスクールソーシャルワーカーの活用方法などについて調査研究を行っており,平成21年度からは「スクールソーシャルワーカー活用事業」を各都道府県・指定都市に対する補助事業として実施しています。
 また,「教育相談等に関する調査研究協力者会議」を開催し,平成21年3月に,「児童生徒の教育相談の充実について-生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり-」が取りまとめられました。それを踏まえて学校における教育相談体制の一層の充実に取り組んでいます。
 さらに,平成22年1月に「子どもを見守り育てるネットワーク推進会議」を設置して「子どもを見守り育てるネットワーク推進宣言」を採択し,関係機関や民間団体が連携し,子どもを対象とした相談体制の充実や学校・地域における子どもの居場所づくりなどの取組を推進しています。

第6節 一人一人の人権を尊重した教育

 憲法や教育基本法の精神にのっとり,学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,その教育活動全体を通じ,人権尊重の意識を高めるための指導を進めており,一人一人を大切にする教育の推進を図っています。
 人権教育については,国連においても「人権教育のための世界計画」が採択され,平成17年からの5年間は,その第1段階として,初等中等教育に焦点を当てた行動計画が策定され,取組が進められました。さらに,22年からは,第2段階として,高等教育などに焦点を当てることとしています。
 また,国内でも「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」や「人権教育・啓発に関する基本計画」
(平成14年3月閣議決定)に基づき,政府全体として人権教育・啓発の推進を図っています(参照:第2部第1章第4節3)。
 文部科学省では,学校教育の分野において,「人権教育研究指定校事業」,「人権教育総合推進地域事業」などを実施し,人権教育の着実な推進に努めています。また,人権教育の指導方法などの在り方について,調査研究会議を開催して審議を行っており,平成18年1月の「第2次とりまとめ」で示した指導の工夫・改善の考え方などについて,より一層の理解に資するよう掲載事例などの充実を図り,「第3次とりまとめ」として20年3月に公表しました。平成20年度及び平成21年度においては,「第3次とりまとめ」が教育委員会・学校においてどのように活用されているのかを検証することを目的とした調査を実施し,その分析を行いました。

第7節 キャリア教育・職業教育の推進

1 児童生徒の勤労観,職業観を育てるためのキャリア教育の推進

 近年,若者の勤労観・職業観の希薄化や社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質をめぐる課題,高い早期離職率やフリーターやニートの存在が社会問題となっています。こうした中,子どもたちが発達段階に応じた勤労観・職業観を身に付け,明確な目的意識を持って人生を切り開くことができるよう,学校教育において,働くことの意義や尊さを理解するキャリア教育を充実することがますます重要となっています。
 平成18年に改正された「教育基本法」においても,「教育の目標」の一つとして「職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んじる態度を養うこと」が規定されています。
 文部科学省では,新学習指導要領において,職場体験活動を積極的に取り入れるなどキャリア教育の充実を図るとともに,小・中学校の発達段階に応じた系統的なキャリア教育プログラムの開発などの調査研究を実施し,キャリア教育の推進を図っています。
 また,高等学校(特に普通科高校)におけるキャリア教育を充実するため「高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究」を平成19年度,20年度に引き続き実施しています。
 さらには,今後の学校におけるキャリア教育の在り方について,20年12月に中央教育審議会に諮問したところであり,その検討結果も踏まえ,今後ともキャリア教育の充実を図っていきます。

2 職場体験,インターンシップ(就業体験)等の職業や進路にかかわる啓発的な体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は,生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり,異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり,主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し,学習意欲を喚起すること,職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど,極めて高い教育効果が期待されます。
 実施率も年々上昇してきており,平成20年度には,公立中学校全体の職場体験の実施率は96.5%に上りました。また,公立(全日制)の高等学校全体では,71.7%(普通科では63.6%,専門学科では91.7%,総合学科では86.2%)でインターンシップ(就業体験)が実施されています。

3 中学校における進路指導の改善

 中学校における進路指導は,生徒が自らの生き方を考え,将来に対する目的意識を持ち,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,学校の教育活動全体を通じ,計画的・組織的に指導・援助することです。そのため,中学校においては,学校としての全体計画と個々の計画を策定し,生徒の能力・適性,興味・関心や将来の進路希望などに基づき,進学しようとする高等学校や学科の特色などを生徒が十分理解した上で,第1学年から計画的かつ一貫性のある進路指導を行うことが必要となります。
 しかし,中学校における進路指導は,高等学校への進学率が高まる中で,長年,業者テストの偏差値などに過度に依存したものとなっていました。このため,文部科学省では,各都道府県教育委員会などに対する通知などを通じて,中学校の進路指導を生徒一人一人の能力・適性などを考慮した本来の進路指導に立ち返るよう求めた結果,現在では,すべての都道府県において,中学校の進路指導の際,業者テストの偏差値などに過度に依存することはなくなっています。
 また,体験的学習の機会も飛躍的に増え,生徒がより主体的にかつ真剣に自らの進路を考え,目的意識を持って進路選択を行うようになってきており,中学校の進路指導が大きく改善されてきています。
 なお,学校生活への適応や現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力の育成に関して,ガイダンスの機能の充実を図ることが学習指導要領に規定されるなど,中学校における進路指導の改善は着実に進んでいます。

4 高等学校における進路指導の改善

 高等学校における進路指導については,中学校における改善の内容の上に立って,生徒が自己の将来の進路を主体的に選択することを目指し,働くことや社会に奉仕することの喜び,それによって得られる達成感を体得させることに留意し,教育を実施する必要があります。そのため,平成21年3月に改訂された新学習指導要領において,生徒が自己の在り方生き方を考え,主体的に進路を選択することができるよう,学校の教育活動全体を通じ,計画的,組織的な進路指導を行うことが規定されました。
 高校生の就職については,平成22年3月新規高校卒業予定者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は74.8%(21年12月末現在)となり,前年同期から7.5ポイント下降しました。このように,就職内定率が前年同期を大きく下回っており,就職内定に至っていない生徒が約4万6,000人に上るなど,全体的に厳しい状況にあります。
 このような状況を踏まえ,文部科学省では,高等学校に,進路指導主事などと連携して就職希望生徒に対する就職相談・求人企業の開拓などを行う「高等学校就職支援教員」(ジョブ・サポート・ティーチャー)を配置しています。また,各都道府県教育委員会などに対し,都道府県労働局と連携した一層の求人開拓と未就職卒業者への配慮をお願いするとともに,経済団体に対しても,新規高等学校卒業者の求人枠の維持・拡大や,求人秩序の確立・適正な採用選考の実施などについて要請しています。

5 職業教育の活性化

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は,農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉の専門高校を中心に行われており,企業における中堅技術者など我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で,大きな役割を果たしています。
 平成21年5月現在,専門高校の数は2,137校,生徒数は約66万人であり,高等学校の生徒数全体の約19.7%を占めています。
 また,専門高校を卒業した生徒の進路状況を見ると,平成21年3月卒業者のうち,大学などへの進学者約22.3%,専門学校などへの進学者約21.0%,就職者約51.2%となっており,生徒の進路は多様な状況にあります。
 また,看護,水産などの専門学科では,本科3年の卒業後,専攻科に進む生徒も多く,今後の専攻科の在り方が検討課題になっています。

(2)将来の地域を担う専門的職業人の育成に向けて

 フリーターやニートの存在が大きな社会問題となるだけでなく,今後,団塊の世代の退職に伴う技能継承の重要性が高まる中,地域社会を担う技術・技能を持った専門的職業人を育成する専門高校に対する期待は,より一層大きくなっています。工業高等学校などの専門高校においては,ものづくりなどの専門性の基礎的・基本的な知識や技術の確実な習得を目指すとともに,地域産業を担う人材を育成するために,これまで以上にそれぞれの学科の特性を生かした教育の展開や,地域社会と連携した地域ぐるみの教育が求められています。
 このため,文部科学省では,先端的な技術・技能などを取り入れた教育など特色ある教育を行う専門高校を支援する「目指せスペシャリスト(「スーパー専門高校」)」や,専門高校と地域産業界が連携して若手のものづくりや食・くらしを支える専門的な人材を育成するための取組を支援する「地域産業の担い手育成プロジェクト」の推進などを通じ,専門高校の一層の活性化に努めています。

1.関係事業

(ア)目指せスペシャリスト(「スーパー専門高校」)
 バイオテクノロジーやメカトロニクスなど先端的な技術・技能などを取り入れた教育を重点的に行っている専門高校を指定し,技能の習得方法や技術の開発法,学校設定科目などカリキュラムの開発を行う「目指せスペシャリスト」事業を平成15年度から実施し,21年度現在,計32校を指定しています。

(イ)地域産業の担い手育成プロジェクト
 教育委員会と商工労働部などが連携し,具体的な連携方策を検討する人材育成連携推進委員会を設置した上で,生徒の企業実習,企業技術者などによる学校での実践的指導,教員の高度技術習得,専門高校と企業の共同研究などを盛り込んだものづくりや食・くらしを支える人材育成プログラムを開発する「地域産業の担い手育成プロジェクト」を経済産業省,国土交通省,農林水産省と共同で平成21年度現在,計56地域を指定しています。

(ウ)全国産業教育フェアの開催
 全国産業教育フェアは,専門高校を中心とした生徒たちが日ごろの学習の成果を発表し,中学生や企業関係者をはじめ広く一般の方々の産業教育に対する理解を深めるとともに,全国の専門高校等の生徒が広く交流する場として開催されています。平成21年度は第19回大会が11月14日~15日に神奈川県において開催され,全国の専門高校等の作品展示や,高校生ロボット相撲全国大会,各種コンテスト,発表大会,学校生産物の販売などが行われました。

2.教員研修の充実

 教員研修センターでは,産業教育を担当する教員などを対象として,新産業技術の進捗や学習指導要領に対応した必要な知識・技術を習得させる研修や,3カ月~1年の長期間にわたって大学その他,産業教育にふさわしい施設に留学させる研修などを行っています。

3.施設・設備の補助

 産業教育の振興を図るため,産業教育施設・設備基準に基づき,私立高等学校に対しては,産業教育の実験・実習に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を補助し,公立高等学校に対しては,施設(設備は,平成17年度から一般財源化)の整備に関する経費の一部を交付金により措置しています。

第8節 子どもの健康と安全

1 学校における食育の推進

(1)栄養教諭を中心とした指導の充実

 近年の子どもの食を取り巻く環境の変化に対応するためには,学校における指導体制を整備し,学校教育活動全体の中で体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。このため,平成17年4月から各都道府県において栄養教諭(※8)の配置が開始されており,21年9月30日現在で47都道府県に2,663名の栄養教諭が配置されています。また21年4月現在,国立大学の附属学校に62名が配置されています。
 平成20年6月には,同年1月の中央教育審議会答申「子どもの心身の健康を守り,安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進めるための方策について」を踏まえ,「学校給食法」の改正が行われ,21年4月に施行されました。この改正では,法律の目的に「学校における食育の推進」が明確に位置付けられるとともに,栄養教諭が学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うこと,この場合校長が食に関する指導の全体計画を作成することなどが定められました。
 また文部科学省では,平成22年3月に学習指導要領の改訂や「学校給食法」の改正などを踏まえ,学校における食育の必要性,食に関する指導の目標,栄養教諭が中心となって作成する食に関する指導の全体計画,各教科等や給食の時間における食に関する指導の基本的な考え方や指導方法等を示した「食に関する指導の手引」を改訂しました。
 さらに平成21年度においては,「栄養教諭を中核とした食育推進事業」を実施し,各地域において教育委員会の指導の下に栄養教諭を中核として家庭や生産者,PTAなどの地域の団体と連携・協力し,各地域の抱える食育推進上の課題の解決を図る取組を支援しています。また学校における食育について理解を進めるため,学校長や教職員だけでなく保護者や地域の生産者なども対象に食育の普及啓発や栄養教諭による実践指導の紹介などを行う「食育推進交流シンポジウム」を各地で開催しており,21年度は全国3カ所(東京都,鳥取県,大阪府)で開催しました。
 このほか,平成21年度においては学校給食を活用した食育を家庭などと連携して行えるよう,学校における食育の推進及び学校給食の意義について保護者等の理解を深めるための学習教材(DVD)を制作しました。


※8 栄養教諭
 栄養教諭は,「児童の栄養の指導及び管理をつかさどる」(学校教育法)職員として,他の教職員と連携した各教科等における食に関する指導と学校給食の管理(献立作成,衛生管理,検食,物資管理等)を職務としている。

(2)学校給食について

 学校給食は栄養バランスのとれた豊かな食事を子どもに提供することにより,子どもの健康の保持増進を図ることはもちろん,食に関する指導を効果的に進めるため,給食の時間はもとより各教科や特別活動,総合的な学習の時間等において「生きた教材」として活用することができるものであり,大きな教育的意義を有しています。平成20年5月現在,小学校では21,923校(全小学校の99.2%),中学校では9,304校(全中学校の85.8%),全体で約32,690校が学校給食を実施しています。

図表2-2-8 学校給食実施状況

図表2-2-8 学校給食実施状況

(出典)文部科学省「学校給食実施状況調査」(平成20年5月1日現在)

 各学校では,近年,学校給食の多様化が図られており,例えば学校給食の食材として地域の産物を活用したり,地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。食育推進基本計画では学校給食における地場産物の活用率を平成22年度までに30%以上(食材数ベース)とすることを目指すとされていますが,20年度における活用率は,全国平均で23.4%となっています。
 また米飯給食は,伝統的な食生活の根幹である米飯に関する望ましい食習慣を児童生徒に身に付けさせることや,地域の食文化を通じて郷土への関心を深めることが期待できるなどの教育的意義を持つものであり,平成20年度の週当たりの米飯給食の実施回数は3.1回となっています。
 文部科学省では平成20年度に学校給食における地場産物活用の推進方策の今後の方向性について調査研究を行い,その中で米飯給食の今後のあり方を含めて検討を行いました。その報告書を受け,週3回未満の地域・学校については週3回程度,週3回以上の地域・学校については週4回程度など新たな目標を設定し,実施回数の増加を図ることを促すなど,国としては週3回以上を目標として推進することとし,21年3月に通知しました。
 また平成9年以降,学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒は発生していませんが,依然としてノロウイルス等による食中毒の発生は続いており,学校給食における衛生管理の徹底が求められています。
 文部科学省では,学校給食の衛生管理について「学校給食衛生管理の基準」(平成9年文部省体育局長通知)を定めていましたが,平成20年に「学校給食法」が改正され,文部科学大臣が学校給食の適切な衛生管理を図る上で必要な事項について維持されることが望ましい基準を定めることとされたことを受けて,21年3月に「学校給食衛生管理基準」(平成21年文部科学省告示第64号)を策定し,同年4月より施行しました。その実施にあたっては,文部科学省において作成した「学校給食調理場における手洗いマニュアル」等を参考とするよう施行通知において示しています。また21年度においては,「調理場における洗浄・消毒マニュアルPart2.」を作成しました。

2 心と体の健康問題への対応

(1)子どもの健康課題に対する総合的な取組

 メンタルヘルスに関する問題やアレルギー疾患等の現代の多様化・深刻化する子どもの健康課題に対応するため「学校保健法等の一部を改正する法律」(平成20年法律第73号)が平成20年6月に成立し,21年4月に「学校保健安全法」として施行されました。今回の改正においては,学校保健に関して地域の実情や児童生徒等の実態を踏まえつつ,各学校において共通して取り組まれるべき事項について規定の整備を図るとともに,学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を定めるなどの措置が講じられました。具体的には養護教諭を中心に関係職員等と連携した組織的な保健指導や,地域の医療機関との連携による保健管理の充実などが規定されました。
 さらに「教育振興基本計画」では学校,保護者,地域の保健部局や医療機関等の連携による健康教育の推進を図ることや,すべての小・中学校における教育面と管理面から成る学校保健に関する計画の策定,養護教諭未配置校等へのスクールヘルスリーダーの週1回程度の派遣を目指すこととされています。

(2)学校における保健指導の充実

 平成20年から21年にかけて小・中・高等学校などにおける学習指導要領が改訂され,その総則において新たに,学校における健康に関する指導は,児童生徒の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとすると示され,体育科,保健体育科や特別活動などにおいても学校における心身の健康の保持増進に関する指導の観点から指導の内容の充実が図られました。
 近年,青少年,特に中学生及び高校生の覚せい剤事犯検挙者は過去10年間の取組により減少傾向が認められるものの,我が国において増加傾向にある大麻やMDMA等合成麻薬事犯の検挙者の6~7割が未成年及び20歳代の若者であり,青少年を中心に乱用の状況がうかがえることが指摘されています。
 こうした状況を踏まえ,薬物乱用対策推進本部で決定された「第三次薬物乱用防止五か年戦略(平成20年8月)」においては,「青少年による薬物乱用の根絶及び薬物乱用を拒絶する規範意識の向上」が目標の一つに掲げられ,新たに大学等の学生に対する薬物乱用防止のため大学等に対し入学時のガイダンスの活用を促し,その際に活用できる啓発資料を作成するなどの啓発の強化を図ることが盛り込まれるなど,学校における薬物乱用防止教育を一層推進することが求められています。
 文部科学省では,薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう,各大学や都道府県教育委員会等を指導するとともに,平成21年3月に改訂された高等学校学習指導要領の「保健体育」において新たに大麻を扱うこととし,大麻の有害性・危険性に関する指導を充実するなど,薬物乱用防止教育の充実に努めており,22年3月には大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットや薬物乱用防止啓発ポスターを作成しました。
 学校における性に関する指導は,エイズ及び性感染症や人工妊娠中絶などの性に関する健康問題について,児童生徒がそのリスクを正しく理解し,適切な行動を取れることをねらいとしており,体育科,保健体育科,特別活動,道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしています。性に関する指導を進めるに当たっては,学習指導要領にのっとり児童生徒の発達の段階に沿った時期と内容で実施すること,個々の教員がそれぞれの判断で進めるのではなく,学校全体で共通理解を図り,保護者や地域の理解を得ながら実施すること,集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに留意する必要があります。文部科学省では,学校において性に関する適切な指導が行われるよう各種施策を推進しています。

(3)学校における保健管理の充実

 養護教諭は,救急処置,健康診断,疾病予防等の保健管理,保健教育,健康相談,保健室経営,保健組織活動などの役割のほか,児童生徒の現代的な健康課題への対応に当たり,学校内における学級担任,学校医,学校歯科医,学校薬剤師等相互間の連携や学校と医療機関等との連携が円滑に行われるよう調整を図る役割を担うなど,重要な責務を担っています。
 文部科学省では,平成20年度から退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして養護教諭が配置されていない学校や経験の浅い養護教諭が1人配置されている学校に派遣する「スクールヘルスリーダー派遣事業」を実施するとともに,専門医等を学校に派遣し,専門医等による教職員への指導助言,講話や講演,児童生徒等の健康相談などを行う「子どもの健康を守る地域専門家総合連携事業」を実施しています。
 近年,アトピー性皮膚炎など児童生徒のアレルギー疾患の問題が指摘されており,学校における対応が重要となっています。文部科学省では平成16年度から有識者等で構成する調査研究委員会を設置し,児童生徒の各種アレルギー疾患の実態などについて調査を行い,19年4月に「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」として公表するとともに,これを踏まえ学校における児童生徒のアレルギー疾患に対する対応の方策などについて解説した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」及び「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」を作成し,20年4月から各学校等に配布しています。文部科学省では講習会を開催するなど,同ガイドライン等の普及啓発を推進しています。
 また平成21年4月,メキシコ及び米国における豚由来のH1N1の新型インフルエンザウイルスの人への感染が確認され,我が国でも5月に国内の感染が確認されました。文部科学省では手洗い,うがいの励行や学校の臨時休業の適切な措置などについてお願いしているところです。今後とも関係府省と連携しながら国内外の情報収集,関係機関への情報提供など,その流行状況に応じた機動的な取組を迅速に進めて行くこととしています。(参照http://www.mext.go.jp/a_menu/influtaisaku/index.htm
 我が国では平成19年に高校・大学を中心とする学校等での麻しん流行を経験し,麻しんを学校保健上の重要な課題として位置づけ,学校も積極的に麻しん対策に取り組んでいくことの重要性が改めて認識されたところです。学校及びその設置者が効果的な麻しん対策を行うためには,麻しんの感染力及び重篤性を十分に理解し日ごろから十分な予防策を施すとともに,万一,麻しんが発生した場合には迅速な対応を取ることが重要です。政府では学校での麻しん発生及び流行を予防するため,20年度4月から5年間に限り,中学校1年生及び高等学校3年生に相当する年齢の者を定期予防接種の対象者とし,文部科学省では,対象の生徒に対して予防接種の積極的接種勧奨を行うなど,早期の接種が促進されるよう適切な対応をお願いしています。
 また学校における子どもたちの環境を整備することの重要性にかんがみ,平成20年6月に改正された「学校保健安全法」において,文部科学大臣が児童生徒等及び職員の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を定めることが明記されたことを受けて,21年4月から「学校環境衛生基準」(平成21年文部科学省告示第60号)を施行し,学校における環境衛生管理の徹底を図っています。

Column No.8 新型インフルエンザ(A/H1N1)への対応について

 文部科学省は,平成21年4月,政府の新型インフルエンザ対策本部が設置されるとただちに文部科学省新型インフルエンザ対策本部を設置し,感染の状況や学校現場のニーズ等を踏まえながら,臨時休業や入学者選抜の在り方等について検討を行い,関係機関と連携して必要な対策を実施してきました。

<臨時休業について>

 文部科学省では,都道府県の保健部局から要請があった場合等に,学校の臨時休業が適切に行われるようお願いしています。また,臨時休業の際の意思決定の一助となるよう,「学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する基本的な考え方」や各都道府県が定めた新型インフルエンザに関する臨時休業の基準や目安などの情報を提供しました。

<入学者選抜について>

 大学入学者選抜については,平成21年10月8日に大学及び教育委員会等の関係機関に「平成22年度大学入学者選抜に係る新型インフルエンザ対応方針」(副大臣通知)を発出し,新型インフルエンザに感染し,又はその疑いのある者に対する受験機会を最大限確保するための方策を講じること等について要請しました。この要請を受け,大学入試センター試験においては,これまで本試験の1週間後に東京,関西地区の2か所で実施していた追試験が,本試験の2週間後に全都道府県で実施されました。追試験受験許可者数は972人,うちインフルエンザ及び類似症の者は509人でした。また,各大学の個別学力検査においては,8割以上の大学・短期大学で追試験等の実施により受験機会を確保することが決定されました。このほか,大学入試センター及び各大学では,受験会場における衛生管理体制の構築として,マスク,速乾性アルコール製剤等の準備及び別室受験室の確保等の対応がとられ,また,新型インフルエンザに係る専用ホームページを作成するなど,追試験の実施等について受験生等への情報提供がなされました。
 各都道府県教育委員会等により実施されている高等学校入学者選抜については,各都道府県の新型インフルエンザ対応策について調査を行いました。各都道府県教育委員会等に対し,調査の結果について情報提供するとともに,調査結果を踏まえて受験機会の確保のために適切に取り組むよう要請しました。
 文部科学省では引き続き,インフルエンザの毒性,流行の状況等を十分に踏まえながら,関係機関とも連携して対策を推進していきます。

(参照:文部科学省における新型インフルエンザ対策についてhttp://www.mext.go.jp/a_menu/influtaisaku/index.htm

3 登下校時を含めた学校における子どもの安全確保

(1)子どもの安全に関する総合的な取組

 学校は子どもたちの健やかな成長と自己実現を目指して学習活動を行うところであり,その基盤として安全で安心な環境が確保されている必要があります。しかしながら,子どもが巻き込まれる事件・事故が発生するなど,通学路を含めた子どもの安全を確保することが大きな課題となっています。
 平成21年4月から施行された「学校保健安全法」では,学校安全を取り巻く今日的な課題に対応できるようそれらの課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるとともに,学校のみでは解決が難しい課題については,地域の関係機関との連携などを図る趣旨のもとに学校の施設・設備の安全点検,日常生活における安全に関する指導などを含めた学校安全計画の策定・実施や危険等発生時の対処要領の作成など学校安全に関する規定が充実されました。
 政府全体としても子どもの安全対策を推進するために,犯罪から子どもを守るための対策に関する関係省庁連絡会議において「犯罪から子どもを守るための対策」(平成17年12月策定,21年12月改定)を取りまとめるとともに,「青少年育成施策大綱」(平成20年12月青少年育成推進本部決定)においても,青少年が犯罪等の被害に遭いにくいまちづくりなどについて盛り込むなど,子どもの安全確保に取り組んでいます。「犯罪から子どもを守るための対策」においては,学校における対策として,防犯教育の推進や防犯教室の推進,防犯教育のための教員の資質向上が掲げられるとともに,学校・家庭・地域が一体となり子どもの安全を見守る活動の推進が掲げられています。
 さらに「教育振興基本計画」には,地域ぐるみで子どもの安全を守る環境の整備や,子ども自らが安全な行動を取れるようにするための安全教育の取組を推進することが盛り込まれ,小学校におけるスクールガード・リーダー(※9)を5校に1人程度の割合で配置することや,すべての小中学校において教育面と管理面からなる学校安全計画の策定を目指すこととされています。


※9 スクールガード・リーダー
 学校等を巡回し,学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者を指す。

(2)学校における子どもの安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり,学校においてその安全な環境を整備し,事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため安全対策として実施する監視カメラや非常通報装置の設置などに関する経費について地方交付税による措置が講じられています。また文部科学省では,平成21年度には教職員の校内研修や職員会議などで活用できる教職員向け学校安全資料「生徒を事件・事故災害から守るためにできることは」を作成しました。

(3)通学路における子どもの安全確保の充実

 学校内のみでなく通学路を含めた子どもの安全を確保するためには,地域社会全体で子どもの安全を見守る体制の整備が求められています。文部科学省では,平成17年度から学校安全ボランティアを活用し,地域ぐるみで学校内外における子どもの安全を見守る体制を整備するため,警察官OBなどからなるスクールガード・リーダーの巡回による学校や学校安全ボランティアに対する警備のポイントなどの指導,学校安全ボランティアの養成,各地域における子どもの見守り活動に対する支援などを柱とする「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」を実施しています。

(4)実践的な安全教育の充実

 平成20年3月の小・中学校学習指導要領の改訂,21年3月の高等学校学習指導要領の改訂では,その総則に安全に関する指導について新たに規定されるとともに,体育科,保健体育科,特別活動など関連する各教科などにおいても安全に関する指導の観点から指導の内容の充実が図られました。
 学校における安全教育においては,児童生徒等が自他の生命を尊重し,日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し,生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を,生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に子どもの安全を確保するためには,子ども自身に危険を予測し,危険を回避する能力を養成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では,学校における安全教育の教職員用の参考資料として「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」(平成13年11月)を作成し,今回の学習指導要領の改訂などを踏まえ,21年度に改訂しています。このほかにも,学校における防災教育が効果的に行われるよう,防災教育の意義とねらいや,指導内容,指導の進め方などについて明らかにした教職員用の参考資料「『生きる力』をはぐくむ防災教育の展開」(10年3月,22年度改訂予定)や,交通安全に関する危険予測教材など,教職員用の参考資料や安全教育に関する各種の教材を作成しています。21年度は地震や台風などの自然災害時に子どもが自ら安全な行動を取るために必要な知識などを身に付けさせるよう,高校生を対象とした防災教育教材を作成しています。
 また各都道府県において安全教育の指導的な役割を果たしている教職員や都道府県教育委員会などの指導主事を対象とした学校安全に関する研修会を開催しています。
 さらに近年問題になっている通学路における自らの安全を守る力を子どもにはぐくませるため,子どもが自ら参加することにより,実感を持って危険箇所を認識することができる「通学路安全マップ」の作成や,警察官などの協力を得て危険に対する対処方法を身に付けさせる実践的な防犯教室を推進しています。文部科学省では平成15年度から防犯教室の講師に対する講習会の開催を支援するとともに,都道府県教育委員会などの協力を得て防犯訓練などに関する特色ある取組事例を収集し「学校における防犯教室等実践事例集」(18年3月)を作成しています。また実践的な防犯教材として大声をあげ逃げることや知らない車には乗らないことといった万一の事態が起こった場合の具体的な対処方法などについて,小学校1~2年生向けに分かりやすく教える「大切ないのちとあんぜん」(18年2月)を作成し,各学校で実践的な安全教育が実施できるよう支援しています。

第9節 幼児期にふさわしい教育の推進

1 幼稚園教育の現状

 幼児期は,生涯にわたる人格形成の基礎を培う大切な時期であり,このような時期に行われる幼児教育は非常に重要なものです。
 幼稚園は,満3歳から小学校就学前までの幼児であれば,だれでも入園することができる学校です。幼児一人一人の発達に応じ,集団生活の中で,主体的な活動としての遊びを通じて総合的な指導を行う幼稚園は,我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成21年5月1日現在,全国で1万3,516園の幼稚園があり,約163万人の幼児が在園しています。全国の5歳児のうち,約56%が幼稚園に就園しており,また,3歳児の就園率については増加傾向にあります(図表2-2-9,図表2-2-10)。

図表2-2-9 幼稚園数及び幼稚園児数等

図表2-2-9 幼稚園数及び幼稚園児数等

(出典)文部科学省「学校基本調査」(平成21年5月1日現在)

図表2-2-10 幼稚園就園率の推移

図表2-2-10 幼稚園就園率の推移

(出典)文部科学省調べ

2 幼稚園の教育活動・教育環境の充実

 幼児教育の重要性などにかんがみ,平成18年12月に改正された教育基本法では「幼児期の教育」という条項が新設(第11条)されるとともに,19年6月に改正された学校教育法において,学校種の規定順の変更(幼稚園を最初に規定),幼稚園の目的・目標規定の改正,家庭や地域の幼児教育支援に関する規定の新設,「預かり保育」の適正な位置付けなどが行われました。
 また,平成17年1月には中央教育審議会答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」が取りまとめられ,18年10月には幼児教育に関する総合的な行動計画である「幼児教育振興アクションプログラム」を文部科学省において策定しました。
 これらの動きを踏まえ,文部科学省では,次のような施策を総合的に展開し,幼児教育の振興を図っています。

(1)幼稚園の教育内容の充実

 教育基本法,学校教育法の改正や近年の子どもの育ちや社会の変化を踏まえ,平成20年3月に幼稚園教育要領の改訂を行い,21年4月から施行されました。本改訂において,1.幼小の円滑な接続を図るため,規範意識や思考力の芽生えなどに関する指導を充実するとともに幼小の連携を推進,2.幼稚園と家庭の連続性を確保するため,幼児の家庭での生活体験に配慮した指導や保護者の幼児期の教育の理解を深めるための活動を充実,3.教育課程修了後等に行う「預かり保育」の具体的な留意事項及び,子育ての支援の具体的な活動の例示などを行いました。

(2)幼稚園就園奨励事業の充実

 幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や,公私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図ることを目的として,入園料や保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,文部科学省がその所要経費の一部を補助しています。
 この補助金は,兄弟姉妹の同時就園を条件に,第2子以降の園児の保護者負担を軽減してきましたが,平成18年度から順次対象範囲を拡大し,現在,兄姉が小学校3年生に在籍する園児まで軽減措置の対象としております。
 平成21年度は,第3子以降の保育料を無償とするなど,第2子以降の更なる保護者負担の軽減を図りました。(図表2-2-11)

図表2-2-11 兄弟姉妹を持つ家庭の保護者負担の軽減について

図表2-2-11 兄弟姉妹を持つ家庭の保護者負担の軽減について

(3)幼稚園や保育所等と小学校との連携

 平成20年3月に改訂された幼稚園教育要領において,幼児と児童の交流,教師同士の交流などの小学校との連携について盛り込まれるとともに,小学校学習指導要領においても,幼稚園に加え,新たに保育所との連携や交流を図ることが盛り込まれました。さらに,20年3月に新たに告示として定められた保育所保育指針において,小学校との連携について示されました。その一環として,子どもに関する情報共有のための資料として「保育所児童保育要録」が送付されることになりました。幼稚園教育要領や小学校学習指導要領,保育所保育指針の周知などを通じて,幼稚園,保育所における幼児期の教育と小学校以降の教育との間の円滑な移行や接続を図るため,教員・保育士間や幼児・児童間での交流の促進など,幼稚園や保育所等と小学校との連携を促進しています。

(4)幼稚園における子育ての支援及び預かり保育

 近年,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中,保護者の子育てに対する不安を解消し,親がその喜びを感じることができるよう,幼稚園の機能を生かした子どものより良い育ちを実現する子育ての支援が求められています。そのため,各幼稚園では,地域の幼児教育のセンターとして,幼稚園における子育て相談,情報提供,未就園児の親子登園,保護者同士の交流の機会の提供などに取り組んでいます。
 また,地域の実情に応じ,教育課程終了後等に行う「預かり保育」に取り組む幼稚園も増加しており,現在,全国の約7割の幼稚園が実施しています。

3 幼児教育,保育の総合的な提供

(1)幼稚園と保育所の連携

 文部科学省は厚生労働省と連携して,幼稚園と保育所との連携を進めています。具体的には,幼稚園と保育所の施設の共用化の推進,教育内容・保育内容の整合性の確保,幼稚園教諭と保育士の合同研修の実施・資格の併有の促進,幼稚園と保育所の連携事例集の作成・提供などの取組を行っています。
 また,小学校就学前の子どもに幼児教育・保育を総合的に提供し,地域における子育て支援を行う施設である認定こども園が,平成18年10月に制度化されました(参照:本章第9節3(2))。

(2)認定こども園制度の活用促進等

 近年の急速な少子化の進行や家庭・地域を取り巻く環境の変化に伴い,多様化するニーズに柔軟かつ適切に対応するため,平成18年6月に「就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が成立し,同年10月から,幼稚園,保育所などのうち,教育・保育を一体的に提供し,地域における子育て支援を実施する施設を認定する認定こども園制度が開始されました。
 認定こども園制度は,1.親の就労の有無にかかわらず施設の利用が可能となる,2.適切な規模の子どもの集団を保ち,子どもの育ちの場を確保できる,3.既存の幼稚園の空き教室の活用により保育所の待機児童の解消に資する,4.育児不安の大きい家庭への支援を含む地域の子育て支援が充実するなどの効果が期待されています。22年4月1日現在で,認定こども園として認定を受けたものは全国で532件となっています(図表2-2-12)。

図表2-2-12 認定こども園の認定件数
件数 (内訳)
幼保連携型 幼稚園型 保育所型 地方裁量型
平成21年4月1日現在 358 158 125 55 20
平成22年4月1日現在 532 241 180 86 25

(出典)幼保連携推進室調べ

 文部科学省と厚生労働省では,20年3月に地方公共団体,施設,保護者に対する認定こども園制度に関する実態調査を行いました。施設を利用している保護者の8割近く,認定を受けた施設の9割以上から認定こども園の評価が得られた一方,施設や地方公共団体からは,財政的支援が十分ではない,会計処理の簡素化が必要などの課題も指摘されました。
 これを受けて,平成20年度補正予算等において認定こども園に対する,幼稚園・保育所の枠組みを超えた新たな財政支援策を制度化しました。これにより,認定こども園となるための施設整備費や幼稚園型の保育所機能部分,保育所型の幼稚園機能部分,地方裁量型に対して財政支援が講じられることとなりました(22年度までの事業)。また,20年10月に内閣府特命担当大臣(少子化対策),文部科学大臣,厚生労働大臣の3大臣合意により立ち上げられた「認定こども園制度の在り方に関する検討会」において,1.財政支援の充実,2.二重行政の解消,3.教育と保育の総合的な提供の推進,4.家庭や地域の子育て支援機能の強化,5.質の維持・向上への対応などの認定こども園における課題などについて議論を進め,21年3月に報告が取りまとめられました。これを受けて,文部科学省・厚生労働省幼保連携推進室では,報告書に示された改革の方向に沿って制度の普及促進に努めるとともに,会計処理の簡素化などの運用改善に取り組んでいます。
 また,幼稚園と保育所をめぐっては,「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月閣議決定)を受け,今後,平成22年1月の少子化社会対策会議決定により開催することとされた「子ども・子育て新システム検討会議」において,幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的,一元的なシステムの構築について検討を行うこととされています。

第10節 障害のある子どもたちの可能性を最大限に伸ばす特別支援教育

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子どもについては,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し,社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の障害の状態などに応じ,特別な配慮の下に,適切な教育を行う必要があります。このため,障害の状態などに応じ,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級(※10)において,特別の教育課程や少人数の学級編制のもと,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備などを活用して指導が行われています。また,通常の学級においては,通級による指導(※11)のほか,習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法,特別支援教育支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われています。
 平成21年5月1日現在,特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約30万6,000人です。このうち義務教育段階の児童生徒は約25万1,000人であり,これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約2.3%に当たります。特別支援教育の対象となる幼児児童生徒は,過去10年間で約12万1,000人増加しており,増加傾向にあります。
 近年,障害のある児童生徒をめぐっては,障害の重度・重複化や多様化,学習障害(LD)(※12),注意欠陥多動性障害(ADHD)(※13),高機能自閉症(※14)などの発達障害のある児童生徒への対応や早期からの教育的対応に関する要望の高まり,高等部への進学率の上昇,卒業後の進路の多様化,社会のノーマライゼーション(※15)の進展などの状況も見られます。こうした状況にかんがみ,平成18年6月に学校教育法等の改正が行われ,19年4月から障害のある児童生徒などの教育の充実を図るため,従来の盲・聾・養護学校の制度は,障害の重複化に対応するため,複数の障害種別を受け入れることができる「特別支援学校」の制度に転換され,特別支援学校については,これまでに蓄積してきた専門的な知識・技能を生かし,地域における特別支援教育のセンターとしての機能・役割(これを「センター的機能」という)を果たすために,小・中学校などの要請に基づき,これらの学校に在籍する障害のある児童生徒などの教育に関し,助言・援助を行うよう努めることとされました。また,小・中学校などにおいても,発達障害を含む障害のある児童生徒等に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定されました。


※10 特別支援学級
 障害の比較的軽い子どものために小・中学校に障害の種別ごとに置かれる少人数の学級。知的障害,肢体不自由,病弱・身体虚弱,弱視,難聴,言語障害,自閉症・情緒障害(「「情緒障害者」を対象とする特別支援学級の名称について」(平成21年2月3日,文部科学省初等中等教育局長通知)により改称。)の学級がある。
※11 通級による指導
 小・中学校の通常の学級に在籍し,比較的軽度の言語障害,情緒障害,弱視,難聴などのある児童生徒を対象として,主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく種々の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態であり,平成5年度から行われている。18年度からは,LD・ADHDの児童生徒についてもその対象に位置付けられた。
※12 学習障害(LD:LearningDisabilities)
 基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する,推論する能力のうち,特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。その原因としては,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接の原因となるものではない。
※13 注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/HyperactivityDisorder)
 年齢あるいは発達に不釣合いな注意力,衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。一般に7歳以前に現れ,その状態が継続するもので,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
※14 高機能自閉症(High-FunctioningAutism)
 3歳くらいまでに現れ,他人との社会的関係の形成の困難さ,言葉の発達の遅れ,興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
※15 ノーマライゼーション
 障害のある者も障害のない者も同じように社会の一員として社会活動に参加し,自立して生活することのできる社会を目指すという理念(障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)より)。

2 特別支援教育を推進するための取組

(1)特別支援教育の一層の充実と推進のための教育課程の見直し

 特別支援学校や小・中学校などの特別支援教育に関する教育課程については,平成20年1月17日の中央教育審議会答申を踏まえた検討を行い,21年3月9日に新しい特別支援学校学習指導要領等を公示しました。特別支援学校については,1.幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じた改善,2.社会の変化や幼児児童生徒の障害の重度・重複化,多様化などに対応した改善という二つの観点から改訂を行いました。また,高等学校における特別支援教育については,必要に応じて個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど生徒の障害の状態等に応じた指導を行うことを明記しました。

(2)特別支援教育の更なる推進のための検討

 文部科学省では,平成19年4月より新たな制度としてスタートした特別支援教育の実施状況を評価しつつ,特別支援教育の具体的な推進方策について検討を行うため,「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」を開催し,21年2月には早期からの教育支援の在り方に係る審議の中間取りまとめを公表しました。
 また,高等学校における特別支援教育の充実について検討を行うため,「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」の下で高等学校ワーキング・グループを開催し,平成21年8月に高等学校における特別支援教育の充実を図るため,入試における配慮・支援,体制の充実強化と指導・支援の充実,キャリア教育・就労支援等を主な内容とする報告を公表しました。(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/054_2/gaiyou/1283724.htm
 さらに,「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」においては,平成22年3月に,特別支援教育の更なる充実を図るための検討の方向性及び課題を整理した審議経過報告を公表しました。
(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/054/gaiyou/1292032.htm

3 諸課題への対応と関連施策

(1)地域・学校における支援体制の整備-発達障害を含む障害のある児童生徒などへの支援-

1.「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」(平成19年度までは「特別支援教育体制推進事業」以下同じ。)を通じた支援体制の整備

 文部科学省では,発達障害を含め障害のある幼児児童生徒への学校における支援体制を充実するため,平成15年度からすべての都道府県に委嘱して,「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」を実施しています。
 事業では,「校内委員会」の設置,「専門家チーム」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名,専門家などによる「巡回相談」の実施,学校と福祉・医療・労働などの関係機関とが連携するための「特別支援連携協議会」の設置,「個別の教育支援計画」(※16)の作成,特別支援学校による小・中学校等への支援の実施など,学校や地域における支援体制を強化する取組を行います。
 平成20年度特別支援教育体制整備状況調査によると,公立小・中学校においては,「校内委員会の設置」,「特別支援教育コーディネーターの指名」といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており,「個別の指導計画の作成」,「個別の教育支援計画の作成」についても,着実に取組が進んでいます。また,幼稚園・高等学校における体制整備は,進みつつあるものの,小・中学校に比べ相対的に遅れが見られます(図表2-2-13)。


※16 個別の教育支援計画
 医療,福祉,保健,労働などの関係機関との連携を図りつつ,乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立って,一貫して的確な教育的支援を行うために障害のある幼児児童生徒一人一人について作成する支援の内容などを示した計画。

図表2-2-13 平成21年度特別支援教育体制整備状況

図表2-2-13 平成21年度特別支援教育体制整備状況

(出典)文部科学省「平成21年度特別支援教育体制整備状況調査」(調査期日:平成21年5月1日)

 この事業は,平成17年4月に「発達障害者支援法」が施行されたことを踏まえ,17年度からは,乳幼児期から就労に至るまでの一貫した支援体制の整備を図るため,事業の対象を小・中学校に加え,幼稚園と高等学校へも拡大して実施しています。また,本事業の実施に当たっては,厚生労働省の発達障害者支援関係事業と連携しています。さらに,文部科学省では,19年4月1日の改正学校教育法の施行を踏まえ,体制整備を含む基本的考え方や留意事項などについて同日付けで「特別支援教育の推進について」(初等中等教育局長通知)を出し,学校や教育委員会などの取組を促進しています。

(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm)。

2.発達障害に関する支援事業

 発達障害のある子どもの学校における支援については,これまで小・中学校の義務教育段階を中心に施策が推進されてきましたが,幼稚園や高等学校における支援についても,更に推進していく必要があります。
 文部科学省では,平成19年度から,幼稚園などの幼児期に早期支援を行うための実践的研究を行う「発達障害早期総合支援モデル事業」を実施し,21年度は,全国10地域をモデル地域に指定しました。
 また,同じく社会人になる前の高等学校段階における支援の在り方などについて実践的研究を行う「高等学校における発達障害支援モデル事業」を実施し,平成21年度は,全国の国公私立高等学校25校をモデル校に指定しました。
 これらのモデル地域やモデル校における研究成果は,学校や都道府県教育委員会などが適切な支援を行う際の参考となるよう,文部科学省ホームページで広く全国に情報提供しています。
 さらに,平成21年度より,発達障害や弱視のある児童生徒について,障害の状態などに応じた教材等の在り方及びそれらを利用した効果的な指導方法や教育効果などについて調査研究を行う「発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究事業」を実施しています。

3.幼稚園,小・中学校における特別支援教育支援員の配置

 小・中学校には学校教育法施行令第5条に定める認定就学者をはじめ,発達障害を含む様々な障害のある児童生徒が在学していることを踏まえ,学校において障害のある児童生徒に対する学校生活上の介助や学習活動上の支援などを行う「特別支援教育支援員」の配置に関する経費が,各市町村に対して平成19年度から地方財政措置されています。21年度からは,発達障害の早期発見・早期支援の重要性にかんがみ,公立幼稚園まで地方財政措置が拡充されました。文部科学省では支援員の活用事例など配置促進の参考情報をまとめたパンフレットを各教育委員会へ配布するなど情報提供を行っています。
 この財政措置などを有効に活用し,全国的に支援員の配置数増加が図られています(平成21年5月1日現在,全国で公立幼稚園:約3,800人,公立小・中学校:約3万1,000人が配置)。

(2)障害の重度・重複化への対応

 近年,特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり,こうした児童生徒に対するより適切な対応が求められています。このような状況を踏まえ,平成18年6月には従来の盲・聾・養護学校の制度を特別支援学校の制度とする法改正が行われました(参照:本章第10節1)が,このほかにも文部科学省においては次のとおり施策の充実に努めています。

1.特別支援学校における指導について

 平成21年3月9日付けで公示した新しい特別支援学校学習指導要領等において,教師間の協力や外部専門家の活用など指導方法の工夫を例示したほか,一人一人に応じた指導を充実する観点から,関係機関と連携した支援を行うための個別の教育支援計画の作成を義務付けました。
 また,従来,個別の指導計画を作成することや知的障害を併せ有する場合の教育課程編成の工夫,障害のため通学して教育を受けることが困難な場合の訪問教育の実施について規定し,学校において障害の重度・重複化に対応できるようにしています。

2.特別支援学校における「医療的ケア」について

 特別支援学校には,日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており,学習や生活を行う上での適切な対応が求められています。
 このため,文部科学省では,平成10年度から,厚生労働省との連携の下,養護学校と医療機関との連携の在り方などについて実践的な研究を行い,体制整備を図ってきました。
 文部科学省としては,全国4ブロックにおいて,医療的ケアを担当する指導主事や教員,看護師を対象に研修を実施し,医療的ケアの実施体制の構築に資する知識面・技能面での向上を図っています。

(3)就学支援

 障害のある児童生徒などの就学を支援するため,「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき,特別支援教育就学奨励制度が実施されています。
 この制度は,障害のある児童生徒などの教育の機会を保障するためのものです。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などへの就学に関する特殊事情を考慮して,児童生徒などの就学に関する保護者などの経済的負担を軽減することを目的として,その負担能力の程度に応じ,交通費や学用品費,寄宿舎費などの就学に必要な経費の全部又は一部を国や地方公共団体が負担しているものです。

(4) 関係機関と連携した就労支援

 障害者が,生涯にわたって自立し,社会参加していくためには,企業などへの就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要です。しかしながら,近年,特別支援学校高等部卒業者のうち,福祉施設入所者の割合が約6割に達する一方で,就職者の割合は約2割にとどまっているなど,職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2-2-14)。この理由としては,特別支援学校高等部の整備が進んできたことや,障害の重度・重複化に伴う訪問教育対象者の増加などによる高等部在籍者数の増加の割合に比して,就職者数はほぼ横ばいであることなどが考えられます。

図表2-2-14 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

図表2-2-14 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

 障害者の就労を促進するためには,福祉から雇用に向けた施策を進めると同時に,学校から雇用に向けた施策を進めるなど,教育,福祉,医療,労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。
 このため,文部科学省では,厚生労働省と連携し,特別支援学校における職業教育や進路指導の改善を図り,職域・職種を拡大するための方策などについて先進的な研究を行う「職業自立を推進するための実践研究事業」を平成19年度から2カ年にわたって実施し,その成果の普及を図っています。
 また,平成19年4月2日,「障害者福祉施策,特別支援教育施策及び障害者雇用施策の一層の連携の強化について」と題する初等中等教育局長通知を発出し,関係機関の一層の連携強化を図っています。 

(5)障害者理解の推進

 障害のある子どもが,自立し,社会参加するためには,障害のない子どもや保護者,教育関係者をはじめとした広く社会一般の人々が,障害のある子どもとその教育に対する正しい理解と認識を深めることが不可欠です。
 このため,文部科学省では平成18年度から3回にわたり「特別支援教育全国フォーラム」を開催し,広く社会一般の人々に対し,障害のある子どもとその教育について理解啓発を図ってきました。
 また,障害のある子どもと,障害のない子どもや地域の人々が活動を共にすることは,すべての子どもの社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく,地域の人々が障害のある子どもに対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。
 このため,文部科学省では,学習指導要領等において,障害のある者とない者が活動を共にすることを明確に規定しており,各学校においてはそのような取組が積極的に推進されています。また,国立特別支援教育総合研究所においては,教員や指導主事を対象とした,交流及び共同学習推進指導者研究協議会を実施し,各都道府県において指導者となる人材を育成しています。

(6)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所(NISE)においては,我が国唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして,発達障害を含め様々な障害のある幼児児童生徒に対する指導法等についての専門的な研究や研修が進められています(参照:http://www.nise.go.jp)。また,「発達障害教育情報センター」を設置し,教育関係者や保護者等に対し,インターネットを通じて,発達障害に関する各種教育情報の提供や,教員研修用講座の配信を行っています(参照:http://icedd.nise.go.jp)。

第11節 魅力ある高等学校づくり

1 高等学校教育の個性化・多様化を進めるために

(1)高等学校教育の現状

 新制高等学校発足当初(昭和23年)約42パーセントであった高等学校進学率は,現在では約98パーセントに達しており,高等学校は国民的な教育機関となっています(図表2-2-15)。高等学校進学率の上昇に伴い,生徒の能力・適性,興味・関心,進路などが多様化しており,生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められています。
 その一方で,高等学校の生徒数は,最も多かった平成元年の約560 万人から21 年には約330 万人に減少しており,高等学校の適正配置・適正規模の在り方が課題となっています(図表2-2-16)。
 このため,各都道府県では,高等学校の適正配置・適正規模に留意しつつ,生徒一人一人の個性を伸ばし,知・徳・体の調和のとれた充実した高等学校教育を実現するため,各学校においてそれぞれの特色を生かし創意工夫に富んだ魅力ある学校づくりが進められています。

図表2-2-15 高校への進学率と生徒数の推移

図表2-2-15 高校への進学率と生徒数の推移

(出典)文部科学省「学校基本調査」

図表2-2-16 高校の一校当たり生徒数の推移

図表2-2-16 高校の一校当たり生徒数の推移

(出典)文部科学省「学校基本調査」

(2)特色ある高等学校づくりの推進

 文部科学省は,生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりが可能となるよう,中高一貫教育,総合学科や単位制高等学校をはじめとする新しいタイプの高等学校や特色ある学科・コースの設置などを推進するとともに,自校以外での学修成果の単位認定の幅の拡大などを通じて,多様なカリキュラムづくりが可能となるよう,高等学校教育改革を推進しています。

1.中高一貫教育

 中高一貫教育は,中等教育の一層の多様化を推進し,生徒一人一人の個性をより重視した教育を実現するため,平成11年度から導入されており,21年度までに370校が設置されています(図表2-2-17)。中高一貫教育校には,修業年限6年の学校として一体的に中高一貫教育を行う中等教育学校,高等学校入学者選抜を行わず同一の設置者による中学校と高等学校を接続する併設型中高一貫教育校,市町村立中学校と都道府県立高等学校など,異なる設置者による中学校と高等学校が,教育課程の編成や教員・生徒間交流などの面で連携を深める形で,中高一貫教育を実施する連携型中高一貫教育校の三つの形態があります。
 また,中高一貫教育校として特色ある教育課程を編成することができるよう,指導内容の移行など,実施形態に応じて,教育課程の基準に関する特例を設けています。

図表2-2-17 中高一貫教育校の推移

図表2-2-17 中高一貫教育校の推移

(出典)文部科学省調べ

2.総合学科

 総合学科は,普通科と専門学科に並ぶ新しい学科として,平成6年度から導入されており,21年度までに344校が設置されています(図表2-2-18)。
 総合学科の教育の特色は,幅広い選択科目の中から自分で科目を選択し学ぶ点にあり,生徒がそれぞれの個性に応じて達成感を得ることができる学習や,将来の職業選択など自己の進路への自覚を深めるための学習が重視されています。

図表2-2-18 総合学科数の推移

図表2-2-18 総合学科数の推移

(出典)文部科学省調べ

3.単位制高等学校

 単位制高等学校は,学年による教育課程の区分を設けず,決められた単位を修得すれば卒業が認められる学校です。昭和63年度から定時制・通信制課程において導入され,平成5年度からは全日制課程においても設置が可能となっています。21年度までに900校(うち全日制課程は521校)が設置されています(図表2-2-19)。
 単位制高等学校の特色としては,自分の学習計画に基づき,興味,関心などに応じた科目を選択して学習できることや,学年の区分がなく,自分のペースで学習に取り組むことができることなどが挙げられます。

図表2-2-19 単位制高等学校の推移

図表2-2-19 単位制高等学校の推移

(出典)文部科学省調べ

4.自校以外での学修成果の単位認定

 生徒の多様な学習意欲にこたえて選択学習の機会を拡大するため,生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて,1.他の高等学校において修得した単位,2.大学,高等専門学校,専修学校等における学修,3.知識・技能審査の成果に係る学修,4.ボランティア活動,就業体験活動(インターンシップ),スポーツ又は文化に関する分野における活動に係る学修など,在学する高等学校以外の場における学修の成果について,各学校長の判断により,36単位を上限として,学校の単位として認定することが可能になっています。
 また,高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修について,各学校長の判断により,単位を与えることが可能になっています。

(3)各都道府県における取組

1.普通科

 生徒の多様化が一層進む中,普通科の個性化・特色化を図るための取組が進められています。

2.専門学科

 国際化や情報化の進展,科学技術の進歩,産業構造の複雑化などの社会の変化に対応したより高度な専門教育が求められています。また,生徒の70パーセント以上が普通科に進学する中,専門学科の特色を生かした魅力ある学校づくりが課題となっています。

3.定時制・通信制高等学校

 近年,定時制・通信制高等学校では,従来からの勤労青少年だけではなく,様々な入学動機や学習歴を持つ方々が多くなってきています。多様なニーズにこたえるため,定時制課程を置く高等学校では,いわゆる「多部制の定時制課程」が増えてきています。

4.適正規模の確保

 高等学校の生徒数はピーク時の約60パーセントになっていますが,今後,更なる生徒数の減少が見込まれる中,適正規模確保のための学校数の調整が必要となっています。そのため,各都道府県では,地域の実情に応じた高等学校の再編整備が進められています。

5.その他

 中高一貫教育校,総合学科,単位制高等学校の設置を進めるとともに,多様な学科,コースなどを設置したり,学科やコースの枠を超えた選択履修を可能としたりする学校など,様々な特色のある高等学校が設置されています。

2 高等学校入学者選抜等の改善

 高等学校の入学者選抜については,過度の受験競争の緩和や偏差値偏重の是正の必要性などが指摘され,「選抜方法の多様化」,「評価尺度の多元化」の観点からの改善が進められてきました。各都道府県教育委員会においては,生徒の多様な能力・適性や意欲,努力の成果,活動経験などについて,様々な観点から,優れた面や長所を積極的に評価することができるよう,改善が進められてきています。具体的には,推薦入学の拡大,面接,小論文・作文,実技検査などの活用,調査書の活用の工夫といった取組や,近年増加傾向にある不登校の生徒の受入れについて特別な扱いや配慮を行うなどの例があげられています。
 文部科学省としては,平成21年8月に全国高等学校入学者選抜改善協議会を開催し,高等学校入学者選抜の改善などに関する各県の状況の把握や情報の収集・提供を行うなど,各都道府県における改善の取組を支援しています。

第12節 魅力ある優れた教員の確保

1 教員の資質能力の向上

(1)教員の養成・採用・研修における取組

 学校教育の充実は,その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが極めて大きいといえます。特に,これからの教員には,変化の激しい時代にあって,一人一人の子どもたちが自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動していくことのできる自立した個人として,心豊かに,たくましく生き抜いていく基礎を培う教育を行うことが期待されています。そのため,教職に対する強い情熱,教育の専門家としての確かな力量,総合的な人間力を備えた魅力ある教員を確保していくことがますます重要となっています。
 こうした教員の資質能力は,養成・採用・研修等の各段階を通じて,生涯にわたり形成されていくものであり,その向上のためには,これらの各段階を通じて関連施策を総合的に進めることが必要です。このような観点から,次のような取組を進めています。

1.教員養成

 平成20年11月に教育職員免許法施行規則を改正し,教員養成課程の充実を図りました(平成21年4月より施行)。「教職実践演習」の導入,教職課程認定大学への是正勧告や認定取消しの仕組みの整備,教職指導や教育実習の円滑な実施の努力義務化が改正の主な内容です。
 教職実践演習は,教員として最低限必要な知識技能を修得したことを最終的に確認するための科目として導入され,原則として大学の4年次(短期大学の場合には2年次)後期に実施することとしています。平成21年度は,すでに教職課程の認定を受けている学部・学科等に対して教職実践演習の開設について認定を行いました。教職実践演習を含んだカリキュラムは平成22年度入学生から適用されることとなります。
 また,平成20年4月から,学校現場の課題に対応できる新人教員や,学校や地域において指導的役割を果たし得る教員の養成を目指し,より実践的な教員養成を大学院レベルで行う場として「教職大学院」が設置されました。教員養成の中核的な機関として,学部と大学院を通じた教員養成のモデルを示す役割が期待されています。平成21年4月1日現在,全国に24校設置されており,平成22年4月に新たに1校が設置される予定です。

2.教員採用

 採用の段階で,教員にふさわしい,個性豊かで多様な人材を幅広く確保していく観点から,各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促進しており,学力試験の成績のみならず,面接試験や実技試験の実施,受験年齢制限の緩和,様々な社会経験を適切に評価する特別選考などを通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。
 また,小学校において外国語活動が実施されることとなったため,小学校教諭の採用選考において外国語活動に関する内容を取り入れる教育委員会が増えています。
 さらに,平成20年度に各教育委員会の採用選考の透明性や不正防止の取組が大きく改善されており,平成21年度実施の平成22年度採用選考においても,配点の公表や採用選考基準の公表等において改善が見られました。

図表2-2-20 平成22年度公立学校教員採用選考試験実施方法等について
1.基本的年齢制限の緩和状況
  30歳未満 36歳未満 41歳未満 46歳未満 上限なし
平成22年度 0 4 32 16 13
平成14年度 3 22 25 4 5
2.特別選考の実施状況

2.特別選考の実施状況

3.小学校教諭の採用選考における外国語活動に関する内容の実施状況
開始年度 県市名
平成20年度以前 宮城県,福島県,仙台市,佐賀県 全23県市
平成21年度 千葉県,新潟県,福井県,京都府,千葉市
新潟市,京都市
平成22年度 埼玉県,東京都,岐阜県,三重県,和歌山県
岡山県,熊本県,鹿児島県,沖縄県,さいたま市
岡山市,福岡市
4.採用選考の公表状況

4.採用選考の公表状況

(出典)文部科学省調べ

 なお,条件附採用期間制度*17を適正に運用し,新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。

3.教員研修

 教員には,その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており,国及び都道府県などそれぞれにおいて,各種研修が実施されています。
 国では,独立行政法人教員研修センターにおいて,各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・教頭等の教職員に対する学校管理研修や,喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修等の講師や企画・立案等を担う指導者を養成するための研修などにより,地域の中核となるリーダーを育成しています。
 また,都道府県教育委員会などにおいては,教員に適切な研修の機会を提供する必要があり,教員がその経験,能力,専門分野などに応じて必要な研修を受けることができるよう,以下の取組がなされています。

(ア)初任者研修
 初任者研修は,新たに採用された教員に対して,実践的指導力と使命感を養うとともに幅広い知見を得させるため,都道府県教育委員会等に対し,1年間,学校内外で研修を行うことを義務付けているものです。

(イ)10年経験者研修
 10年経験者研修は,在職期間が10年程度に達した教員に対して,得意分野を伸ばすなど教員としての資質能力の向上を図ることを目的として,都道府県教育委員会等が個々の能力・適性などの評価を行い,学校内外で研修を行うことを義務付けているものです。

(ウ)長期社会体験研修
 長期社会体験研修は,社会の構成員としての視野を拡大する観点から,教員を民間企業,社会福祉施設などの学校以外の施設へおおむね1カ月から1年程度の長期にわたり派遣して行う研修です。

(エ)大学院修学休業制度
 平成13年4月に,教員の自主性に基づいて長期の研修を推進するため,大学院修学休業制度が創設されました。この制度は,公立学校の教員が,その身分を保有したまま,一定の期間休業し,大学院で修学することを可能とするものです。平成21年4月1日までに,1,337人がこの制度を利用しています。

4.教員免許更新制

 教員免許更新制は,教員が最新の知識技能を修得し,自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得るための制度で,平成21年4月から実施されています。
 更新制導入後(平成21年4月1日以降)に授与される免許状には,10年間の有効期間が定められます。有効期間の更新は,都道府県教育委員会が行い,1.大学等が行う免許状更新講習(注1)を30時間以上受講・修了した者,2.免許管理者が免許状更新講習の受講の必要がないと認めた者に認められています。
 更新制導入前(平成21年3月31日まで)に授与された免許状(旧免許状)については,更新制の導入後も有効期間は定められませんが,現職教員については,10年ごとの修了確認期限(注2)までに30時間以上の免許状更新講習を受講・修了することが義務づけられています。 

(注1)免許状更新講習
 免許状更新講習の内容は以下の2つの事項となります。
 1.教職についての省察並びに子どもの変化,教育政策の動向及び学校内外における連携協力についての理解に関する事項(12時間)
 2.教科指導,生徒指導その他教育の充実に関する事項(18時間)
(注2)修了確認期限
 旧免許状所持者である現職教員等が免許状更新講習の課程を修了したことについての都道府県教育委員会の確認を受けなければならない期限。

5.教員の資質能力の総合的な向上方策について

 将来の日本を支える人材を育てるため,教員の質や数を充実することなどにより,さらに質の高い教育を実現することが重要です。
 そのため,教員養成課程の充実など教員の資質能力の総合的な向上方策について必要な調査・検討を開始しています。この調査・検討の中で,現行制度の効果等を検証する予定であり,新たな教員の資質能力向上方策の内容及び移行方針を具体化する中で,教員免許更新制の在り方についても結論を得ることとしています。
 この検討は,教育関係団体や教育委員会などの学校関係者や大学関係者の意見を十分に聞きながら行っているところです。


※17 条件附採用期間制度
 採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり,一般の地方公務員の場合,6か月の条件附採用期間の職務を良好な成績で遂行したときに,初めて正式採用となります。
 児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・常勤講師については,その職務の専門性等から特に,条件附採用期間が1年間とされ,かつ,その間に初任者研修を受けることとなっています。

(2)教員評価と優秀教員表彰

 学校教育の成果は教員の資質に負うところが極めて大きいことから,教員の能力や実績を正確に評価し,その結果を配置や処遇,研修などに適切に反映することが大切です。
 このため,文部科学省は,平成15年度から19年度まで,教員評価に関する調査研究を全都道府県・指定都市教育委員会に委嘱し,新しい教員評価システムの構築・運用を進めてきました(図表2-2-21)。文部科学省としては,今後,教員評価の結果を給与などの処遇に反映させることも含め,各教育委員会の取組の一層の充実を促していきます。
 さらに,高い指導力や優れた実績のある教員を評価することは,教員の意欲を高め,資質能力の向上に資することから,平成20年度に,64都道府県・指定都市のうち56の教育委員会が優秀教員表彰の取組を導入しています。文部科学省においても,18年度より文部科学大臣優秀教員表彰を実施しており,全国の国公私立学校の現職の教育職員のうち,学校教育における実践などに顕著な成果を挙げた者の中から,都道府県教育委員会などが候補者を推薦し,21年度は843名を表彰しました。

図表2-2-21 評価のイメージ

図表2-2-21 評価のイメージ

(3)指導上の問題がある教員への対応

1.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は,心身ともに発達段階にある児童生徒に対して大きな影響を及ぼすものであり,指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。
 そのためには,各都道府県・指定都市教育委員会において,指導が不適切な教員に対し継続的な指導・研修を行う体制を整えるとともに,必要に応じて免職するなどの分限制度を的確に運用することが必要であり,文部科学省ではこのような人事管理のシステムづくりと適切な運用を促してきました(図表2-2-22)。

図表2-2-22 指導が不適切な教員の認定者数等について(平成20年度)

図表2-2-22 指導が不適切な教員の認定者数等について(平成20年度)

指導が不適切な教員の認定者数の推移

指導が不適切な教員の認定者数の推移

※年度の下のカッコは,指導が不適切な教員を認定する人事管理システムを導入している県市の数を示す。

(出典)公立学校教職員の人事行政の状況調査

指導が不適切な教員のうち現場復帰または退職等した者

指導が不適切な教員のうち現場復帰または退職等した者

※退職等人数には,依願退職,分限退職,懲戒免職,転任が含まれる。

(出典)公立学校教職員の人事行政の状況調査

 教員全体への信頼性を向上させ,全国的な教育水準の維持を図るためには,このような指導が不適切な教員に対する人事管理システムがより一層公正かつ適正に運用されることが重要であることから,平成19年6月に教育公務員特例法を改正し,指導が不適切であると認定した教員に対して指導改善研修を実施することや,研修修了時の認定において指導が不適切であると認定した者には免職その他必要な措置をすることなどを法律に規定し,20年4月より施行されています。さらに,文部科学省では,各教育委員会が20年度から法律に基づく制度の運用を適切に行うことができるよう指導が不適切な教員の人事管理システムのガイドラインを作成しており,引き続き,各教育委員会がガイドラインを踏まえ,適切に人事管理システムを運用するよう促していきます。

2.非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為はそれ自体許されないものであるのみならず,教員に対する信頼,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 特に児童生徒に対するわいせつ行為などについては,教員として絶対に許されないものであることから,原則として懲戒免職とするなど,厳正に対応するよう各教育委員会を指導しています。
 また,文部科学省では,各教育委員会に対して,懲戒処分全般の基準を作成することや,処分事案について,児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ,できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し,教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2-2-23)。

図表2-2-23 教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成20年度)

図表2-2-23 教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成20年度)

(出典)教育職員に係る懲戒処分等の状況について

(4)教員のメンタルヘルスの保持

 公立学校の教員の精神疾患による病気休職者数は,ここ10数年にわたって増加し,平成20年度においては5,400人となっており,深刻な問題であると考えています。(図表2-2-24)。

図表2-2-24 分限処分の状況

図表2-2-24 分限処分の状況

病気休職者数等の推移(平成11年度~平成20年度)

病気休職者数等の推移(平成11年度~平成20年度)

※年度の下のカッコは,精神疾患による休職者数の対前年比の数を示す。
(出典)教育職員に係る懲戒処分等の状況について

 学校教育は教員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり,教員が心身ともに健康を維持して教育に携わることが重要であるため,文部科学省では,メンタルヘルスの保持にかかる方策について各教育委員会に対して,例えば以下のような指導・助言を行っています。

  1. 会議や行事の見直し等により校務を効率化したり,各学校への調査・照会等に関する事務負担を軽減すること
  2. 日頃から,教員が気軽に周囲に相談したり,情報交換することができる職場環境をつくること
  3. 各学校の管理職が,教員に対するカウンセリング体制の整備や,心の不健康状態に陥った教員の早期発見・早期治療に努めること

(5)学校教育における社会人の活用

 幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することは,社会に開かれた学校づくりを推進し,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。文部科学省では,次のような施策を進めています。

1.社会人講師の活用等

 優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,教員免許状を取得していなくとも,各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる「特別非常勤講師制度」の活用が広がっており,平成20年度の活用件数は,全国で2万1,359件となっています。
 さらに,優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるため,特別免許状を授与し,教諭の職に就くことができるようにしています。これにより,都道府県教育委員会などが行う採用選考において特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。

2.民間人校長の活用と民間人教頭制度の創設

 文部科学省では,平成12年に校長の資格要件を緩和し,教員免許を持たず,教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとなりました。また,校長を支える教頭についても,平成18年より校長と同様の資格要件の緩和を行い,平成20年から新たに設置が可能となった副校長も同様に扱いました。
 これらの資格要件の緩和により,平成21年4月1日現在,全国の公立学校における民間人(※18)校長の在職者数は96人,民間人副校長・教頭の在職者数は45人となっています。


※18民間人
原則として「教育に関する職」に就いた経験がない者等

2 教職員定数の改善と義務教育費国庫負担制度

(1)学級編制と教職員定数の改善

1.制度の概要

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図ることを目的として,公立の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校並びに特別支援学校における一学級の児童生徒の数(学級編制)や教職員定数(教職員の配置)の「標準」を定めています。
 学級編制の標準は,例えば,公立の小学校,中学校並びに高等学校においては,現在,40人となっており,各都道府県教育委員会は,この40人を標準として,学級編制の基準を定めることとなっています。
 なお,学級編制については,地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう,平成13年度以降,法律の改正等を行い,各都道府県教育委員会の判断により,国の標準(40人)を下回る学級編制基準を定めることを可能としました。その結果,平成21年度は,小学校低学年を中心に46道府県において少人数学級が実施されています(図表2-2-25)。
 なお,各県における少人数学級実施の効果などにより,35人以下の学級に在籍する児童生徒の割合は,全国平均で,平成21年度は小学校81.4%,中学校60.2%となっています(図表2-2-26)。

2.これまでの改善経緯

 公立小・中学校の学級編制と教職員定数は,これまで7次にわたり,計画的に改善を行い,40人学級の実現や基礎学力の向上のための定数改善を実施してきました。平成13~17年度までの5カ年で実施した「第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」では,基礎学力の向上ときめ細かな指導を目指し,算数,理科などの教科について20人程度の少人数指導や習熟度別学習指導などのきめ細かな指導を行う学校の取組に対する支援などを行うため,約2万7,000人の教職員定数の改善を行いました(図表2-2-27)。

図表2-2-25 平成21年度少人数学級実施状況

図表2-2-25 平成21年度少人数学級実施状況

(出典)文部科学省調べ

図表2-2-26 35人(又は30人)以下学級に在籍する児童数の割合

35人(又は30人)以下学級に在籍する児童数の割合【小学校】

図表2-2-26 35人(又は30人)以下学級に在籍する児童数の割合【小学校】

35人(又は30人)以下学級に在籍する児童数の割合【中学校】

図表2-2-26 35人(又は30人)以下学級に在籍する児童数の割合【中学校】

(出典)文部科学省「学校基本調査報告書(平成21年度)」

図表2-2-27 公立学校の学級編制と教職員定数の改善状況

図表2-2-27 公立学校の学級編制と教職員定数の改善状況

 平成18年度以降は,公務員人件費の縮減などを図る総人件費改革という行政改革の方針が政府全体の方針として示されたため,これまでのような定数改善計画の策定は見送られました。一方,教員の多忙化や特別な支援を必要とする児童生徒の増加など学校が抱える問題が複雑・困難化していることに対応するため,毎年度の予算編成において,教職員定数の改善を行ってきました。平成18年度以降の公立義務教育諸学校における教職員定数の改善は,18年度は329人,19年度は331人,20年度は1,195人,21年度は1,000人となっています。

3.平成22年度における教職員定数の改善

 確かな学力の育成を図るためには,教員が子ども一人一人に向き合う環境をつくるとともに,新学習指導要領の円滑な実施を図ることができるよう,教職員定数の改善など教育環境の整備を行うことが必要不可欠です。そこで,平成22年度においては,理数教科の少人数指導の充実などのため,4,200人の,近年にない大幅な定数改善を行いました(図表2-2-28,図表2-2-29)

図表2-2-28 公立義務教育諸学校教職員定数改善と自然滅の推移

図表2-2-28 公立義務教育諸学校教職員定数改善と自然滅の推移

注1:「定数増」は定数改善とその他(合理化減等)を合計した数,「純計」は定数改善と自然減・その他(合理化減等)を合計した数である。

注2:第6次定数改善計画は,財政構造改革の推進に関する特別措置法(H9.12.5法律第109号)により,当初の6年計画が2年延長された。

(出典)文部科学省調べ

図表2-2-29 平成22年度予算教員が子どもと向き合う時間の確保と新学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備
教職員定員の改善 4,200人(93億円)

1.理数教科の少人数指導の充実 2,052人
2.特別支援教育の充実 1,778人
 ○小・中学校の通級指導の充実 1,418人
 ○特別支援学校のセンター的機能の充実 313人
 ○養護教諭定数の充実 47人
3.外国人児童生徒への日本語指導の充実 250人
4.食育の充実(栄養教諭定数の充実) 47人
5.教員の事務負担の軽減(事務職員定数の充実) 73人

4.学級編制基準等の国際比較

 我が国の学級編制の標準は,昭和55年に45人から40人に引き下げられ,現在に至っています。
国際的に見ると,欧米など主要先進国においては,学級編制の基準を30人程度としており(図表2-2-30),一学級当たりの児童生徒数の比較では,我が国は,経済協力開発機構(OECD)加盟国平均と大きく差が開いています(図表2-2-31)。また,教員一人当たりの児童生徒数についても各国平均と比較すると,我が国は低い水準となっています(図表2-2-32)(※19)。


※19 教員一人当たりの児童生徒数には特別支援学校,特別支援学級も含まれている。

図表2-2-30 学級規模の基準[国際比較]
  学校種 学級編制基準
アメリカ
(ケンタッキー州
の場合)
初等・中等学校
※初等学校,中等学校の在学
  年数は州によって異なる
就学前教育~第3学年 24人(上限)
第4学年 28人(上限)
第5~6学年 29人(上限)
第7~12学年 31人(上限)
英国 小学校

中等学校
第1-2学年 30人(上限)
第3-6学年 なし
なし
フランス 幼稚園・小学校
中等学校
前期・コレージュ
後期・リセ
なし(児童数と地域事情に応じて,国の地方事務所(県レベル)が教員数と
1学級当たり平均児童数を決定。教員当たり平均児童数は17-20)
なし(生徒数と地域事情に応じて,国の地方事務所(地域圏レベル)が教員
数を決定。教員当たり平均生徒数はコレージュで21-24人)
ドイツ
(ノルトライン・
ベストファーレン州
の場合)
基礎学校
中等教育
 ハウプトシューレ
 ギムナジウム
第1-4 学年24人(標準) 18-30人(範囲)

第5-10 学年24人(標準) 18-30人(範囲)
第5-10 学年28人(標準) 26-30人(範囲)
日本 小学校
中学校
高校
40人(上限)
40人(上限)
40人(標準)

(出典)文部科学省調べ

図表2-2-31 一学級当たり児童生徒数[国際比較]

国公立学校での平均学級規模(2007年)は,初等教育28.1人,前期中等教育33.0人であり,OECD平均を上回り,もっとも高い国の一つ。
(日本の数値が,学校基本調査に基づく数値と異なるのは,各国間比較のため特別支援学級を除いていることなどによる)

図表2-2-31 一学級当たり児童生徒数[国際比較]

(出典)OECD「図表で見る教育(2009年版)」表D2.1

図表2-2-32 教員一人当たり児童生徒数[国際比較]

 日本の国公私立学校での教員1人当たり児童生徒数(2007年)は,初等教育19.0人,前期中等教育14.8人であり,OECD平均を上回る。
(日本の数値が,学校基本調査に基づく数値と異なるのは,各国比較のため校長・教頭を除いていることなどによる)

図表2-2-32 教員一人当たり児童生徒数[国際比較]

前期中等教育のうち,アイルランド,オーストラリア,オランダ,ルクセンブルグ,ロシアは中等教育合計の数値を使用した
(出典)OECD「図表で見る教育(2009年版)」表D2.2

5.平成23年度以降の学級編制と教職員定数の在り方について

 文部科学省においては,平成23年度から,新しい学習指導要領が順次完全実施されること等を踏まえ,教育関係団体や有識者からの意見聴取のほか,国民の皆様からの幅広い御意見の募集を行いながら,平成23年度以降の学級編制や教職員定数の改善の在り方について,本格的な検討を行っています。

(2)義務教育費国庫負担制度

 義務教育費国庫負担制度は,すべての国民が,全国どの地域においても無償で一定水準の義務教育を受けられるようにするため,義務教育費の大半を占める公立の義務教育諸学校の教職員給与費について,国と都道府県の負担によりその全額を保障するものです。この制度は,学級編制や教職員定数の標準を定める法律とあいまって,教育の機会均等とその水準の維持向上のために重要な役割を果たしており,結果として全国約70万人の教職員給与費の総額約5兆円が確保されています。
 この義務教育費国庫負担制度は,確実な財源保障の機能は有するものの,かつては,給与費目ごとに国庫負担金の額が決められたり,地方独自の少人数学級に伴う給与負担を国庫負担の対象に出来ないなど,地方にとって必ずしも使い勝手が良い制度ではないとの指摘がありました。このため,平成16年度には,義務教育に関する地方の自由度を拡大する観点から,国庫負担金総額の範囲内で自由に使用することができる「総額裁量制」が導入されました。これにより,少人数学級の実施など都道府県独自の取組が促進されました(図表2-2-33)。
 その後,国庫補助負担金,税源移譲を含む税源配分,地方交付税の在り方を一体的に見直すこととした「三位一体の改革」においては,義務教育費国庫負担制度も検討の対象となり,平成18年度から,国の負担割合が2分の1から3分の1に引き下げられました。
 なお,近年の厳しい地方財政状況の影響もあり,教職員給与費の確保に苦慮している都道府県も多く見られるようになり,教職員人件費を国が定める基準まで確保出来ていない県は,平成18年度までは6県と一部の県にとどまっていたものの,それ以降は急増しており,平成20年度には16県となっています(図表2-2-34)

図表2-2-33 総額裁量制の概要

図表2-2-33 総額裁量制の概要

図表2-2-34 教職員人件費を国が定める基準まで確保出来ていない自治体数(都道府県)

図表2-2-34 教職員人件費を国が定める基準まで確保出来ていない自治体数(都道府県)

(出典)文部科学省調べ

(3)教員給与

 日本の将来を担う子どもたちにより良い教育を行うためには,時代を問わず,優秀な教員の確保がきわめて重要な課題です。
 ところが,昭和40年代になると,優秀な人材が給与の低い教職を避けて他職種を目指すようになり,教職員の質の確保が大きな問題となりました。このため,優秀な人材を確保するためには,教員の処遇改善を図る必要があるとして,義務教育水準の維持向上を図ることを目的に,昭和49年,教員の給与を一般の公務員より優遇することを定めた,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)が制定されました。
 この人材確保法を受け,教員給与について3次に渡る計画的な改善により合計25%増の予算措置が行われた結果,昭和55年度でみると,教員の給与月額は,一般行政職員と比較して7%程度上回ることになりました。
 これにより,公立学校教員採用試験の競争倍率が上昇するとともに国立大学の教員養成学部の応募倍率が他学部に比べて相対的に上昇しました。このように,人材確保法による給与改善に伴い,教職を目指す若者が増えたことで,優秀な人材の確保について成果がありました。
 その後,公務員全般の給与改定等の影響もあり,平成18年度に調査した過去5年間の平均では,一般行政職に対する教員給与の優遇分は2.76%まで低下しました。
 この優遇分についても,平成18年7月に閣議決定された,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「基本方針2006」)に基づき,平成23年度までに義務教育費国庫負担額を縮減することとして,平成20年度及び平成21年度予算により,教員給与を段階的に縮減する予算措置が行われました。
 平成22年度予算においては,従来の方針によらず,学校現場からの要請が強い大幅な教職員定数改善を行うため,現下の厳しい財政状況の下で教員給与のうち,「義務教育等教員特別手当」と「給料の調整額」に要する経費を縮減することとなりました。

第13節 信頼される学校づくりを目指して

1 自律的な学校運営に向けて -地域の参画を通して-

 地域に開かれ信頼される学校を実現するため,学校には,保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ,家庭や地域社会と連携協力していくことが求められています。それと同時に,保護者や地域住民が,学校と共に地域の教育に責任を負うとの認識の下,教育活動その他の学校運営に積極的に協力していくことも重要です。
 そのため,学校が,地域や子どもたちの実情に応じて主体的に創意工夫のある教育活動を展開し,自主的・自律的な学校運営ができるよう,教育課程,予算などについての学校の裁量を拡大することが求められています。
 また,保護者や地域住民の参画しやすい環境を整え,開かれた学校づくりを促進していくために,学校評議員制度や,コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を活用していくことが重要です。
 さらに,学校評価を通じ,学校が組織的・継続的にその運営の改善を図ることにより,保護者や地域住民に対する説明責任を果たすとともに,学校・家庭・地域の共通理解を深め,連携協力の促進を図り,また,学校の設置者などによる支援や条件整備などの改善を通じて,教育の質の保証・向上を図ることが期待されています。
 これらの活動を通じて,保護者や地域住民に信頼される学校づくりを進めていくことが求められています。

(1)副校長等の学校における新たな職の設置

 校長のリーダーシップの下,近年の学校教育が抱える課題の複雑化・多様化に対応するために,組織的・機動的な学校運営が行われるよう,学校の組織運営体制や指導体制の充実を図るため,平成19年6月に学校教育法を改正し,新たな職として副校長(副園長),主幹教諭,指導教諭を置くことができることとしました。
 これらの職については,各教育委員会の判断により,平成20年度から設置されており,21年4月1日現在,副校長は29県市で3,380人,主幹教諭は48県市で15,301人,指導教諭は17県市737人が置かれています。
 それぞれの職の職務内容は次のとおりです。
 副校長は,校長から命を受けた範囲で校務の一部を自らの権限で処理することができます。一方,教頭は,校長を助けることの一環として校務を整理するものです。副校長と教頭を併せて置く学校においては,教頭は,校長や副校長を補佐する立場となります。
 主幹教諭は,命を受けて担当する校務について一定の責任を持って取りまとめ,整理し,他の教諭などに対して指示することができます。一方,これまでも各学校に置かれている主任は,職ではなく,教諭に対して職務命令として命じられるものであり,担当する校務について連絡調整や指導,助言を行うものです。
 指導教諭は,学校の教員として自ら授業を受け持ち,所属する学校の児童生徒等の実態などを受けて,他の教員に対して教育指導に関する指導,助言を行います。指導教諭を設置することによって,個々の教員の授業力が向上し,各学校において優れた教育実践が行われることが期待されます。

(2)学校の裁量拡大

 地域に開かれた特色ある学校づくりを実現するためには,各学校において,それぞれの教育理念や教育方針に基づき,子どもや地域の状況などに応じて,自主的・自律的な学校運営を行うことが必要です。このような観点から,各教育委員会において,学校の裁量を拡大するため次のような取組が進んでいます(図表2-2-35)。

○学校管理規則における教育委員会の関与の縮減
 学校と教育委員会の関係を定めている学校管理規則について,これまで教育委員会の許可や承認などが必要であったものを届出に改めるなど,教育委員会の関与を縮減する取組が進められています。
 例えば,これまで教育委員会が一律に定めていた長期休業期間について,届出があれば校長が学校の実情に応じて夏休みを縮減したり,2学期制を導入できるようにしています。

○校長裁量経費を措置するなど,学校予算における学校の裁量を拡大
 従来細かな費目ごとに配当していた学校予算の仕組みを見直し,一定総額の中での学校独自の予算編成を可能とする仕組みを取り入れた教育委員会が増えています。

図表2-2-35 各市町村における学校の裁量拡大の取組状況

(1)学校管理規則において,学校の各種取組について許可・承認による関与を行わない教育委員会の割合

(1)学校管理規則において,学校の各種取組について許可・承認による関与を行わない教育委員会の割合

(出典)文部科学省調べ

(2)学校裁量予算を導入している教育委員会の割合

(2)学校裁量予算を導入している教育委員会の割合

(出典)文部科学省調べ

(3)学校評議員制度

 学校評議員制度は,教育委員会に学校評議員として委嘱された保護者や地域住民などが,校長の求めに応じて学校運営に関する意見を述べるものです。この制度を活用することにより,学校は

  1. 学校運営に関する保護者や地域住民などの意向を把握し反映すること
  2. 学校運営に保護者や地域住民の協力を得ること
  3. 学校運営の状況などを周知するなど学校としての説明責任を果たしていくこと

が期待されています。
 平成20年度において学校評議員(類似制度を含む)を設置している公立学校は86.5%,国立学校は99.2%となっており,最近においては,学校関係者評価の評価者に任命するなど,保護者や地域住民の学校への参画を促すために活用している例も多く見られるところです。

(4)コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

 公立学校に対する国民の多様な期待にこたえ,地域に開かれた信頼される学校づくりをより一層進めるためには,保護者や地域住民の様々な意見や要望が学校運営に的確に反映されることが重要です。
 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)は,平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正により導入されました。
 この制度は,学校の設置者である教育委員会の判断により学校運営協議会を設置することを通じて,保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って公立学校の運営に参画することを可能とするものです(図表2-2-36)。

図表2-2-36 コミュニティ・スクールのイメージ

図表2-2-36 コミュニティ・スクールのイメージ

 教育委員会からコミュニティ・スクールに指定された学校には,保護者や地域住民を委員とした「学校運営協議会」が設置されます。学校運営協議会は,校長が作成する学校運営の基本的な方針について承認を行うことや,学校運営全般について教育委員会・校長に意見を述べることなどができます。
 このように,保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画することにより,保護者や地域住民の学校に対する意見や要望を迅速かつ的確に学校運営に反映することができるようになります。
 また,平成18年12月に改正された教育基本法では,「学校,家庭及び地域住民その他の関係者は,教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに,相互の連携及び協力に努めるものとする。」(第13条)と規定されており,コミュニティ・スクールなどの制度を活用して,学校と家庭・地域が一層連携を強めてより良い教育活動を進めていくことが期待されています。
コミュニティ・スクールの導入によって得られた成果として,
◆教員の意識が変わり,それが開かれた学校,授業改善へとつながっていく
◆校長の経営方針が理解され,その実現のためにはどうしたらよいか,地域の「応援体制」が整ってきた
◆課題解決に向けて学校と地域が一体となって取り組めている
◆学校を中心として地域の活性化や結びつきが強くなった
◆多くの方々が学校に来てくれるようになり,学校に活気が出てきた
といった声があがっています。
 文部科学省では,コミュニティ・スクールの推進のため,コミュニティ・スクールを導入しようとする各学校の実情に応じた制度運用の方策を研究・開発する「コミュニティ・スクール推進事業」(平成21年度は全国239校に委嘱)や,先進取組の成果発信などを通じて更なる制度普及を図る「コミュニティ・スクール推進協議会」(同年度は東京・岩手・徳島・長野で開催)等を実施しています。
 平成21年4月1日現在,コミュニティ・スクールとして指定を受けている学校は,全国で478校となっており,着実に全国に広まりつつあります。今後さらに,200校を上回る学校でコミュニティ・スクールの指定が予定されていたり,指定に向けた検討が進められたりしています(図表2-2-37)。

図表2-2-37 公立学校における学校運営協議会を置く学校(コミュニティ・スクール)数の推移

図表2-2-37 公立学校における学校運営協議会を置く学校(コミュニティ・スクール)数の推移

(出典)文部科学省調べ

(5)学校評価の推進

 学校の自主性・自律性が高まる中で,その教育活動などの成果を検証し,学校運営の改善と発展を目指すことが重要です。また,学校が説明責任を果たし,家庭や地域との連携協力を進めていくことが求められています。
 このような状況を踏まえ,学校教育法が平成19年6月に改正され,学校評価を行い,その結果に基づき学校運営の改善を図り,教育水準の向上に努めることや,学校の情報提供に関する規定が新たに設けられました。
 この学校教育法の改正を受けて,学校教育法施行規則が平成19年10月に改正され,以下の事項が規定されました。

  1. 自己評価の実施・公表
  2. 自己評価結果を踏まえた学校関係者評価の実施・公表
  3. 自己評価結果及び学校関係者評価結果の当該学校の設置者への報告

 また,上記の法令改正を受け,平成20年1月に高等学校や特別支援学校まで対象にした形で「学校評価ガイドライン〔改訂〕」を,同年3月には「幼稚園における学校評価ガイドライン」を策定し,学校評価を以下のように整理しました。

  1. 各学校の全教職員が行う自己評価
  2. 保護者や地域住民などが能動的・主体的に評価に参画する学校関係者評価
  3. 学校と直接関係を有しない専門家などによる客観的・専門的な視点から行う第三者評価
    また,「学校評価ガイドライン〔改訂〕」では,以下の点を強調しています。
  1. 学校評価を実効性あるものとし,かつ,学校の事務負担を軽減する点から,自己評価について,網羅的で細かなチェックとして行うのではなく,重点化された目標を設定し精選して実施すること
  2. 学校関係者評価については,自己評価の客観性・透明性を高めることとともに,学校の状況に関する共通理解を深め,学校・家庭・地域の連携協力を促すことを目的とすること
  3. 学校評価の結果を設置者に報告することにより,設置者が学校に対して適切に人事・予算上の支援・改善策を講じることが重要であること

 各学校においては,法令の規定に基づき,毎年度,自己評価を実施するとともに,その結果を広く公表し,設置者に報告することが求められています。また,報告を受ける設置者においては,学校の自己評価などの結果の報告を踏まえ,必要な支援を行っていくことが期待されています。文部科学省では,引き続き,各学校や設置者の創意工夫に基づく学校評価の促進に向けての取組を進めています。
 また,学校関係者評価の実施は努力義務となっており,平成20年度において実施している公立学校は81.0%です。ガイドラインにおいてさらに検討を深めるとしていた第三者評価については,「学校の第三者評価のガイドラインの策定等に関する調査研究協力者会議」を開催して検討を行い,平成22年3月31日に「学校の第三者評価のガイドラインに盛り込むべき事項等について(報告)」を得たところです。今後,本報告の趣旨を踏まえ,教育関係者等の意見を幅広く聞いた上で,「学校評価ガイドライン」の改訂を行う予定です。

(6)学校選択制

 市町村教育委員会は,その市町村の小・中学校が2校以上ある場合は,児童生徒の就学すべき学校を指定することとされています。その際,市町村教育委員会では,地域の実情や地理的条件を踏まえて各学校の通学区域を設定し,これに基づいて就学すべき学校を指定することが一般的です。
 市町村教育委員会の中には,就学校の指定に当たり,あらかじめ,保護者の意見を聴取しているところもあり,このような取組は,学校選択制と呼ばれています。文部科学省では,平成15年3月に学校教育法施行規則を改正し,市町村教育委員会の判断により,学校選択制を導入できることを明確にしました。また,これまで5回にわたり,学校選択制に取り組んでいる市町村の事例集を配布しています。

(7)学校の適正配置

 今後,少子化に伴う学校の小規模化がさらに進むことが予想される中,将来にわたって子どもが「生きる力」を培うことができる学校教育を保障する観点に立ち,学校の適正配置の在り方について検討することが重要です。
 適正配置の進め方については,学校の設置主体である地方自治体が,地域の実情を踏まえながら判断するものです。中央教育審議会初等中等教育分科会では,子どもにとって,どのような学校規模が望ましいのか等といった教育的な観点に立ち,適正配置を進める際の考え方等について,審議を行い,平成21年7月に主な意見等の整理として報告が行われました。

(8)学校段階間の連携・接続

 児童・生徒などの昨今の様々な状況に対応していくため,各学校段階間の円滑な連携・接続は重要であり,多様な学校間連携の在り方を検討していくことが必要です。そこで,平成21年7月の中央教育審議会初等中等教育分科会において,学校段階間の連携・接続等について専門的な調査審議を行うため,「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」の設置が決定されました。今後,この作業部会で審議を深めていくこととしています。

(9)学校事務の共同実施について

 現在,公立小・中学校の事務職員は,約90%の学校が1人配置となっていますが,教員の事務負担を軽減し,教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保していくためには,複数の学校事務を共同で実施する体制を整備し,学校経費の会計管理や児童生徒の情報管理など,様々な業務の効率化を図っていくことが必要です。このため,文部科学省においては,学校事務の共同実施を行うため,事務職員の加配定数を措置しているところです。
 また,平成21年度には「学校マネジメント支援に関する調査研究事業」において,教員の事務負担軽減を図る観点からの学校事務の共同実施の取組についても調査研究を行ったところです(岩手県,新潟県,広島県)。

2 教育委員会制度について

 教育委員会は,地方教育行政の中心的な担い手であり,地域の学校教育,社会教育,文化,スポーツなどに関する事務を担当する機関として,すべての地方自治体に置かれています。教育委員会は,教育における政治的中立性の確保,継続性・安定性の確保,地域住民の多様な意向の反映を実現するため,自治体の長から独立した合議制の執行機関として設置されているものです。
 教育委員会は原則5人(都道府県又は市については6人以上,町村については3人以上とすることもできます。)の委員から構成され,その委員は,都道府県知事や市町村長が議会の同意を得て任命します。教育委員会はその地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定し,また,教育委員のうちから教育長を任命します。教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属する事務を行います(図表2-2-38)。

図表2-2-38 教育委員会の組織

図表2-2-38 教育委員会の組織

 教育委員会に対しては,地域における身近な行政機関として定着し,教育の機会均等・教育水準の向上及び地域の実情に応じた教育の推進に寄与してきたとの評価がある一方で,その役割を十分に果たしていないという指摘もあります。このような指摘をうけ,教育委員会がより高い使命感をもって責任を果たせるようにすることなどを目的に地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正されました(平成20年4月から施行)。これにより,学校その他の教育機関の設置及び廃止に関することなど,教育長に委任せず教育委員会が自ら行わなければならない事務が明確にされたほか,学識経験者の知見を活用して教育委員会の活動状況の点検・評価を行うこと,教育委員の選任に当たっては保護者が含まれるようにすることなどが規定されました。
 しかし,教育委員会制度をめぐっては,なお様々な意見があり,文部科学省としても,その在り方について,関係者の意見を幅広く聴きながら議論していくこととしています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --