ここからサイトの主なメニューです

第1章 生涯学習社会の実現と教育政策の総合的推進

Topic「図書館の新たな役割」

1.「図書館海援隊」プロジェクトについて

 従来,一部の公立図書館では,来館者に対する情報提供・相談業務を発展させ,地域が抱える様々な課題に対する課題解決支援サービスを実施しています。
 平成22年1月5日に,上記サービスに関する知見の豊富な有志の図書館が「図書館海援隊」を結成し,貧困・困窮者に対する支援としてハローワークなどの関係部局と連携しながら,より本格的・継続的にその活動を開始しました。
 その後,新たな図書館が加わり,さらに貧困・困窮者支援以外にも地域や住民の課題解決を支援するため,医療機関・保健福祉センター・法テラス等関係部局と連携しながら,医療・健康,福祉,法務等に関する役立つ支援・情報の提供を行っています。
 図書館での課題解決支援活動の例として,次のことがあります。

  • 労働・生活に関するトラブル解決に役立つ図書などの紹介・提供や相談会の開催
  • 心の問題,健康に関する図書などの紹介・提供や相談会,講演会等の開催
  • 自己啓発,技術・資格・就職に関する図書などの紹介や提供
  • 行政の支援制度に関する資料などの提供,説明会・セミナーの開催

2.「新しい公共」の担い手の「居場所」と「出番」の確保

 現在,教育や子育て,まちづくり,福祉等,今まで「官」が主として担ってきた分野において,地域の人々が参加し,「官」の代わりにそれらの分野を担っていくという「新しい公共」の実現が求められています。
 社会教育施設は,身近な地域のどこにでもあり,誰でもその活動に参加することが可能な施設であること,様々な情報や活動の集中する施設であることなどから,地域の核となり,NPO・大学・企業等とのネットワークにより,地域の課題に応える「新しい公共」の中心となる施設として機能強化が図られることが必要です。
 特に,図書館には,全国至るところにある施設・様々な情報・その情報を使いこなすための専門的職員(司書)の配置があります。そのため,それらを活かして,行政,市民,NPO,学習グループ,大学,企業等が有する各種の資源を統合し,住民による住民のための地域課題解決に向けてのまとめ役となる新たな役割を果たすことが求められています。このため,図書館海援隊参加館もしくは地域が抱える様々な課題に対する解決支援サービスを実施している図書館が,「新しい公共」を担う人々の連携・情報共有・アドバイスの中核の一つとなることにより,地域の「絆」の強化や活性化にも効果をもたらすものと期待されます。

(「図書館海援隊」参加図書館の連絡先・主な取組内容については参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/kaientai/1288450.htm

鳥取県立図書館『働く気持ち応援コーナー』のテープカットの様子 平成22年3月12日

鳥取県立図書館『働く気持ち応援コーナー』のテープカットの様子
平成22年3月12日

第1章 総論

 社会経済の大きな変化の中で,人生の様々な段階における多様な目的を持った学びや,そのための環境づくり,すなわち「生涯学習社会」の実現に向けた取組の重要性が増大しています。「生涯学習社会」とは,国民一人一人が自己の人格を磨き,豊かな人生を送ることができるよう,その生涯にわたって,あらゆる機会,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の意味で用いられます。
 政府としては,生涯学習の振興に向けて,平成2年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」を策定し推進体制の整備を図ることとし,平成18年に改正した教育基本法に生涯学習の理念を明記したところです(第3条)が,まだ生涯学習社会の実現は道半ばであり新たな課題が生じています。
 まず,子どもたちだけではなく,成人の学習活動や地域活動・社会活動を行う人の割合や活動時間は近年減ってきていることが様々なデータから浮かび上がってきます。例えば,世論調査によれば,生涯学習をしてみたいと思う人の割合は,全体の約7割を超えていますが,実情としては,約5割の人が,この1年くらい生涯学習を行っていないと回答しています。この理由として,仕事が忙しくて自己啓発を行う余裕がないことや費用が多額にかかることが挙げられています(図表2-1-1,図表2-1-2)。
 しかし,以下に示すような現在の社会状況の変化の中では,生涯学習の意義がますます高まっています。

図表2-1-1 生涯学習に関する世論調査結果

○生涯学習に対する今後の意向

○生涯学習に対する今後の意向

出典:内閣府「生涯学習に関する世論調査」よリ作成
(備考1)対象者は,平成20年:全国20歳以上の者3,000人,平成17年:全国15歳以上の者5,000人(ただし,本設問への回答は20歳以上の者),平成11年:全国20歳以上の者5,000人
(備考2)項目「今後生涯学習をしてみたいと思うか」という問に対する回答

○生涯学習の実施状況

・この1年くらいに生涯学習を行っていない者の割合

出典:内閣府「生涯学習に関する世論調査」よリ作成

(備考1)対象者は,平成20年:全国20歳以上の者3,000人,平成17年:全国15歳以上の者5,000人,平成11年:全国20歳以上の者5,000人
(備考2)項目「この1年くらいにこのような※生涯学習を行ったことがあるか」という問に対する回答

※趣味的なもの(音楽,美術,華道,舞踊,書道など),教養的なもの
 (文学,歴史,科学など),社会問題(社会・時事問題,国際問題,環境問題など),健康・スポーツ(健康法,医学,栄養,ジョギング,水泳など),家庭生活に役立つ技能(料理,洋裁,和裁,編み物など),育児・教育(幼児教育,教育問題など),職業上必要な知識・技能(仕事に関係のある知識の習得や資格の取得など),語学(英会話など),パソコン・インターネットに関すること,ボランティア活動やそのために必要な知識・技能(点訳,手話,介護など),自然体験や生活体験などの体験活動,勤労体験など

図表2-1-2 ワーク・ライフ・バランスと生涯学習

○地域の活動などへの参加を妨げる要因

○地域の活動などへの参加を妨げる要因

出典:内閣府「国民生活選好度調査」(平成15年度)より作成

(備考1)項目「NPOやボランティア、地域での活動に参照する際に苦労すること,又は参加できない要因となることはどんなことですか。あなたにとってあてはまるものに1つ○をお付けください。(○は1つ)」への回答
(備考2)回答者は全国の15~79歳までの男女3,908人

○自己啓発の問題点

○自己啓発の問題点

出典:厚生労働書「能力開発基本調査報告書平成21年度」より
(備考1)調査対象は,日本国全域において日本標準産業分類による15大産業に属する30人以上の常用労働者を雇用する事業所から抽出した約6,700事業所に属している労働者のうち,一定の方法により抽出した約20,000人。
(備考2)項目「自己啓発にあたって,どのような問題点を感じますか。
 該当するものすべてに○をつけてください。」への回答

  1. 少子高齢化,人口減少の中で,一人一人の能力・個性を最大限に伸ばすとともに,多様な人材を活用することは我が国の経済社会にとっても不可欠となっていること,
  2. 特に,グローバル化の中での産業構造や雇用構造の急激な変化の下で,これに対応して生涯にわたり職業能力や就業能力を持ち,社会生活を営んでいく上で必要な知識・技能等を学び直すことが求められていること,
  3. また,非正規雇用の増大や企業の破たんのリスクなどを背景として,格差や貧困の問題が指摘される中,個人が知識や技能を身に付け,経済的に自立することを支える教育・能力開発の機会の充実が求められること,
  4. さらに,昨今,自立と共生の理念や社会における絆の再生の重要性を踏まえて,行政だけでなく地域住民や企業,NPOなど多様な主体が参画して社会の公益を実現していくことが課題となっており,活力ある地域づくりの実践やそのための学びの活動として生涯学習が重要となっていること,
  5. 他方,高齢化社会の到来により,高齢者が豊かな生活を送るため,知的欲求に応える教育機会の充実が求められていること

 特に,4.で述べた点に関して,地域づくりや地域が持つ力の向上は,様々な課題についての学びとその実践の過程そのものであると捉えることができます。例えば,地域の教育力の低下が指摘されている(図表2-1-3)中,学校現場においても地域ぐるみで学校を支援する取組として,学校支援地域本部や放課後子ども教室などの実践が進められています。これらの取組は,子どもにとっての学びを豊かにし,学校の機能を強化するだけでなく,参加する地域の方々にとっても学びやその成果の活用である生涯学習としての側面を持っており,このことが地域の絆を強め,活力ある地域づくり,ひいては社会全体の活性化にもつながることが考えられます。
 このように,社会経済が大きく変化する中で,今改めて生涯学習という視点で教育や教育政策を総点検していくことは極めて重要であると考えられます。
 現在,経済界,労働界,国・地方公共団体が一体となって,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の実現に向けて取り組んでいるところですが,仕事と生活の調和にとどまらず,「学習」や「地域活動」の充実によって「仕事」と「生活」がともに豊かになると考えられます。このため文部科学省では,言わば「ワーク・ラーニング・バランス」とも言うべき考えに立って,生涯にわたる学びが原動力となって社会が活性化されるよう様々な施策の推進に努めていきます。

図表2-1-3 地域の教育力について(意識調査)

図表2-1-3 地域の教育力について(意識調査)

※14項目の中から3つまで選択。上記グラフは上位5項目の回答率。
(出典)「地域の教育力に関する実態調査」(平成17年度)

第1節 教育政策の総合的推進

1 教育基本法と教育振興基本計画

 平成18年12月「教育基本法」が改正され,同法第17条第1項に基づき,20年7月,政府として初めての教育に関する総合的計画として,「教育振興基本計画」(「計画」)が閣議決定されました。
 計画では,「教育基本法」に示された理念の実現に向け,今後10年間を通して目指すべき教育の姿として,1.義務教育修了までに,すべての子どもに,自立して社会で生きていく基礎を育てる,2.社会を支え,発展させるとともに,国際社会をリードする人材を育てる,という二つを掲げています。
 また,この目標の実現のために,施策の四つの基本的方向を明らかにし,平成20年度から24年度までの5年間に,取り組むべき77の具体的施策を打ち出すとともに,これらの施策を着実に実施し,教育改革を実効あるものとするために,PDCAサイクルを重視することで,より効率的で効果的な教育の実現を目指しています。
 さらに,教育の振興のためには,国と地方公共団体がそれぞれの役割を果たすとともに,相互に連携・協力することが重要であることから,地方公共団体においても国の計画を参考にして,それぞれの地域の実情に応じた計画の策定に努めることとなっています。平成22年3月31日現在,36の都道府県・政令指定都市で計画が策定されています。
 今後も,「教育立国」の実現に向けて,施策の状況について不断の点検を行いながら計画を着実に実施し,教育の振興のための一層の取組を進めていきます。

2 教育政策の今後の展開

 さらに,最近の教育をめぐる現状を踏まえ,様々な施策を展開しています。

(1)教育費負担の軽減

 昨今の経済と雇用状況の悪化の中で,教育の経済的負担の不安をなくし,全ての意志ある人が安心して質の高い教育を受けることができるようにしなければならないという考えの下,平成22年4月より,公立高校の授業料は不徴収,私立学校等では就学支援金を支給することにより教育費負担の軽減を図りました。また,高等教育についても,各大学の授業料減免の拡大への支援や奨学金事業の拡充を進めています。

(2)学校の教育力の向上

 公教育の質の向上のため,国際的に見て低い水準にある教育への投資をしっかりと確保し,「ヒューマン」「ソフト」「ハード」のあらゆる面において,学校の教育環境を整備する必要があります。特に教員の質と数の充実は最重要課題として,教員の資質向上方策の見直しや教職員定数の改善の在り方について検討を進めています。また,教材のデジタル化などの教育の情報化の推進や指導方法・学習方法の変革とそれを支える学習環境づくり,環境教育,コミュニケーション教育など,21世紀にふさわしい学校教育への転換を目指しています。さらに,学校施設の安全性を確保するため,積極的に耐震化に取り組んでいます。

(3)世界をリードし貢献する大学の実現

 大学が我が国の将来や世界,そして地域に貢献する機能を充実していくため,学生の学力や就業力の育成など社会の期待に応える大学教育の推進やイノベーションの創造に貢献し世界をリードする大学院の形成・強化などに取り組みます。また,社会人がいつでも大学で学び,その成果を社会で活せる環境づくりや,大学の人材育成や研究成果の活用による地域産業の活性化についても支援するとともに,喫緊の課題である医師不足解消のための医学部の入学定員の増員や優れた医療人の養成,地域医療に貢献する大学病院の充実を行います。さらに,大学間の国際交流や留学生の受入れ・派遣の拡充などに取り組み,今後の東アジア交流やアジア太平洋協力を支える人材の育成と域内の共通課題の解決に長期的視野を持って貢献していきます。

(4)新卒者の就職支援と社会人・職業人として自立できる人材の育成

 学生・生徒の就職環境は,大卒予定の内定率が過去最低水準となるなど,非常に厳しい状況にあり,政府の緊急雇用対策を踏まえ,関係省庁と協力して新卒者の就職支援に取り組んでいます。一方,若者の非正規雇用の増加や新卒者の早期離職など,学校から社会・職業への移行を巡る課題が顕在化しています。このため,各学校段階を通して,社会・職業との関連を重視したキャリア教育・職業教育の充実を進めることにより,社会人・職業人として必要な能力を身につけ,勤労観・職業観を確立した人材の育成に努めています。

(5)「新しい公共」の実現

 官だけではなく,市民,NPO,企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり,身近な分野で活躍していく「新しい公共」を実現することが求められています。特に,学校支援地域本部など地域による学校の教育支援やスポーツ,文化分野は,「新しい公共」が発展する重要な活動の場です。
 今後,学校教育・社会教育を通じて,担い手となる人材の育成や,学習・活動の場の確保,学校や社会教育・文化・体育施設,NPOなどのネットワーク化,これらを支えるための制度改善と文化の醸成を推進します。

第2節 家庭・地域の教育力の向上と青少年の健やかな成長

 平成18年12月22日に公布・施行された「教育基本法」第13条において,「学校,家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が新たに規定されたように,子どもたちを健やかにはぐくむためには,学校・家庭・地域が連携協力して,地域全体で教育に取り組むことが重要です。また,未来への夢や目標を抱き,社会をつくる営みに積極的に取り組むことができる青少年を育成するためには,青少年の心と体の健やかな発達を促し,正義感・倫理観などをもった豊かな人間性をはぐくむことが重要です。

1 家庭の教育力の向上に向けた取組

(1)家庭教育の現状と課題

 家庭教育は,すべての教育の出発点であり,子どもが基本的な生活習慣・生活能力,豊かな情操,他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観,自立心や自制心,社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を果たすものです。しかしながら,近年の都市化や核家族化,少子化,地域における地縁的なつながりの希薄化など,家庭や家族を取り巻く社会状況の変化の中で,家庭の教育力の低下が指摘されています。平成20年度に文部科学省が行った「家庭教育の活性化支援等に関する特別調査研究」においても,約8割の親が家庭の教育力が低下していると実感するなどの結果が出ています。
 このような状況の中で,「教育基本法」において,新たに家庭教育に関する規定(第10条)が設けられました。さらに,「教育振興基本計画」においても,国が行う重点施策として,身近な地域においてきめ細かな家庭教育支援が実施されるよう促すことが盛り込まれました。
 今後,家庭教育支援の充実を進める上で,地域コミュニティや企業を含む社会全体で家庭教育を支えていくためのより良い環境を作っていくことが重要であり,孤立しがちな親や子育てに関心のない親を含む様々な状況にある子育て中の親たちに対しても,きめ細かな家庭教育支援を積極的に進めていくことが課題となっています。

(2)家庭教育を支援するための取組

1.家庭教育支援基盤の形成

 平成20年度は,身近な地域における家庭教育支援の基盤を形成するため,子育てサポーターリーダーを中心として,民生委員・児童委員などの地域の人材から構成する「家庭教育支援チーム」を組織し,チームが核となって家庭教育に関する情報提供や相談対応,保護者会など多くの親が集まる機会を活用した学習機会の提供などを行う取組を実施しました。平成21年度は,仕事などで学習機会へ参加できない,家庭教育や子育てに無関心,地域で孤立化しているといった様々な状況にある子育て中の親を支援するため,支援チームが家庭や企業を訪問して,家庭の状況に応じた相談支援をする手法の開発を行うとともに,ICTを活用した支援施策の一つとして,地域SNSを活用し,家庭教育に関する「コミュニティ」を設け,親同士の交流の促進や学習機会への参加促進などを行う調査研究を実施しました。
 平成22年度は,これまでの成果を活かし,身近な地域においてすべての親が家庭教育に関する学習や相談をできる体制が整うよう,引き続き,地域人材の養成・活用等による,学校と家庭をつなぐ,地域の主体的な取組を支援していきます。

2.家庭教育に関する情報の提供

 家庭教育に関する情報の提供として,親が家庭を見つめ直し,自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう,「家庭教育手帳」を作成し,電子コンテンツとして全国の教育委員会などに提供して,家庭教育に関する学習機会などでの活用を促しています。

3.家庭におけるルールづくりの推進等

 平成21年度は,すべての教育の出発点である家庭において,家庭で話し合うことの大切さを呼びかける「親子でつくろう我が家のルール」運動を推進するため,標語を募集し,1万2,564件の応募の中から,優れた7作品について表彰を行いました。22年度も改めて家族の絆の大切さや家庭でのルールづくりの大切さなどを呼びかける取組を社団法人日本PTA全国協議会と連携して実施していきます。
 加えて,家庭・学校・地域社会において,児童生徒の健やかな成長と教育の充実のために重要な役割を担うPTAについて,子どもの生活実態調査や保護者の意識調査の実施や,子どもを取り巻く様々な課題をテーマにしたシンポジウムの開催を支援することにより,PTAの活性化や保護者同士のネットワークの強化を図っています。

Colum No.3 南魚沼市訪問型家庭教育支援チーム「だんぼの部屋」の取組 (新潟県南魚沼市地域家庭教育推進協議会)

1.「だんぼの部屋」からのアウトリーチ

 新潟県南魚沼市内のモデル校として六日町小学校内の空き教室を利用して,訪問型家庭教育支援チーム「だんぼの部屋」を設置し,そこを拠点に,六日町中学校区を範囲として活動を行っています。
 「だんぼの部屋」は学校の玄関近くの教室を使用しているほか,玄関に「だんぼの部屋」専用チャイムを設けるなど,保護者が訪れやすい環境を作って活動を行っています。チーム員は部屋を訪れる保護者とのかかわりだけでなく,子どもたちとのかかわりを通して家庭への訪問活動を展開しています。例えば,「だんぼの部屋」のしゃべり場サロンでのチーム員と子どもとの会話から,保護者への支援につながっていくケースがあります。また,学校内に支援チームの部屋を設置することは,学校と連携が取りやすくなるなど,成果が現れています。
 具体的な支援活動としては,毎月発行している「だんぼ通信」を家庭や企業に届けたり,朝夕の児童への声掛けなど,誰もが容易にできることから始めました。ちょっとした活動でも回数を重ねることで,良好な関係づくりができました。また,チーム員が地域の人ということも安心感を与え,校区内の小・中学校や家庭への訪問件数は,声掛けなどを含めると70回程度に上っています。日々の訪問活動を通して事前に問題を防止できたり,学校と連携して対応したり,専門機関につなげるなどの事例も多くありました。
 学校を活動拠点にして,保護者や地域の人との関係づくりを継続していくことが,家庭教育への支援につなげる最良の方法だと考えています。

読み聞かせの打合せをするチーム員

読み聞かせの打合せをするチーム員

2.出前講座や学校での交流の教室の開催

 家庭教育の重要性や親同士のつながりを深めようと,中学校区にある2つの小学校で入学前保護者学習会を活用した家庭教育出前講座「はじめましてこんにちは」を実施しました。初対面から初めは緊張していた保護者の方も,グループワークなどで和らいだ雰囲気となり,親同士の話し合いのきっかけとなりました。また,企業へ出向いて,県と共催で「時代を担う若きお父さん応援講座」を開催し,家庭で子どもと向き合うことの大切さを伝えることができました。
 他にも,時間の都合などで学校になかなか来られない家族などを対象に,週末に学校の施設を借りて,親子料理教室や工作教室を行い,保護者と学校とのパイプ役となるような取組も行っています。
 これからも,できることから,歩みを進めていきたいと考えています。

家庭教育出前講座「はじめましてこんにちは」

家庭教育出前講座「はじめましてこんにちは」

(3)子どもの基本的な生活習慣の育成に向けた取組

1.子どもの基本的な生活習慣の現状

 子どもたちが健やかに成長していくためには,適切な運動,調和のとれた食事,十分な休養・睡眠が大切です。しかしながら,最近の子どもたちを見ると,「よく体を動かし,よく食べ,よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠である基本的な生活習慣が大きく乱れています。こうした今日の子どもの基本的な生活習慣の乱れが,学習意欲や体力,気力の低下の要因の一つとして指摘されています。
 また,子どもの基本的な生活習慣は家庭だけでなく,親の長時間労働といった社会環境の影響を受けやすいことから,家庭における食事や睡眠などの乱れを個々の家庭や子どもの問題として見過ごすことなく,社会全体の問題として地域が一丸となり,子どもの健やかな成長を期して学習意欲や体力の向上を図るための取組を推進することが必要です。

(1)子どもの就寝時間

 平日23時以降に就寝する小学生の割合は約17%,平日24時以降に就寝する中学生の割合は約28%となっています(図表2-1-4)。

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

図表2-1-4 小・中学生における就寝時間

(出典)文部科学省「平成21年度全国学力・学習状況調査」
(対象)小学6年生約115万人,中学3年生約108万人

(2)子どもの朝食摂取

 最近の調査によれば,朝食を食べないことがある小・中学生の割合は,小学生で約11%,中学生で約18%に達しています(図表2-1-5)。また,毎日朝食を食べる子どもの方が,平成21年度「全国学力・学習状況調査」の平均正答率や,平成21年度「全国体力・運動能力,運動習慣等調査」の体力合計点が高い傾向にあることが分かっています(図表2-1-6,図表2-1-7)。
 こうした状況を考慮し,子どもの就寝時間や朝食摂取の状況を改善することについて,家庭だけでなく,国民全体で考え行動する社会的気運を高めていくこととしています。

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合

質問「朝食を毎日食べていますか」

図表2-1-5 朝ごはんを食べないことがある小・中学生の割合 質問「朝食を毎日食べていますか」

(出典)文部科学省「平成21年度全国学力・学習状況調査」
(対象)小学6年生約115万人,中学3年生約108万人

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

図表2-1-6 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係

(出典)文部科学省「平成21年度全国学力・学習状況調査」
(対象)小学6年生約115万人,中学3年生約108万人

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

図表2-1-7 朝食の摂取と体力合計点との関係

(出典)文部科学省「平成21年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査」
(対象)小学5年生約78万人,中学2年生約77万人

2.「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進

(1)「早寝早起き朝ごはん」全国協議会による運動の推進

 平成18年4月に,「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が発足しました。これは,PTAをはじめ,経済界,メディア,有識者,市民活動団体,教育・スポーツ・文化関係団体,読書・食育推進団体,行政など,幅広い関係団体の参加を得て,「早寝早起き朝ごはん」運動を民間主導の国民運動として推進することを目的としています。平成22年3月現在,全国協議会の会員団体数は245です。
 設立以来,本運動に賛同する方々や,本全国協議会に参加する様々な団体などと共に,子どもの基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動を展開しています。また,本全国協議会ではコミュニティサイトにより,紙芝居や楽曲などの無料ダウンロードコンテンツなどを提供しています(早ね早おき朝ごはんコミュニティサイトについては参照:http://www.hayanehayaoki.jp)。

やなせたかし氏製作紙芝居「よふかしおにとはやねちゃん」

やなせたかし氏製作紙芝居「よふかしおにとはやねちゃん」

(2)子どもの生活習慣づくり支援事業

 平成18年度から実施した「子どもの生活リズム向上プロジェクト」の成果をもとに,子どもたちの基本的な生活習慣の定着に向けた普及啓発を実施しています。
 平成21年度は,全国的な普及啓発では,学校関係者等を対象とした研究協議会や,企業の社会貢献活動により取組を推進するための研究協議会を開催しました。
 また,全国の学校,地域の行事などを活用し,専門家や大学生などを派遣して,子どもや保護者に対し,紙芝居や講演会などにより全国67か所で普及啓発を行いました。
 地域における研究成果の普及啓発では,これまで各地域で実践された取組をもとに,全国7ブロックで「子どもの生活習慣づくりフォーラム」を開催し,基調講演やパネルディスカッションなどを実施しました。親子連れや学校関係者,民間団体などの参加があり,子どもの基本的な生活習慣の大切さについて啓発を図りました。
 平成22年度は生活環境の夜型化といった社会の影響を受けやすい子どもたちの睡眠(就寝)時間の改善を中心に,子どもの基本的な生活習慣の定着に向けて,家庭や企業への更なる理解を求めるための普及啓発などを行うとともに,地域貢献活動を行っている社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)との連携による「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進していきます。

社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)との連携による「早寝早起き朝ごはん」国民運動リーフレット

社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)との連携による「早寝早起き朝ごはん」国民運動リーフレット

Column No.4 山梨県内の大学生による地域活性化・地域貢献プロジェクト(やまなしの翼プロジェクト)

 山梨県では,大学生が自ら食育の重要性を学ぶとともに,その成果を社会に対して還元する目的から,全国で進められている「早寝早起き朝ごはん」運動に賛同し,小学生を対象としたキャラバン隊を組織して,「早寝,早起き,朝ごはん」の普及に取り組んでいます。
 甲州市立奥野田小学校で行われた食育集会への訪問では,県教育委員会の指導主事と小学校に配置されている栄養教諭のアドバイスを得ながら,やなせたかし氏製作の「早寝早起き朝ごはん」に関する紙芝居やクイズの実演を行いました。
 会場は,約300名の児童や保護者が集まる体育館のため,中央ではスクリーンに映し出しながら,両わきでは実物大の紙芝居を見せるなど臨場感が得られるように配慮しました。また,紙芝居に合わせた効果音や,「早寝早起き朝ごはん」テーマソングを流しながらの入退場など工夫しました。
 終了後には,児童は教室で感想文を書き,また,当日行われた内容が盛り込まれた給食だよりが全家庭に配られるなど,キャラバン隊訪問後の指導も学校として行われました。

キャラバン隊による紙芝居,クイズの実演

キャラバン隊による紙芝居,クイズの実演

「早寝早起き朝ごはん」 Q&Aパネルを学校へ提供

「早寝早起き朝ごはん」 Q&Aパネルを学校へ提供

2 地域の教育力の向上に向けた取組

(1)地域の教育力の向上

 社会がますます複雑多様化し,子どもを取り巻く環境も大きく変化する中で,学校が様々な課題を抱えているとともに,地域の教育力が低下し,学校に過剰な役割が求められています。このような状況の中で,これからの教育は,学校だけが役割と責任を負うのではなく,これまで以上に地域ぐるみで子どもを育てる体制を整えていくことが不可欠となっています。

(2)学校支援を通した地域のコミュニティづくり

 文部科学省では,平成20年度から授業の補助,読み聞かせや環境整備,登下校パトロールなどについて,地域住民がボランティアとしてサポートする「学校支援地域本部事業」を実施しています。本事業の実施により,よりきめ細やかな教育など,学校教育の一層の充実が図られるとともに,地域住民の生きがいづくりなど生涯学習社会の実現に資するほか,地域の活性化にもつながるといった効果が期待できます。
 平成20年度は,867市町村で2,176カ所,21年度は1,006市町村で2,402カ所の学校支援地域本部が設置され,学校や地域の実情に応じ様々な活動が行われ,地域ぐるみで子どもを育てる体制が整えられています。

(3)子どもの安全・安心な居場所づくりの支援

 平成19年度より始まった「放課後子どもプラン」は,地域社会の中で,放課後や週末などに子どもたちが安全で安心して,健やかにはぐくまれるよう,文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」と厚生労働省の「放課後児童健全育成事業」を一体的あるいは連携して実施する総合的な放課後対策です。
 このうち,文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」は,市町村が主体となり,安全・安心な子どもの活動拠点(居場所)を設け,学習やスポーツ,文化芸術活動,地域の方との交流活動などの機会を子どもたちに提供することを中心に実施するもので,平成20年度は全国約7,700カ所,21年度は約8,700カ所で実施されており,地域ぐるみで子どもたちを健やかにはぐくむ取組が全国に着実に広がってきています。
 本事業の実施に当たっては,地域や学校などとの連絡調整や活動プログラムの企画などを行うコーディネーターや,子どもたちの安全管理を図る安全管理員,子どもたちの学習をサポートする学習アドバイザーなど,様々な役割を担う方々が必要とされます。全国各地域で,PTA関係者,退職教員,大学生,青少年・社会教育団体やNPO関係者など,様々な方々の協力を得て,充実した取組が行われています。
 平成19年度に文部科学省が行った調査によると,放課後子ども教室に参加した大人は,地域の子どもたち,あるいは活動に対する意識・関心が高まり,子ども自身も学校に行くことが楽しくなったり,違う学年の子どもと遊ぶようになった,地域の大人とあいさつしたり話をするようになったなど,事業を通して,大人,子ども双方に良い影響が生まれていることが分かりました。
 「放課後子ども教室」を通して,地域ぐるみで子どもたちを健やかにはぐくむ取組が全国に広がるよう,今後も支援を行っていきます。
 (各地域の取組については参照:http://www.houkago-plan.go.jp

山形県鶴岡市『上郷放課後子ども教室』「草苗づくり」の活動風景

山形県鶴岡市『上郷放課後子ども教室』「草苗づくり」の活動風景

(4)ボランティア活動を通じた地域のきずなづくり

 近年の都市化や過疎化の進行,地域における人間関係の希薄化などによる地域の教育力の低下が指摘される中,文部科学省は,子どもたちを含む幅広い年代において豊かな社会性や人間性を身に付けるため,ボランティア活動・体験活動の機会の充実に向けた取組を進めています。
 平成21年度には,各地域のボランティア活動支援センターにおける活動希望者と活動の受け入れ先との効果的なマッチング方法や関係団体・機関との連携,支援センターの運営などに関する調査研究を実施し,青少年から高齢者まであらゆる世代がボランティア活動を通して地域社会へ参画することを支援しました。
 このような事業を通して,地域社会におけるボランティア活動を促進し,また,地域活動を活発にすることによって,世代を越えた地域住民の交流が生まれ,子どもたちの豊かな成長や地域の教育力の向上につながることが期待されます。

3 青少年の健全育成の推進

 これまで政府は,青少年育成推進本部において,青少年の育成に関する政府の基本理念と青少年育成施策の中長期的な方向性を示す「青少年育成施策大綱」を策定し,青少年の健全育成の推進に取り組んできました。
 平成21年7月には,子ども・若者育成支援施策の総合的推進のための枠組み整備,社会的生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を地域において支援するためのネットワーク整備を目的とする「子ども・若者育成支援推進法」が成立しました。今後は,同法に基づき子ども・若者の育成支援施策の推進を図るための大綱を策定していきます。

(1)青少年の体験活動の推進

 自然体験の機会が多い子どもは自律性,積極性,協調性が身についている者が多いことが指摘されており,「教育振興基本計画」では,特に重点的に取り組むべき事項の一つとして,豊かな心と健やかな体の育成のために「体験活動等の推進」を掲げています。
 児童生徒の豊かな人間性を育むため,文部科学省では,「豊かな体験活動推進事業」において,自然の中での宿泊体験活動など体験活動の推進を図っています。
 平成20年度からは農林水産省,総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し,小学生の農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを推進しています。
 さらに自然体験活動をより効果的に行うための指導者の養成などに取り組むとともに,ひきこもり,ニート,不登校など自立に支援を要する青少年の体験活動や関係省庁との連携による地域ネットワーク型体験活動など,青少年の様々な課題に対応した体験活動を推進しています。

(2)国立青少年教育振興機構を中心とした体験活動の振興

1.青少年教育施設における体験活動の推進

 青少年教育施設は,体験活動を中心とする様々な教育プログラムの実施や,青少年が行う自主的な活動の支援などにより,健全な青少年の育成や青少年教育の振興を図ることを主たる目的として設置された施設です。
 国立青少年教育振興機構は,国立青少年教育施設(全国28施設)を通じて青少年を対象とした総合的・体系的な体験活動などの機会を提供しており,平成21年度は約486万人の方に利用されています。
 また,利用団体の研修に対する教育的な指導,助言や青少年教育に関する調査研究などを実施し,それらの成果を全国約500の公立青少年教育施設や関係団体などへ普及しています。(参照:http://www.niye.go.jp/

沙流川でラフティング体験(国立日高青少年自然の家)

沙流川でラフティング体験(国立日高青少年自然の家)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設)

図表2-1-8 国立青少年教育施設(28施設)

2.子どもゆめ基金

 未来を担う夢を持った子どもの健全育成を進めるため,国立青少年教育振興機構に設置されている「子どもゆめ基金」により民間団体への助成を行っています。具体的には民間の団体が行う青少年教育に関する活動のうち,(ア)子どもの体験活動の振興を図る活動,(イ)子どもの読書活動の振興を図る活動,(ウ)子ども向けソフト教材を開発・普及する活動を助成の対象としています。平成21年度は2,218団体に助成を行いました(参照:http://yumekikin.niye.go.jp/

(3)非行などの問題を抱える青少年の立ち直り支援の推進

 非行少年が地域社会で立ち直り,再び犯罪を犯さないようにするために,関係機関が連携して立ち直り支援のための取組を行うことは重要です。文部科学省では,青少年に新たな社会活動に参加する機会を提供するため,関係機関が連携して活動の場を開拓する取組や地域社会全体で青少年の立ち直りを支援する体制づくりを行う事業を実施しています。
 また,平成21年度は,青少年問題に対する諸外国の取組事例の紹介などを行う青少年指導者養成国際研修を開催するとともに,地域における課題を中心としたブロック別の研修会を4地域で開催しました。

4 青少年を有害環境から守るための取組の推進

 青少年を取り巻く社会環境は,発達途上にある青少年の人格形成に様々な影響を及ぼします。とりわけ書籍,雑誌,テレビ,インターネットなどの各種メディア上の性的な内容や,非常に暴力的な表現などが,青少年に悪影響を及ぼすことが憂慮されています。
 特に近年,子どもたちの携帯電話利用が進展するなか,携帯電話依存による生活習慣の乱れや,インターネット上の違法・有害情報サイトのトラブルに子どもたちが巻き込まれるケースが多発しており,深刻な問題となっています。
 文部科学省では,青少年を有害環境から守るための各種取組を推進しています(参照:第9章第2節)。

第3節 国民一人一人の生涯を通じた学習の支援

 「生涯学習」とは,一般には人々が生涯に行うあらゆる学習,すなわち,学校教育,家庭教育,社会教育,文化活動,スポーツ活動,レクリエーション活動,ボランティア活動,企業内教育,趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。また,人々が,生涯のいつでも,自由に学習機会を選択し学ぶことができ,その成果が適切に評価される社会として「生涯学習社会」という言葉も用いられます。
 近年,人々の学習需要が高まり,またその内容が多様化・高度化するのに対応して,生涯学習が担う役割は,ますますその重要性を増しています。文部科学省では,国民一人一人が生涯を通して学ぶことのできる環境の整備,多様な学習機会の提供,学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなど,「生涯学習社会」の実現のための取組を進めています。

1 生涯学習に関する普及・啓発

 生涯学習の振興を図るためには,生涯を通じて学習することの意義について国民の理解を深め,自ら学ぶ意欲を喚起するための普及・啓発が重要です。こうした普及・啓発の一環として,文部科学省は,地方公共団体との共催により,生涯学習に関する各種イベントや学習成果の発表,講演会などを集中的に実施する「全国生涯学習フェスティバル」を平成元年から毎年開催しています。21年度には,10月30日から11月3日までの5日間にわたり,埼玉県で第21回全国生涯学習フェスティバル「まなびピア埼玉2009」が開催されました。今大会には224万人近くが来場し,参加者アンケートでも79%が生涯学習フェスティバルをきっかけに「生涯学習に取り組もうと思った」と答えるなど,本取組により自ら学ぶ意欲が喚起されている様子が見られます。さらに,これまでの開催県単位で独自のイベントが継続して開催されるなど,生涯学習フェスティバルは,生涯学習の普及・啓発において大きな成果を上げています。

2 多様な学習機会の提供

(1)放送大学の充実・整備

1.生涯学習の中核的機関

 放送大学は,テレビ・ラジオなどの放送メディアを効果的に活用して大学教育の機会を幅広く国民に提供することを目的として昭和58年に創設され,60年4月から学生の受入れを行っています。平成21年度第2学期においては全国で約8万4千人が学んでおり,これまでに約6万人が卒業しています。放送大学で学んだ学生は,社会人を中心に15歳から90歳代までと幅広く,その数は延べ約120万人に及んでおり,我が国の生涯学習の中核的機関として大きな役割を果たしています(図表2-1-9)。 

図表2-1-9 放送大学在学者数の推移

図表2-1-9 放送大学在学者数の推移

(出典)放送大学学園調べ

 放送大学には,国民の多様化・高度化する学習需要にこたえるために,教養学部が設置されています。ここでは,豊かな教養を培うとともに実生活に即した専門的学習を深められるよう,約300の授業科目を開設し,既存の学問分野にとらわれない形で,教養学科の下に「生活と福祉」,「心理と教育」,「社会と産業」,「人間と文化」,「自然と環境」の5コースが設けられています。
 平成13年4月には高度専門職業人養成などを目指した大学院文化科学研究科を開設し,14年4月から修士課程の学生の受入れを行っています。ここでは,社会的要請に応じた「生活健康科学」,「人間発達科学」,「臨床心理学」,「社会経営科学」,「文化情報学」,「自然環境科学」の6つのプログラムが設けられています。
 また,特定分野の授業科目群を設定し,学位以外の履修証明を与える「放送大学エキスパート(科目群履修認証制度)」を平成18年度から実施しています。また,専修免許状や特別支援学校教諭免許状などの取得に活用できる教育関係の科目を多数開設するなど,教員の資質向上に向けても精力的に取り組んでいます。
 このほか,遠隔教育による大学教育は,諸外国においても放送やインターネットなどを活用して行われており,大学間の人的交流など,国際的な連携・交流が広がりつつあります。11月には,文部科学省,さいたま市および放送大学の主催により「世界公開大学学長シンポジウムinさいたま」を開催し,世界10カ国の遠隔教育を行う大学の関係者が,今後の生涯学習社会の構築に果たす役割について情報交換等を行いました。

2.学習環境の充実・整備

 放送大学の講義は衛星放送で放送され,日本全国どこでも,講義を受けることができるようになっています。さらに,放送授業番組の再視聴施設や図書室などを備え,面接授業を行う「学習センター」,「サテライトスペース」を全都道府県に設置し,仕事や家事で視聴時間を確保することが難しい学生の学習を支援しています。
 なお,地上テレビ放送については,電波の利用効率の向上などのために平成23年7月24日までに現在のアナログ放送からデジタル放送に移行することとなっており,放送大学では,18年12月から関東地域1都6県を対象に,地上デジタル放送を開始しました。これにより,マルチ編成放送,データ放送,字幕放送,EPG(電子番組)など,デジタル化のメリットを活かしたサービスの向上,制作番組の有効活用などが可能となりました。
 また,平成21年4月のメディア教育開発センター解散に伴い,放送大学において,これまで同センターが開発してきたメディアを活用した効果的な教育手法等の有効活用を図ることにより,大学教育におけるICTを活用した教育の質向上にも取り組んでいくこととしています。
 さらに,大学教育における学習環境の充実を図るため,平成23年10月からBSデジタル放送を予定しており,生涯学習の中核的機関として,より一層のユニバーサルアクセスの推進を目指しています。

(2)専修学校教育の振興

 専修学校は,学校教育法において「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し,又は教養の向上を図る」ことを目的とする学校であるとされ,実践的な職業教育,専門的な技術教育などを行う教育機関として,大きな役割を果たしています(平成21年5月現在,学校数3,348校,生徒数62万4,875人)。専修学校は,入学資格の違いにより,高等学校卒業程度を入学資格とする「専門課程」(専門学校),中学校卒業程度を入学資格とする「高等課程」(高等専修学校),入学資格を問わない「一般課程」の三つの課程に分かれています。
 文部科学省では,専修学校教育の振興策として,社会的要請の高い課題に対応するための教育方法などの重点的な研究開発,留学生の日本での就職・生活を支援する事業などを実施するとともに,高校生などに対する多様な職業体験の機会の提供,専修学校の職業教育機能を活用した,若者・社会人・女性などの就職困難者に対する就業能力の向上を支援する学習機会の提供などの推進に取り組んでいます。

(3)文部科学省認定社会通信教育

 文部科学省では,学校法人や公益法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っています。平成22年2月末現在,文部科学省認定社会通信教育は,29団体119課程であり,20年における1年間の延べ受講者数は約8万3千人となっています。

(4)民間教育事業者,NPOとの連携等

 民間教育事業者やNPOなどの民間団体は,「新しい公共」の担い手として,国民の多様な活動を支える上で大きな役割を果たしており,今後その役割はますます重要なものになると考えられます。
 文部科学省では,これらの団体との連携を更に強化しつつ,生涯学習に関する活動を推進していくため,平成20年度から「NPOを核とした生涯学習活性化プロジェクト」を実施するなど,NPOをはじめとした民間団体のネットワーク形成や,担い手となる人材育成に関する取組を支援するための施策を展開することにより,ますます多様化・高度化する住民の学習ニーズに対応します。

3 社会教育の充実・活性化

(1)新しい時代の社会教育

 人々の学習需要が高まり,その内容がますます多様化・高度化するのに対応して,教育委員会や社会教育施設などの主催する事業は,ますますその重要性を増しています。教育基本法の改正を受け,平成20年6月に「社会教育法」などの改正が行われましたが,文部科学省では,引き続き生涯学習社会の実現に向けて,社会教育の振興を図ります。

(2)人々の学習活動を支援する専門的職員の充実

1.専門的職員の現状

 社会教育における専門的職員として,教育委員会に置かれている社会教育主事や,各社会教育施設に置かれている公民館主事,司書(図書館),学芸員(博物館),社会教育委員,社会教育指導員などが挙げられます。特に,社会教育主事は,都道府県や市町村の社会教育行政の中核として,地域の社会教育行政の企画・実施や専門的技術的な助言と指導に当たることを通し,人々の自発的な学習活動を援助する役割を果たしています。また,近年では,社会教育関係者や地域の人材等の連携の調整を行うコーディネーターとしての役割も求められています。

2.専門的職員の養成と研修など

 文部科学省では,現職の社会教育主事,司書,学芸員などに対して,地域における社会教育に関する課題や地域のニーズに対応した実践的な研修を実施することにより,専門的職員としての資質の向上に努めています。また,社会の状況に対応し,地域住民の高度化・多様化する学習ニーズに対応できる社会教育主事や司書を養成するため,大学などに委嘱し,資格を付与する社会教育主事講習や司書講習を実施しています。
 また,社会教育委員については,平成20年6月の「社会教育法」などの改正において,地方公共団体が社会教育関係団体に補助金を交付する際に事前に意見を聴取すべき機関は,社会教育委員を置いていない場合は,社会教育に関する補助金の交付について調査審議する審議会などに代えることができることとする改正が行われました。しかし,本条の改正後も社会教育委員の役割の重要性は変わりません。文部科学省では,引き続き各地方公共団体において社会教育に関する諸計画の立案や青少年教育に関する助言,指導など社会教育委員の積極的な活動が展開されるよう,必要な情報提供などに努めていきます。

(3)地域の学習拠点の整備・形成・運営

1.公民館

 公民館は,地域住民にとって最も身近な学習拠点であるだけでなく,交流の場として重要な役割を果たしています。平成20年10月現在,公民館は全国に1万5,943館設置され,住民の学習ニーズや地域の実情に応じた学級・講座の開設など様々な学習機会の提供を行っています(図表2-1-10,図表2-1-11)。
 また,平成20年7月に策定された「教育振興基本計画」では,公民館をはじめとする社会教育施設について「地域が抱える様々な教育課題への対応や社会の要請が高い分野の学習など地域における学習の拠点,さらには人づくり・まちづくりの拠点として機能するよう促す」こととされており,関係機関や団体とのネットワークを構築しながら,新たな課題やニーズに応じた活動を展開し,地域の拠点としての役割をより一層果たすことが公民館に期待されています。
 文部科学省では,関係省庁と連携した講師派遣の取組や社会の要請が高い学習機会の提供の推進,公民館職員の資質向上を図るための研修の実施などに取り組むことを通じ,公民館活動の充実に努めています。

図表2-1-10 公民館数等の推移
図表2-1-10 公民館数等の推移

(注)学級・講座数については,調査年度の前年度の数である。
(出典)文部科学省「社会教育調査」

図表2-1-11 学級・講座数の実施状況

図表2-1-11 学級・講座数の実施状況

(出典)文部科学省「社会教育調査」

Column No.5 公民館と地域の若者が企画する子どもの体験活動(千葉県君津市清和公民館)

 清和公民館では,地域の20代の方が中心に参加する,「若者ボランティア養成講座」を年間を通して実施しています。
 また,毎年夏休みには,「清和は遊びの舞台(ステージ)だ!」をテーマに,この講座の参加者が中心的なスタッフとなって企画・運営する「清和こどもプロジェクト」(参加:小4~中1)を開催しています。このプロジェクトは,子どもが地域への理解や愛着を深めると同時に,スタッフとして参加する若者が子どもとのふれあいを通して地域とのかかわりを深めてほしいという願いをこめて実施しているものです。具体的には,公民館の広場にテントを張った「村」をこどもの手でつくり,野外炊飯や自然工作などを行いました。こうして,一つの取組を次の取組へとつなげていくことで,公民館講座での知識を実践的に活用していく仕組みづくりを進めています。

若者ボランティア講座“清和は学びの舞台だ”(清和公民館)

若者ボランティア講座“清和は学びの舞台だ”(清和公民館)

2.図書館

 図書館は,住民の身近にあって人々の学習に必要な図書や様々な情報を収集・整理・提供する社会教育施設です。平成20年10月現在の図書館数は,公立図書館が3,140館,私立図書館が25館となっており,図書館数,図書の貸出冊数,利用者数は,近年着実な伸びを示しています(図表2-1-12)。
 平成20年6月の「図書館法」改正を受けて,これからの図書館の在り方検討協力者会議では,「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について」(平成21年2月)を取りまとめました。文部科学省ではこの提言などを踏まえ,新しい科目・単位数については,21年4月に「図書館法施行規則」の改正を行いました(24年4月1日施行)。この改正では,図書館を支える司書が,地域社会の課題や人々の情報要求に対して的確に対応し,より実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう,大学などにおける司書養成課程,司書講習における養成課程の改善・充実を図ることとしています。また,図書館職員の資質向上に向けて,新任の図書館長を対象とした研修や中堅の司書を対象とした研修の充実に努めています。
 さらに,「図書館法」改正により,「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の対象を私立図書館に拡大すること,図書館の運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民などに対する情報提供に努めることが新たに盛り込まれました。また,現行基準の施行から8年が経過し,その間の社会の変化に対応する必要があることから,協力者会議において,「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の改正についての検討を行い,図書館振興施策の充実に取り組んでいます。

図表2-1-12 図書館数と貸出冊数などの推移

図表2-1-12 図書館数と貸出冊数などの推移

(注)貸出冊数,帯出者数については,調査年度の前年度の数である。
(出典)文部科学省「社会教育調査」

Column No.6 つなげようひろげよう子どもが本と出会うまち (北海道恵庭市立図書館)

 札幌市と新千歳空港のほぼ中間に位置する恵庭市は,読書コミュニティのまちづくりに向け,ブックスタートで本と出会った乳児が成長するにしたがい,保育園や幼稚園,学校図書館などで豊かな心や自ら学ぶ力を育てながら読書活動ができるよう,読書環境の整備を進めています。就学前の読書習慣や聴く力,コミュニケーション力などの育成のため,乳幼児期から小中学校,高校の各年代で誰もが等しく読書に親しめるよう総合的・体系的に取り組んでいます。恵庭市立図書館は図書行政の一元化を図るために学校図書館を所管し,乳幼児期の読書支援,小中学校への司書の配置と学校図書費増額,学校図書館とのネットワーク化,配本システムによる全市的な図書の共有利用,通年朝読書,ボランティアや教職員,上級生による読み聞かせの普及などにかかわり,子どもたちへの学習支援と読書支援を行っています。これら学校図書館などでの活発な取組によって読書好きな子どもたちが増え,本を介した市民ボランティアの輪も年々広がりを見せています。読書を通じたまちづくりは図書館を中心に行われ,家庭・地域・学校が一体となった読書活動が活発に展開されています。

貸出しカウンターの様子

貸出しカウンターの様子

3.博物館

 博物館は,資料収集・保存,調査研究,展示,教育普及などの活動を一体的に行う施設であり,平成20年10月現在,登録博物館が907館,博物館相当施設が341館,博物館と類似の事業を行う施設が4,527館設置されています。
 文部科学省では,博物館の機能の高度化と人々の博物館活動への積極的な参画が図られるよう,博物館評価の在り方やリスクマネージメントなどの様々な調査研究や,平成21年度より新たに「図書館・博物館における地域の知の拠点推進事業」の一環として,館種を超えた多様な博物館がネットワークを構築するためのモデル事業を実施しています。また,地域の学芸員を諸外国の博物館に派遣し,先進的な展示・教育普及活動などの調査を行い,その研修成果を国の博物館行政に反映させる在外派遣研修を実施しています。
 平成20年6月にはおよそ半世紀ぶりの見直しとなる博物館法の改正を行い,これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議において学芸員の養成に関する検討を進め,21年2月に「学芸員養成の充実方策について(第2次報告書)」を取りまとめました。文部科学省では同報告書の提言等を考慮し,平成21年4月に博物館法施行規則の改正を行いました(24年4月1日施行)。この改正では,博物館を支える学芸員が人々の生涯学習の支援を含め博物館に期待されている諸機能を強化し,国際的にも遜色ない高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう,大学等における学芸員養成課程における養成科目の改善・充実を図ることとしております。
 国立科学博物館では,自然史,科学技術史に関する調査研究,標本資料の収集・保管とその継承を進めるとともに,調査研究の成果や標本資料を生かして展示や学習支援活動を実施しています。
 展示活動においては,「人類と自然の共存をめざして」をテーマに,最新の研究成果に基づいた展示を行い,自然と人間が共存可能な未来を築くためにどうすればよいのかを考える機会を提供しています。学習支援活動においては,様々な講座・観察会を実施するほかに,大学との連携にも力を入れており,大学パートナーシップ事業(※1)の一環で,学生の常設展無料入館や,「国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座」などの講座を開設し,学生の科学リテラシー(科学技術に関する基礎的な知識や能力)やサイエンスコミュニケーション(科学技術と一般社会との双方向的な対話)能力の更なる向上に努めています。さらに,21年度には,ICOM-ASPAC日本会議2009(※2)をICOM-ASPAC,日本博物館協会等と共催で開催し,アジア太平洋地域の博物館の交流・協力の促進に努めました。


※1 大学パートナーシップ事業
 国立科学博物館と大学等が連携し,学生の科学リテラシーやサイエンスコミュニケーション能力の向上等を目指す事業。平成21年度は53校が入会(22年1月1日現在)。
※2 ICOM-ASPAC 日本会議2009
 国連のユネスコと協力関係を結んでいる国際的な博物館組織であるICOM(国際博物館会議)のアジア・太平洋地域の地域組織であるICOM-ASPAC の大会を「アジア太平洋地域における博物館の中核的な価値の再考と地域遺産」をメインテーマに国立科学博物館で開催した。

Column No.7 博物館における「生物多様性」に関する取組 (ひとはくの「シンクタンク機能」と「生涯学習支援」)

 兵庫県立人と自然の博物館(以下,ひとはく)では,「シンクタンク機能」と「生涯学習支援」の2つを博物館事業の柱としています。シンクタンク機能では,自然・環境に関する様々な県政課題(たとえば,いきものと共生する県土づくり,里山管理や貴重な自然の保護・保全対策,外来生物対策,生物多様性ひょうご戦略策定など)に対して,各種委員会の委員として参画し専門性を活かした提案・提言を行っています。生涯学習支援としては,年間に280回以上の「一般セミナー(申し込みが必要)」や800回を超える「オープンセミナー(申し込み不要)」,約300回行っている来館団体向けの「特注セミナー」などで,様々な皆さん(小学生~大人)の生涯学習を支援させていただくとともに,これらを通して生物多様性の重要性についての普及に努めています。また,児童・生徒が研究員と共に,多様な生物が存在する熱帯雨林に行く,ボルネオジャングル体験スクールなどを毎年開催しています。特に,国際生物多様性年である2010年には,「ひとはく生物多様性大作戦!」と銘打って,様々な「生物多様性」を体験する,ツアーやセミナー,イベントを行ったり,展示特別企画「ひょうごの生物多様性-瀬戸内海VS日本海」を開催する予定です。

ひとはくが関わって発行された「生物多様性」に関する冊子

ひとはくが関わって発行された「生物多様性」に関する冊子

(4)社会教育関係団体の活動の振興

 社会変化の激しい今日においては,社会の要請が強い重要課題に関する教育(例えば,環境教育,消費者教育,法教育など)は,学校教育における学習だけでは十分とは言えず,大人になってからも継続して学ぶことが必要です。このような課題に対して,全国規模の調査研究や,シンポジウムなどの研究会の実施,広報誌の発行を行うなど,この点で,社会教育関係団体は大きな役割を果たしており,文部科学省ではその活動を振興していくための情報提供など様々な支援を行っています。

4 学習成果の評価・活用

(1)高等学校卒業程度認定試験

 高等学校卒業程度認定試験は,高等学校を卒業していないなどの者に対し,高等学校卒業者と同程度以上の学力があることを認定する試験です。この試験の合格者には,大学などへの入学資格が付与されます。
 平成21年度における延べ出願者数は33,461人,受験者数は29,967人,合格者数は10,712人となっています(図表2-1-13)。また,出願者の約半数を高等学校中途退学者が占めていることからも,この試験が,中途退学者などの再チャレンジの場となっていることが分かります(図表2-1-14)。
 試験合格者のおよそ半数は大学等へ進学していますが,この試験は,就職などの機会に学力を証明する手段としても活用されています。文部科学省では,就職などの際にこの試験を活用した場合に,採用試験や採用後の処遇において高等学校の卒業者と同等に扱われるように,パンフレットやポスターの配布などにより,制度の周知に努めています。

図表2-1-13 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

図表2-1-13 高等学校卒業程度認定試験の出願者・受験者・合格者数

※平成16年度までは大学入学資格検定の数値である。
※平成13年度から年2回試験を実施している。
※合格者は,全科目合格者であり,一部科目合格者を除く。
(出典)文部科学省調べ

図表2-1-14 出願者の最終学歴別の割合(平成21年度)

図表2-1-14 出願者の最終学歴別の割合(平成21年度)

(出典)文部科学省調べ

(2)学校における単位認定

 高等学校においては,生徒の能力・適性,興味・関心などが多様化している実態を考慮し,選択の幅を広げるという観点から,生徒の在学する高等学校での学習の成果に加えて,1.大学,高等専門学校,専修学校などにおける学修,2.知識・技能審査の成果に係る学修,3.ボランティア活動,就業体験活動(インターンシップ),4.高等学校卒業程度認定試験の合格科目に関する学修など,在学する高等学校以外の場における学修の成果について,各高等学校の判断により,学校の単位として認定することが可能になっています。
 大学などにおいては,教育内容の充実に資するため,専門学校における大学教育相当の学修など大学以外の教育施設などにおける学修について,当該大学などにおける単位として認定できることとしており,276大学(全体の38.4%(平成19年度))において活用されています。

(3)大学評価・学位授与機構による学位授与

 大学・大学院の正規の課程を修了してはいないものの,大学・大学院を卒業又は修了した者と同等以上の学力を有すると認められる者に対して,高等教育段階の様々な学習成果を評価し,学位を授与しています。平成20年度においては,1.短期大学,高等専門学校卒業者などが大学,専攻科において更に一定の学習を行った場合に当たる者として2,723人に,2.同機構の認定する教育施設の課程の修了者に当たる者として1,205人に同機構から学位が授与されています。

(4)準学士・短期大学士・専門士・高度専門士

1.準学士・短期大学士

 高等専門学校卒業者には「準学士」の称号が付与されています。また,以前は短期大学卒業者には,「準学士」の称号が付与されていましたが,平成17年7月の「学校教育法」の改正により,17年10月以降の短期大学卒業者には,「短期大学士」の学位が授与されています。

2.専門士・高度専門士

 専門学校修了者のうち,修業年限2年以上,総授業時数1,700時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては,「専門士」の称号が付与されます。平成21年度では,7,324学科(修業年限2年以上の専門学校の学科(7,481学科)の97.9%)の修了者に対し,専門士の称号が付与されています。
 また,修業年限4年以上で,総授業時数3,400時間以上などの要件を満たすと文部科学大臣が認めた課程の修了者に対しては,「高度専門士」の称号が付与されます。平成22年2月現在,475学科(修業年限4年以上の専門学校の学科(539学科)の80.1%)がその対象学科として認められています。「高度専門士」の称号を付与できる課程の修了者には,同時に大学院への入学資格も与えられることになっています。

(5)検定試験の質の確保

 現在,民間の検定試験には,全国規模で実施され年間の受検者数が100万人を超える検定や,専門的な知識・技能を測るために特定の受検者を対象に実施される検定,各地域における文化活動や観光産業などの活性化を目的とした検定など,その実施主体や目的,内容などにおいて多種多様なものが存在しています。こうした検定試験によって測られる学習成果が適切に評価され,学校や職場,地域社会などで活かされるためには,検定試験の質を確保することが必要です。
 文部科学省では,民間事業者などが行う検定試験の評価に向けた主体的な取組を支援する方策について検討するため,検定試験の評価の在り方に関する有識者会議を開催するなど,検定試験の質を確保する仕組みの構築に向けた取組を進めています。

第4節 現代的課題への対応

1 教育分野における少子化対策

(1)最近の少子化対策の動向

 近年,我が国では少子化が急速に進行しています。厚生労働省の平成20年人口動態統計によると,出生数は約109万人と前年より若干増加し,合計特殊出生率は1.37と3年連続で上昇しましたが,依然として国民の希望する結婚や出産・子育てが実現したと仮定した出生率である1.75を大きく下回っています。
 少子化の進行は,高齢者数の増加と生産年齢人口の減少という人口構造の変化を伴うものであり,我が国の経済社会に大きな影響を与えることが懸念されています。
 これまで政府においては,平成15年に制定された「少子化社会対策基本法」や「次世代育成支援対策推進法」,「少子化社会対策大綱」(平成16年閣議決定),「子ども・子育て応援プラン」(平成16年少子化社会対策会議決定)などに基づいて少子化対策が推進されてきました。
 また,平成22年1月には新たな「少子化社会対策大綱」として「子ども・子育てビジョン」が策定されました。

(2)教育分野における少子化対策の取組

 天然資源に恵まれない我が国においては,人材こそが資源であり,少子化の進行は,社会や経済,地域の持続可能性の基盤を揺るがすものです。また,子どもの数の減少は,子ども同士が切磋琢磨し,社会性をはぐくみながら成長していくという機会を減少させ,自立してたくましい若者へと育っていくことをより困難にする可能性も指摘されており,子どもたちの教育面へも大きな影響を及ぼす重大な課題です。そのため,子どもは「社会の宝」であるという考え方に基づき,次代を担うすべての子どもの教育機会を保障するなど,社会全体で子どもを育てる環境づくりに取り組む必要があります。
 さらに,各種世論調査によると,少子化対策としては,教育費負担の軽減,仕事と生活の調和の確保,地域で安心して子どもを育てることのできる環境づくりなどが求められております。
 こうしたことから,文部科学省においては,

  1. 教育にかかる保護者の経済的負担の軽減
  2. 認定こども園の設置促進や幼稚園における預かり保育・子育て支援の充実
  3. 家庭教育に関する情報や学習機会の提供,相談体制の充実など,きめ細かな家庭教育支援
  4. 「放課後子ども教室推進事業」(放課後子どもプラン)などによる子どもの安全・安心な居場所づくりの推進

などに取り組んでいます。

2 高齢社会への対応

 急速に進展する高齢化に対応し,今後,我が国が活力ある豊かな高齢社会へ円滑に移行していくためには,高齢者に適切な学習機会を提供するとともに,ボランティア活動など社会参加活動を促進することが重要です。
 このため,高齢者が生きがいのある充実した生活を実現することができるよう,公民館をはじめとする社会教育施設などを拠点として,高齢者の学習要求に応じた各種の学級・講座の開設や世代間交流などの事業が実施されています。

3 人権教育の推進

 文部科学省では,憲法や教育基本法の精神にのっとり,学校教育や社会教育を通じて,人権尊重の意識を高める教育の推進に努めています。
 平成14年3月15日には,「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき,人権教育啓発の総合的かつ計画的な推進に関する施策の大網として,「人権教育・啓発に関する基本計画」が閣議決定されました。同計画においては,人権の大切さを教育する取組や,重要な人権課題(女性,子ども,障害者,高齢者,同和問題,アイヌの人々,外国人,HIV感染者等,犯罪被害者等,インターネットによる人権侵害など)に対する教育の取組について盛り込んでいます。
 社会教育分野では,生涯の各時期に応じ,各人の自発的意思に基づき,人権に関する学習ができるよう,公民館などの社会教育施設を中心に学級・講座の開設や交流活動など人権に関する多様な学習機会が提供されています。文部科学省では,社会教育における人権教育を一層推進するため,人権に関する学習機会の充実方策などについての実践的な調査研究を行うとともに,その成果の普及を図る「人権教育推進のための調査研究事業」を平成16年度から実施し,地方公共団体における人権教育の取組に積極的な支援を行っています。

4 男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興

(1)男女共同参画社会の形成

 男女共同参画社会とは,男女が互いにその人権を尊重し,喜びも責任も分かち合える対等なパートナーとして様々な分野に参画し,その個性と能力を十分に発揮できる社会のことです。このような社会の実現のためには,国民一人一人が男女共同参画や自立の意識を持つことが不可欠です。
 男女共同参画社会の実現は,21世紀の我が国の最重要課題であり,平成11年6月に公布・施行された「男女共同参画社会基本法」や同法に基づき,17年12月に閣議決定された「男女共同参画基本計画(第2次)」により,各府省において総合的かつ計画的な取組が進められています。
 現行計画が平成22年までとなっていることから,「男女共同参画基本計画(第3次)」の策定に向けての審議が始まり,21年には内閣府の男女共同参画会議を中心に,これまでの計画の進捗状況や今後の課題などについて話し合われました。現在,第3次基本計画を実効性のあるものにするという観点から改定作業が進められており,22年内に閣議決定されることになっています。

(2)教育・研究分野における男女共同参画に関する取組

 文部科学省では,男女共同参画社会の形成に向けて,教育・学習が果たす役割が極めて大きいと認識し,学校・家庭・地域などあらゆる分野において男女平等を推進する教育・学習の充実などを図っています。
 学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,男女の平等や相互の理解・協力について適切に指導するとともに,男女が共に各人の生き方,能力,適性を考え,主体的に進路を選択する能力・態度を身に付けられるよう,進路指導や就職指導に努めています。
 また,社会教育においては,男女が各人の個性と能力を十分に発揮し,社会のあらゆる分野に参画していくための学習機会の充実を図っています。
 男女共同参画社会の実現のためには,女性が社会で活躍することが必要です。多様な選択肢の存在や,ワーク・ライフ・バランスに関する情報を提供することにより,女性が自己の可能性やライフステージ別の自己イメージを若い時期から持てるよう,平成21年度は地域における女性のライフプランニング支援の体制整備を行うための事業を実施しました。
 また,子育てにより仕事を中断した女性が技術・知識の再習得や最新の知識・情報などを学習し,職業能力を向上させるプログラムの提供を行いました。

(3)女性教育施設における活動

 女性教育施設は,主に女性教育関係者や一般女性のための各種の研修,交流,情報提供などの事業を行うとともに,女性団体などが行う各種の女性教育活動の拠点として,女性の資質・能力の開発や知識・技術の向上を図ることを主たる目的として設置された施設です。近年は,仕事と家庭・地域活動の両立を支援するための様々な取組が展開されており,男女共に利用できる施設となっています。
 国立女性教育会館(NWEC(ヌエック))は,我が国唯一の女性教育のナショナルセンターとして,男女共同参画社会の形成の促進に資する女性教育の振興を担っています。
 事業としては,基幹的な女性教育指導者などに対する研修,喫緊の課題に係る調査研究,女性教育に関する情報の収集・提供,国内外の女性教育関係者のネットワーク形成などのための交流の4つの機能を柱として,全国の女性教育施設などと連携しながら活動しています。
 平成21年度は,毎年8月末に実施している「男女共同参画のための研究と実践の交流推進フォーラム(NWECフォーラム)」において,これまで参加の少なかった大学などにも呼びかけ,多様な団体の交流の促進を図りました。また,新たな取組としては,11月に「男女共同参画交流特別週間(らんざん交流ウィーク)」を開催し,女性団体・グループがこの期間に会館に集い,交流や情報交換ができる機会を提供し,団体間のネットワークづくりを支援しました。さらに2月には,過去に会館の研修などに参加した女性教育施設や女性団体・グループなどに対するフォローアップの場として「交流学習会議」を開催し,地域での男女共同参画を推進するため,団体間の連携・協働の促進に向けた意見交換を行うなどネットワークづくりを進め交流の充実を図りました。

交流学習会議におけるグループワークの様子

交流学習会議におけるグループワークの様子

5 児童虐待の防止

 近年,児童虐待の防止については,様々な施策の推進が図られていますが,痛ましい児童虐待は後を絶たず,児童相談所への相談対応件数も平成19年度には4万件を超え,その後も毎年増加するなど,児童虐待は依然として,早急に取り組むべき社会全体の課題となっています。
 このような状況の中,児童虐待の定義の拡大・明確化や早期発見を図るための通告義務の範囲の拡大などを内容として,平成16年に「児童虐待の防止等に関する法律」が改正されました。さらに,19年5月には,児童の安全確認などのための立入調査などの強化,保護者に対する面会,通信の制限の強化などを内容とした改正が行われました。
 児童虐待は,その未然防止,早期発見・早期対応や虐待を受けた児童生徒の支援について,家庭・学校・地域社会・関係機関が密接に連携する必要があります。そのため,文部科学省では,従前から都道府県などを通じて,学校教育関係者や社会教育関係者に対して児童相談所への通告義務などについて周知するほか,家庭教育支援などを行っています。
 また,平成17年度から18年度にかけて「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を実施しました。具体的には,学校・教育委員会における全国的な児童虐待防止に関する実践事例の収集・分析や,海外の児童虐待防止に向けた先進的取組に関する調査・分析を行い,18年5月にその成果を取りまとめました(参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06060513.htm)。この調査研究の成果を考慮し,教職員向けの研修モデル・プログラムの検討を行い,虐待を受けた子どもへの支援などについて教職員の対応スキルの向上を図るよう,研修教材を作成し,21年1月に配布しました。この研修教材については,学校現場においてより幅広い活用が図られるよう21年5月にCD-ROM化し,教育委員会に配付しています。
 さらに,養護教諭の児童虐待への対応の充実を図る一助とするため作成した「養護教諭のための児童虐待対応の手引き」を平成19年12月に配布し,学校現場で活用されています。
 このほかにも,児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に資するものとして,スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの外部の専門家を活用した学校の教育・相談体制の充実を図っています。
 また,平成16年度より11月が「児童虐待防止推進月間」と定められたことを受け,21年度においても厚生労働省をはじめとした関係機関と協力し,集中的な広報・啓発活動を実施しました。
 平成22年3月には,学校と市町村,児童相談所等の関係機関の連携が十分に機能していないとの指摘を踏まえ,学校と児童相談所等との間の情報共有の仕組みについて基本的考えを取りまとめ,その周知を図るとともに,学校・教育委員会等に対し,児童虐待の早期発見・早期対応,通告後の関係機関との連携等を図る上での留意点について,改めて周知を図りました。

6 消費者教育の推進

 昨今,高齢者の消費者トラブルや,食の安全に関する問題など,国民の消費者問題への関心が高まっており,平成21年9月には消費者庁や消費者委員会が設置されるなど,消費者の利益の擁護や増進を図る上で必要な環境の整備が進んでいます。
 その中でも,国民一人一人が自立した消費者として,安心して安全で豊かな消費生活を営むために,消費者教育は重要な役割を担うものです。
 「消費者庁及び消費者委員会設置法」,「消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」及び「消費者安全法」の審議においては,消費者教育の重要性が指摘され,消費者安全法に,国及び地方公共団体は,消費生活に関する教育活動に努めなければならないことが規定されました。また,衆・参両議院の附帯決議においても,学校教育,社会教育における施策をはじめとしたあらゆる機会を活用しながら,全国における一層の推進体制の強化を図ることが決議されました。
 さらに,平成22年3月には新たな「消費者基本計画」が策定され,消費者政策の基本的方向において,消費者に対する啓発活動の推進と消費生活に関する教育の充実に関する必要な施策が盛り込まれるなど,引き続き消費者教育が重要な施策として位置付けられています。
 文部科学省では,20年3月に小・中学校学習指導要領,21年3月に高等学校学習指導要領を改訂し,例えば,中学校の技術・家庭科において,消費者の基本的な権利と責任について指導することとするなど,消費者教育に関する内容の充実を図りました。
 今後とも,新たな消費者基本計画や改訂した学習指導要領などを踏まえ,学校教育及び社会教育を通じて,消費者教育を推進していきます。

7 環境教育・環境学習の推進

(1)環境教育の意義

 現在,温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し,環境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって緊急かつ重要な課題となっています。豊かな自然環境を守り,私たちの子孫に引き継いでいくためには,エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な社会を構築することが大切です。そのためには,国民が様々な機会を通じて環境問題について学習し,自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要であり,特に,21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義を有しています。
 平成18年12月に改正した「教育基本法」では,教育の目標として,「生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養うこと」(第2条第4号)が新たに規定されています。文部科学省では,国民がその発達段階に応じて,あらゆる機会に環境の保全についての理解と関心を深めることができるよう,学校教育や社会教育において環境教育の推進のために必要な施策に取り組んでいます。
 平成20年7月29日に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」には,生涯を通してあらゆるレベル,あらゆる場面の教育において低炭素社会や持続可能な社会について教え,学ぶ仕組みを取り入れていくことの必要性が盛り込まれており,文部科学省では同計画を考慮した環境教育を推進していきます。

(2)環境教育・環境学習推進のための施策

 「教育基本法」の改正などを受けて,平成20年3月に小・中学校,21年3月に高等学校の学習指導要領を改訂し,社会科や理科,技術・家庭科など関連の深い教科を中心に環境教育に関する内容の充実を図りました。例えば,小学校の社会科では「節水や節電などの資源の有効な利用」(3・4学年),中学校の理科では,「自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察」(第1分野,第2分野),また,高等学校の家庭科では,「環境負荷の少ない生活,持続可能な社会を目指したライフスタイルを工夫し,主体的に行動する」(家庭基礎)と記述されています。
 また,文部科学省では,環境教育を一層推進するための施策を実施しています。まず,新しい環境教育の在り方に関する調査研究,米国の提唱による「環境のための地球規模の学習や観測(GLOBE)計画」に参加する協力校の指定,環境教育の実践発表大会(全国環境学習フェア)の開催,さらには教員などを対象に,環境教育に関する各地域の研修などにおける指導者を養成する研修を実施しています。
 さらに,「豊かな体験活動推進事業」を実施し,児童生徒の豊かな人間性や社会性をはぐくむため,体験活動の推進に総合的に取り組んでいます。特に,平成20年度からは全国の小学校において,農山漁村における宿泊体験活動を推進するため,農林水産省・総務省と連携して「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施するなど,他校のモデルとなる自然体験活動などの様々な体験活動を行っています(参照:第2部第2章第1節2(2))。
 また,環境省と連携・協力し,環境保全活動に取り組む地域の方々や教員を対象に,基本的知識の習得と体験学習を重視した環境教育の基礎講座を開催しています。
 学校施設においても,環境への負荷の低減を図るとともに,施設を教材として環境教育に活用して太陽光発電や断熱化の仕組み・効果を学習するなど,学校を地域への環境・エネルギー教育の発信拠点とするため,農林水産省,経済産業省,環境省と連携して,エコスクール(環境を考慮した学校施設)の整備を推進しています(参照:第2部第10章第2節3(1))。
 社会教育においては,公民館などの社会教育施設を中心として,地域における社会教育関係団体などが連携し,環境保全などの地域の課題を解決していくための取組を支援し,地域の教育力の向上を図っています。
 また,次代を担う自立した青少年の育成を図るため,自然体験活動の指導者育成など必要な支援に取り組むとともに,青少年の課題に対応した体験活動を推進しています。さらに,国立青少年教育振興機構において,国立青少年教育施設の立地条件や特色を活かした自然体験活動などの機会と場の提供,民間団体が実施する体験活動などに対する「子どもゆめ基金」による助成などを通して,青少年に対する環境教育を推進しています(参照:本章第2節3)。

8 読書活動の推進

(1)読書活動の意義

 読書は,我々の人生をより豊かなものにするだけでなく,特に子どもにとっては,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことができないものです。
 このため文部科学省では,子どもの読書活動を推進するとともに,学校図書館の充実や生涯学習の拠点である公立図書館の機能の向上に取り組んでいます。

(2)政府全体の取組

 子どもの読書活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため,平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布・施行され,国,地方公共団体の責務などを明らかにするとともに,4月23日を「子ども読書の日」とすることなどを定めています。また,この法律に基づき,14年8月に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定され,20年3月には,「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第2次)」が閣議決定されました。本計画は,今後おおむね5年間にわたる施策の基本的方針と具体的な方策を明らかにしたものです。
 また,平成17年7月には「文字・活字文化振興法」が成立し,国民の間に広く文字・活字文化についての関心と理解を深めるようにするため,毎年読書週間(10月27日~11月9日(文化の日を中心にした2週間))の初日である10月27日が「文字・活字文化の日」として制定されました。さらに,20年6月には,「文字・活字文化振興法」の制定から5年目の22年(西暦2010年)を「国民読書年」とすることが国会で決議されるとともに,新しい時代における図書館制度の一層の整備・充実を図るため図書館法が改正されました。

(3)読書活動推進のための施策

 文部科学省では,国民の間に広く子どもの読書活動についての関心と理解を深めるため,各種施策を実施しています。

1.地域における読書活動の推進

 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第2次)」では,国は,本計画期間中に50%以上の市町村において「子ども読書活動推進計画」(市町村計画)が策定されるよう,都道府県や市町村の相談に応じることなどにより取組を促していくこととされており,文部科学省の調べでは,平成21年度末時点で,全都道府県と753市町村(全市町村の約43%)において「市町村計画」が策定され,引き続き,地域の実情を踏まえつつ,市町村計画の策定が求められています。
 また,文部科学省では,法律に基づき,「子ども読書の日」を記念して“子どもの読書活動推進フォーラム”を開催し,文部科学大臣表彰などを行うとともに,子どもの読書に関する情報をホームページなどにより提供しています。
 さらに,住民にとって「地域の知の拠点」としての図書館が,だれもが利用しやすく,身近なところで読書ができる施設となるための環境を整備しています。さらに,読書活動をはじめとする図書館の機能やサービスを充実するため,協力者会議において,図書館の設置や運営上の望ましい基準の改正についての検討を行っています(参照:本章第3節3(3))。
 なお,平成22年は「国民読書年」でもあり,読書活動推進のための行事・取組のさらなる進展のため,「国民読書年」に関する取組の実施について周知に努めています。

国民読書年ホームページ

国民読書年ホームページ

2.学校における読書活動の推進

(1)学校における読書活動の推進

 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第2次)」では,学校における学習活動を通じた読書習慣の確立とともに,学校図書館が,児童生徒の自由な読書活動や読書指導の場としての「読書センター」の機能と,教育課程の展開に寄与する「学習情報センター」の機能を果たし,学校教育の中核的な役割を担うことが掲げられています。
 また,平成17年7月の「文字・活字文化振興法」には,学校の教育課程全体を通じて,読む力や書く力などを涵養することを定めています。
 さらに,平成19年6月の学校教育法改正により,義務教育の目標として新たに「読書に親しませ,生活に必要な国語を正しく理解し,使用する基本的な能力を養うこと」が規定されました。また,先般改訂された新学習指導要領では,「児童(生徒)の言語活動を充実すること」が新たに盛り込まれるとともに,引き続き「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り」,児童生徒の「主体的,意欲的な学習活動や読書活動を充実すること」が明記されています。
 文部科学省の調べでは,平成20年5月現在,朝の読書活動を実施している公立学校の割合は,小学校で89.9%(19年87.2%),中学校で81.9%(19年77.5%),高等学校で29.8%(18年30.8%)となっています。また,ボランティアなどの協力を得ている学校や公共図書館との連携を実施している学校も増加しており,各学校において積極的な取組がなされています。

(2)学校図書館の充実

 子どもの豊かな読書経験の機会を充実させていくためには,子どもの知的活動を推進し,多様な興味・関心にこたえる魅力的な図書資料を整備・充実させていくことが重要です。また,各教科などにおいて多様な教育活動を展開していくために,学校図書館を充実させていくことが求められています。
 公立義務教育諸学校における学校図書館の図書については,学校の規模に応じて整備するべき蔵書数の目標を定めた「学校図書館図書標準」(平成5年3月)があります。「学校図書館図書標準」の達成に向けた図書整備の経費として,19年度から23年度までの「新学校図書館図書整備5か年計画」により,5年間で毎年約200億円,総額約1,000億円の地方財政措置が講じられることとされています。
 文部科学省の調べでは,「学校図書館図書標準」を達成している学校の割合は,平成19年度末において,小学校で45.2%,中学校で39.4%であり,学校図書館図書の整備は必ずしも十分に進んでいるとはいえない状況であり,各教育委員会や学校において「学校図書館図書標準」の達成に向けた蔵書の計画的な整備が引き続き求められます。
 なお,文部科学省では,平成21年度において,児童生徒の自発的・主体的な学習活動の促進,読書習慣の確立,教員のサポート機能の強化などを図るため,「学校図書館の活性化推進総合事業」を実施し,学校図書館の有効な活用方法などについて調査研究を行いました。事業の成果は各都道府県に情報提供し,学校図書館の一層の充実に努めていきます。

(3)司書教諭の計画的養成・配置の促進

 学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導を行うなど,司書教諭は,学校図書館を活用した教育活動や読書活動の中心的な役割を担います。司書教諭は,「学校図書館法」上,平成15年4月以降12学級以上の学校には必ず置かなければならないこととされています。司書教諭が各学校でその役割を十分に果たしていくためには,校長のリーダーシップの下,司書教諭が中心となって教員,学校図書館担当事務職員,ボランティアなどと連携・協力し,それぞれの立場から学校図書館の機能の充実を図っていくことが必要です。
 文部科学省では,引き続き司書教諭の養成のための講習会を実施し,有資格者の養成に努めるとともに,司書教諭の配置が促進されるよう周知を図っていきます。

第5節 国立教育政策研究所における研究・事業活動

 平成21年6月に創立60周年を迎えた国立教育政策研究所は,我が国の教育政策に関する総合的な国立の研究機関として,教育政策の企画・立案のための基礎的な事項について調査研究を推進しています。さらに,教育関係者などへの教育研究情報の発信,学校現場と連携した調査研究,社会教育分野での実践的な研究,教育分野における国際的な共同研究・協力の推進など,幅広い活動を展開しています。
 近年,教育分野において,教育課題に関する実態などの分析が一層重要になっており,本研究所においても,教育政策の企画・立案に資するデータを提供できるような研究の推進を図っています。

1 国立教育政策研究所における研究・事業活動の内容

 本研究所は,調査研究活動から得た成果を教育政策の企画・立案に有意義な知見として集約・提示することを主要な役割としています。このため,中長期的視点からみた教育をめぐる国内外の状況や,緊急に解決が求められる政策課題の社会的背景・現状などについて,所内外の研究者が参画するプロジェクトチームを組織するなどして調査研究を推進しています。
 また,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」や,国際教育到達度評価学会(IEA)が進めている「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」など,国際的な共同研究に我が国を代表して参画しています。平成21年6月~7月にはPISAの第4回調査が実施され,その結果は22年12月に公表が予定されています。
 さらに,児童生徒の学力の実態などを把握するための「全国学力・学習状況調査」(参照:第2部第2章第1節)や「教育課程実施状況調査」などを実施するとともに,教員向け指導資料の作成・配布などを通じて,国内の教育関係機関・団体などに対する情報提供や援助・助言を行っています。

平成21年度教育改革国際シンポジウム

平成21年度教育改革国際シンポジウム

2 研究活動等の成果の公表など

 本研究所の研究・事業活動に関する報告書などについては,研究所のホームページ(参照:http://www.nier.go.jp/)や,研究所内にある教育図書館での一般公開などを通じ,広く閲覧できるようにしています。また,平成21年12月の教育改革国際シンポジウム「“質の高い学校”をもとめて」などのシンポジウムの開催や,研究成果に基づく援助・助言などを通じて,成果の普及を図っています。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

(生涯学習政策局政策課教育改革推進室)

-- 登録:平成22年08月 --