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第3節 魅力ある優れた教員の確保

1.教員の資質能力の向上

(1)教員の養成・採用・研修における取組

 学校教育の充実は,その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが極めて大きいといえます。特に,これからの教員には,変化の激しい時代にあって,一人一人の子どもたちが自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動していくことのできる自立した個人として,心豊かに,たくましく生き抜いていく基礎を培う教育を行うことが期待されています。そのため,教職に対する強い情熱,教育の専門家としての確かな力量,総合的な人間力を備えた魅力ある教員を確保していくことがますます重要となっています。
 こうした教員の資質能力は,養成・採用・研修の各段階を通じて,生涯にわたり形成されていくものであり,その向上のためには,これらの各段階を通じて関連施策を総合的に進めることが必要です。このような観点から,文部科学省では次のような取組を進めています。

1教員養成

 教員養成については,使命感や子どもへの愛情を持ちながら,現場の課題に適切に対応できる,力量ある教員の養成を図るため,平成10年の教育職員免許法等の一部改正により,教え方や子どもとのふれあいを重視し,教員の学校教育活動の遂行に直接資する「教職に関する科目」の充実など,大学における教員養成カリキュラムの見直しを行いました。この新しいカリキュラムは,12年度の大学入学者から全面的に適用されています。
 また,平成18年7月の中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」の提言を受けて,大学における教職課程において,教員として必要な資質能力を確実に身に付けさせるため,新たに必修科目「教職実践演習(仮称)」を設けることや,教職課程の事後評価を実施し,改善が見られない場合には是正勧告や認定取消しを行う仕組みを整備することなどを現在検討しています。
 さらに,力量ある新人教員の養成や,学校や地域において指導的役割を果たし得る教員の養成が必要であることから,平成19年3月に専門職大学院設置基準等改正を行い,「教職大学院」制度を創設しました。20年度開設予定の設置認可申請(計画)のあった21大学について,大学設置・学校法人審議会において審査が行われ,20年4月には,19大学において教職大学院が開設される予定です(参照:コラム8)。

2教員採用

 教員採用については,採用の段階で,教員にふさわしい,個性豊かで多様な人材を幅広く確保していく観点から,各都道府県教育委員会などにおいて,学力試験の成績のみならず,面接試験や実技試験の実施,受験年齢制限の緩和,様々な社会経験の適切な評価などを通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されてきています(図表2−2−8)。また,条件附採用期間制度(注1)を適正に運用し,新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。

  • (注1)条件附採用期間制度
     採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり,一般の地方公務員の場合,6か月の条件附採用期間の職務を良好な成績で遂行したときに,初めて正式採用となる。
     児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・常勤講師については,その職務の専門性等から特に,条件附採用期間が1年間とされ,かつ,その間に初任者研修を受けることとなっている。
図表2−2−8 平成20年度公立学校教員採用選考試験実施方法等
1 面接試験の実施状況等
(単位:都道府県・指定都市数)
  実施状況 実施方法
1次2次両方で実施 個人・集団両方を実施 面接官に民間の人事担当者等を起用 面接官に臨床心理士等を起用 模擬授業の実施 場面指導の実施 指導案作成の実施
平成19年度 44 57 42 24 48 27 20
平成20年度 45 58 42 23 52 30 18
2 実技試験の実施状況等
(単位:都道府県・指定都市数)
  小学校 中・高等学校
水泳 体育実技 音楽 図画工作 英語(英会話) 英語(英会話)
平成19年度 59 52 53 18 8 62
平成20年度 57 52 51 16 9 63
3 受験年齢制限の緩和について
(単位:都道府県・指定都市数)
  制限なし 51歳未満〜
41歳以上
41歳未満〜
36歳以上
36歳未満〜
30歳以上
30歳未満
平成19年度 9 11 28 14 0
平成20年度 12 12 31 9 0
4 特別選考の実施状況
(単位:都道府県・指定都市数)
  社会人 英語の資格 スポーツ・芸術 現職教員又は教職経験 障害のある者を対象とした選考
平成19年度 22 9 16 17 39
平成20年度 27 8 19 19 51

(出典)文部科学省調べ

3教員研修

 教員には,その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており,このことは平成18年12月に改正された教育基本法にも新たに規定されました(第9条第1項)。また,都道府県教育委員会などにおいては,教員に適切な研修の機会を提供する必要があり,教員がその経験,能力,専門分野などに応じて必要な研修を受けることができるよう,初任者研修などの各種研修が実施されています。
 国では,教員研修センターにおいて,各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・教頭等の教職員に対する学校管理研修や,喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修等の講師や企画・立案等を担う指導者を養成するための研修などにより,地域の中核となるリーダーを育成します(図表2−2−9)。また,各都道府県教育委員会が行う研修を支援するため,教員研修モデルカリキュラムや研修教材の開発・提供,事例の刊行その他様々な研修情報の提供を行っています。
 教員の資質能力向上を図るため,特に以下の取組を進めています。

図表2−2−9 教員研修の実施体系
(ア)初任者研修,10年経験者研修

 初任者研修は,新たに採用された教員に対して,実践的指導力と使命感を養うとともに幅広い知見を得させるため,1年間,学校内外で研修を行うものです。
 また,10年経験者研修は,在職期間が10年程度に達した教員に対して,得意分野を伸ばすなど教員としての資質能力の向上を図ることを目的として,個々の能力・適性などの評価を行い,40日間程度,学校内外で研修を行うものです。

(イ)学校組織マネジメント研修

 これからの学校においては,組織マネジメント(「管理」や「経営」)の発想を導入し,学校運営の改善に努めるとともに,校長が独自性とリーダーシップを発揮することが期待されています。このため,これからの教員は,総合的な管理運営能力を身に付ける必要があります。
 このような観点から,教員研修センターにおいて,学校組織マネジメント研修の指導者養成研修を実施しています。

(ウ)長期社会体験研修

 教員も社会の一員であることに変わりはありません。特に,今日のように社会の変化が激しい時代にあって,教員には,様々な経験を通じて幅広い視野を持つことが求められています。
 このような観点から,教員を民間企業,社会福祉施設,社会教育施設などの学校以外の施設などへおおむね1か月から1年程度の長期にわたり派遣する長期社会体験研修が全国で実施されており,平成18年度は,1,001名の教員が派遣されています(図表2−2−10)。

図表2−2−10 教員の長期社会体験研修
実施県市数 派遣人数
合計 民間企業 社会福祉施設 社会教育施設 その他
63 1,001人 697人 122人 90人 92人
  • 注)実施県市数の母数は,47都道府県,15指定都市37中核市

(出典)文部科学省調べ

(研修内容例)
【民間企業】
新聞社における取材活動,デパートにおける接客業務 など
【社会福祉施設】
特別養護老人ホームにおける介護業務 など
【社会教育施設】
青少年自然の家等における社会教育プログラムの企画立案 など
【その他】
知事部局における行政実務研修 など
(エ)大学院修学休業制度

 平成13年4月に,教員の自発性に基づいて長期の研修を推進するため,大学院修学休業制度が創設されました。この制度は,公立学校の教員が,その身分を保有したまま,一定の期間休業し,大学院で修学することを可能とするものです。18年4月1日現在,961人がこの制度を利用しています。

(2)教員免許更新制の導入(参照:第1部第2章第4節

 以上の取組に加え,教員が社会構造の急激な変化等に対応して,最新の知識・技能を身に付け,自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得られるようにする必要があることから,教育職員の免許の更新制の導入等を図るため,「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律」が,平成19年6月,第166回国会で成立しました。

(3)教員の実績評価と処遇等への反映など

 学校教育の成果は教員の資質に負うところが極めて大きいことから,教員の能力や実績を正確に評価し,その結果を配置や処遇,研修等に適切に反映することが大切です。
 このため,文部科学省は,平成15年度から3年間,教員評価に関する調査研究を全都道府県・指定都市教育委員会に委嘱し,新しい教員評価システムの構築・運用を進めてきました(図表2−2−11)。18年10月現在,このうち9割以上(60/62)の教育委員会が新しい評価システムに取り組んでいます。また,文部科学省は,18年度以降においても,委嘱事業を実施し,教員評価の結果を給与等の処遇に反映させるなど,引き続き新しい評価システムの改善・充実の推進に取り組んできました。
 さらに,高い指導力や優れた実績のある教員を評価することは,教員の意欲を高め,資質能力の向上に資することから,平成19年4月現在,50の教育委員会が優秀教員表彰の取組を導入しています。文部科学省においても,18年度より文部科学大臣優秀教員表彰を実施しており,全国の国公私立学校の現職の教育職員のうち,学校教育における実践等に顕著な成果を挙げた者の中から,都道府県教育委員会などが候補者を推薦し,18年度は765名を表彰しました。

図表2−2−11 評価のイメージ(例)

(4)指導上の問題がある教員への厳格な対応

1いわゆる「指導力不足教員」への対応(参照:第1部第2章第4節2

2非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰等の非違行為はそれ自体許されないものであるのみならず,教員に対する信頼,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 特に児童生徒に対するわいせつ行為等については,教員として絶対に許されないものであることから,原則として懲戒免職とするなど,厳正に対応するよう各教育委員会を指導しています。
 また,文部科学省では,各教育委員会に対して,懲戒処分全般の基準作成や処分事案について,児童生徒等のプライバシー保護に十分配慮しつつ,できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し,教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2−2−12)。

図表2−2−12 公立学校教育職員の懲戒処分等の状況(平成18年度)
処分事由 懲戒処分の種類 合計 訓告等 諭旨免職 総計
免職 停職 減給 戒告
体罰 0 17 82かっこ(0) 70かっこ(6) 169かっこ(6) 254かっこ(212) 1 424かっこ(218)
わいせつ行為等 118 29 17かっこ(5) 6かっこ(18) 170かっこ(23) 14かっこ(99) 6 190かっこ(122)
国旗・国歌の取扱い等 0 3 17かっこ(0) 38かっこ(0) 58かっこ(0) 40かっこ(0) 0 98かっこ(0)
争議行為 0 7 0かっこ(0) 3かっこ(0) 10かっこ(0) 7かっこ(0) 0 17かっこ(0)
公費の不正執行又は手当等の不正受給 4 3 6かっこ(12) 3かっこ(43) 16かっこ(55) 8かっこ(24) 1 25かっこ(79)
交通事故 36 79 129かっこ(1) 287かっこ(8) 531かっこ(9) 1,859かっこ(155) 0 2,390かっこ(164)
未履修問題 0 0 2かっこ(10) 26かっこ(4) 28かっこ(14) 462かっこ(120) 0 490かっこ(134)
その他の服務違反 29 49 45かっこ(2) 54かっこ(96) 177かっこ(98) 718かっこ(278) 2 897かっこ(376)
合計 187 187 298かっこ(30) 487かっこ(175) 1,159かっこ(205) 3,362かっこ(888) 10 4,531かっこ(1,093)
  • 注)
    1. 教育職員とは,公立の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校の校長,教頭,教諭,助教諭,養護教諭,養護助教諭,栄養教諭,講師,実習助手及び寄宿舎指導員をいう。
    2. かっこ内は,監督責任により懲戒処分等を受けた者の数で外数である。

(出典)文部科学省調べ

3教員のメンタルヘルスの保持

 平成18年度の病気休職者数及び精神性疾患による病気休職者数がともに増加し,病気休職者全体に占める精神性疾患による休職者の割合が61.1パーセントとなっています。いずれも過去最高を更新しており,過去10年間,増加傾向にあります(図表2−2−13)。
 学校教育は教員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり,教員が心身ともに健康を維持して教育に携わることが重要であるため,文部科学省では,メンタルヘルスの保持にかかる方策について各教育委員会に対して指導・助言を行っています。

図表2−2−13 分限処分の状況

(5)学校教育における社会人の活用

 幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することは,社会に開かれた学校づくりを推進し,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。文部科学省では,次のような施策を進めています。

1社会人講師の活用等

 優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,教員免許状を取得していなくとも,教科や「総合的な学習の時間」の一部などを担当することができる「特別非常勤講師制度」の活用が,年々広がっており,平成17年度の活用件数が,全国で2万4,325件となっています(図表2−2−14)。
 さらに,昭和63年に教育職員免許法を一部改正し,教職課程を履修していないが,優れた社会経験のある者に特別免許状を授与して教員として活動ができることとし,以後も,社会人活用の一層の促進のために,授与要件を緩和するなどの改善を行っています。これにより,都道府県教育委員会などが行う採用選考において特別免許状の授与を前提とした社会人選考が広がるなど,多様な社会経験や得意分野を持つ人材の教員への採用が行われてきています。

図表2−2−14 特別非常勤講師制度の活用状況

2民間人校長の活用と民間人教頭制度の創設

 文部科学省では,平成12年に校長の資格要件を緩和し,教員免許を持たず,教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとなりました。また,校長を補佐する教頭についても,幅広く人材を確保する観点から,校長と同様に資格要件を緩和し,平成18年度から民間人教頭を登用できることとなりました。
 これにより,平成19年度4月1日現在,全国で102人の民間人校長,20人の民間人教頭が登用されています。

2.教職員定数の改善及び学級編制の弾力化

(1)これまでの経緯

 文部科学省では,児童生徒の学習活動や学校生活の基本的単位である学級について,その規模の適正化を図るとともに,教育活動を円滑に行うために必要な教職員を確保するため,法律で公立の小・中・高等学校・中等教育学校と特別支援学校の学級編制・教職員定数の標準を定めています。

(2)公立義務教育諸学校教職員定数改善計画と公立高等学校教職員定数改善計画

 教育の成否は教員に負うところが大きく,教職に優れた人材を必要数確保することは極めて重要です。このため,公立義務教育諸学校の教職員定数については,これまで7次にわたり,計画的な改善を行い,40人学級の実現や基礎学力の向上のための定数改善を実施してきました。平成13〜17年度までの5か年計画で実施した「第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」では,基礎学力の向上ときめ細かな指導を目指し,算数,理科などの教科に応じ,20人程度の少人数指導や習熟度別学習指導などのきめ細かな指導を行う学校の取組に対する支援等を行うため,約2万6,900人の教職員定数の改善を行いました。この結果,教員1人当たり児童生徒数はOECD調査によると,初等教育については,日本は約20.6人(2001年)から約19.4人(2005年)に改善しました。また,前期中等教育については,日本は約16.6人(2001年)から,約15.1人(2005年)に改善しました。(図表2−2−15)。

図表2−2−15 教員一人当たり児童生徒数(国際比較)

 「第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」の完成を受けて,平成17年5月,中央教育審議会の義務教育特別部会での審議において,新たな改善計画を策定すべきとの意見が多く出されました。文部科学省では,これを受けて具体的・専門的に検討することとなり,同月,「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」を設けました。同年8月には,同会議から,少人数教育に対するニーズが高いことや,今日的な教育上の課題に対応するため,18年度から新しい教職員定数改善計画を策定することが適当との報告がなされました(「今後の学級編制及び教職員配置について」)。
 これらを受け,文部科学省は,平成18年度から5年間の新しい教職員定数改善計画を作成し,18年度の概算要求を行いました。しかしながら,公務員人件費の縮減などを図る総人件費改革という行政改革の方針が政府全体の方針として出されたことから,同計画の策定は見送られました。一方で,特別支援教育や食育の充実は,喫緊の今日的教育課題であることから,既存の教職員配置の見直しを行った上で,18年度においては329人,19年度においては331人の定数改善を図りました。
 公立高等学校の教職員定数についても,これまで6次にわたり,計画的な改善を行い,40人学級の実現や多様な高校教育の展開のための定数改善を実施してきました。平成13年〜17年度までの5か年計画で実施した第6次公立高等学校教職員定数改善計画では,多様な高校教育の展開に対応するため,学科や教科の特性に応じた指導等の充実(習熟度別授業,少人数による授業,中高一貫校,総合学科,単位制校への加配の拡充)などのため,7,008人の教職員定数の改善を行いました。

(3)学級編制の弾力化

 公立義務教育諸学校の学級編制については,現在,法律の定めにより,1学級40人を上限とすることを標準として,各都道府県教育委員会が基準を定めることとなっています。
 以前は国の標準(40人)を下回る学級編制基準を定めることは認められていませんでした。しかし,地域の実情や児童生徒の実態に応じた学校教育にも対応できるよう,平成13年度から,特に必要と認められる場合には,各都道府県教育委員会の判断により,特例的に国の標準を下回る少人数の学級編制基準を設けることを可能にしました。
 これに加えて,平成15年度から,各都道府県教育委員会の判断により,例えば学年などを限定する特例的な場合に限らず,40人を下回る一般的な基準(例えば県内一律の38人学級編制)を定めることが可能であることや,個別の学校ごとの事情に応じて,児童生徒に対する教育的配慮の観点から,柔軟な学級編制が可能であることを改めて周知し,学級編制の一層の弾力化を図りました。
 更に,平成16年度からは,義務教育費国庫負担制度の改革(総額裁量制の導入)に伴い,各都道府県教育委員会の判断で少人数学級編制を行う場合,教育指導の改善に関する特別な研究が行われているものについては,国庫負担対象となる教職員定数を活用することが可能になるよう,教職員定数の運用についても弾力化を図りました。
 これにより,平成19年度は,小学校低学年を中心に46道府県において少人数学級が実施されています。

3.義務教育費国庫負担制度及び関連諸制度の改革

(1)義務教育費国庫負担制度

 義務教育費国庫負担制度は,すべての国民が,全国どの地域においても無償で一定水準の義務教育を受けられるようにするため,義務教育費の大半を占める公立の義務教育諸学校の教職員給与費について,国と地方の負担によりその全額を保障するものです。この制度は,学級編制や教職員定数の標準を定める法律とあいまって,教育の機会均等とその水準の維持向上のために重要な役割を果たしており,結果として全国約70万人の教職員給与費の総額約5兆円が確実に確保されています。
 また,この義務教育費国庫負担制度を堅持した上で,さらに地方の主体性を生かし,それぞれの創意工夫をこらした教育活動を推進するため,近年様々な改革を行いました。
 平成16年度からは,義務教育国庫負担制度に「総額裁量制」が導入されました。それまでは,給料,諸手当の費目ごとに国庫負担金の額が決められ,費目間での流用ができない制度でしたが,この総額裁量制の導入により,国庫負担金の総額の中で自由に使用することができるようになりました。これにより,教職員の給与や配置について都道府県独自の取組が促進されました(図表2−2−16)。
 国庫補助負担金,税源移譲を含む税源配分,地方交付税の在り方を一体的に見直すこととした「三位一体の改革」においては,義務教育費国庫負担制度も検討の対象となりました。政府部内で慎重な検討が行われた結果,平成17年11月末の政府・与党合意において「義務教育制度については,その根幹を維持し,義務教育費国庫負担制度を堅持する。その方針の下,費用負担について,小中学校を通じて国庫負担の割合は3分の1とし,8,500億円程度の削減及び税源移譲を確実に実施する」ことが決定されました。
 これにより,国の負担割合が2分の1から3分の1に引き下げられるものの,義務教育費国庫負担制度は今後とも堅持されることが初めて明記されました。その後,平成18年の第164回国会において,国の負担率を3分の1に改める義務教育費国庫負担法の改正が行われました。
 また,地域の実情に応じた教職員配置が一層可能となるよう,これまで小中学校・盲聾(ろう)学校と養護学校が別々の国庫負担制度により教職員給与費が保障されていたのを見直し,平成18年度から二つの制度を一つに統合することとしました(図表2−2−17)。

図表2−2−16 総額裁量制の概要

図表2−2−17 小中学校・盲聾(ろう)学校と養護学校に係る国費負担制度の一本化

(2)市町村費負担教職員任用事業の全国化

 市町村立小中学校などの教職員の給与費については,市町村間の財政力格差により人材確保が困難になり,地域ごとの教育水準に格差が生じないよう,都道府県が市町村に代わって市町村立小中学校などの教職員を任用した上で,その給与を都道府県が負担することとしています(県費負担教職員制度)。
 この制度を前提とした上で,平成15年度からは構造改革特区において,さらに平成18年度の市町村立学校職員給与負担法改正により,全国において,地域の実情に応じて教育や特色ある学校づくりを図るため,教育上特に配慮が必要な事情がある場合には,県費負担教職員に加えて,市町村が自ら給与を負担することにより,市町村立小中学校などの教職員を任用することができるようになりました(市町村費負担教職員任用事業)。
 これにより,市町村が独自の判断で地域の人材を教員として任用することができ,地域の特性に応じた学校教育の充実や各学校における特色ある学校づくりが可能となりました。平成18年5月時点においては,385人の教職員が任用されており,少人数学級編制,不登校対策,英語教育の実施など地域のニーズに合わせた独自の取組が行われています。

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