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第2節 暴力行為,いじめ,不登校等の解決を目指して

1.生徒指導上の諸問題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は,児童生徒にとって学校生活が有意義かつ充実したものになることを目指して行われるものです。すべての児童生徒を対象として,学校におけるあらゆる教育活動の中で,児童生徒が社会的な資質や能力,態度などを修得し,発達させるような指導・援助が行われています。
 しかし,いじめの社会問題化や少年による重大事件の続発,小学生による校内暴力の増加など,児童生徒の問題行動は教育上の大きな課題となっています。学校においては,日常的な指導の中で,教師と児童生徒との信頼関係を築き,すべての教育活動を通じて規範意識や社会性をはぐくむきめ細やかな指導を行うとともに,問題行動への対応については,まず第一に未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,このような指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒等の措置も含めた毅(き)然とした対応をとる必要があります。児童生徒の問題行動については,学校が,問題を隠すことなく,教職員が一体となって対応し,教育委員会は家庭や地域社会,その他関係機関等の理解と協力を得て地域ぐるみで取り組める体制づくりを進めていくことが重要です。文部科学省では,「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日,初等中等教育局長通知)を発出し,こうした趣旨の徹底を図りました。

(2)暴力行為

 平成18年度において,全国の国・公・私立小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は,1学校内で発生したものが全学校の約19.6パーセントに当たる7,711校において4万19件,2学校外で発生したものが全学校の約7.3パーセントに当たる2,856校において4,602件となっており,調査内容・方法の見直しによる影響もあるものの,引き続いて大きな課題となっています(図表2−2−3)。
 文部科学省では,平成19年度から「問題を抱える子ども等の自立支援事業」において,暴力行為等の未然防止,早期発見・早期対応などの児童生徒の支援を行うため,サポートチーム(注1)など関係機関とのネットワークを活用した取組などを実施しています。

  • (注1)サポートチーム
     ここでは,問題行動などを起こす個々の児童生徒の状況に応じ,学校,教育委員会,関係機関などが連携して対応するチームを指す。
図表2−2−3 暴力行為発生件数の推移

(3)いじめ

 いじめにより児童生徒が自らその命を絶つという痛ましい事件が相次いで発生したことをきっかけに,いじめ問題が大きな社会問題となりました。文部科学省で,平成18年10月に,いじめは決して許されないこと,いじめが生じた際には問題を隠さず,学校と教育委員会,家庭・地域が連携して対処していくべきことなどについて「いじめの問題への取組の徹底について」(18年10月19日,初等中等教育局長通知)を発出しました。さらに,同年11月には「文部科学大臣からのお願い」を発表し,子どもたちと保護者や地域の方々に対し,いじめ問題について広く呼びかけを行ったり,各教育委員会や学校の実践例をまとめた「いじめ問題に関する取組事例集」を全国の小・中・高等学校に配付し,特色ある取組を紹介しました。また,「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」を設置し,19年2月には「いじめを早期に発見し,適切に対応できる体制づくり−ぬくもりのある学校・地域社会をめざして−」が取りまとめられました。さらに19年5月,6月にはこの有識者会議において「『いじめをなくそう』子ども会議」を開催し,いじめに対して自主的・自発的に生徒間で取組を進めている中・高校生や,いじめを受けた経験を持つ中・高・大学生といじめ問題に関する意見交換が行われました。こうした取組に加え,インターネットや携帯電話を利用した新しい形のいじめが大きな問題となっているため,19年9月から,その対応について審議をし,特に保護者に対して,1子どもの携帯電話・インターネットの利用の実態把握の徹底,2情報モラル教育の充実,3家庭や地域,関係機関と連携したネット上のチェック体制の強化,4被害にあった子どもを守るための体制整備など,現段階において,ただちに取り組むべき喫緊の課題について4つの提案をしました。

「いじめをなくそう」子ども会議

 一方で,毎年実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(「問題行動調査」)において,平成11年度から17年度まで,「いじめ」を主たる原因とする自殺の件数が0件とされていました。しかし,現行の調査方法では,いじめや自殺の実態を適切に把握できていないのではないかという指摘もあり,その7年間について「児童生徒の自殺に『いじめ』の関わりが指摘されている事例の調査」を実施しました。その結果,「いじめ」が自殺の主たる原因であるかどうかにかかわらず,14件の「いじめ」があったことが明らかになった旨19年1月に公表しました。

お父さん!お母さん!
お子さんのケータイ・ネットの利用は大丈夫ですか?

 この結果や専門家等の意見を踏まえて,平成18年度の問題行動調査では,自殺した児童生徒の状況を適切に把握できるよう調査方法を見直しました。また,いじめについても,より正確な実態把握ができるよう,いじめの定義(注2)や調査対象・項目等について見直しを行いました。新しい調査方法で実施した18年度における全国の国・公・私立の小・中・高等学校・特殊教育諸学校のいじめの認知件数は12万4,898件で,いじめを認知した学校は,全学校の約55パーセントに当たる2万2,159校でした。また,自殺した児童生徒の状況として「いじめ」があった件数は,6件でした。
 いじめは,どの子どもにも,どの学校においても起こり得るものであり,いじめの件数が多いか少ないかの問題以上に,問題が発生した際に早期発見・早期対応に努めることが大切です。文部科学省としても,引き続き実態把握に努めるとともに,いじめ問題への取組を推進していきます(図表2−2−4)。

  • (注2)いじめの定義
     これまでの問題行動調査では,「この調査において『いじめ』とは,『1自分より弱い者に対して一方的に,2身体的・心理的な攻撃を継続的に加え,3相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。』とする。なお,個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく,いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。」としていた。
     平成18年度の調査からは,「本調査において,個々の行為が『いじめ』に当たるか否かの判断は,表面的・形式的に行うことなく,いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。『いじめ』とは,『当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの。』とする。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。」と見直した(なお,こうした定義の見直しとともに,学校がいじめを認知するに当たっては,アンケート調査や個別面談の実施など,児童生徒から直接状況を聞く機会を設けるように徹底を図っている)。
図表2−2−4 いじめの認知(発生)件数の推移

(4)不登校

 平成18年度において,全国の国・公・私立小・中・高等学校における「不登校」を理由に年間30日以上学校を欠席した児童生徒数は,18万4,438人となっており,特に中学校では,在籍生徒数に占める不登校生徒数の割合が,現行の定義で調査を開始(調査開始:平成3年度)して以来,過去最高となるなど,引き続き教育上の大きな課題となっています(図表2−2−5)。
 文部科学省では,平成19年度から「問題を抱える子ども等の自立支援事業」によって,不登校等の未然防止,早期発見・早期対応など児童生徒の支援を行うため,教育委員会が設置・運営し,不登校児童生徒の指導・支援を行う教育支援センター(適応指導教室)を活用した取組などを支援するとともに,17年度からも「不登校への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業」において,不登校児童生徒に多様な支援を行うため,NPO等の学校外の機関等に対して,不登校児童生徒の実態に応じた効果的な活動プログラムの開発などを委託してきています。

図表2−2−5 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成18年度の国・公・私立高等学校における中途退学者数は,7万7,027人であり,また,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は約2.2パーセントとなっています(図表2−2−6)。中途退学の理由は,「学校生活・学業不適応」が約38.9パーセントで最も多く,次いで「進路変更」が約33.4パーセントとなっています。
 高等学校中途退学への対応については,平成15年度から実施されている高等学校学習指導要領の下で,各高等学校において,生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに,一層きめ細かな教育相談,ガイダンスを実施することなどが重要です。また,就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。

図表2−2−6 中途退学者数及び中途退学率の推移

(6)自殺

 文部科学省の調べでは,平成18年度の国・公・私立小・中・高等学校の自殺者数は171人です。児童生徒の自殺については,相次いで発生したいじめによる自殺や連鎖的な自殺,ネット上の問題など,教育上大きな課題があります。
 「自殺対策基本法」に基づく「自殺総合対策大綱」(平成19年6月閣議決定)においては,児童生徒の自殺予防についての調査研究の推進や自殺予防に資する教育の実施,教職員に対する普及啓発等の実施,学校における心の健康づくり推進体制の整備,いじめを苦にした子どもの自殺予防,自殺が起きたときの学校での事後対応の促進などが盛り込まれました。
 文部科学省では,これまでも命の大切さを学ばせる教育やいじめ対策などを通じて児童生徒の自殺防止に取り組んできましたが,児童生徒の自殺の特徴や傾向などを踏まえた対策を検討するため,平成18年8月から「児童生徒の自殺防止に向けた取組に関する検討会」を開催し,19年3月に子どもの自殺予防を組織的に実施するための第一歩として「子どもの自殺予防のための取組に向けて(第一次報告)」を取りまとめました。19年度は,教師を対象とした自殺予防教育プログラムの作成等に向けて,専門家や学校現場の関係者による「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する調査研究」を実施しています。また,児童生徒の自殺の状況について,より正確に実態を把握できるよう,19年1月に公表した「児童生徒の自殺に『いじめ』の関わりが指摘されている事例の調査」の結果も踏まえ,「問題行動調査」における調査方法の見直しを行いました(参照:第2部第2章第2節1(3))。

(7)校則

 校則とは,児童生徒が健全な学校生活を営み,より良く成長・発達していくために,各学校の責任と判断の下に定められる一定の決まりです。校則自体は教育的に意義のあるものですが,その内容と運用は,児童生徒の実態,保護者の考え方,地域の実情,時代の進展などを踏まえたものとなるよう,各学校において積極的に見直しを行うことが大切です。
 文部科学省では,平成9年度に実施した「日常の生徒指導の在り方に関する調査研究」の調査結果を受けて,10年9月に,各学校における校則と校則指導が適切なものとなるよう都道府県などに対し「校則見直し状況等の調査結果について」(10年9月22日,初等中等教育局中学校課長,高等学校課長通知)を出し,指導の徹底に努めています。

(8)体罰・懲戒

 文部科学省の調査では,平成18年度に体罰に関して処分を受けた教員数は169人(前年度比3人増)となっています。
 体罰は,学校教育法により厳に禁止されており,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また,教師と児童生徒との信頼関係を損なう原因ともなり,教育的な効果も期待できないと考えられます。
 一方,体罰とはどのような行為であり,児童生徒への懲戒がどの程度まで認められるかについて機械的に判定することは困難であり,このことによって,ややもすると教員等が,自らの指導に自信を持てない状況が生まれ,実際の指導において過度の萎縮を招いているとの指摘もなされているところです。
 こうしたことから,学校が問題行動に適切に対応し,生徒指導の一層の充実を図ることができるよう,懲戒・体罰に関する裁判例の動向なども踏まえ,平成19年2月5日に「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(初等中等教育局長通知)を発出し,懲戒・体罰に関する解釈・運用の考え方を示したところです。
 文部科学省では今後,同通知の趣旨について徹底を図っていくこととしています。

「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(要点)

1 生徒指導の充実について

 未然防止と早期発見・早期対応が重要。学校は問題を隠さず,教職員一体の対応をし,決断をして採った措置については,教育委員会,関係機関が一体となって,家庭,地域社会の理解と協力を得る。

2 出席停止制度の活用について

 出席停止は,懲戒行為ではなく,秩序の維持や他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために行われるもの。教育委員会は期間中個別の指導計画を立てるなど,教師や学校をサポートする。

3 懲戒・体罰について

 「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」について取りまとめた。

2.教育相談体制の充実

 児童生徒の不登校や問題行動などに適切に対処するためには,子どもたちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切です。
 文部科学省では,平成13年度から,学校における教育相談体制などの機能の充実を図るため「スクールカウンセラー活用事業補助」を開始しました。「心の専門家」である臨床心理士などをスクールカウンセラーとして配置し(19年度は中学校を中心に約1万校),スクールカウンセラーを活用する際の諸課題についての調査研究事業を行うために必要な経費の補助を各都道府県・指定都市に対して行っています。これまでの取組を通じて,スクールカウンセラーの配置は,児童生徒の不登校や問題行動などの予防・発見・解消と,保護者や教員の子どもへの接し方についての助言の両面で効果があるなどの成果が数多く報告されています。
 また,教員OBなどの地域の人材を子どもと親の相談員等として小学校に配置し,不登校などの早期発見・早期対応や未然防止に関する調査研究を実施しています。
 いじめの問題の深刻化を受けて,平成18年度は,特に,補正予算により,教育委員会における電話相談を拡充し24時間対応とするほか(図表2−2−7),スクールカウンセラーなどによる集中的な教育相談を実施しました。
 また,「教育相談等に関する調査研究協力者会議」を設置し,平成19年7月に,「児童生徒の教育相談の充実について−生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり−」が取りまとめられました。今後は,それを踏まえて今後は,学校における教育相談体制の充実やスクールカウンセラーや学校を支援する体制の充実などに取り組んでいきます。

図表2−2−7 24時間いじめ相談リーフレット

3.子どものこころの問題等に関する科学的解明と教育等への応用

 近年,いじめ,不登校,自殺等の生徒指導上の諸課題のほか,ニートやフリーターの問題などが大きな社会的問題となっています。
 これらの問題は,様々な要因が複雑に絡み合って発生するものであり,子どものこころの発達過程を踏まえた効果的な教育活動等を実施することが必要となっています。
 一方,近年,医学的な知見の蓄積や人の体外からの脳機能の計測が可能になったことなどから,子どもたちのこころの発達等に関する科学的な知見が蓄積され始めてきています。
 こうした状況を踏まえ,子どもたちのこころの問題等に関して,科学的な視点からその背景や原因を探るとともに,効果の期待される指導方法等について科学的な検証を進め,関連諸科学の成果の教育への応用を促進するよう,総合的な施策を講じることが重要です。
 このため,文部科学省では,平成18年度に実施した「情動の科学的解明と教育等への応用に関する調査研究」を踏まえ,19年度は「子どものこころの成長に関する基盤整備事業」を実施し,研究の成果を教育に還元するシステムの構築等に向けた調査研究を進めています。

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