第3節 各分野の研究開発の推進方策

4.ナノテクノロジー・材料分野

(1)研究開発の推進方策

 ナノテクノロジー(ナノ(10億分の1)メートルのオーダーで原子・分子等を操作・制御し,新しい機能を発現させる技術)・材料分野は,広範な科学技術の飛躍的な発展の基盤となる重要分野であり,21世紀の産業の技術革新を先導する分野です。
 第3期科学技術基本計画の下では,「分野別推進戦略」(平成18年3月 総合科学技術会議)と「ナノテクノロジー・材料に関する研究開発の推進方策について」(18年7月 文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会)が策定されました。文部科学省は,これらに沿って,基礎的・基盤的な研究開発から先端的・革新的な研究開発までを戦略的に推進しています。

(2)ナノテクノロジー・材料分野における取組

1研究機関・分野を越えた横断的かつ総合的な支援

 ナノテクノロジー・材料分野は,ライフサイエンス,情報通信などの分野における進歩や課題解決に貢献する重要な技術シーズとして,研究基盤・知的基盤の充実が求められています。文部科学省はこうした要請にこたえるべく,平成14年度からナノテクノロジー総合支援プロジェクトを行っています。同プロジェクトは,広範な研究分野にわたるナノテクノロジー研究に関して,産学官の研究者が戦略的かつ効率的に研究に取り組んだり,研究機関や分野を越えた横断的な研究活動を推進することに資する基盤的支援業務を行うことを目的としています。具体的には,個々の研究機関や研究開発プロジェクトでは整備の難しい大型・特殊な施設・設備と高度な技術を有する機関において,産学官の外部研究者に対して,施設・設備の利用の機会を提供するとともに,これらの施設・設備を活用した極微細加工や評価などの高度な技術支援等を行うなど,総合的な支援業務を実施しています。
 また,同プロジェクトにおいては,ナノテクノロジー関連情報の収集・発信,研究者交流の促進,人材育成なども行っています。

2先端的・革新的な研究開発

 目標指向型の先端的・革新的な研究として,平成15年度から「経済活性化のための研究開発プロジェクト(リーディングプロジェクト)」を実施するとともに,17年度から「キーテクノロジー研究開発の推進(ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発)」を進めています。

  • 経済活性化のための研究開発プロジェクト(リーディングプロジェクト)
    • ナノテクノロジーを活用した新しい原理のデバイス開発
    • 極端紫外(EUV)光源開発等の先進半導体製造技術の実用化
    • ナノテクノロジーを活用した人工臓器の開発
    • 超高感度NMR(核磁気共鳴装置)の開発
    • ナノ計測・加工技術の実用化開発
    • 次世代型燃料電池プロジェクト
  • キーテクノロジー研究開発の推進(ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発)
    • 非シリコンデバイス系材料を基盤とした演算デバイスの開発
    • 超高密度情報メモリの開発
    • ナノ環境機能触媒の開発
    • 組織制御構造体の開発
    • バイオナノテクノロジー研究拠点の形成

 また,平成14年度から,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業を活用し,「ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ」を推進しています。文部科学省が定めた三つの戦略目標の下に,10の研究領域を設定し,戦略目標の達成に向けて研究を推進しています。

3基礎的・基盤的な研究開発

  2のような目標志向型の研究開発を行うためには,その基盤となる基礎的・基盤的な研究開発が重要であり,大学や公的研究機関において,こうした研究開発に取り組んでいます。
 物質・材料研究機構においては,物質・材料科学技術を中心に,先端的科学技術分野の飛躍的発展を支える研究開発を推進しています。理化学研究所においては,複合領域・境界領域の先導的研究開発を,産業界等との連携を図りつつ推進しています。
 また,平成18年度から,物質の一原子レベルの超微細構造や化学反応領域の超高速動態・変化を瞬時に計測・分析することを可能とするX線自由電子レーザーの利用開発を推進しています。

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