第5節 学生支援の充実

1.奨学金事業の充実

(1)国の奨学金事業の現状

1奨学金事業の現状

 国の奨学金事業は日本学生支援機構で実施しており,優れた学生などであって経済的理由により修学困難な者に対し,奨学金を貸与するとともに返還金の回収などを行っています。
 この奨学金事業は,昭和18年度に創設されたものですが,平成17年度までの63年間において,奨学金の貸与を受けた奨学生の総数は約779万人,貸与総額は約7兆5,114億円に達しています。
 また,日本学生支援機構の奨学金には,無利子奨学金(第一種奨学金)と有利子奨学金(第二種奨学金)の2種類があります。有利子奨学金は,在学中は無利子で,卒業後は年利3パーセントを上限とした利子が課されるものです。

2学生の学ぶ意欲にこたえる事業の充実

 学ぶ意欲と能力のある学生などが経済的な面で心配することなく,安心して学べるようにするため,平成18年度においては,事業全体で109.2万人(対前年度比約5.7万人増)の学生などに対して,7,999億円(対前年度比489億円増)の奨学金を貸与することとしています(図表2-3-21図表2-3-22)。
 また,家計支持者の失業などによって緊急に奨学金を必要とする学生などに対応するため,年間を通じて申請を受け付ける「緊急採用奨学金制度(無利子奨学金)」についても希望者に十分にこたえられるよう,事業規模を確保しています。
 なお,高等学校及び専修学校高等課程の生徒に対する奨学金事業については,平成17年度の入学者より,順次都道府県に移管されており,都道府県において確実に事業が実施できるよう,18年度には高等学校等奨学金事業交付金190億円を措置しています。

図表●2-3-21 奨学金事業規模の推移

図表●2-3-22 奨学金事業費総額

3返還金回収業務の改善

 奨学金事業については,制度発足以来,貸与制により実施されています。これは,奨学生が卒業後,奨学金を返還し,この返還金を奨学金の原資として再度活用することによって,一人でも多くの学生などに奨学金を貸与するためです。現在,事業費総額の3割程度が返還金で賄われており(他の財源は,無利子奨学金については政府貸付金,有利子奨学金については財政融資資金及び財投機関債),返還金が確実に回収されることが,奨学金事業を実施していく上でますます重要となっています。このため,日本学生支援機構においては,(ア)奨学生に対する返還意識の徹底,(イ)口座振替制度による返還の促進,(ウ)延滞者に対する法的措置の強化・拡大など,返還金回収業務の改善・強化に努めています。

(2)奨学団体等の奨学金事業

 我が国における奨学金事業は,日本学生支援機構のほかに公益法人や地方公共団体あるいは学校や民間会社など(以下「奨学団体等」という。)によって,多様な形態で幅広く実施されています。平成15年度の日本学生支援機構の調査によると,約2,800の奨学団体等が,約27万人の奨学生に対し,総額で約721億円を支給しています。
 これら奨学団体等による奨学金事業は,それぞれの設立目的に基づいて特色ある事業を行っているところに大きな意義があり,国の奨学金事業とあいまって,教育の機会均等と優れた人材の育成の観点から大変有益なものとなっており,その一層の充実が図られることが期待されます。

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