第1節 個性が輝く大学を目指して

3.大学の国際競争力の向上

(1)卓越した研究教育拠点の形成

 我が国の大学が,世界の最高水準の大学と伍して,教育・研究の水準向上や,世界を先導する創造的人材の育成を図っていくためには,競争的環境を一層醸成し,国公私立大学を通じた大学間の競い合いがより活発に行われることが重要です。
 文部科学省では,平成14年度より「21世紀COEプログラム」を実施し,世界最高水準の大学づくりを推進するために,主として研究上のポテンシャル(潜在能力)の高い研究教育拠点に対し,高度な人材育成機能を加味した重点支援を行っています。
 採択された拠点には,1件当たり年間1〜5億円程度の補助金が原則として5年間継続的に交付され,事業開始から2年経過した後に中間評価,期間終了時に事後評価が実施されます。これまでに,採択された93大学274件の研究教育拠点すべての中間評価を行いました(図表2-3-9)。
 また,「21世紀COEプログラム委員会」(江崎玲於奈委員長)などにおいて,本事業の評価・検証を実施した結果,以下のような成果が示されています。

図表●2-3-9 21世紀COEプログラムの実績

1学長を中心とした全学的観点からの大学づくりなど大学改革の推進

  • 我が国の大学全体の教育研究環境が活性化
  • 学内の組織を越えた実質的な協力・運営体制の強化

2優れた研究者の養成機能の強化

  • 大学院生の学会,論文発表数が大幅に増加(論文発表数は3割増加(9,000件から1万1,000件へ増加),国外の学会発表数は5割増加)
  • 企業の研究開発部門への就職者が3割増加(600人から797人へ増加)

3研究水準の向上

  • 国内外の大学,研究機関,企業等との共同研究が5割増加(1万件から1万5,000件へ増加),特に企業などとの共同研究数は6割増加(2,700件から4,300件へ増加)
  • シンポジウムの開催数が2.3倍(1,366件から3,078件へ増加),うち国外での開催が2倍(297件から600件へ)

 平成18年度終了時に,14年度に採択した拠点への支援が終了します。中央教育審議会答申「新時代の大学院教育」(17年9月)や「科学技術基本計画」(18年3月)では,「21世紀COEプログラム」をより充実・発展した形で継承していくことが求められています。文部科学省では「21世紀COEプログラム」の成果を踏まえ,その基本的な考え方を継承しつつ,より重点的な支援により飛躍的な発展を目指す手法について検討しています。

(2)専門職大学院

 「専門職大学院」制度は,国際的・社会的に活躍する高度専門職業人養成へのニーズの高まりや司法制度改革の中で新たな法曹養成の中核となる「法科大学院」の構想などを背景に,高度専門職業人を養成する目的に特化した実践的な教育を行う大学院の課程として,平成15年度に創設されました。
 様々な職業分野の特性に応じた実践的な教育を行うことを可能とするため,「専門職大学院設置基準」を制定しました。この基準には,実務家教員の登用を義務付けることや学位論文の作成を必須としないことなど,独自の内容が規定されています。
 教育方法においては少人数による授業を基本としています。また,学問的な視点から学術理論を探求する科目と,実務上の課題や問題点を研究する科目を効果的に組み合わせ,必要に応じて実務教育を導入する体系的なカリキュラムを編成することで,理論と実務を架橋する実践的な教育を行っています。
 その専門職大学院の一類型として位置付けられている法科大学院は,司法試験という「点」のみによる選抜でなく,法学教育,司法試験,司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての新たな法曹養成制度の中核的機関です。各法科大学院では,法曹として備えるべき資質と能力を育成するために,修了要件については3年以上の修業年限と93単位以上の修得を標準とし,法理論教育とともに,法律相談,具体的事例に即して学ぶ「クリニック」など,実務教育の導入部分をも併せて実施し,実務との架橋を強く意識した教育が行われています。
 平成18年11月現在,法科大学院をはじめ,会計,経営管理,MOT(技術経営),公共政策などの多様な分野で計140専攻(うち法科大学院74専攻)が開設され,それぞれの個性・特色に応じた教育を実施しております。制度の創設から3年経過しましたが,現在も設置校数は増加傾向にあります(図表2-3-10)。
 文部科学省は,高度専門職業人養成を積極的に推進するため,専門職大学院と関係する業界・職能団体及び企業などが積極的に連携しながら,各分野における先導的な教育内容・方法について開発・充実等を図る優れた取組に対し重点的に支援を図る「法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム」の実施など,様々な支援を行っています。

(3)国公私立大学を通じた大学教育改革の支援

 個性輝く大学づくり,国際競争力の強化などが求められる中,大学における教育の質の充実や世界で活躍し得る人材の養成は,極めて重要な課題であり,各大学における大学教育改革の取組を一層促進していく必要があります。
 このため,文部科学省では,国公私立大学を通じた競争的環境の下で優れた取組を選定し,重点的な支援を行うことにより,大学教育改革の促進を図っています(図表2-3-11)。

図表●2-3-10 専門職大学院設置状況、図表●2-3-11 国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の充実

1課程に応じた教育内容・方法の高度化・豊富化の充実

(ア)特色ある大学教育支援プログラム(平成15年度から実施)

 学位を与える課程(修士・学士・短期大学士)に応じた教育内容・方法などの高度化・豊富化を図る取組の中から,特色ある優れた取組を選定し,社会に広く情報提供するとともに,財政支援を行っています((実績)平成18年:申請331件,選定48件)。

(イ)「魅力ある大学院教育」イニシアティブ(平成17年度から実施)

 現代社会の新たなニーズにこたえられる創造性豊かな若手研究者の養成機能の強化を図るため,大学院における意欲的かつ独創的な教育の取組(「魅力ある大学院教育」)を支援しています((実績)平成18年度:申請268件(129大学),採択46件(35大学))。

2現代的課題に対応できる人材養成と大学の多様な機能の展開

(ア)現代的教育ニーズ取組支援プログラム(平成16年度から実施)

 各種審議会からの提言などを踏まえ,社会的要請の強い政策課題に対応したテーマを設定し,各大学,短期大学,高等専門学校の教育改革を図る取組の中から,特に優れた取組を選定し,社会に広く情報提供するとともに,財政支援を行っています。
 平成18年度は,17年度までに実施してきた地域活性化,知的財産関連教育,e-ラーニングに関するテーマに加え,環境教育,キャリア教育に関するテーマを新たに設定しました((実績)平成18年度:申請565件,選定112件)。

(イ)大学教育の国際化推進プログラム
  • 1)長期海外留学支援(平成17年度から実施)
     海外の大学院等の学位取得などを目的とした学生等の海外派遣の取組のうち優れた取組を選定し,財政支援を行っています((実績)平成18年度:応募94名,選定60名))。
  • 2)海外先進教育研究実践支援(平成16年度から実施)
     教職員の資質向上などを目的とした海外派遣の取組のうち優れた取組を選定し,財政支援を行います((実績)平成18年度:(教育面の取組)申請90件,選定31件,(研究者の派遣)申請340名,選定250名)。
  • 3)戦略的国際連携支援(平成17年度から実施)
     海外の大学と連携した教育活動などを推進する取組のうち優れた取組を選定し,財政支援を行っています((実績)平成18年度:申請78件,選定5件)。

3社会の要請にこたえる専門職業人養成の推進

(ア)法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム(平成16年度から実施)

 法務,経営管理,会計等の各分野の専門職大学院において,関係する団体などとの連携により,先導的な教育内容・方法について開発・充実等を図る優れた取組を支援し,高度専門職業人養成の推進を図っています((実績)平成18年度:申請40件,選定14件)。

(イ)資質の高い教員養成推進プログラム(平成17年度から実施)

 資質の高い教員を養成・確保するため,大学における教員養成教育の不断の改善・充実を図る,特に優れた取組を選定し,財政支援を行っています((実績)平成18年度:申請92件,選定24件)。

(ウ)地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム(平成17年度から実施)

 地域医療など社会的な政策課題を踏まえた医療人教育の展開により,質の高い医療人の養成を図る優れた取組を選定し,社会に広く情報提供するとともに,財政支援を行っています((実績)平成18年度:応募110件,選定22件)。

4国際競争力のある世界最高水準の研究教育拠点形成

○21世紀COEプログラム(平成14年度から実施)

 第三者評価に基づく競争により,国公私立大学を通じて,世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援し,国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進しています。平成16年度までに93大学274件の拠点を採択し,研究教育拠点の形成を重点的に支援しています。

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