第2節 家庭の教育力の向上に向けた取組

2.家庭教育を支援するための取組

(1)家庭教育に関する学習機会の提供

 家庭の教育力を向上させるためには,親が学習や体験・経験を通じ,家庭教育に関する理解を深める場や機会が必要です。このため,文部科学省では,平成16年度から,乳幼児健診や就学時健診など多くの親が参加する機会を利用し,子どもの発達段階に応じた子育て講座を開設するほか,将来親となる中学・高校生を対象に子育てへの理解を深める講座を開設するなどの取組を行っています。
 また,父親の家庭教育への参加を促進するため,父親の家庭教育への参加を考える集いを実施し,父と子のふれあい交流や,父親の家庭教育への参加を促進する地域活動についてのシンポジウムなどを実施しています。

▲乳幼児とのふれあい体験(山口県)

(2)家庭教育に関する情報の提供

 親が家庭を見つめ直し自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう,「ドキドキ子育て(乳幼児編)」,「ワクワク子育て(小学校低学年から中学年編)」,「イキイキ子育て(小学校高学年から中学生編)」の3分冊の「家庭教育手帳」を作成・配付しています。平成18年度は,生活リズムの向上に関する内容の充実と,テレビゲームの取扱いに関する内容の充実を図りました。この手帳は,母子健康手帳の交付時や,小学校などを通じ,親の手元に届けられ,日常生活の中で子育てのヒント集として利用されています。また,様々な講座や研修会などでも活用されています。
 また,一人でも多くの親にきめ細かな家庭教育支援を行うため,携帯電話やインターネットを活用した子育て相談・情報提供など,ITを活用した先進的な家庭教育支援の取組を行っており,今後,この取組の成果を取りまとめ,全国へ普及していきます。

(3)家庭教育支援における先進的な取組

 家庭の教育力の向上のためには,地域や社会全体で家庭教育を支える環境が必要です。文部科学省では,平成12年度から15年度にかけて,子育てやしつけについて,友人のような関係で気軽に相談にのったりアドバイスを行う子育てサポーターの全国的な配置を行ってきました。16年度からは,子育てサポーターの相互連携の促進や情報交換の機会の提供など,より広域的に活動する子育てサポーターのリーダーを養成し,地域の中での相談体制の一層の充実を図っています。16,17年度においては,2,328人のリーダーを養成しました。
 また,地域によっては子育てサポーターリーダーの活動の一環として,児童福祉部局や母子保健部局と連携・協力しながら,子育ての悩みや問題を抱える家庭を訪問し家庭教育支援を行う「訪問型の家庭教育支援」も行われてきています。具体的には,保健師などが実施する新生児訪問などの母子保健活動の機会などに,子育てサポーターリーダーが困難を抱える家庭に出向いて,親に対する育児相談や地域の子育てサークルや子育て講座等の情報提供などを行っています。

(4)家庭教育支援の今後の課題

 家庭教育のための支援を充実していくためには,第一に,子育てについて無関心な親や,子育てに不安や悩みを持つ孤立しがちな親などに対してきめ細かな支援を行うことが必要です。そのため,行政や専門家が親の参加を待つのではなく,こちらから出かけていく訪問型支援のより一層の充実とその人材育成が求められています。第二に,子育ての大半を母親任せにしている現状から,負担感や不安感を抱える母親が多いことが指摘されています。また,平成17年度に国立女性教育会館が行った調査によると,諸外国に比べ日本の父親は子どもと接する時間が短く,また,母親との家事・育児の分担率も低い結果となっています(図表2-1-1)。このようなことから,父親の家庭教育参加の促進や地域が一体となって子育てを行っていくための環境整備が急務となっています。第三に,現在,子どもを持つ若い世代の親の多くが,実生活の中で乳幼児に接する機会が少ないまま大人になり,子育ての悩みや不安を抱える要因の一つとなっていることから,次世代の親となる若い世代が幼児やその親とふれあう機会を作り出すことが重要な課題です。

図表●2-1-1 子どもと一緒に過ごす時間

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