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第4章 基礎研究及び人材育成の強化

第1節  基礎研究の抜本的強化

  近年、イノベーションの源泉たるシーズを生み出すもの(多様性の苗床)として、また、広く新しい知的・文化的価値を創造し、直接的あるいは間接的に社会の発展に寄与するものとして、基礎研究の意義や重要性がますます高まっている。我が国の科学技術イノベーションの礎を確たるものとするためには、国として、独創的で多様な基礎研究及び世界トップレベルの基礎研究を重視し、これを一層強力に推進していくことが不可欠であり、政府は基礎研究の根本的強化に向けた取組を進めている。

1  独創的で多様な基礎研究の強化

  研究者の知的好奇心や探求心に根ざし、その自発性、独創性に基づいて行われる基礎研究は、人類共通の知的資産の創造や重厚な知の蓄積の形成につながるものである。政府は、このような独創的で多様な研究を広範かつ継続的に推進するための取組を強化している。

(科学研究費助成事業)
  文部科学省及び日本学術振興会が実施している科研費は、人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり、あらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を対象とする唯一の競争的資金であり、研究の多様性を確保しつつ独創的な研究活動を支援することにより、研究活動の裾野の拡大を図り、持続的な研究の発展と重厚な知的蓄積の形成に資するという役割を果たしている。主な研究種目全体で約9万3千件の新たな応募のうち、ピア・レビューによって約2万6千件を採択し、数年間継続する研究課題を含めて約7万件を支援している。
  平成24年度には、平成23年度に開始した複数年度にわたって自由に研究費を使用することができる「基金化」の対象となる研究種目を拡大(基盤研究(B)、若手研究(A)の新規採択分(研究費総額のうち500万円以下))した。(平成24年度助成額2,307億円、予算額2,566億円)。

(戦略的創造研究推進事業)
  科学技術振興機構では、「戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)」により、社会的・経済的ニーズを踏まえ、トップダウンで定めた戦略目標・研究領域において、大学等の研究者から提案を募り、組織の枠を超えた時限的な研究体制(バーチャル・ネットワーク型研究所)を構築して、イノベーション指向の課題達成型基礎研究(目的基礎研究)を推進している。
  なお、文部科学省では平成24年度戦略目標として、以下の5つの戦略目標を設定している。

  • 再生可能エネルギーをはじめとした多様なエネルギーの需給の最適化を可能とする、分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論、数理モデル及び基盤技術の創出
  • 先制医療や個々人にとって最適な診断・治療法の実現に向けた生体における動的恒常性の維持・変容機構の統合的解明と複雑な生体反応を理解・制御するための技術の創出
  • 多様な疾病の新治療・予防法開発、食品安全性向上、環境改善等の産業利用に資する次世代構造生命科学による生命反応・相互作用分子機構の解明と予測をする技術の創出
  • 環境・エネルギー材料や電子材料、健康・医療用材料に革新をもたらす分子の自在設計『分子技術』の構築
  • 環境、エネルギー、創薬等の課題対応に向けた触媒による先導的な物質変換技術の創出

(大学・大学共同利用機関における共同利用・共同研究の推進)
  文部科学省では、大学共同利用機関及び大学の共同利用・共同研究拠点(平成24年4月現在で34大学83拠点)に整備された大学の施設・設備や貴重な資料・データなどを、研究者が個々の組織の枠を超えて共同で活用して研究を行う共同利用・共同研究を推進している。
  特に、国内外の多数の研究者の参画により実施される学術研究の大規模プロジェクトについては、「大規模学術フロンティア促進事業」(平成24年度予算289億円、平成24年度補正予算133億円)を創設し、プロジェクトの実施に必要な大型の研究設備の整備や運用等の支援を行い、世界の学術研究を先導する研究成果を上げるとともに、内外の優秀な研究者をひき付ける研究拠点の形成や、国際的な環境下での若手研究者の育成などを推進している。
  平成24年度は、ノーベル物理学賞受賞に貢献した高エネルギー加速器研究機構の「Bファクトリー加速器」の性能を更に向上させ新しい物理法則の発見を目指すプロジェクトなど、人類未到の研究課題に挑む7つの世界最先端の研究プロジェクト(※1)を支援している。

(農林水産省におけるシーズ創出研究の推進)
  農林水産省では、ゲノム解析の進展に伴う膨大な遺伝子情報を活用して、農作物の農学上重要な遺伝子(病害虫抵抗性等)を多数同定し、これを活用したDNAマーカー選抜育種技術の開発に取り組んでいる。
  また、ゲノム解読速度が飛躍的に向上した超高速シーケンサー(※2)を活用しながら、収量性や品質等の複雑な農業形質に係る遺伝子の特定とその活用に向けた技術シーズの創出を行っている。
  さらに、ゲノム研究については、成果を家畜や昆虫にも活用し、医療用素材など新需要の創造を目指して推進している。


※1  「消えた反物質、暗黒物質の正体、質量の起源」の解明に挑む『Bファクトリー加速器の高度化による新しい物理法則の探求』、ニュートリノの実体解明を目指す『「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究の展開』、重力波(時空の歪み)の世界初の観測を目指す『大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画』、巨大電波望遠鏡でビックバン直後の銀河形成や生命の起源解明に挑む『アルマ計画の推進』、多様な粒子ビーム(中間子や反陽子など)を用いた世界最先端の研究を展開する『「大強度陽子加速器施設(J-PARC)」による物質生命科学及び原子核・素粒子物理学研究の推進』、最遠方銀河の観測と太陽系外の惑星の謎を探求する『大型光学赤外線望遠鏡「すばる」の共同利用研究』、「究極のグリーン・イノベーション」、核融合の実現に向けた学理を探求する『超高性能プラズマの定常運転の実証』

※2  遺伝子を構成する塩基配列を読み取る機械

2  世界トップレベルの基礎研究の強化

  近年、あらゆる活動がグローバルに展開され、人材の国際的な獲得競争が激化している中、我が国の基礎研究を一層強化していくためには、世界トップクラスの人材を国内外からひき付ける、優れた研究環境の整備を進める必要がある。また、国際水準の研究活動を行う大学群の形成に向けた重点的な支援を実施する必要がある。このため、政府は国際水準の研究環境を誇る拠点の構築を一層促進している。

(世界トップレベル研究拠点の構築)
  文部科学省では、優れた研究者を中核とした世界トップレベルの拠点形成を目指す構想に対し集中的な支援を行い、システム改革等の自主的な取組を促すことにより、第一線の研究者が世界から集まってくるような、優れた研究環境と高い研究水準を誇る拠点の形成を目指す「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI(※3))」を推進している。平成24年度には、先鋭な研究領域に焦点を絞り、世界トップレベルの研究拠点を目指す3拠点を新たに採択した。本プログラムは、1拠点当たり13~14億円程度(平成24年度採択拠点においては~7億円程度)の支援を10年間(特に優れた成果を上げている拠点は15年間)行うものであり、現在9拠点が活動している(第2-4-1図)。本プログラムでは、「世界トップレベル研究拠点プログラム委員会」(委員長:井村裕夫(元京都大学総長))を中心として丁寧な進捗把握と厳格かつきめ細やかなフォローアップを毎年実施しており、「目に見える拠点」の確実な実現を目指している。


※3  World Premier International Research Center Initiative

第2-4-1図/世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)

第2-4-1図/世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の画像

資料:文部科学省作成

第2節  科学技術を担う人材の育成

  我が国の持続ある発展にはイノベーションが鍵であり、これを担う優れた人材を絶え間なく育成、確保していくことが不可欠である。このため、我が国の将来を担う若い世代が、夢と希望を抱いて科学技術イノベーションの世界に積極的に飛び込むことができるよう、国内外のあらゆる場で活躍できる人材、世界をリードする人材、次代を担う人材を育成、確保する取組を積極的に進めている。

1  多様な場で活躍できる人材の育成

(1)大学院教育の抜本的強化

  高度に科学・技術が発展するとともに、知の専門化、細分化が進み、国際競争が激化する現代社会においては、新たな学問分野や急速な技術革新に対応できる深い専門知識と幅広い応用力を持つ人材の育成が喫緊の課題である。その人材育成に中核的な役割を果たす大学院については、平成3年度から24年度まで21年間で、大学院学生が約2.7倍になるなど、その量的な整備は順調に行われてきたが、今後はその教育の質の一層の向上を図ることが必要である。
  このような状況を踏まえると、各大学院において社会ニーズを酌み取りつつ自らの課程の目的を明確化した上で、これに沿って、学位授与へと導く体系的な教育プログラムを編成・実践し、そのプロセスの管理及び透明化を徹底する方向で、大学院教育の充実・強化(教育の組織的展開の強化)を図ることが必要である。
  文部科学省では、「グローバル化社会の大学院教育」(平成23年1月31日中央教育審議会答申)や「第2次大学院教育振興施策要綱」(平成23年8月5日文部科学大臣決定)を策定し、大学院教育の質の保証・向上のための施策を実施することとしている。
  これに基づき、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成する「リーディング大学院」の形成を支援するため、「博士課程教育リーディングプログラム」を平成23年度より実施し、平成24年度も引き続き支援している。あわせて、体系的な博士課程教育を構築するため、博士課程の前期の課程の修了要件として新たに「博士論文研究基礎力審査」を導入する大学院設置基準等の改正を平成24年3月に行った。また、卓越した教育研究拠点を有する大学院に対し、博士課程学生が、学修研究に専念するために必要な経費を支援し、優秀な学生を惹きつけ、世界で活躍できる研究者を輩出する環境づくりを推進する「卓越した大学院拠点形成支援補助金」を平成24年度より新たに開始するなど、大学院教育の充実に向けた施策を推進している。
  また、文部科学省と経済産業省では、日本社会を牽引するリーダーとなる博士・修士の養成と活躍の好循環を実現するため、研究開発やグローバル展開において我が国の産業界をリードする20社と、博士・修士課程教育の充実やグローバル化に取り組む12大学が参加し、従来の産学の枠を超えて対話し具体的なアクションを起こすため「産学協働人財育成円卓会議」を開催している。平成24年5月に第2回会合を開催し、アクションプランを公表した。
  日本学術会議では、文部科学省からの審議依頼に応じて、大学教育の分野別質保証のための審議を行い、全ての学生が身に付けるべき基本的な素養等を主要な内容とする「教育課程編成上の参照基準」の策定についての考え方等を提言し、平成22年7月に、文部科学省へ回答した。平成24年度には、本回答に基づく検討を引き続き行い、経営学、言語・文学、法学の3分野について、大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準を公表した。文部科学省からは、引き続き参照基準の策定のための審議を進めることについて依頼を受けており、他分野の参照基準の策定に向けても、順次、審議を行っている。

(2)博士課程における進学支援及びキャリアパスの多様化

  優秀な学生が大学院博士課程に進学するよう促すためには、大学院における経済支援に加え、大学院修了後、大学のみならず産業界、地域社会において、専門能力を活かせる多様なキャリアパスを確保する必要がある。このため、国として、博士課程の学生に対する経済支援、学生や修了者等に対するキャリア開発支援等を進めている。

1.博士課程における進学支援

  文部科学省では、大学院学生に教育的配慮の下に教育補助事業を行わせるティーチングアシスタント(TA)や、博士課程在学者を大学等が行う研究プロジェクトに参画させるリサーチアシスタント(RA)として活用できる競争的研究資金の拡充等を行っている。
  日本学生支援機構では、能力があるにも関わらず、経済的な理由により修学が困難な学生に対する奨学金事業を実施するとともに、特に優れた業績を上げた学生に対する奨学金の返還免除を実施している。
  また、日本学術振興会では、大学院博士課程後期在籍者を対象として、優れた研究能力を有する者が研究に専念できるよう研究奨励金を支給する「特別研究員(DC)」を実施している。

2.キャリアパスの多様化

  文部科学省では、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成する取組を行っている(第2部第4章第2節1(1)参照)。
  また、ポストドクター(※4)を対象に、大学教員や研究開発独立行政法人の研究者以外に国内外において多様なキャリアパスが確保できるよう、キャリア開発支援システムを組織として構築する大学等を支援する「ポストドクター・キャリア開発事業」を実施しており、平成24年度は、36機関において3か月以上の長期インターンシップを行う等の取組が進められている。
  さらに、研究者の研究活動活性化のための環境整備、大学等の研究開発マネジメント強化、及び科学技術人材の研究職以外への多様なキャリアパスの整備に向けて、大学等における研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーター)の育成・定着を支援している。
  科学技術振興機構では、多様なキャリアパスの開拓を情報面から支援するため、職を求める研究者情報と産学官の研究に関する求人公募情報を掲載した研究者人材データベース(※5)を提供している。
  産業技術総合研究所では、専門分野について高度な知見を有しつつ、異なる分野の専門家と協力するコミュニケーション能力や協調性を備えた高度な研究人材を輩出していくため、ポストドクター・博士課程大学院生等を対象に、座学や研究プロジェクトへの従事、企業現場での実地研修(OJT(※6))等の実践的教育を行う「産総研イノベーションスクール」を実施している。


※4  博士号を取得した者又は博士課程に標準修業年限以上在学して所定の単位を取得の上退学した者のうち、大学又は研究機関において任期付きで研究業務に従事しているもの(教授、准教授、講師、助教、助手、研究グループのリーダー、主任研究員等の職にある者を除く)

※5  http://jrecin.jst.go.jp/

※6  On the Job Training

(3)技術者の養成及び能力開発

  科学技術イノベーションの推進において、産業界とそれを支える技術者は中核的な役割を果たしている。また、技術の高度化、統合化に伴い、技術者に求められる資質能力はますます高度化、多様化している。国としては、こうした変化に対応した優秀な技術者の養成及び能力開発等を図っている。
  文部科学省では、大学4年間の技術者教育についての国際的な基準を踏まえて取りまとめた「技術者教育に関する分野別の到達目標の設定に関する調査研究」の成果について周知を図るなど、各大学における技術者教育の改善・充実に向けた支援を行った。
  また、科学技術に関する高等の専門的応用能力を持って計画、設計等の業務を行う者に対し、「技術士」の資格を付与する「技術士制度」を設けている。
  技術士となるためには、21の技術部門ごとに毎年行われている技術士試験に合格し、登録することが必要である。技術士試験は、理工系大学卒程度の専門的学識等を確認する第一次試験と、技術士になるのに相応しい高等の専門的応用能力を確認する第二次試験から成る。第一次試験(平成24年度)については10,881名、第二次試験(平成24年度)については、3,409名が合格した。また、第二次試験の部門別合格者は(第2-4-2表)のとおりである。

第2-4-2表/技術士第二次試験の部門別合格者(平成24年度)
技術部門 受験者数(名) 合格者数(名) 合格率(%)
機械 898 210 23.4
船舶・海洋 10 2 20.0
航空・宇宙 24 5 20.8
電気電子 1,260 193 15.3
化学 118 29 24.6
繊維 33 6 18.2
金属 114 25 21.9
資源工学 23 6 26.1
建設 13,432 1,748 13.0
上下水道 1,526 246 16.1
衛生工学 580 92 15.9
農業 719 164 22.8
森林 261 53 20.3
水産 134 29 21.6
経営工学 150 37 24.7
情報工学 509 69 13.6
応用理学 637 104 16.3
生物工学 50 19 38.0
環境 599 88 14.7
原子力・放射線 117 19 16.2
総合技術監理 3,654 265 7.3

資料:文部科学省作成

  さらに、科学技術振興機構では、技術者が科学技術の基礎知識を幅広く習得することを支援するために、科学技術の各分野及び共通領域に関するインターネット自習教材(※7)を提供している。

2  独創的で優れた研究者の養成

(1)公正で透明性の高い評価制度の構築

  独創的で優秀な研究者を養成するためには、若手研究者に自立と活躍の機会を与え、キャリアパスを見通すことができるよう、若手研究者のポストの拡充を図っていく必要がある。
  文部科学省では、大学及び公的研究機関が、公正で透明性の高い人事制度により優秀な人材を登用する「テニュアトラック制(※8)」を支援している(第2部第4章第2節2(2)参照)。

(2)研究者のキャリアパスの整備

  優れた研究者を養成するためには、若手研究者のポストの確保とともに、そのキャリアパスの整備等を進めていく必要がある。その際、研究者が多様な研究環境で経験を積み、人的ネットワークや研究者としての視野を広げるためにも、研究者の流動性向上を図ることが重要である。一方、流動性向上の取組が、若手研究者の意欲を失わせている面もあると指摘されており、研究者にとって、安定的でありながら、一定の流動性を確保されるようなキャリアパスの整備を進める。
  文部科学省では、若手研究者が自立して研究できる環境の整備を促進するため、テニュアトラック制を実施する大学等に対し、テニュアトラック教員のスタートアップ研究費等を支援する「テニュアトラック普及・定着事業」を実施しその普及・定着を図っており、平成24年度は新たに42機関のテニュアトラック教員141名を支援対象とした。
  日本学術振興会では、優れた若手研究者に対して、自由な発想の下に主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を提供する特別研究員事業を実施しており、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に努めている。
  農業・食品産業技術総合研究機構では、「イノベーション創出基礎的研究推進事業」において、若手研究者による技術シーズを開発するための研究に支援を行う特別枠を設定している。


※7  http://weblearningplaza.jst.go.jp/

※8  公正で透明性の高い選抜により採用された若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に任期付の雇用形態で自立した研究者としての経験を積むことができる仕組み

(3)女性研究者の活躍の促進

  我が国は、第4期基本計画で、第3期基本計画に掲げた女性研究者の採用割合に関する数値目標(自然科学系全体で25%)の早期達成及び更に30%まで高めることを目指し、その登用及び活躍促進を進めており、女性研究者数は年々増加傾向にある。しかし、その割合は、諸外国と比較してなお低い水準にある(第2-4-3図)。女性研究者の登用は、男女共同参画の観点はもとより、多様な視点や発想を取り入れ、研究活動を活性化し、組織としての創造力を発揮する上でも、極めて重要であるため、女性研究者の一層の登用及び活躍促進に向けた環境整備を進めている。

第2-4-3図/各国における女性研究者の割合

第2-4-3図/各国における女性研究者の割合のグラフ

注:

  1. 総務省「科学技術研究調査報告」(日本:平成24年時点)OECD“Main Science and Technology Indicators”(英国:平成22年時点、フランス:平成22年時点、ドイツ:平成21年時点、韓国:平成22年時点)NSF“Science and Engineering Indicators 2006”(米国:平成15年時点)
  2. 米国については、研究者ではなく、科学専門職(科学工学の学士レベル以上を保有し、科学に関する専門的職業に従事している者。ただし科学には社会科学を含む)を対象としている。

資料:文部科学省作成

  文部科学省では、研究者が出産・子育て・介護と研究を両立できるよう環境整備を行う大学等に対して、支援活動を推進するコーディネータの雇用経費、研究者の出産・子育て・介護期間中の研究活動を支える研究支援者の雇用経費等を支援する「女性研究者研究活動支援事業」を実施している。平成24年度現在、31機関を対象として取組を行っている。
  日本学術振興会では、「特別研究員(RPD)」において、優れた研究者が、出産・子育てによる研究中断後に、円滑に研究現場に復帰できるよう、平成18年度から研究奨励金を支給している。
  産業技術総合研究所では、全国19の大学や研究機関から成るコンソーシアム(ダイバーシティ・サポート・オフィス)を組織し、研究者等のワーク・ライフ・バランスの実践、キャリア形成、意欲触発などの支援について情報共有や意見交換を行い、参加機関と協調・連携して男女共同参画に関する対策の普及拡大を進めている。
  また、次代を担う人材を育成するための取組の一環として、文部科学省では、科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、女子大学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施等、女子中高生の理系進路選択の支援を行う「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施している。
  内閣府では、「チャレンジ・キャンペーン~女子高校生・女子学生の理工系分野への選択~」として、理工系分野に関する情報提供を実施している。

3  次代を担う人材の育成

  次代を担う科学技術関係人材を育成するため、初等中等教育段階から、理数系科目への関心を高め、理数好きの子どもたちの裾野を拡大するとともに、優れた素質を持つ子どもを発掘し、その才能を伸ばすため、以下のような取組を総合的に推進し、理数系教育の充実を図っている。

(1)知的好奇心に溢れた子どもの育成

  科学技術振興機構では、理数系教員に対する支援として、才能ある生徒を伸ばすための効果的な指導方法の修得や教員間ネットワークの形成を促進する地域の枠を超えた合宿形式の取組を支援する「サイエンス・リーダーズ・キャンプ」や、大学(院)が教育委員会と連携して、理数に関し優れた指導力を有し、各学校や地域の理数指導において中核的な役割を果たす小・中学校教員を養成する取組を支援する「理数系教員養成拠点構築事業」を実施している。また、児童生徒の知的好奇心、探究心に応じた学習の機会を提供するため、理科教育用デジタル教材等を開発し、インターネット等を通じて提供するとともに、理科授業における観察・実験活動の充実等を図るため、大学(院)生、退職教員等の外部人材を理科支援員として小学校に配置する取組を支援する「理科支援員配置事業」を実施している。また、人材育成活動の実践として、大学等が意欲・能力のある児童生徒を対象に実施する課題研究・体系的教育プログラムを支援する「次世代科学者育成プログラム」や、科学部活動を活性化し、専門家との連携により生徒の資質を発掘、伸長する取組を支援する「中高生の科学部活動振興プログラム」、学校や教育委員会等と大学・科学館等が連携した体験的・問題解決的取組を支援する「サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト」、さらに、最先端の研究現場における合宿型の学習活動を支援する「サイエンスキャンプ」を実施している。
  文部科学省では、科学技術人材の育成等のために理数教育の充実が求められていること、科学的な思考力、表現力、科学への関心を高める学習の充実が求められていること、児童生徒の「理科離れ現象」の実態把握と課題の改善が必要であることなどを踏まえ、平成24年度全国学力・学習状況調査において、対象教科として理科を新たに追加した。その結果、観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明することなどに課題があることが分かった。また、不足や老朽化が著しい理科、算数・数学教育に使用する小・中・高等学校等の実験器具等の設備の充実を図るため、「理科教育振興法」(昭和28年法律第186号)に基づき、設備の計画的な整備を進めている。
  国立青少年教育振興機構では、「子どもゆめ基金」を設置し、民間団体が行う子どもの科学体験活動等の様々な体験活動等に対して助成を行っている。
  また、特許庁では、知的財産に関する知識の普及のため、工業所有権情報・研修館を通じて、知的財産を踏まえた実践的な人材育成を行う高等学校・高等専門学校に対する支援を行っている。

(2)才能ある子どもの個性・能力の伸長

  文部科学省では、理数系教育を重点的に行う高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、各指定校に対して科学技術振興機構が支援を行うことで、将来の国際的な科学技術人材等の育成のための取組を推進している。具体的には、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践や課題研究の推進、科学技術人材の育成等を実施するとともに、他校への成果の普及に取り組んでいる。平成24年度においては、全国178校の高等学校等が特色ある取組を進めている。また、大学学部段階において将来有為な科学技術人材を育成するため、理系学部を置く大学において、理数分野に関して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力を更に伸ばすことに重点を置いた取組を行う「理数学生育成支援事業」等を実施している。さらに、自然科学系分野を学ぶ大学学部生等が自主研究を発表し全国レベルで切磋琢磨し合うとともに、研究者・企業関係者とも交流することができる機会として、第2回「サイエンス・インカレ」を幕張メッセ国際会議場において開催し、計234組の応募の中から書類審査を通過した計145組が発表を行った。
  科学技術振興機構では、数学、物理、化学、生物学、情報、地理、地学の国際科学オリンピックや国際学生科学技術フェア(ISEF(※9))等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援などを行っている(第2-4-4図)。また、全国の高校生等が、学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として、「科学の甲子園」を開催している。平成24年度は兵庫県立総合体育館において第2回全国大会が開催され、各都道府県代表の選考には約6,300名の生徒が参加した(第2-4-5図)。
  また、文部科学省、特許庁、日本弁理士会及び工業所有権情報・研修館は、国民の知的財産に対する理解と関心を深めるため、高校生から大学生を対象としたパテントコンテスト及びデザインパテントコンテストを開催している。コンテストに応募された発明・意匠のうち優れたものについては、表彰を行うとともに、生徒・学生が行う実際の特許出願・意匠登録出願から権利取得までを支援している。


※9  International Science and Engineering Fair

第2-4-4図/平成24年度国際科学技術コンテスト出場選手
国際数学オリンピック(アルゼンチン大会)出場選手

国際数学オリンピック(アルゼンチン大会)出場選手の写真

写真左から
  林  興養さん  静岡県立浜松北高等学校3年(優秀賞受賞)
  北村  拓真さん  灘高等学校3年(銀メダル受賞)
  宮本  大輔さん  灘高等学校1年(銅メダル受賞)
  村井  翔悟さん  開成高等学校3年(銀メダル受賞)
  小松  大樹さん  栄光学園高等学校3年(銀メダル受賞)
  野村  建斗さん  筑波大学附属駒場高等学校1年(銀メダル受賞)

国際物理オリンピック(エストニア大会)出場選手

国際物理オリンピック(エストニア大会)出場選手の写真

写真左から
  大森  亮さん  灘高等学校2年(銀メダル受賞)
  笠浦  一海さん  開成高等学校3年(金メダル受賞)
  川畑  幸平さん  灘高等学校3年(銀メダル受賞)
  中塚  洋佑さん  滋賀県立膳所高等学校3年(銀メダル受賞)
  榎  優一さん  灘高等学校2年(金メダル受賞)

国際化学オリンピック(アメリカ大会)出場選手

国際化学オリンピック(アメリカ大会)出場選手の写真

写真左から
  澁谷  亮太さん  大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎3年(銀メダル受賞)
  副島  智大さん  立教池袋高等学校3年(金メダル受賞)
  山角  拓也さん  灘高等学校3年(金メダル受賞)
  加藤  雄大さん  筑波大学附属駒場高等学校3年(銀メダル受賞)

国際生物学オリンピック(シンガポール大会)出場選手

国際生物学オリンピック(シンガポール大会)出場選手の写真

写真左から
  前田  智大さん  灘高等学校2年(銀メダル受賞)
  荒木  大河さん  宮崎県立宮崎西高等学校3年(銀メダル受賞)
  野田  夏実さん  桜蔭高等学校3年(銀メダル受賞)
  依田  和樹さん  筑波大学附属駒場高等学校3年(銀メダル受賞)

国際情報オリンピック(イタリア大会)出場選手

国際情報オリンピック(イタリア大会)出場選手の写真

写真左から
  笠浦  一海さん  開成高等学校3年(銀メダル受賞)
  秀  郁未さん  開成高等学校3年(銀メダル受賞)
  村井  翔悟さん  開成高等学校3年(金メダル受賞)
  劉  鴻志さん  栄光学園高等学校2年(銀メダル受賞)

国際地学オリンピック(アルゼンチン大会)出場選手

国際地学オリンピック(アルゼンチン大会)出場選手の写真

写真左から
  丸山  純平さん  聖光学院高等学校3年(銀メダル受賞)
  松尾  健司さん  灘高等学校3年(銀メダル受賞)
  中里  徳彦さん  横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校3年(金メダル受賞)
  島本  賢登さん  広島学院高等学校3年(銀メダル受賞)

国際地理オリンピック(ドイツ大会)出場選手

国際地理オリンピック(ドイツ大会)出場選手の写真

写真左から
  伊藤  健太さん  群馬県立中央中等教育学校6年
  加藤  規新さん  奈良女子大学附属中等教育学校6年(銅メダル受賞)
  太田  龍生さん  広島大学附属福山高等学校3年
  吉重  元さん  筑波大学附属駒場高等学校2年

資料:文部科学省作成

第2-4-5図/第2回科学の甲子園

第2回科学の甲子園  優勝校  愛知県立岡崎高等学校の写真

優勝校  愛知県立岡崎高等学校
  写真  前列左から
  丸山  泰さん(2年生)  尾﨑  宗海さん(1年生)
  後列左から
  砂田  佳希さん(2年生)  菅沼  大貴さん(2年生)
  大竹  輝さん(2年生)  小林  優理さん(2年生)
  末木  達也さん(2年生)  伊澤  啓太さん(1年生)

※学年はすべて受賞当時

資料:文部科学省作成

コラム2-8  第2回「サイエンス・インカレ」におけるリケジョ(理系女子)の大躍進

  文部科学省では、課題設定・探究能力、独創性、プレゼンテーション能力等を備えた創造性豊かな科学技術人材を育成することを目的に、「出る杭を伸ばす」をコンセプトとして、自然科学を学ぶ大学学部生等が自主研究を発表し全国レベルで切磋琢磨するとともに、大学等の研究者・企業関係者とも交流を図る機会として、平成23年度から「サイエンス・インカレ」を開催している。平成24年度の第2回大会は、幕張メッセ国際会議場において、平成25年3月2日(土曜日)、3日(日曜日)の2日間の日程で行われた。計234組の応募の中から書類審査を通過した口頭発表部門47組、ポスター発表部門98組の計145組がそれぞれの研究内容について発表を行い、山梨大学に在学している城野悠志さんに文部科学大臣表彰が行われるなど計16組が表彰された。
  本大会には、高校生や大学関係者などの一般来場者も多数訪れ、前回にもまして盛会となった。特に今回は、女子学生からの応募が前回から約50名増え、100名を超えるとともに、書類審査を通過したファイナリストにおける女子学生の比率も約4割と前回から約1割高まった。最終的にサイエンス・インカレ奨励表彰以上に入賞した研究のうち、ポスター発表の入賞研究8組中6組をはじめ、6割強(16組中10組)が、女性の代表者による研究発表であった。さらに、協力企業からも、新たに「リケジョ(理系女子)賞」が贈られたほか、企業賞全体でも、その過半数(17組中10組)が、女性の代表者による研究発表であった。こうした女性の活躍ぶりは、今後の理系分野における女性の更なる躍進を予感させる、大変印象深いものとなった。

城野さんと福井文部科学副大臣の記念撮影の写真

城野さんと福井文部科学副大臣の記念撮影

提供:文部科学省

ポスター発表部門の受賞者とプレゼンターの記念撮影の写真

ポスター発表部門の受賞者とプレゼンターの記念撮影

提供:文部科学省

第3節  国際水準の研究環境及び基盤の形成

1  大学及び公的研究機関における研究開発環境の整備

(1)大学の施設及び設備の整備

  大学が、高度化、多様化する教育研究活動に対応し、優れた人材をひき付けるとともに、国際競争力の強化、産学連携の推進、地域貢献及び国際化を推進するためには、十分な機能を持つ質の高い施設・設備を整備する必要がある。加えて、厳しい財政事情や東日本大震災での被害を踏まえ、大学の施設・設備の整備や高度化、安定的な運用確保に向けた取組を促進することが必要である。

1.国立大学等の施設・設備

  国立大学法人等(※10)の施設は、創造的・先端的な学術研究、独創的で優れた人材の養成、高度先進医療の推進などの活動の拠点として重要な役割を果たしている。
  このため、文部科学省では、第4期基本計画を踏まえ、平成23年8月に「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画(平成23~27年度)」(以下、「第3次5か年計画」という)を策定し、計画的かつ重点的な施設整備を推進している。
  第3次5か年計画では、1.耐震化などの老朽改善整備:約400万m2、2.最先端研究施設整備や狭あい解消整備:約80万m2、3.高度先進医療を担う大学附属病院の再生:約70万m2(計550万m2)を優先的に整備すべき対象としているほか、これらの整備に併せて、キャンパス全体の整備計画(キャンパスマスタープラン)の策定・充実や、既存施設の有効活用や適切な維持管理などの戦略的な施設マネジメントの推進等の「システム改革」の取組を一層推進することとしている(第2-4-6図)。
  第3次5か年計画の2年目である平成24年度までの整備面積と整備目標に対する進捗率は、1.老朽改善整備(進捗率)149.6万m2(37%)、2.狭あい解消整備(進捗率)34.6万m2(43%)、3.大学附属病院の再生(進捗率)28.2万m2(40%)となる見込みであり、おおむね目標に近い整備が実施される見込みである(※11)。
  国立大学法人等の設備は、教育研究の基盤であり、その整備・充実は必要不可欠である。
  現在、設備の老朽化・陳腐化が喫緊の課題となっていることから、文部科学省では、各法人が策定した「設備マスタープラン」を踏まえた財政支援を行うとともに、「設備サポートセンター整備事業」により、設備の共同利用の促進等、有効活用に資する体制整備に必要な支援を行っている。
  一方で、「Bファクトリー加速器の高度化による新しい物理法則の探求」をはじめとした、我が国の独創的なアイデアによる世界最高水準の研究設備についても「大規模学術フロンティア促進事業」により支援を行っている(第2部第4章第1節1参照)。
  さらに平成24年度緊急経済対策として、国立大学等における基盤的な教育研究基盤の整備のための経費(82法人、314億円)、最先端の研究基盤の整備による大学の研究力強化のための経費(42法人、462億円)、地域イノベーションを支える国立大学等の基盤的設備の整備のための経費(56法人、130億円)を補正予算において計上し、教育研究基盤の整備・充実への支援を行っている。


※10  大学共同利用機関法人、国立高等専門学校機構を含む。

※11  寄附金などの多様な財源による平成23年度の整備実績を含む。

第2-4-6図/国立大学等の施設整備の基本的考え方

第2-4-6図/国立大学等の施設整備の基本的考え方の画像

資料:文部科学省作成

2.私立大学の施設・設備

  私立大学は、我が国の高等教育機関の約8割を占め、多様な研究者を有するとともに、特色ある研究活動を積極的に展開するなど、高等教育の発展に大きな役割を果たしている。文部科学省では、私立大学の優れた研究プロジェクトに対し研究施設・設備等の一体的な支援を行う「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」を推進し、私立大学の研究基盤の強化を図っている。

(2)先端研究施設及び設備の整備、共用促進

  整備や運用に多額の経費を要し、科学技術の広範な分野で共用に供することが適切な先端研究施設・設備については、これまで公的研究機関が中心となって整備や運用を進めてきた。このような先端の研究施設・設備は、優れた研究開発成果の創出や人材養成において極めて重要であるが、公的研究機関に対する財政支援が減少傾向にある中、その維持管理の在り方が問題となっている。このため、公的研究機関等が施設・設備の整備や運用、幅広い共用促進を行うことができるよう取組を進めている。
  文部科学省では、幅広い分野への活用が期待される先端研究施設・設備の整備を進めるとともに、それらの共用を促進するための支援を行っている(第2部第3章第1節5(2)参照)。

2  知的基盤の整備

  研究開発活動を効果的、効率的に推進していくためには、研究成果や研究用材料等の知的資産を体系化し、幅広く研究者の利用に供することができるよう、実験、計測、分析、評価など研究開発の基本となる活動を支える知的基盤(※12)について、質・量両面での安定供給、安全性・信頼性の確保等が必要である。研究用材料、計量標準、計測・評価方法等の整備はこれまでも順調に進捗しており、更に多様な利用者ニーズに応えるため、質の充実の観点も踏まえつつ、知的基盤の整備及びその利用、活用を促進している。
  ライフサイエンス分野の研究を支えるため、文部科学省では、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」においてバイオリソースの整備を、科学技術振興機構では「ライフサイエンスデータベース統合推進事業」においてライフサイエンス分野データベースの統合化に必要な取組を行っている(第2部第2章第3節2参照)。また、文部科学省では、世界最先端の研究者やものづくり現場のニーズに応えられるオンリーワン、ナンバーワンの先端計測分析技術・機器の開発等を推進している(第2部第3章第1節5(1)参照)。
  経済産業省では、第4期基本計画において、新たな知的基盤整備計画の策定が求められたことを踏まえ、産業構造審議会及び日本工業標準調査会の合同会議である知的基盤整備特別委員会(委員長:北澤宏一  科学技術振興機構顧問)を開催し、今後の新たな知的基盤の整備及び具体的な活用の検討を実施し、中間報告を平成24年8月に取りまとめた。
  計量標準については、産業技術総合研究所が実施した、「1対多型校正技術の研究開発」では医薬・食品の安全に関わる標準整備とその公定法(※13)への採用も進んでいる。加えて、産業技術総合研究所が所有するメートル原器及び関係原器が国の重要文化財に指定され、日本の近代度量衡制度における歴史的、学術的価値が高く評価された。また、産業技術総合研究所が開発したイッテルビウム原子を用いた光格子時計が、フランスの国際度量衡局で開催されたメートル条約関連会議において新しい秒の定義の候補(秒の二次表現)として採択されるなど、国際的な計量標準技術確立への貢献を果たした。
  地質情報については、産業技術総合研究所が、5万分の1地質図幅5図、20万分の1海洋地質図5図、2万5千分の1火山地質図1図及び20万分の1重力図1図を整備した。また、沿岸域の海陸シームレス地質情報として福岡沿岸域の調査結果を取りまとめた。さらに、20万分の1日本シームレス地質図(※14)の更新を行うとともに、次世代シームレス地質図の編集を進めた。活断層データベースでは、検索画面にシームレス地質図を重ね合わせて表示できるシステムに改良した(第2-4-7図)。その他、地質文献データベースで12,137件、地質標本データベースに5,010件の新規登録を行った。
  生物遺伝資源情報については、製品評価技術基盤機構が、生物遺伝資源の収集・保存・分譲を行うとともに、これらの資源に関する情報(系統的位置付け、遺伝子に関する情報等)を整備し、幅広く提供している。また、国内の主要な生物遺伝資源機関のデータベースを統合し公開している。さらに、アジア諸国から覚書(MOU)に基づき、政府間での微生物の移転、解析を行うとともに、微生物資源の保存と持続可能な利用を目指して多国間の交流を進めるなど、生物多様性条約を踏まえたアジア諸国における生物遺伝資源整備を積極的に支援している。
  化学物質安全管理については、製品評価技術基盤機構が、リスク評価に必要な情報を収集、整備し、データベース(化学物質総合情報提供システム)として公開するとともに、アジア諸国における規制情報等の収集を進めている。また、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(昭和48年法律第117号)におけるリスクを評価するための手法を作成し、リスク評価を行っている。
  製品安全情報については、製品評価技術基盤機構が、製品事故の情報を収集し、原因の究明を行いその結果をデータベースとして公開している。
  農林水産省では、農林水産物のゲノムや遺伝子の情報等を大学・民間企業等の研究者や育種家に提供するため、当該情報を統合した利便性の高いデータベースの整備と次世代ゲノム解析機器から生み出される膨大なゲノム断片情報の高次解析システムの開発を行っている。また、農林水産ジーンバンク事業として、農林水産業に係る生物遺伝資源の収集、保存、評価、提供を行うとともに、DNAをはじめとするイネ等のゲノムリソースの保存・提供も行っている。
  国土交通省においては、「地理空間情報活用推進基本計画」の主要施策である「基盤地図情報(※15)」を整備・提供した。また、地理空間情報の活用に関する調査研究等を行った。


※12  生物遺伝資源(バイオリソース)等の研究用材料、計量標準、計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器、関連するデータベース等

※13  日本薬局方、食品添加物公定書など。

※14  20万分の1地質図幅を基に、全国を統一した基準で統合し、ホームページから閲覧可能にした地質図

※15  電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となるもの

第2-4-7図/活断層データベース

第2-4-7図/活断層データベースの画像

検索画面に20万分の1日本シームレス地質図を重ね合わせられるように改良されている。

提供:産業技術総合研究所地質調査総合センター

3  研究情報基盤の整備

  研究情報基盤は研究活動に不可欠ないわば生命線としての性格を有するとされており、情報通信技術の急速な進展に対応して、研究情報基盤の整備を進めることは、我が国の研究開発の国際競争力を確保する上で重要である。このため、政府は具体的取組として、研究機関間のネットワークの整備・高度化、データベースの構築・提供等を進めている。

(ネットワークの整備)
  現代社会の基幹システムを構成しているコンピュータネットワークは研究開発の現場において開発された後、様々な分野に応用されてきたものであり、先端的な研究開発を進めるに当たりネットワークの性能の一層の向上が求められている。
  情報通信研究機構では、構築・運営している新世代通信網テストベッド(JGN-X)により、新世代ネットワーク技術などの研究開発・実証実験を推進している(第2部第3章第1節2(2)参照)。
  国立情報学研究所では、我が国の大学等の学術研究及び教育活動全般を支える基盤として学術情報ネットワークを整備してきたが、平成23年4月からは、一層の高速化・高機能化・高信頼化を図り、SINET4(※16)として運用している。
  農林水産省では、農林水産関連の研究機関を相互に接続する農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN(※17))を構築・運営しており、平成25年3月末現在で91機関が接続している。MAFFINはフィリピンと接続しており、海外との研究情報流通のバックボーンともなっている。


※16  Science Information Network 4 最大40Gbpsの回線で接続することが可能な世界最高レベルのネットワーク

※17  Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Network

(データベースの構築・提供)
  閲覧・複写・貸出等による論文等の原文献のサービスは、図書館のほか、様々な機関において行われている。これらの複数の機関が持つ原文献の書誌情報、所在情報等をデータベース化することにより、コンピュータを利用して、増大する情報を迅速、正確かつ容易に検索することが可能となる。
  国立国会図書館では、我が国で発行される全ての出版物が納本されているが、収集・保管している資料に関するデータベースを作成し、ウェブサイト(※18)で情報を提供している。
  国立情報学研究所では、効果的・効率的な研究開発活動の促進に向け、「イノベーションの創出に必要な科学技術」情報を体系的に収集、使いやすいように整備し、インターネット上で公開している。例えば、全国の国公私立大学等の協力を得て、大学図書館等が所蔵する学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供しているほか、大学等における機関リポジトリ(※19)の構築(自立構築が困難な機関への共用リポジトリサービスの提供を含む。)を支援している。
  科学技術振興機構では、国内外の科学技術に関する文献、特許、研究者等に関する基本情報のデータベースを整備し、各情報を関連付けて提供するサービス(J-GLOBAL)の提供を行っている。平成24年度には、利用者が直感的に操作を行えるよう操作画面を改善し、また、検索に使う専門用語を簡単に見つけられる機能を搭載した。また、科学技術に関する文献の日本語抄録等を作成してデータベースを整備し、インターネットを通じて有料で文献情報検索サービス(JDream2(※20))の提供等を行ってきたが、平成24年度中に、民間事業者へ文献情報検索サービス提供事業を移行した。さらに、我が国の研究成果を世界に向けて発信する機能を強化するために、学協会の学会誌・論文誌における論文の投稿から査読・審査、公開までの工程を電子化して行う科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE(※21))を整備し、学会誌・論文誌の国際化を支援し、国内外に向けた発信・流通促進を行っている。平成24年度には、データベース形式の国際標準化や論文の投稿審査システムの改善等を行ったJ-STAGE3をリリースした。
  農林水産省では、国内で発行されている農林水産関係学術誌の論文等の書誌データベース(JASI)等、農林水産関係の文献情報や図書資料類の所在情報を構築・提供している。また、試験研究独立行政法人、国公立試験研究機関や大学の農林水産分野の研究報告等をデジタル化した全文情報データベース、衛星画像データベース、試験研究機関で実施中の研究課題データベース等を構築・提供している。
  平成24年度の主な研究情報基盤関連施策の概要は、第2-4-8表のとおりである。


※18  http://iss.ndl.go.jp/

※19  大学及び研究機関等における教育研究活動によって生産された電子的な知的生産物を保存し、原則的に無償で発信するためのインターネット上の保存書庫

※20  JST Document REtreaval system for Academic and Medical fields 2

※21  Japan Science and Technology information AGregator, Electronic

第2-4-8表/主な研究情報基盤関連施策(平成24年度)

府省名 実施機関 施策名
国会 国立国会図書館 ・国立国会図書館科学技術関係資料収集整備
総務省 情報通信研究機構 ・最先端の研究開発テストベッドネットワーク(JGN-X)の構築
文部科学省 科学技術振興機構 ・基本的な科学技術情報の整備と活用促進(J-GLOBAL等)
・ライフサイエンスデータベース統合推進事業(NBDC)
・科学技術論文の電子化・国際化、発信・流通促進(J-STAGE等)
・科学技術に関する文献情報の提供(JDream2等)
海洋研究開発機構 ・情報基盤業務費
国立情報学研究所 ・学術情報ネットワークの整備(SINET4)
厚生労働省 国立感染症研究所 ・感染症情報センター経費
・生物学的製剤の安全性情報収集、解析、評価に係る研究事業費
農林水産省 農林水産技術会議事務局 ・農林水産研究情報総合センターの運営(JASI、MAFFIN等)
国土交通省 国土地理院 ・地球地図プロジェクトの推進(時系列データ整備手法の開発)
環境省 自然環境局生物多様性センター ・生物多様性情報の収集・管理・提供の推進
文部科学省
特許庁
科学技術振興機構
工業所有権情報・研修館
・特許・文献情報統合検索システムの整備
特許庁
関係府省
工業所有権情報・研修館 ・リサーチツール特許データベース(RTDB)の提供

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))

-- 登録:平成25年08月 --