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第1章 我が国の科学技術政策を取り巻く動向

  平成24年12月、我が国において政権交代が行われた。安倍内閣では、「強い経済は、日本の国力の源泉である。強い経済の再生なくして、財政の再建も、日本の将来もない。」との認識の下、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」で、政府一体となって必要な経済対策を講じることとし、長引く円高・デフレ不況から脱却し、雇用や所得の拡大を目指す方針を掲げた。
  こうした方針を踏まえ、科学技術イノベーション政策についても新たな取組が行われるようになった。安倍総理は、所信表明演説(平成25年1月28日)において、「イノベーションと制度改革は、社会的課題の解決に結び付くことによって、暮らしに新しい価値をもたらし、経済再生の原動力となります。最も大切なのは、未知の領域に果敢に挑戦をしていく精神です。」とし、イノベーションによる新しい価値の創造により経済再生を果たしていく決意を述べている。
  また、施政方針演説(平成25年2月28日)においては、日本が先端分野において世界のイノベーションを牽引しているとの認識を示しつつ、「『世界で最もイノベーションに適した国』を創り上げます。」と述べ、イノベーション創出のための国創りの重要性を強調している。
  一方、イノベーション創出の源泉である科学技術を取り巻く現状はどのように捉えられるであろうか。
  平成23年8月に閣議決定された第4期科学技術基本計画(以下「第4期基本計画」という)においては、「第3期基本計画では、重点推進4分野、推進4分野と指定された8分野において、重点的な研究開発が推進され、多くの革新的技術が創出されている。しかし、個々の成果が社会的な課題の達成に必ずしも結びついていないとの指摘もあり、国として取り組むべき重要課題を明確に設定した上で、その対応に向けた戦略を策定し、実効性のある研究開発の推進が必要である。」とする一方、「我が国の基礎研究は、論文被引用数で世界トップの研究者を輩出するなど着実に成果をあげているが、国全体で見ると論文の占有率は漸減傾向にあり、論文被引用度の国際的な順位も先進諸国と比較して低い水準にある。」と現状を分析し、科学技術政策とイノベーション政策の一体的な推進が不可欠であるとした。
  さらに、科学技術の総合的な振興や学術の振興に関する重要事項について調査審議等を行う科学技術・学術審議会の野依良治会長は、平成25年2月に開催された同会にて、理工系が中心となる様々な科学技術の指標が低迷しているということは明白であるという認識を示した。その上で、科学論文の生産量、質、そして費用対効果の低下に言及し、イノベーション創出の源泉となる科学技術の現状に対して、強い口調で危機感を示し、抜本的なシステム改革の必要性について述べている。
  これらを踏まえ、本章では、「世界で最もイノベーションに適した国」を実現する観点から、国際比較等により、科学技術イノベーションに関する動向を概観した上で、現状分析や課題について論じたい。

1  我が国の経済成長、国際競争力等に係る動向

  一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額である名目国内総生産(名目GDP(※1))は、長引くデフレや景気低迷の影響などから過去20年間伸び悩んでいる。また、名目GDPに「海外からの所得の純受取」を加えた名目国民総所得(名目GNI(※2))は、名目GDPよりも高い値を示してはいるが、伸び悩んでいる状況は変わらない(第1-1-1図、第1-1-2図)。また、名目GDP(市場レートベース)を国際比較すると、我が国は現在第3位となっている。2010年には、近年の中国の著しいGDPの上昇により、我が国は過去42年間にわたり保ってきた世界第2位の座を中国に譲っている(第1-1-3図)。

第1-1-1図/我が国の過去20年の名目  GDP及び名目GNIの推移

第1-1-1図/我が国の過去20年の名目のグラフ

注:年度ベース。93SNA連鎖方式推計
2012年10-12期・2次速報

資料:内閣府国民経済計算

第1-1-2図/我が国の過去20年の名目   GDP成長率の推移(前年比)

第1-1-2図/我が国の過去20年の名目のグラフ

注:年度ベース。93SNA連鎖方式推計
2011年10-12期・2次速報

資料:内閣府国民経済計算

第1-1-3図/主要国の名目GDP

第1-1-3図/主要国の名目GDPのグラフ

注:

  1. 日本:内閣府経済社会総合研究所推計値(円の対ドルレートは、東京市場インターバンク直物中心相場の各月中平均値の四半期別単純平均値を利用。名目GDP(ドルベース)は、同四半期値の積上げ)
    中国:中国統計年鑑2012(為替レートはIMF“International Financial Statistics”)
    ロシア、ブラジル、インド:世界銀行“World Development Indicators database”
    日本以外のOECD加盟国(上記のうち日本、ロシア、ブラジル、中国、インド以外の各国):OECD“Annual National Accounts Database”
  2. 中国は香港及びマカオを含まない

資料:内閣府資料を基に文部科学省作成


※1  Gross Domestic Product

※2  Gross National Income

  こうした我が国経済の伸び悩みと新興国の台頭の結果、我が国経済の存在感が低下している。その一つの例を我が国が得意としてきたハイテク産業の貿易比の動向に見ることができる。我が国のハイテク産業の輸出と輸入の比率を見ると、1980年代中頃から一貫して低下を続けている。その背景としては、輸出額のシェアが低下基調にあることが挙げられる(第1-1-4図、第1-1-5図)。

第1-1-4図/主要国等のハイテク産業貿易収支比の推移

第1-1-4図/主要国等のハイテク産業貿易収支比の推移のグラフ

注:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol.2012/1”に基づき文部科学省作成

資料:科学技術要覧(平成24年版)

第1-1-5図/主要国等におけるハイテク産業輸出額国別占有率の推移

第1-1-5図/主要国等におけるハイテク産業輸出額国別占有率の推移のグラフ

注:

  1. 「その他」は日本、米国、ドイツ、フランス、英国、韓国及びカナダを除くOECD加盟国と、アルゼンチン、ルーマニア、シンガポール、南アフリカ、台湾の合計である。
  2. OECD“Main Science and Technology Indicators Vol.2012/1”に基づき文部科学省作成

資料:科学技術要覧(平成24年版)

  一方、GDP成長率は、労働や資本などの生産要素投入量の増加の寄与と技術進歩等による生産効率の改善の効果を現す全要素生産性(TFP(※3))上昇率の寄与に分けられ、TFPの上昇には、技術進歩が大きく関係していると考えられている。我が国のTFP上昇率は1990年代には主要先進国の中で最も低い値であったが、2001年以降プラスに転じ、英米及びドイツとほぼ同じ値となっている(第1-1-6図)。なお、TFPは、技術進歩だけでなく、経営効率や組織効率の改善、分業の進展、規模の経済の実現、不況による過剰な労働や資本の保蔵などの効果が混入している可能性があり、技術進歩そのものを直接的に計測した指標ではないが、長期的に見た場合、技術進歩の影響が比較的強く表れると考えられている。

第1-1-6図/主要国の全要素生産性上昇率の推移

第1-1-6図/主要国の全要素生産性上昇率の推移のグラフ

資料:科学技術政策研究所「科学技術指標2012」(平成24年8月)

  世界各国の国際競争力を包括的に評価する代表的指標としては、スイスに本部を置く国際経営開発研究所(IMD(※4))が発表する国際競争力ランキング(以下、「IMD指標」という)と、同じくスイスの世界経済フォーラム(WEF(※5))による国際競争力ランキング(以下、「WEF指標」という)がある。これらにより我が国の国際競争力の現状を概観する。
   IMD指標の総合ランキングは、「経済状況」、「政府の効率性」、「ビジネスの効率性」、「インフラ」の4分野、20中分類、333指標(2013年)からなり、統計データと経営者層へのアンケート調査を組み合わせたものである。算出した値は「企業の力(競争力)を保つ環境を創出・維持する力」を表すものとされている。我が国は、IMD指標の公開が開始された1989年から1993年まで第1位であったものの、近年はおおむね20位~30位で推移しており、2013年は60か国・地域中24位となっている(第1-1-7図)。日本より上位の国としては、以前から優越した競争力をもつ欧米諸国のほか、近年順位が上がっている香港、シンガポール、台湾、カタール等のアジア諸国が並ぶ。
  分野別にみると、我が国は「インフラ」の分野が4分野中最高の10位となっているが、これは、研究開発費や論文数、特許件数等の指標からなる中分類である「科学インフラ」(2位)が牽引していると見て取れる。そのほか、「経済状況」(25位)、「政府の効率性」(45位)、「ビジネスの効率性」(21位)の分野についてはいずれも世界トップクラスとはいえない。(第1-1-8表)。


※3  Total Factor Productivity

※4  International Institute for Management Development

※5  World Economic Forum

第1-1-7図/IMD国際競争力ランキングの推移

第1-1-7図/IMD国際競争力ランキングの推移のグラフ

資料:IMD “WORLD COMPETITIVENESS YEARBOOKhttp://www.imd.org/wcc/)”を基に文部科学省作成

第1-1-8表/IMD国際競争力ランキングの構成要素と順位(2013年)

第1-1-8表/IMD国際競争力ランキングの構成要素と順位(2013年)の画像

資料:IMD “WORLD COMPETITIVENESS YEARBOOK 2013(http://www.imd.org/wcc/)”を基に文部科学省作成

  一方、WEF指標の総合ランキングは、12分類、111細目(2012年)の評価からなる、経営者層へのアンケート調査と統計データによるものであり、競争力を「国の生産性のレベルを決定する諸制度、政策、諸要因の組合せ」を示すものと定義している。我が国は、2010年の6位を最高として近年は6位から10位の間で推移しており、2012年は144か国・地域中10位となっている(第1-1-9図)。日本より上位には、以前から優越した競争力をもつ欧米諸国のほか、アジアからはシンガポール(2位)と香港(9位)が入っている。
   12分類はその内容に応じて3つの大項目に割り当てられ、我が国の「基礎的条件」(29位)、「効率性向上要因」(11位)の2つの大項目と比べて、「イノベーション・洗練要因」(2位)は高い位置にある。また、「イノベーション・洗練要因」の大項目は、「イノベーション」(5位)、「ビジネスの先進度」(1位)の分野で構成される(第1-1-10表)。我が国に強みがみられる「ビジネスの先進度」には製造プロセスの洗練度(1位)等が、「イノベーション」には、「イノベーション能力」(1位)、「企業の研究開発費」(2位)等の評価の高い指標と、「先進技術製品の政府調達」(48位)のような評価の低い指標が含まれている。

第1-1-9図/WEF国際競争力ランキングの推移

第1-1-9図/WEF国際競争力ランキングの推移のグラフ

資料:WEF“The Global Competitiveness Report”を基に文部科学省作成

第1-1-10表/我が国のWEF分野別国際競争力(2012年)

第1-1-10表/我が国のWEF分野別国際競争力(2012年)の画像

資料:WEF“The Global Competitiveness Report 2012-2013”を基に文部科学省作成

  IMDやWEFのランキングにおいては、経済状況に関する指標が低い一方で、科学技術イノベーションに関する指標は他の競争力に関する指標に比べ高い位置付けにあった。科学技術イノベーションに関係する指標としては、インシアード(※6)等が作成・公表している「技術革新力ランキング(GII(※7))」(以下、「Gll指標」という)がある。これは、より適切に社会におけるイノベーションを捉えことを目的としている。これによると、毎年評価する指標が異なることに留意する必要はあるが、我が国は2007年以降、順位を下げ続け、2012年は141か国・地域中25位であった。その一方で、上位3か国であるスイス、スウェーデン、シンガポール等は3年間連続その順位を維持している(第1-1-11図)。
   Gll指標の総合ランキングは、「公共機関」、「人的資本と研究」、「社会基盤」、「市場の洗練さ」、「ビジネスの洗練さ」、「知識・技術のアウトプット」、「創造的なアウトプット」の7つの分類からなる。電力やICT等の社会インフラの指標である「社会基盤」が7位となるほか、科学技術に係る特徴的な分野について概観すると、「人的資本と研究」分野(19位)のうちの研究者数や研究開発費等の指標からなる「研究開発」の小分類が6位、「ビジネスの洗練さ」分野(21位)のうちビジネス活動による研究開発活動等の指標からなる「知識労働者」の小分類が8位、「知識・技術のアウトプット」の小分類である「知識の創造」が14位、「知識の拡散」が14位といった世界的に上位クラスの指標がある一方、「創造的なアウトプット」分野(69位)のうちICTやビジネスモデルの創造といった「無形物の創造」の小分類が112位などの状況が見て取れる(第1-1-12表)。

第1-1-11図/技術革新力ランキング

第1-1-11図/技術革新力ランキングのグラフ

注:INSEAD、 WIPO“Global Innovation Index”より総合科学技術会議作成

資料:総合科学技術会議科学技術イノベーション政策推進専門調査会資料(平成24年11月19日)


※6  INSEAD:フランス、シンガポール及びアブダビにキャンパスを持つ世界的に評価されているビジネススクール。もとはフランスに拠点を置き、「Institut Europen d'Administration des Affaires」(略称INSEAD)という名称であったが、シンガポールにキャンパスを置くにあたり、INSEADを正式名称としている。

※7  Global Innovation Index  2012年版は、世界知的所有権機関(WIPO)と共同で作成・公表された。

第1-1-12表/技術革新力の個別指標(2012年)

第1-1-12表/技術革新力の個別指標(2012年)の画像

資料:INSEAD、 WIPO“Global Innovation Index”、総合科学技術会議科学技術イノベーション政策推進専門調査会資料(平成24年11月19日)を基に文部科学省作成

  こうした国際競争力等のランキングにおける指標を概観すると、研究開発費等の研究開発に係るインプット指標や、特許といった研究開発に係るアウトプット指標は世界トップクラスを示す一方、総合的評価の1つである「技術革新力ランキング」は、毎年顕著な低下傾向にある。日本経済の長期的停滞に関し、「技術で勝つが事業化で負ける日本」と言われたこともあるが、国際競争力を示すランキングの低迷の原因として、創出され得る新技術シーズの事業化や、事業化のための環境整備に関する国際指標の低迷が挙げられる点は、今後の我が国の科学技術イノベーション政策の展開を考える上で示唆する点が大きいと考えられる。
  また、イノベーションの基盤となる科学技術についても、近年は諸外国と比べ相対的に我が国の存在感は低下してきている。その状況を次にまとめる。

2  我が国の科学技術イノベーションを取り巻く動向

  前項では、我が国の経済が停滞し国際競争力等が低下している指標について概観した。本項では、研究活動により産出された成果や科学技術活動の基盤の動向について、それぞれ概観する。

(1)研究活動の成果に関する動向

1.論文分析による研究活動全体の動向

  研究活動を定量化する代表的な指標として、量的な指標である論文数や、質的な指標である被引用数などがある。量的な指標である論文数について、特に1999年から2001年の平均と2009年から2011年の平均を比較した場合(第1-1-14図)、我が国においては、わずかに増加しているものの、中国をはじめとした各国の論文数が我が国とは桁違いの勢いで増加している。この結果、我が国の世界シェアにおいては低下し、相対的な世界順位を大きく下げている(第1-1-13図、第1-1-14図)。また、質的な指標である被引用数についても、被引用数が上位10%に入る注目度の高い論文の数(トップ10%補正論文数)や、被引用数が上位1%に入る注目度の非常に高い論文の数(トップ1%補正論文数)においても、世界シェアが低下傾向を示している(第1-1-14図)。
  このように、研究論文の量、質的の該当数について、我が国は着実に増加させているものの、他国の伸びはこれを大幅に上回ることからシェアや順位を落としており、世界の研究活動における我が国の存在感の低下が示唆される。

第1-1-13図/主要国の論文数の変化

第1-1-13図/主要国の論文数の変化のグラフ

注:

  1. Article、 Article & Proceedings(article扱い)、 Letter、 Note、 Reviewを分析対象とし、整数カウントにより分析。3年移動平均値である。
  2. 3年移動平均値である。例えば、2010年の値は2009、2010、2011年の平均値である。
  3. トムソン・ロイター社 “Web of Science”を基に、科学技術政策研究所が集計

資料:科学技術政策研究所「科学研究のベンチマーキング2012」(平成25年3月)

第1-1-14図/国・地域別論文数及びシェア

(論文数)(トップ10%補正論文数)(トップ1%補正論文数)の画像


注:

  1. Article、Article&Proceedings(articre扱い)、letter、note、reviewを分析対象とし、整数カウントにより分析
  2. 3年間の平均値を示す。
  3. トップ10%補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位10%に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/10となるように補正を加えた論文数を指す。
  4. トップ1%補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位1%に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/100となるように補正を加えた論文数を指す。
  5. トムソン・ロイター社“Web of Science”を基に、科学技術政策研究所が集計

資料:科学技術政策研究所「科学研究のベンチマーキング2012」(平成25年2月)

2.卓越した研究成果の動向

  前項で示したように、質・量ともに、我が国の科学技術力の低下傾向が示されている。一方、近年我が国では、卓越した成果が世間の耳目を集めることが多い。
  例えば、21世紀以降では、自然科学系のノーベル賞受賞者として、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生をはじめとして、鈴木章先生、根岸英一先生(2010年)、小林誠先生、益川敏英先生、下村脩先生、(2008年)、小柴昌俊先生、田中耕一先生(2002年)、野依良治先生(2001年)と、日本人受賞者が9名となっており、米国の47人に次ぐ受賞者を輩出している(第1-1-15表)。
  また、米サイエンス誌は、毎年その年の卓越した研究成果を「科学10大成果」として発表しており、2012年度における我が国の研究者に関連した研究成果として、マウスのiPS細胞による卵子の作成や、我が国の多くの研究者が参画した国際共同研究であるヒッグス粒子の発見があげられている。昨年は、小惑星探査機「はやぶさ」に関連した研究成果が選定されており、ほぼ毎年のように日本人が関わる研究成果が選ばれている。
  このように、我が国の卓越した研究成果については世界でも近年高く評価されており、我が国の科学技術政策の成果の表れと言える。

第1-1-15表/ノーベル賞受賞者(自然科学系)

第1-1-15表/ノーベル賞受賞者(自然科学系)の画像

注:

  1. 自然科学分野の物理学、化学、生理学・医学の各賞の受賞者数を数えている。
  2. 受賞者の国名は国籍でカウントしている。ただし、二重国籍者は、出生国でカウントしている。(二つの国籍と出生国が異なる場合、国籍のうち、受賞時の主な研究拠点国でカウントしている。)
  3. 2008年物理学賞受賞の南部陽一郎博士は、米国籍であることから、米国に計上している。

資料:文部科学省作成

3.特許出願数

  論文数、論文被引用数と並んで研究活動から得られる成果に関する指標として、特許に関するものがある。我が国からの特許出願件数は、45万件を超える規模であるが、2000年代半ばから漸減傾向にある(第1-1-16図)。減少の背景としては、研究開発費が横ばいとなっていることに伴い、企業等が出願する特許を厳選していること、国際出願を重視していること等が考えられる。特許庁では、研究開発結果の早期活用やグローバルな視点に基づいた権利化戦略など我が国の知的財産戦略の強化を目指して、任期付き審査官の確保を含めた国の審査体制の整備による審査の迅速化を進めている。
  また、我が国を含めた各国とも、居住国以外への特許出願の件数を増加させている(第1-1-17図)。

第1-1-16図/主要国等の特許出願件数の推移

第1-1-16図/主要国等の特許出願件数の推移のグラフ 

注:

  1. 出願人の国籍別に、自国及び他国に出願した件数とPCT国際出願に基づく国内移行段階件数を合計したものである。
  2. WIPO Statistics Database、 December 2011“Patent applications by country of origin and patent office(1995-2010)”

資料:科学技術要覧(平成24年版)

第1-1-17図/主要国からの特許出願数の推移(1995年~2010年)

第1-1-17図/主要国からの特許出願数の推移(1995年~2010年)のグラフ

注:

  1. 出願数の内訳は、日本からの出願を例に取ると、以下に対応している。
    「居住国への出願」:日本に居住する出願人が日本特許庁に直接出願したもの。
    「非居住国への直接出願」:日本に居住する出願人が日本以外(例えば米国特許商標庁)に出願したもの。
  2. 各国ともEPOへの出願数を含んでいる。
  3. 国内移行したPCT出願件数を含む。

資料:科学技術政策研究所「科学技術指標2012」(平成24年8月)

  また、企業による国際特許出願件数ランキングを2006年と2011年で比較すると、トップ10社の特許出願数が増加しているとともに、我が国の企業が2社から3社に増えるなど国際特許出願を加速させている状況が見られる。一方、中国と韓国の企業は2006年には10位以内には1社も入っていなかったにも関わらず、2011年には両国合わせて3社が入っており、特許に関しても、中国及び韓国の躍進がうかがわれる(第1-1-18図)。

第1-1-18図/企業による国際特許出願件数の変化(2006年~2011年)

第1-1-18図/企業による国際特許出願件数の変化(2006年~2011年)の画像

資料:WIPO“World Intellectual Property Indicators - 2012 Edition”及び“The International Patent System In 2006 PCT Yearly Review”を基に文部科学省作成

4.技術貿易

  技術等を利用する権利を、対価を受け取って外国にある企業や個人に対して与える「技術輸出」と、逆に対価を支払って外国に居住する企業や個人から権利を受け取る「技術輸入」(技術導入)を合わせた「技術貿易額」も、技術の国際的な競争力を示す指標として用いられる。1991年以降、欧米諸国及び韓国の技術貿易は輸出・輸入とも増加傾向にあり、我が国も同様の傾向にある。また、技術貿易収支比(技術輸出額/技術輸入額)について見ると、日本の技術貿易収支は、1993年に1を超え、継続して増加傾向にあり、2010年度の値は4.6と、高い数値を示している(第1-1-19図)。

第1-1-19図/各国の技術貿易額及び技術貿易収支比の推移

第1-1-19図/各国の技術貿易額及び技術貿易収支比の推移  技術貿易額のグラフ
第1-1-19図/各国の技術貿易額及び技術貿易収支比の推移  技術貿易収支比のグラフ

注:
<日本>年度のデータである。技術貿易の種類は以下のとおり(商標権は除く) 1.特許権、実用新案権、著作権、2.意匠権、3.各技術上のノウハウの提供や技術指導(無償提供を除く)、4.開発途上国に対する技術援助(政府からの委託によるものも含む)
<米国>2000年まではロイヤリティとライセンスのみ。2001~2005年では研究、開発、検査サービスを加え、2006年以降はコンピューター、データ処理サービス等が加わった。2009年は暫定値
<ドイツ>1990年までは西ドイツ。1985年までは、特許、ライセンス、商標、意匠を対象とする。1986年からは、更に技術サービス、コンピューターサービス、産業分野の研究開発を含む。2010年は暫定値
<英国>1984年から石油企業の分を含む。1996年から特許、発明、ライセンス、商標、意匠、技術に関連したサービス及び研究開発を含む。2009年は前年度までのデータとの継続性が損なわれている。2010年は暫定値
<韓国>2009年は暫定値

資料:科学技術政策研究所「科学技術指標2012」(平成24年8月)

(2)研究活動に関わる諸動向

1.研究費に関する動向

  主要国等における研究費をOECD購買力平価換算して比較して見てみると、米国が最も大きく46.3兆円、EU加盟27か国は33.9兆円、中国の19.9兆円となっており、我が国はこれらに次いで17.1兆円となっている。研究費の推移を見ると、我が国は1980年以降増加傾向にあるものの、急激に研究費を伸ばしている中国には、2009年に追い越されている状況が見て取れる。また、研究費の国内総生産(GDP)に対する比率を見ると、我が国は1989年以来、主要国中で最高水準を維持してきたが、2008年から2年連続で減少し、2000年代に入って大きく伸びてきている韓国に2010年から追い越されている。また、中国の伸びが顕著である状況も見て取れる(第1-1-20図)。

第1-1-20図/主要国等の研究費(OECD購買力平価換算)及び研究費対国内総生産(GDP)比の推移

(研究費(OECD購買力平価換算))

第1-1-20図/主要国等の研究費(OECD購買力平価換算)及び研究費対国内総生産(GDP)比の推移(研究費対国内総生産比)のグラフ

(研究費対国内総生産比)

第1-1-20図/主要国等の研究費(OECD購買力平価換算)及び研究費対国内総生産(GDP)比の推移(研究費(OECD購買力平価換算))のグラフ

注:

  1. 研究費対国内総生産比については、研究費及び国内総生産の値より文部科学省で試算
  2. 各国とも人文・社会科学が含まれている。ただし、韓国の2006年度までは人文・社会科学が含まれていない。
    なお、日本については自然科学のみの研究費を併せて表示している。
  3. ドイツの1982、1984、1986、1988、1990、1992、1994-96、1998、2010年度の値は推計値である。
  4. フランスの2010年度の値は暫定値である。
  5. 英国の2008-2009年度の値は推計値、2010年度の値は暫定値である。
  6. EUの値はEurostatによる推計値である。
  7. インドの2006、2007年度の値は推計値である。
  8. (研究費及び国内総生産)
    日本:(研究費)総務省統計局「科学技術研究調査報告」、(国内総生産)内閣府「国民経済計算確報」
    EU:Eurostat database
    インド:UNESCO Institute for Statistics S&T database
    その他の国:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol 2012/1”
    (購買力平価)
    インド:The World Bank “World Development Indicators”
    その他の国:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol 2012/1”

資料:科学技術要覧(平成24年度)

  研究費の政府負担額について概観すると、米国、EU加盟27か国、中国に次いで、3.3兆円を政府で負担しているが、米国や、EU加盟27か国、中国など政府負担を増加させているのに対して、我が国は近年研究費の伸びが停滞している状況にある(第1-1-21図)。

一方、世界においては研究開発費の7割を企業が負担しており、その動向を概観すると、企業等の民間が負担する研究費については継続的に増加傾向であったものの、2008年のリーマンショック以降落ち込んでいる(第1-1-21図)。なお、我が国の企業の研究活動を概観すると、近年民間企業による研究期間が短縮していると認識されているとともに(第1-1-22図)、社外へ支出する研究費の割合が近年増加傾向にあることが見て取れる(第1-1-23図)。

第1-1-21図/主要国等の負担源別研究費の推移(OECD購買力平価換算)

第1-1-21図/主要国等の負担源別研究費の推移(OECD購買力平価換算)(政府負担)のグラフ
第1-1-21図/主要国等の負担源別研究費の推移(OECD購買力平価換算)(民間負担)のグラフ

注:

  1. 研究費及び政府負担研究費割合または民間負担研究費割合より文部科学省で試算(日本を除く)
  2. 各国とも人文・社会科学が含まれている。ただし、韓国の2006年度までは人文・社会科学が含まれていない。
  3. 英国の1981、1983年度の値はOECDによる推計値、2008-09年度の値は推計値、2010年度の値は暫定値である。
  4. ドイツの1982、1984、1986、1988、1990、1992、1994-96、1998、2000、2002年度の値は推計値である。
  5. フランスの2010年度の値は暫定値である。
  6. EUの2008年度までの値はEurostat及びOECDによる推計値、2009年度の値は暫定値とEurostat及びOECDによる推計値から求めた値である。
  7. インドの2006、2007年度の値は推計値である。
  8. 日本:総務省統計局「科学技術研究調査報告」
    EU:(研究費)Eurostat database
    (政府負担研究費割合)OECD“Main Science and Technology Indicators Vol 2012/1”
    インド:(研究費、政府負担研究費割合)UNESCO Institute for Statistics S&T database
    (購買力平価)The World Bank“World Development Indicators”
    その他の国:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol 2012/1”

資料:科学技術要覧(平成24年度)を基に文部科学省作成

第1-1-22図/民間企業における研究の期間(10年前との比較)

第1-1-22図/民間企業における研究の期間(10年前との比較)のグラフ

注:

  1. 調査時(平成23年度)に、「10年前との比較」についてアンケート調査したもの。
  2. 1~4年程度を短期、5年以上を長期とした。

資料:経済産業省「産業技術調査「イノベーション創出に資する我が国企業の中長期的な研究開発に関する実態調査」(平成24年2月)をもとに文部科学省作成

第1-1-23図/民間企業による社外支出研究費の割合

第1-1-23図/民間企業による社外支出研究費の割合のグラフ

資料:総務省統計局「平成24年科学技術研究調査報告」(平成24年12月)

  これまで見てきたように、我が国の研究費は着実に増加してきたが、中国や米国をはじめ各国の研究費の伸びは我が国に比べ高い。また、我が国全体の研究費は企業の研究活動により伸びていたが、リーマンショック以降、企業が研究開発にあてる経費が減少してきており、中国や韓国等が研究開発投資を増加させている状況とは対照的である。また、近年、企業においては、成果を得るまでに時間がかかる長期的研究は減少する傾向にあるとともに、社外支出研究費が増加していることから、企業が研究資源を社外に求めていることが分かる。

2.研究人材に関する動向

(博士号取得者数)

  主要国における学位取得者数(自然科学系)の状況については、我が国は約30年前と比較して、約2倍となっているが、米国の学位取得者数は我が国の3倍弱の数となっているとともに、ドイツの学位取得者数も我が国より多い(第1-1-24図)。また、人口100万人あたりの博士号取得者では、我が国は比較対象国中で博士号取得者数が最も少なく、最も多い国であるドイツと比べ1/2程度となっている(第1-1-25図)。

第1-1-24図/主要国の学位取得者数(自然科学系)(博士)

第1-1-24図/主要国の学位取得者数(自然科学系)(博士)のグラフ

注:

  1. ドイツの1980年度は旧西ドイツのものである。
  2. フランスは、統計上、理学、工学、農学の区分がなされていない。また、本土及び海外県の値である。
  3. 文部科学省「教育指標の国際比較(平成15、24年版)」

資料:科学技術要覧(平成24年版)

第1-1-25図/人口100万人あたりの博士号取得者数

第1-1-25図/人口100万人あたりの博士号取得者数のグラフ

注:
<日本>当該年度の4月から翌年3月までの博士号取得者数を計上。
<米国>当該年9月から始まる年度における博士号取得者数を計上。
<ドイツ>当該年の冬学期及び翌年の夏学期における博士試験合格者数を計上。
<フランス>当該年(暦年)における博士号(通算8年)の取得者数。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
<英国>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの上級学位取得者数を計上。
<韓国>当該年度の3月から翌年2月までの博士号取得者数を計上。理学、工学、農学は足したものを同時計上。

資料:科学技術政策研究所「科学技術指標2012」(平成24年8月)

(若手研究者とキャリアパス)

  大学本務教員に占める若手教員の割合の推移を見る。ここでいう本務教員とは、当該学校に籍のある常勤教員であり、任期付や特任の教員であっても、当該学校に勤務しているのであれば、本務教員に含まれ、兼任の教員は含まれない。全大学の本務教員の年齢階層構成を見ると、1986年には25-39歳の教員の比率は39%であったが2010年では26%に減少している。一方で、年齢が上がるごとにその割合が増し、60歳以上の比率は2010年には19.6%となっており、1986年の11.9%から増加している(第1-1-26図)。なお、若手研究者の自立の現状は、40歳未満、35歳以上の研究者のうち自立して研究を行う立場(PI(※8))に該当する者は14.1%にとどまるなど、40歳以下の研究者の多くは、自らの発案でリーダーシップをとって研究に取り組む立場にはないと考えられる(第1-1-27図)。
  一方、博士号取得者が大学だけでなく企業においても活躍することが期待されるが、企業に占める博士号取得者について、他国と比較してその割合が低いことが見て取れる(第1-1-28図)。

第1-1-26図/大学の本務教員の年齢階層構成

第1-1-26図/大学の本務教員の年齢階層構成のグラフ

注:本務教員とは当該学校に籍のある常勤職員

資料:科学技術政策研究所「科学技術指標2012」(平成24年8月)


※8  Principal Investigator(研究責任者)、本調査では、次の5項目を満たす研究者をPIとしている。1.独立した研究室を持った、2.研究グループの予算作成・執行の実質的な責任者、3.担当課題の予算作成・執行の実質的な責任者、4.特定の部下(大学院生)の指導の責任者、5.発表論文の責任者

第1-1-27図/年齢層別の研究責任者の割合

第1-1-27図/年齢層別の研究責任者の割合のグラフ

資料:科学技術政策研究所「我が国の大学・公的研究機関における研究者の独立の過程に関する分析-研究職歴と研究権限についての大規模調査-」(平成24年8月)

第1-1-28図/企業の研究者に占める博士号取得者の割合(2010年)

第1-1-28図/企業の研究者に占める博士号取得者の割合(2010年)のグラフ

資料:日本:総務省「科学技術研究調査」、アメリカ:NSF「SESTAT」
その他の国:OECD「Science、Technology and R&D Statistics」のデータを基に文部科学省作成
※オーストリア、ベルギー、台湾は2009年のデータ

  また、我が国のポストドクター(※9)(以下「ポスドク」という)の50%近くは競争的資金で雇用されている(第1-1-29図)。競争的資金による雇用は、処遇はばらつきがちで、身分は期間に限りがある。博士課程修了直後に任期付きの職に就職した者のうち、5年経過後も任期のある職業についているものは、去就が分かっている者の中では半数以上、博士課程終了時の比率からすると全体の約1/3以上を占める(第1-1-30図)。

第1-1-29図/ポストドクターの雇用財源別内訳

第1-1-29図/ポストドクターの雇用財源別内訳のグラフ

資料:科学技術政策研究所「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査-大学・公的研究機関への全数調査(2009年度実績)-」(平成23年12月)

第1-1-30図/博士課程修了直後に任期ありの職に就いた者の現在の任期の有無

第1-1-30図/博士課程修了直後に任期ありの職に就いた者の現在の任期の有無のグラフ

資料:科学技術政策研究所「我が国の博士課程修了者の進路動向調査」(平成21年3月)


※9  博士の学位を取得後、1.大学等の研究機関で研究業務に従事している者であって、教授・助教授・助手等の職にない者や、2.独立行政法人等の研究機関において研究業務に従事している者のうち、任期を付して任用している者であり、かつ所属する研究グループのリーダー・主任研究員等ではない者。1、2ともに、博士課程に標準修業年限以上在学し、所定の単位を修得した上退学した者(いわゆる「満期退学者」)を含む。

(女性研究者)

  我が国の女性研究者数及び全研究者数に占める割合の推移を見ると、ほぼ一貫して増加傾向にあり、平成24年時点では女性研究者の数は約12万人、研究者全体の14.0%を占めている。(第1-1-31図)。一方、その割合は、諸外国と比較してなお低い水準にある(第1-1-32図)。

第1-1-31図/女性研究者数及び全研究者に占める割合の推移

第1-1-31図/女性研究者数及び全研究者に占める割合の推移のグラフ

注:平成13年までの研究者数については企業等及び非営利団体・公的機関は研究本務者、大学等は兼務者を含む研究者を使用し計算している。平成14年以降の男女別の研究者はヘッドカウントで調査している。

資料:総務省「科学技術研究調査報告」を基に文部科学省作成

第1-1-32図/各国における女性研究者の割合

第1-1-32図/各国における女性研究者の割合のグラフ

注:

  1. 総務省「科学技術研究調査報告」(日本:平成24年時点)
    OECD“Main Science and Technology Indicators”(英国:平成22年時点、フランス:平成22年時点、ドイツ:平成21年時点、韓国:平成22年時点)
    NSF“Science and Engineering Indicators 2006”(米国:平成15年時点)
  2. 米国については、研究者ではなく、科学専門職(科学工学の学士レベル以上を保有し、科学に関する専門的職業に従事している者。ただし科学には社会科学を含む)を対象としている。

資料:文部科学省作成

  以上で示した研究人材の動向からは、若手や女性の研究者の能力が十分に生かされておらず、今後さらに、その育成、登用、活躍を促進する必要があることが示唆される。

3.産学連携に関する動向

  大学等と民間企業との共同研究の実施件数は、景気の影響を受けつつも総じて増加傾向を示しているが(第1-1-33図)、1件あたりの共同研究受入額は100万円未満のものが約50%を占め、1,000万円以上の高額の共同研究は3.7%程度である(第1-1-34図)。特許権実施等収入額は、概して増加傾向にあり、平成23年度で約10.9億円である(第1-1-35図)。また、大学等発ベンチャーの設立累計数は平成6年度の47件に対し、平成23年度に2,143件を数えるまで増加したが、近年、その伸び(年間の新規設立数)は鈍化している(第1-1-36図)。このように、産学連携に関する動向については量的な拡大が見られる。

第1-1-33図/産学連携の件数の推移

第1-1-33図/産学連携の件数の推移のグラフ

資料:文部科学省「平成23年度大学等における産学連携実施状況調査」(平成24年10月)

第1-1-34図/共同研究全体の研究費の規模別実施件数内訳(平成23年度)

第1-1-34図/共同研究全体の研究費の規模別実施件数内訳(平成23年度)のグラフ

資料:文部科学省「平成23年度大学等における産学連携実施状況調査」(平成24年10月)

第1-1-35図/特許権実施等件数及び収入額の推移

第1-1-35図/特許権実施等件数及び収入額の推移のグラフ

注:

  1. 「特許権実施等件数」とは、実施許諾または譲渡した特許権(「受ける権利」の段階のものも含む。)の数を指す。
  2. 単位未満は四捨五入

資料:文部科学省「平成23年度大学等における産学連携実施状況調査」(平成24年10月)

第1-1-36図/大学等発ベンチャーの設立数

第1-1-36図/大学等発ベンチャーの設立数のグラフ

注:

  1. 平成21年度実績までは文部科学省科学技術政策研究所の調査によるものであり、平成22年度以降の実績は本調査による。
  2. 平成22年度以降の実績は、当該年度に設立された大学等発ベンチャー設立数のみを調査し、科学技術制策研究所の平成21年度実績までのデータに合算している。
  3. 設立年度は当該の4月から翌年3月までとし、設立月の不明な企業は4月以降に設立されたものとして集計された。
  4. 設立年度の不明な企業9社が平成21年度実績までにあるが、除いて集計した。

資料:文部科学省「平成23年度大学等における産学連携等実施状況調査」(平成24年10月)

(3)研究活動の基盤に係る動向

1.大学における教育研究の動向

(大学ランキング)

  各国の国際競争力だけでなく、大学についても研究活動等を指標化することにより、国際的な順位付けが行われている。本稿では、我が国の大学の国際的な位置付けについて、大学の研究活動等に注目した指標に着目し概観する。
  英国の「Times Higher Education」誌が、「教育」、「国際」、「産学連携」、「研究」、「論文引用」についての情報を基に世界各国の大学ランキングを毎年発表している。これを見ると、このランキング上位国の多くは米国及び英国の大学であり、我が国は27位の東京大学が最高で、54位の京都大学、128位の東京工業大学が続き、米国及び英国の大学との差は大きい(第1-1-37表)。
  また、「研究」、「論文引用」の指標においても、東京大学や京都大学が、世界やアジアのトップレベルに近い位置にいるが、我が国の大学は総じて高い位置にいるとは言えない。「産学連携」の指標については、韓国や中国の大学が世界でもトップレベルの位置付けにある一方で、我が国の大学はそれに及んでいない。「国際」の指標については、アジアの大学に着目すると、シンガポールや香港等の英語圏の大学が特に高い位置付けであり、また、非英語圏の北京大学等の中国の大学が比較的高い位置づけにあるが、我が国の大学は総じて低調な傾向を示している。
  同じくTimes Higher Educationは、「臨床、前臨床、健康分野」、「エンジニアリング、テクノロジー分野」、「ライフサイエンス分野」、「自然科学分野」等分野別のランキングも公表しており、いずれも欧米の大学が上位を占めている。いずれの分野も上位50位以内に位置する我が国の大学は、東京大学、京都大学、東京工業大学の3校のみであり、我が国の大学の存在感は低い。
  また、国際的な大学ランキングで著名な英国クアクアレリ・シモンズ社によるランキング(※10)でも同様に欧米の大学が上位を占め、香港大学がアジアで首位である23位、我が国の東京大学が30位、京都大学が35位、大阪大学が50位に入っている。本ランキングでは、詳細な研究分野別の順位付けが行われているが、化学、機械工学、生物等のランキングで東京大学、京都大学が20位以内に入っている一方、医学、数学、統計、素材分野では入っていないなど、我が国の位置付けが概観できる。
  このように、各種大学ランキングからは、研究面や研究に基づいた活動の面で、依然として高い評価を受けている米国及び英国に対し、我が国の大学の存在感が低い状況が示されている。また、比較的同程度の評価を受けているアジア諸国の大学との激しい競争にさらされていることも示唆される。


※10  オランダの学術出版社エルゼビア社(Elsevier)の提供する「スコーパス(Scopus)」の情報等に基づき作成される。本ランキングは、1.世界各国の学者による評価(40%)、2.世界各国の雇用主による評価(10%)、3.教員一人あたり論文引用数(20%)、4.学生一人あたり教員比率(20%)、5.留学生比率(5%)、6.外国人教員比率(5%)の6項目の評価結果に基づき算出されている。

第1-1-37表/「Times Higher Education」世界大学ランキング

第1-1-37表/「Times Higher Education」世界大学ランキングの画像

注:

  1. 評価指標は以下の5項目からなる。
    1. 教育(30%):研究者による評価(15%)、教員当たり学生数(4.5%)、学士授与数当たり博士授与数比率(2.25%)、教員当たり博士授与数(6%)、教員当たり収入(2.25%)
    2. 国際(7.5%):外国人教員比率(2.5%)、外国人学生比率(2.5%)、国際共著論文比率(2.5%)
    3. 産学連携(2.5%):教員当たり産学連携収入(2.5%)
    4. 研究(30%):研究者による評価(18%)、教員当たり研究収入(6%)、教員・研究員当たり論文数(6%)
    5. 論文引用(30%):論文引用度(1論文当たりの平均)(30%)
  2. 2.世界順位201番以降は、順位の範囲が示されるのみであり、特定の順位付けがされていない。

資料:The Times Higher Education、“World University Rankings 2012-2013 powered by Thomson Reuters”、“Asia University Rankings 2013”を基に、文部科学省作成

(研究環境)

  大学における研究環境はどのようになっているであろうか。一例として大学に所属する教員の研究時間についてみると、大学教員の研究時間はいずれの職位においても、平成14年の調査に比較して、平成20年には研究への時間配分が減少している。また、助教を除き全勤務時間の4割未満しか研究時間が確保できていない(第1-1-38図)。

第1-1-38図/職位別・活動別年間平均職務時間割合(全大学)

第1-1-38図/職位別・活動別年間平均職務時間割合(全大学)のグラフ

注:大学の学部(大学院も含む)。括弧内は2002年調査時の名称

資料:科学技術政策研究所「減少する大学教員の研究時間-「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」による2002年と2008年の比較-」(平成23年12月)

  このように、大学における研究時間の減少による研究環境の悪化が見て取れる。研究に専念できない環境は、各種大学ランキングにおける我が国の大学の存在感の薄さの背景となっていると考えられる。

2.科学技術系人材の裾野に関する動向

  科学技術系人材の裾野の拡大や、科学技術と社会の関わりを理解するなど国民の科学技術リテラシの向上のためには、初等中等教育段階からの取組が重要である。国際学力調査[国際数学・理科教育動向調査(TIMSS(※11))]の結果を参考に動向を概観する。
  2012年12月に、国際数学・理科教育動向調査の2011年調査(TIMSS2011)が報告された。この調査は、初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定等するものであり、1995年を開始年として4年ごとに実施され、今回の調査で5回目となる。小学校は50か国・地域(約26万人)、中学校は42か国・地域(約24万人)が参加しており、我が国においても小学4年生・中学2年生がともに約4千人参加している。
  この調査によると、我が国の小学4年生の算数及び理科の平均得点はそれぞれ585点(参加50か国中5位)及び559点(参加50か国中4位)、中学2年生の数学及び理科の平均得点はそれぞれ570点(参加42か国中5位)及び558点(参加42か国中4位)となっており、1995年の第1回調査以降、国際的に見て上位を維持し続けている(第1-1-39表)。特に、小学校の算数と理科については、2007年調査と比較して、平均得点が有意に上昇していると評価されており、習熟度の低い児童の割合が減少し、習熟度の高い児童の割合が増加している。中学校においては、平均得点は前回調査と同程度であるが、習熟度の高い生徒の割合が増加している。
  一方、我が国の子どもの算数・数学、理科に対する意識について見ると、「勉強が好きだ」及び「勉強が楽しい」という質問に対して、肯定的な回答をした小学生、中学生の割合は、国際平均より下回っており、中学生においてその傾向が顕著である(第1-1-40表)。なお、これらのことは、他の初等中等教育段階に関する国際学力調査である、経済協力開発機構(OECD)生徒の学習到達度調査(PISA(※12))についても同様の傾向が示されており、平成23年版科学技術白書においても報告している。
  また、我が国における平成24年度の全国学力・学習状況調査において、理科については、観察、実験の結果などを整理、分析した上で、解釈、考察し、説明することなどに課題が見られるとともに、「理科の授業の内容はよく分かる」と回答した小学生の割合(86%)と中学生の割合(65%)との差(21%)が他教科より大きいことと言った指摘がされている(第1-1-41表)。
  これらの結果からは、学力的については小学生・中学生ともに国際的に高い位置にあり、科学技術に関する基礎的素養が全体的に育成されていることが示唆されるが、一方、科学技術に関する意識の面では、学齢が上がるにつれて科学技術への興味・関心が低くなっている。これは、以前から同様の傾向にあり、科学技術系人材の裾野の拡大や科学技術リテラシの涵養に関する取組の改善が必要と考えられる。


※11  Trends in International Mathematics and Science Study

※12  Programme for International Student Assessment

第1-1-39表/国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における平均得点(上位10カ国)

第1-1-39表/国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における平均得点(上位10カ国)の画像

注:

  1. 得点とは、各国・地域の得点は、1995年調査における基準点(500点(対象児童生徒の3分の2が400点から600点に入るよう標準化))からの変化を表す値である。
  2. 1995年調査は小学校3年生、中学校1年生も対象としており、1995年の平均得点は、小学校3年生と4年生若しくは中学校1年生と2年生を合わせて平均値が500点、標準偏差が100点となるよう算出されている。

資料:「国際数学・理科教育動向調査の2011年調査(TIMSS2011)国際調査結果報告」を基に文部科学省作成

第1-1-40表/国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における児童生徒の意識調査

○「勉強が好きだ」という質問に対する結果

第1-1-40表/国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における児童生徒の意識調査  「勉強が好きだ」という質問に対する結果の画像

○「勉強が楽しい」という質問に対する結果

第1-1-40表/国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における児童生徒の意識調査  「勉強が楽しい」という質問に対する結果の画像

第1-1-41表/平成24年度全国学力・学習状況調査の結果(教科における関心・意欲・態度)
  理科 国語 算数・数学
小学校
(%)
中学校
(%)
小学校
(%)
中学校
(%)
小学校
(%)
中学校
(%)
勉強が好き 82 62 20 63 58 5 65 53 12
勉強は大切 86 69 17 93 90 3 93 82 11
授業で学習したことは将来社会に出たときに役に立つ 73 53 20 89 83 6 90 71 19
授業の内容はよく分かりますか 86 65 21 83 72 11 79 66 13

注:「当てはまる」、「どちらかといえば、当てはまる」と回答した児童生徒の割合

資料:文部科学省作成

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))

-- 登録:平成25年08月 --