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平成22年版 科学技術白書 第1部 第2章 第2節

第2節 知をつなぎイノベーションを創出する場の形成

1 イノベーション活動の状況

(1) イノベーション創出のための各国の取組

 イノベーションは新たな価値の創造によって生じる経済社会の変革であり、国や社会の発展や経済の復興に重要なものと認識されている。そのため、各国ではイノベーションの創出に関する国家的な取組がなされている。
 米国では、2009年9月に「米国イノベーション戦略(A Strategy for American Innovation: Driving Towards Sustainable Growth and Quality Jobs)」が大統領行政府(EOP(※1))、科学技術政策局(OSTP(※2))、国家経済会議(NEC(※3))の共同文書として発表された。「20世紀の米国の発展は、世界のイノベーションを米国がけん引していたことが理由であり、世界の競争が激しくなっている現在、イノベーションの重要性は大きくなっていることから、将来の高い生活の質・国の発展・高給・雇用を確保するために、イノベーションに投資することが必要である」としている。政府の科学・技術などへの助成や規制をその方向性に向けるとしている。
 英国では、2009年にビジネス・企業・規制改革省(BERR(※4))とイノベーション・大学・技能省(DIUS(※5))とを統合して、新しくビジネス・イノベーション・技能省(BIS(※6))を創設した。BISは、2010年1月に「成長を目指して(Going for Growth)」を発表した。米国イノベーション戦略と同様に、経済復興・雇用創出・生活の質の向上などを目的とした施策を打ち出している。
 ドイツでは、2006年8月に「ハイテク戦略(The High‐Tech Strategy for Germany)」が発表された。これはドイツ連邦政府の研究開発及びイノベーションのための省庁横断的な包括的な戦略であり、新しい製品及び革新的なサービスの開発を推進し、知識の創出や普及によって雇用や経済成長を促すことを目的としている。そのために、分野横断的な研究領域への投資や産学連携の強化などを行うとしている。
 フランスでは、国家の優先分野における高等教育・研究開発・中小企業の発展などの支援をするため、サルコジ大統領の主導により、2010年からイノベーション創出の促進を目的とした投資のための国債発行を行うこととしている。
 EUでは、EUの経済・社会に関する今後10年間の目標を定めた戦略である「EU新戦略(EUROPE 2020)」を2010年3月に発表した。成長に向けて取り組むべき3つの優先事項として、「知識・イノベーションを基盤にした経済の発展」、「資源効率に優れ、環境に配慮し、競争力のある経済の促進」、「社会的地域的結束をもたらす高雇用経済の醸成」をあげており、産業界からの投資促進により研究開発投資をGDP比で現行の1.9%から3%に引き上げるという目標を示している。また、OECDでも「OECDイノベーション戦略」の策定作業が進められている(2010年5月公表)。
 中国では、科学的思考で経済社会の矛盾を解決し、持続可能な成長を目指すという観点による「国家中長期科学技術発展計画綱要(2006‐2020年)」を実施している。この中で、海外からの導入ではない中国独自のイノベーションの創出を重視し、中国人による発明特許や科学論文引用数を世界5位以内にするなどの目標が示されている。
 このように、各国ともイノベーションの目的を経済復興や雇用の創出と位置付け、科学・技術を重要視した政策を推進している。我が国においても、近年、イノベーションを重視した政策を強化しているところである。


※1 Executive Office of the President
※2 Office of Science and Technology Policy
※3 National Economic Council
※4 Department for Business, Enterprise and Regulatory Reform
※5 Department for Innovation, Universities and Skills
※6 Department for Business, Innovation and Skills

(2) 企業におけるイノベーション活動の状況

1.特許出願状況の国際比較

 我が国の特許出願数を出願人の国籍別でみると、2005年以降減少傾向にはあるものの、引き続き世界1位を維持している。2007年まで増加を続けてきたが2008年には減少に転じた米国や、横ばい傾向にあるその他主要国とは対照的に順調に成長を維持する中国は、2008年に韓国を抜いて世界3位となっている(第1‐2‐40図)。
 一方、特許登録数も着実に増加しており、出願数同様に世界1位を維持している。

第1‐2‐40 図 主要国の特許出願件数の推移(出願人国籍別)

第1‐2‐40 図 主要国の特許出願件数の推移(出願人国籍別)

注:出願人の国籍別に、自国及び他国に出願した件数と、PCT国際出願に基づく国内移行段階件数を合計した。
資料:WIPO Statistics Database, December 2009“Patent applications by patent office and country of origin (1995‐2008) ”

2.ハイテク製品輸出の状況

 ハイテク製品は、その原理や製造過程において高度な科学・技術が活用され、また、社会生活に影響を与えてイノベーションを創出するなどの高付加価値製品であると考えられる。このことから、ハイテク製品の輸出額等は科学・技術を駆使した産業の国際競争力の一つの側面を表す指標として見ることができる。そこで、OECDのデータを基にハイテク製品の輸出額やシェアの状況の各国比較を示した。
 ハイテク製品(※1)(航空宇宙、電子機器、事務機器・電子計算機、医薬品、医用・精密・光学機器)の輸出における主要国の世界でのシェアの推移を2000年から2008年の間で比較したところ、英国・米国・日本はともに大幅にシェアを下げていることが示された(第1‐2‐41図)。一方、中国のシェアは2000年から2008年で激増した。
 また、ハイテク製品別の輸出額のシェアをみると、日本は電子機器の輸出のシェアが9.9%と多いが、中国のシェアは25.0%であり、米国の10.7%を上回り、世界で一番のシェアを示した(第1‐2‐42図)。さらに中国は、事務機器・電子計算機でも、36.3%と世界でもっとも大きいシェアを示すなど、ハイテク製品の輸出において大きな存在感を示しつつある。


※1 OECDでは、製造額に対する研究開発費の割合を産業別に計算し、その値の大きい産業(航空宇宙、電子機器、事務機器・電子計算機、医薬品、医用・精密・光学機器)をハイテク産業と定義している。
(参照文献:Revision of the high-technology sector and product classification, STI Working Papers, OECD, 1997/2)

第1‐2‐41 図 ハイテク製品の輸出額の各国シェア

第1‐2‐41 図 ハイテク製品の輸出額の各国シェア

注:「その他」は日本、米国、ドイツ、フランス、英国、韓国及びカナダを除くOECD加盟国と、アルゼンチン、イスラエル、シンガポール、スロベニア及び南アフリカの合計である。
資料:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol.2009/2” 

第1‐2‐42 図 ハイテク製品の輸出額の各国シェア(製品別)(2008年)

第1‐2‐42 図 ハイテク製品の輸出額の各国シェア(製品別)(2008年)

注:
1.「全製造業」のデータは中国、メキシコ、トルコを除く。
2.「ハイテク産業」中の「その他」は日本、米国、ドイツ、フランス、英国、韓国及びカナダを除くOECD加盟国と、アルゼンチン、イスラエル、シンガポール、スロベニア及び南アフリカの合計である。
資料:ハイテク産業計及び各ハイテク産業:OECD“Main Science and Technology Indicators Vol.2009/2”
全産業:OECD“STAN Database for Structural Analysis(2010年2月時点)” 

3.企業におけるイノベーション活動の状況(第2回全国イノベーション調査から(※1))

 科学技術政策研究所は、平成15年の第1回全国イノベーション調査に引き続き、我が国の企業におけるイノベーション活動についての2回目の調査を平成21年に実施した(※2)。
 イノベーションを「新製品あるいは新サービスの市場への投入であるプロダクト・イノベーション(※3)」と、「製品・サービスの製造・物流等にかかわる新プロセスの導入又は既存プロセスの改良であるプロセス・イノベーション(※4)」の2つに分けてアンケート調査した結果、平成18年度から平成20年度の3年間に自社におけるプロダクト・イノベーション及びプロセス・イノベーションの実現状況では、プロダクト・イノベーションのみ実現した企業は全体の10.3%、プロセス・イノベーションのみ実現した企業は16.6%、両方実現した企業は21.1%であり、イノベーションを実現した企業は48.1%であると回答された(第1‐2‐43図)。また、企業の規模が大きくなるにしたがってイノベーションを実現した企業の割合が増加することが示された。大規模企業では58.2%、中規模企業では44.0%、小規模企業では33.1%であった。
 また、「イノベーションを実現した」と回答した企業2,201社に対して、イノベーションの阻害要因をたずねた。その結果、「技術に関するノウハウの不足」、「能力のある従業員の不足」、「市場に関する情報の不足」に「問題があった」と回答した企業の割合が高いことが示された(第1‐2‐44図)。また、小規模企業において、「資金の不足」を挙げる企業の割合が大・中規模企業と比べると高い傾向が示された。
 以上のことから、企業におけるイノベーション活動において、高度な知識・情報や技能をもつ人材を充実させることが重要であると考えられる。


※1 ただし、ここで示した数値は回収した調査票の結果を単純に集計したものである。
※2 科学技術政策研究所「第1回全国イノベーション調査統計報告(平成15年調査実施、平成16年報告書発行)」、「第2回全国イノベーション調査(平成21年実施)」
※3 プロダクト・イノベーションには、新製品あるいは新サービスにおいて、機能・性能・設計・原材料・構成要素・用途を新しくしたものだけではなく、既存の技術を組み合わせたものや既存製品あるいは既存サービスを技術的に高度化したものも含まれるが、製品あるいはサービスの機能面や使用目的が既存のものと変わらない単なるデザインのみの変更、他社製品・サービスの単なる販売・提供は含まれない。
※4 プロセス・イノベーションには、製品・サービスの製造・生産方法あるいは物流・配送方法の新規導入や改良だけではなく、製造・生産あるいは物流・配送をサポートする保守システムやコンピュータ処理などの新規導入や改良も含まれる。

第1‐2‐43 図 イノベーションを実現した企業の割合

第1‐2‐43 図 イノベーションを実現した企業の割合

注:小規模企業は従業者数が10人以上49人以下、中規模企業は50人以上249人以下、大規模企業は250人以上である。
青色はプロダクト・イノベーションのみ、黄色はプロセス・イノベーションのみ、緑色は両方を実現した。
資料:科学技術政策研究所「第2回全国イノベーション調査」の資料を基に文部科学省で作成

第1‐2‐44 図 イノベーションを実現した企業が回答したイノベーションの阻害要因(複数回答)

第1‐2‐44 図 イノベーションを実現した企業が回答したイノベーションの阻害要因(複数回答)

資料:科学技術政策研究所「第2回全国イノベーション調査」の資料を基に文部科学省で作成

(3)産学連携の状況

1.企業と大学の共同研究開発・受託研究開発の状況

 企業(特殊法人及び独立行政法人を除く)の自己負担研究費の総額は、平成20年度には14.5兆円であり、その内、大学や他企業など社外に支出する自己負担の研究費は2.2兆円に達した(※1)。
 国公私立大学における民間企業等との共同研究の件数は、平成20年度では17,638件と前年度に比べて1,427件(9%)増加した(第1‐2‐45図)。受託研究の件数も同様で、平成20年度では19,201件と前年度に比べて676件(4%)増加した(第1‐2‐46図)。また、金額においても、共同研究・受託研究ともに増加している。国公私別にみると、国立大学の件数及び金額が大きい。


※1 総務省「科学技術研究調査報告(平成21年)」

第1‐2‐45 図 企業と大学の共同研究の件数と金額

第1‐2‐45 図 企業と大学の共同研究の件数と金額

資料:文部科学省「平成20年度大学等における産学連携等実施状況調査」

第1‐2‐46 図 企業と大学の受託研究の件数と金額

 第1‐2‐46 図 企業と大学の受託研究の件数と金額

資料:文部科学省「平成20年度大学等における産学連携等実施状況調査」

2.大学発ベンチャーの状況

 平成20年度経済産業省委託調査「大学発ベンチャーに関する基礎調査」実施報告書(日本経済研究所)(平成21年3月)では、大学発ベンチャーを「大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で新規に設立された企業」と「大学と関連の深いベンチャー(設立5年以内に大学と共同研究等を行った、設立5年以内に大学から技術移転を受けた、大学と深い関連のある学生ベンチャー、大学からの出資がある等の大学と深い関連のあるベンチャー)」を合わせたものと定義している。
 報告書によると、平成20年度末時点で企業活動を営んでいる大学発ベンチャーの数は1,809社である。ここ十数年で大学発ベンチャーの設立は急激に増加したが、各年の設立数の推移をみると、平成17年度あたりから設立数が減少している(第1‐2‐47図)。 大学ごとにみると、大学発ベンチャーの累計数(平成21年3月時点で活動しているもの)が一番多い大学は東京大学の125社であり、次いで筑波大学76社、大阪大学75社、早稲田大学74社、京都大学64社、東北大学57社、東京工業大学57社、九州大学55社、慶應義塾大学51社、九州工業大学45社であった。
 さらに、複数大学の技術シーズを活用している大学発ベンチャーが約1割(約150社)あり、これらのベンチャーは、「資金提供先と対応しやすい」、「外部関係者との連携が図りやすい」等の事業活動における利点を上げている。
 また、今後、成長が期待される大学発ベンチャー20選が、大学発ベンチャー支援機関及びベンチャーキャピタル等の関係者の情報やベンチャーに対するヒアリング等を基に、前述の調査(※1)において選出された。前年度までに株式公開(IPO(※2))をしていないこと、優れた技術を有していること、経営体制が整備されていること、ベンチャーキャピタル等金融関係者からの出資又は融資を得ていること、に加えて事業実績等より選ばれた(第1‐2‐48表)。事業内容は、ライフサイエンス分野がもっとも多く、次いで環境関連の分野が多いことが示された。複数大学が関わっている大学発ベンチャーが2割含まれている。


※1 平成20年度経済産業省委託調査「大学発ベンチャーに関する基礎調査」実施報告書(日本経済研究所)(平成21年3月)
※2 Initial Public Offerings

第1‐2‐47 図 大学発ベンチャーの年度別設立数の推移

第1‐2‐47 図 大学発ベンチャーの年度別設立数の推移

資料:平成20年度経済産業省委託調査「大学発ベンチャーに関する基礎調査」実施報告書(日本経済研究所)(平成21年3月)

第1‐2‐48 表 大学発ベンチャー20選
会社名 関連大学 事業内容
株式会社イーベック (北海道札幌市) 北海道大学 独自技術により完成させた完全ヒト抗体の販売
株式会社 音力発電 (神奈川県藤沢市) 慶應義塾大学 音力発電や振動力発電を使用した商品の開発、製造及び販売等
株式会社クリーンベンチャー 21 (京都市南区上鳥羽大物町) 大阪大学、立命館大学、東京大学 マイクロ集光型球状シリコン太陽電池の実用化及び事業化
株式会社 コンティグ・アイ (岐阜県岐阜市) 岐阜大学 微生物を使った土壌浄化・非食料を原料とするバイオエタノールの製造等
株式会社 ジナリス (神奈川県横浜市) 奈良先端大、東京大学等 ゲノム解析技術開発等
スパイバー株式会社 (山形県鶴岡市) 慶應義塾大学 1.再資源化可能な非石油系高性能タンパク質繊維素材の研究開発、2.微生物モニタリング技術の開発
株式会社セルシード (東京都新宿区) 東京女子医科大学 再生医療事業・再生医療支援事業
株式会社 創 晶 (大阪府大阪市) 大阪大学 医薬候補化合物やタンパク質の結晶化受託
ソフトイーサ 株式会社 (茨城県つくば市) 筑波大学 ネットワーク通信・セキュリティソフトウェア製品及びハードウェア製品の研究開発、ネットワークサービスなどの提供
テラ 株式会社 (東京都新宿区) 東京大学 、大阪大学 、徳島大、千葉大等 がん樹状細胞ワクチン療法等の実用化
株式会社 ナノエッグ (神奈川県川崎市) 聖マリアンナ医科大学 DDS(ドラッグデリバリーシステム・薬物送達システム) 技術であるナノエッグ、ナノキューブをベースとした創薬、化粧品・医薬部外品の事業化
株式会社 バイオマーカーサイエンス (大阪府大阪市) 京都府立医科大学 疾病予防バイオマーカーによる機能性食品開発支援。薬剤応答性マーカー探索による個別医療の支援
株式会社 ペプチドリーム (東京都千代田区) 東京大学等 医薬品候補の探索等
株式会社 光コム (東京都千代田区) 東京工業大学 光コム発生器とその応用等
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ 株式会社 (山形県鶴岡市) 慶應義塾大学 CE-MS を使ったメタボローム解析及び関連事業
株式会社 ブルックマン・ラボ (静岡県浜松市) 静岡大学 CMOS 集積回路、イメージセンサの開発・設計
メカトラックス 株式会社 (福岡県福岡市) 九州大学 業務用アミューズメント機器向け 2 足歩行ロボットの開発・販売
株式会社 MECARO (秋田県潟上市) 東京大学、秋田県立大学、足利工業大学、秋田高専、工学院大学 等 風力発電システム開発・設計、制御ソフト開発・設計、電子機器・機械部品販売
株式会社 メドジェル (京都市伏見区本木材町) 京都大学 生物医学研究ツール、生体吸収性徐法 DDS 基材の開発
株式会社 モルフォ (東京都文京区) 東京大学 画像処理技術の研究開発及び製品開発並びにライセンシング

資料:平成20年度経済産業省委託調査「大学発ベンチャーに関する基礎調査」実施報告書(日本経済研究所)(平成21年3月)を基に文部科学省作成

3.TLO(技術移転機関)の状況

 「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号)に基づき、平成22年3月1日現在で47のTLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)が文部科学省・経済産業省の承認を受けている。47機関の内、30機関は株式会社や財団法人など大学外の組織(大学の子会社も含む)で、17機関は大学の学内組織である。平成17年度以降、国立大学における学内型のTLOの設置が10機関増えた。一方、広域型のTLOの設置は平成17年度以降みられない。
 TLOは、特許のライセンス、技術指導の仲介やコンサルティング、マーケティングなど、研究成果における知的財産のマネジメントを事業としている。
 学内組織であるTLOを除いた承認TLOの経営利益は、平成19年度では、34%の11機関が赤字の状況であり(※1)、年々赤字機関数が増えているなど、承認TLOの経営状況は厳しい。

4.地域イノベーションシステムの状況(※2)

 地域における科学・技術の振興については、文部科学省において、平成14年度より「知的クラスター創成事業」及び「都市エリア産学官連携促進事業」が実施され、大学等を核とした地域における産学官のネットワークの構築が進められている。その具体的な成果として、福岡・北九州・飯塚地域では、県外からの企業進出や大学発ベンチャーの起業等により、システムLSI設計関連企業が事業開始以前の平成12年度の21社から平成21年度末には189社へ拡大するなど、関連企業の集積が拡大している。富山・石川地域では、平成21年8月に、富山大学と富山県工業技術センターとの共同研究により、感染症阻止に有効な抗体を短期間で量産するシステムが開発され、同地域のバイオ・ベンチャー企業により製品化が行われるなど、研究成果を活用した事業化サイクルが生まれ始めている。
 一方で、都道府県及び政令指定都市の科学技術関係経費は、平成13年度に比較して平成20年度では約15%減少し、特に公設試験研究機関の予算は約32%減少しているが、各地域においては、新たなイノベーションの創出により、地域活性化を図るため、知的クラスター創成事業等、国の施策を活用し、成果の展開を積極的に図っている。
 地方財政は厳しい状況にあるが、今後とも国民生活の質的向上や経済社会の持続的成長の実現を図るためには、「地域」をフィールドとして、研究開発から技術実証、研究成果の事業化、社会インフラの整備、諸規制の緩和、市民意識の啓発等の取組を、国と地域が一体となって推進することが重要である。
 また、教育・研究の中核的役割を果たしている大学等においては、地域における「知」の創出と成果の展開などの地域貢献が期待されており、今後、産学官共同研究を進めるだけでなく、同一地域内の大学間の研究設備の共用促進や連携による人材育成プログラムの開発など、地域が有する知的資産の共有化とネットワーク化を進めることが必要である。


※1 科学技術・学術審議会基本計画特別委員会(第6回)「産学官連携の推進に関する参考資料」(平成21年10月1日)
※2 今後の地域科学技術振興施策の在り方について中間取りまとめ(平成21年9月)(地域科学技術施策推進委員会)

コラム6 地域における学金連携活動の状況

 産学連携学会が2009年に実施した地方銀行等を中心にしたアンケートにより、大学と連携活動を実施している金融機関は、回答した銀行の72%、信用金庫では46%になることが示された(※1)。
 連携の活動内容で多いものは、「大学への技術相談」、「ニーズ・シーズマッチング」、「セミナーの共催・開催」である。金融機関は経済や経営の専門家としての立場から大学に対して企業を紹介したり、逆に企業が必要としている技術力を得る切っ掛けになるような大学の研究室を紹介したりするなど、コンサルティングを通じて、地場産業と大学との間の橋渡しをしている状況がみられた。金融機関はこれを顧客サービスの一環ととらえている。
 一方、学金連携の目的で大学が重視しているという回答が多かったのは、「ニーズ・シーズマッチング」、「産学連携のすそ野を拡大」であった。このことから、地方銀行等が、ある種の産学連携コーディネーターとして機能していることが示された。
 さらに今後の学金連携について、「ますます拡大したい」と「現状維持」を合わせると、9割以上の銀行と信用金庫が連携を希望していることがわかった。
 課題としては、大学が1番に、銀行等が2番目に「連携を生かす人材が不足している」をあげ、銀行等が1番にあげたのは「大学の技術やシーズが理解困難」であった。
 大学の技術やシーズが分かる高度専門人材が両者の連携を生かす人材として求められている。

(4)イノベーションシステムの課題と取組

1.産学連携における企業と大学の認識の状況

 企業が大学等と共同研究をする際の実施理由として多く示されるのは、「研究開発力・技術力の向上」及び「社内にない技術知識、アイデアの活用」であり(※2) 、一方、不実施の理由では、「自社の技術領域に見合う研究相手が存在しない」および「研究開発に対する目的意識の相違」が多く回答された(第1‐2‐49図)。このことは、産学間のニーズがすれ違う等の理由により、共同研究の実施を見送っている企業が少なくないことを示している。
 一方、産学連携を活発に実施している大学に対するアンケート調査(※3)によると、共同研究等において大学側が重視する活動が平成15年から平成20年で変化していることが示された。平成20年で重視する活動として大幅に増加しているのは、「産学のニーズとシーズのマッチング活動」、「企業ニーズの把握」であった(第1‐2‐50図)。また、平成15年時点では重視の対象ではなかった「複数機関が参加するコンソーシアム型共同研究の推進」や「包括的・組織的連携の推進」を重視するという回答が大きく増加した。
 近年、異分野や異なる組織の専門家などがネットワークを形成し、様々な専門知識を連携させて共通の課題に取り組み、新たな方法論やブレークスルーを創出するイノベーションのプラットフォーム(知のプラットフォーム)を創設して、産学官(産業界・大学・研究開発型独立行政法人等)の協働により戦略を検討して研究開発を推進しようという動きが出ている。
 その事例として、世界的なナノテクノロジーの研究拠点「つくばイノベーションアリーナ」がある。世界水準のナノテクノロジー研究設備及び人材が集積するつくば市(茨城県)において、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、筑波大学が中核となり、ナノテクの産業化と人材育成を一体的に推進することが、これらの3つの中核拠点と社団法人日本経済団体連合会の連名で平成21年6月に発表された。経済産業省と文部科学省の連携により研究環境の整備を支援し、主要な企業・大学に連携網を広げ、国際的に開かれた産学官からなる融合的な研究開発拠点である。


※1 学金連携の実施把握のためのアンケート調査(平成21年4月実施)(特定非営利活動法人産学連携学会・学金連携システム研究会会長/山形大学国際事業化研究センター副センター長 小野浩幸)
※2 科学技術政策研究所 平成20年度民間企業の研究活動に関する調査報告
※3 科学技術政策研究所「イノベーションシステムに関する調査 第1部産学官連携と知的財産の創出・活用」(平成21年)

第1‐2‐49 図 企業が大学等共同研究の不実施理由

第1‐2‐49 図 企業が大学等共同研究の不実施理由

資料:科学技術政策研究所「平成20年度民間企業の研究活動に関する調査報告」

第1‐2‐50 図 大学が共同研究・受託研究で重視する活動の変化

第1‐2‐50 図 大学が共同研究・受託研究で重視する活動の変化

資料:科学技術政策研究所「イノベーションシステムに関する調査 第1部産学官連携と知的財産の創出・活用」(平成21年) 

2.新たな産学連携の推進のための体制の整備

 近年、産業界における基礎研究力の弱体化が指摘されており、今後は産学連携における基礎研究の重要性がますます高まると予想される。産学連携の対象研究領域を基礎研究レベルまで拡大することは、産業界の視点や知見を大学等で行う基礎研究での取り組みにフィードバックし、大学等に新たな基礎研究領域を形成することを促す。これにより、産業界における課題の解決に資する基礎研究が、大学等によって実施されるようになる。
 基礎研究を対象とする産学連携では、研究成果の特許化の過度な推進が、逆に自由な研究活動や研究成果の活用促進を妨げるように働く場合がある。そのため、研究目的に限って特許の無償利用を可能とする仕組み(「リサーチ・パテント・コモンズ(※1)」)を構築することが求められる。
 イノベーションの創出が特に期待される先端的な融合領域においては、大学等のシーズを核に企業との密接な協働により、基礎研究から出口志向の研究開発までを一貫して推進する産学連携システムの構築が重要である。平成18年度に創設された科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」は、企業とのマッチングファンド方式により、社会的・経済的に大きな影響を及ぼす成果を創出する研究開発を行う拠点の形成を支援するもので、産業競争力懇談会の報告書(※2)において『ブレイクスルー創出のための「場」としての機能が期待される』と記述されるなど、産業界からの期待も高い。
 また、知的財産関連の情報の有効活用を促進するために、関連する特許や文献等の様々な情報をリンクして分析する統合的な検索システムの整備など、知的財産関連の情報のネットワーク化を推進することが重要である。科学技術振興機構が平成21年度から運用を開始しているJ‐GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)は、研究開発に関連する基本情報(研究者、大学及び公的研究機関、論文、特許、研究課題、科学技術用語など)を相互に関連づけてつなげ、異分野の知や意外な発見などを支援する新しいサービスである(第1‐2‐51図)。このような情報ネットワークの利用により、だれもが簡便に新しい情報を得ることができることから、これは新たな産学連携や異分野連携の形成を促し、多くのイノベーション創出を導くと期待される。


※1 基礎研究における特許の共有地(コモンズ)を意味する(「研究成果をイノベーション創出につなげる」文部科学省、産学官連携ジャーナル,vol.6,No.3,2010)
※2 産業競争力懇談会報告書「基礎研究についての産業界の期待と責務」(2009年3月6日)

第1‐2‐51 図 J‐GLOBALの概念図

第1‐2‐51 図 J‐GLOBALの概念図

資料:科学技術振興機構 J‐GLOBAL 科学技術総合リンクセンター

コラム7 過去の産学連携活動から学ぶこと

 産学連携は実施したプロジェクトがすべて成功するとは限らない。過去の事例を分析することで得られる教訓もある。
 北海道大学は過去の産学連携の大型プロジェクトについて、大学自らが経営学などの視点を加えて分析し、「科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成事業『北大リサーチ&ビジネスパーク構想』に関する分析報告」を作成し、平成21年12月に公開した。報告書には反省点を踏まえて「大型研究プロジェクト実施に際しての留意事項十箇条」をまとめて、今後の大型プロジェクト実施に際しての指針として示した。
 特に多くの問題の背景になっていたことは、「既存の組織に新しい運営方法を導入することによる意識や価値観の対立」と分析されている。つまり、大学における過去の経験の蓄積に基づいた論理とは異なる論理で産学連携プロジェクトを実施しなければならないにもかかわらず、価値観の対立で対応できなかったということである。

  • 大学における長期展望に立って継続的に実施するという論理と、プロジェクトにおける相対的に短い期間で成果を達成するという論理の対立
  • 大学の伝統的な意思決定プロセスである合議あるいはボトムアップと、リーダーがミッションを明確に示すトップダウンとの対立
  • 大学における研究資金や人材などの資源を公平に配分する慣行と、ミッションが明確なプロジェクトにおいて傾斜的及び集中的に資源を配分する必要性の間の対立
  • 既存の秩序を前提としてマネージするマネージャーの論理と、既存の秩序を疑い、必要ならば破壊するリーダーの論理との対立 など

 どちらの論理を優先させるかというルールの明確化やハイブリットなメカニズムを組み込むなどを事前にしておく必要性を提唱している。
(http://mm.general.hokudai.ac.jp/information/info_548/HURBP-followup09-all_Jpn.pdf)

2 研究開発法人に係る新たな制度

(1) 研究開発法人の役割

 研究開発法人は、民間企業や大学と並ぶ主要な研究開発実施機関であり、平成20年に施行された「研究開発力強化法」(※1)においては、研究開発や公募による研究開発、科学技術に関する啓発及び知識の普及に係る業務を行う独立行政法人のうち重要なものと定義されている。その設置目的、沿革、機能は様々であるが、民間や大学等だけでは実施が困難な、科学技術基本計画等の国の戦略に基づく研究開発を行い、我が国の科学・技術水準を向上させるとともに、イノベーションを推進する上で重要な役割を担っている。
 具体的には、我が国の社会・経済にとって大きな波及効果が見込まれるものの、その長期性、リスク、非営利性等から民間その他の主体に委ねることが困難な研究開発、政策課題に応じた研究資金の配分、先端研究施設・設備の整備・運用・共用、人材の育成、科学・技術に関する情報・資料の収集・蓄積、研究成果の社会還元、あるいは科学・技術コミュニケーション活動に係る業務等を行っている。平成22年4月現在で38法人が設置されている(※2)。
 研究開発法人が行うべき上記のような研究開発としては、例えば、国家基幹技術の研究開発の推進が挙げられる。国家基幹技術とは、第3期科学技術基本計画において、国家の総合的な安全保障の観点も含め経済社会上の効果を最大化するため、国家的な大規模プロジェクトとして基本計画期間中に集中的に投資すべき基幹技術であり、「宇宙輸送システム」(宇宙航空研究開発機構)、「海洋地球観測探査システム」(海洋研究開発機構)、「高速増殖炉サイクル技術」(日本原子力研究開発機構)、「次世代スーパーコンピュータ」(理化学研究所)、「X線自由電子レーザー」(理化学研究所)が選定されている。
 このような、国益につながる競争力の確保、国の主権の強化、国の安全確保等のために長期的視点で実施される研究開発は、いわば広義の安全保障に貢献するものであり、今後ともその必要性は高まると考えられる。これらの実施主体として、研究開発法人は、研究資金や人的資源を集中的・計画的に配分しており、産業界や大学等とも協力しながら、長期的な観点から技術開発を進めている。
 例えば平成21年度は、国際宇宙ステーション計画での我が国の貢献が脚光を浴びたが、宇宙航空研究開発機構が開発した日本実験棟「きぼう」が完成し、その組立てには日本人宇宙飛行士が活躍するとともに、今後の宇宙ステーション計画において必須となる物資補給のための宇宙ステーション補給機(HTV)と新型ロケット(H‐ⅡB)を開発し、成功させた。ここに至るまでには、20年以上の長期にわたり、時には失敗を乗り越え計画の見直しを行いながらも、関係者の叡智を結集して最先端技術を生み出してきた(第1‐2‐52表)。
 また、国家基幹技術のうち海洋研究開発機構が担う「海洋地球観測探査システム」では、これまで地球シミュレータの運用の本格化や地球深部探査船「ちきゅう」の運用の開始により、海洋を中心とした地球システムの解明を目指し、地球環境観測及び予測研究、地球内部ダイナミクス研究、海洋・極限環境生物研究の各分野において成果を上げてきた。


※1 「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年6月11日法律第63号):国による研究資金等の配分から、研究成果の展開に至るまでの研究開発システム改革により、公的研究機関、大学、民間も含めた国全体の研究開発力を強化し、イノベーションの創出を図ることで、我が国の競争力を強化することを目的とする。1.研究開発等の推進のための基盤の強化、2.競争の促進等、3.国の資金により行われる研究開発等の効率的推進等、4.研究開発の成果の実用化の促進等、に関して必要な事項等を定めている。
※2 沖縄科学技術研究基盤整備機構、情報通信研究機構、酒類総合研究所、国立科学博物館、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、放射線医学総合研究所、科学技術振興機構、日本学術振興会、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構、海洋研究開発機構、日本原子力研究開発機構、国立健康・栄養研究所、労働安全衛生総合研究所、医薬基盤研究所、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター、農業・食品産業技術総合研究機構、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、国際農林水産業研究センター、森林総合研究所、水産総合研究センター、産業技術総合研究所、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構、土木研究所、建築研究所、交通安全環境研究所、海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所、国立環境研究所

第1‐2‐52 表 国際宇宙ステーション計画及び関連する宇宙輸送システムの開発経緯(~平成21年度)
年月 内容
昭和57年(1982年)6月 <米国航空宇宙局(NASA)が日本政府に対して宇宙ステーション計画への参加を要請>宇宙開発事業団(当時)を中心に技術的検討を開始
59年(84年)1月 <米国政府が宇宙ステーション計画を正式決定>
3月 日本政府が米国政府に対して正式決定された宇宙ステーション計画についての関心を表明
60年(85年)8月 日本人初の宇宙飛行士(搭乗科学技術者)3名(毛利、向井、土井)を選抜
61年(86年)1月 <スペースシャトル・チャレンジャー号事故発生>
平成元年(89年)6月 宇宙ステーション政府間協力協定の国会承認
日本の実験棟(JEM)の開発に本格的に着手
4年(92年)9月 毛利宇宙飛行士が日本人初のスペースシャトル搭乗
6年(94年)1月 純国産大型ロケットのH-Ⅱロケット1号機打上げ
3月 JEMフライト実機の製作に着手
10年(98年)4月 宇宙ステーション政府間協力新協定の国会承認
11月 <国際宇宙ステーション(ISS)の組立て開始>
11年(99年)4月 JEMの愛称を「きぼう」と決定
11月 H-Ⅱロケット8号機打上げ失敗
12年(00年)11月 <ISS長期滞在開始>
13年(01年)8月 主力大型ロケットのH-ⅡAロケット1号機打上げ
12月 <NASAがISS計画の規模縮小を決定>
15年(03年)2月 <スペースシャトル・コロンビア号事故発生>
10月 宇宙航空研究開発機構発足(宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団を統合)
11月 H-ⅡAロケット6号機打上げ失敗
17年(05年)7月 <スペースシャトルの飛行再開>
9月 日本の生命科学実験施設の開発を中止
20年(08年)3月 「きぼう」船内保管室打上げ(土井宇宙飛行士搭乗)
6月 「きぼう」船内実験室打上げ(星出宇宙飛行士搭乗)
21年(09年)3月 若田宇宙飛行士が日本人初のISS長期滞在
7月 「きぼう」船外実験プラットフォーム打上げ
9月 新型ロケットのH-ⅡBロケット試験機による宇宙ステーション補給機(HTV)打上げ
12月 野口宇宙飛行士がISS長期滞在

資料:文部科学省作成

 このほか、研究開発法人が担っている役割には、世界最先端の研究施設・設備を開発し、その整備・運用と幅広い共用等の推進に係る業務がある。大型放射光施設(SPring‐8)や大強度陽子加速器施設(J‐PARC)といった多額の経費を要する世界最先端の研究施設・設備については、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成6年法律第78号)に基づき、これまで研究開発法人を中心に整備・運用が進められ、科学・技術の広範な分野で国内外の多様な研究者により活用されることで、優れた研究成果が創出されてきた。今後も、複数の機関が共同して利用することが適当な先端的・基盤的研究施設・設備を整備し、その共用を促進していくことがより一層重要になると考えられる。

第1‐2‐53 図 SPring‐8における利用研究課題の実数の推移と利用機関の内訳

第1‐2‐53 図 SPring‐8における利用研究課題の実数の推移と利用機関の内訳

注:「利用機関の内訳」は、各課題における代表者の所属機関の内訳である。
資料:財団法人高輝度光科学研究センター提供

(2)研究開発法人に係る新たな制度の在り方

 上述のように、研究開発法人は、我が国の科学・技術の振興において極めて重要な役割を有しており、その制度の在り方については、「研究開発力強化法」及びその附帯決議において、研究開発の特殊性、優れた人材の獲得、国際競争力の確保等の観点から、最も適切な研究開発法人の在り方について3年以内(平成23年10月)に必要な措置を講じることとされている。
 現在、研究開発法人に係る新たな制度の在り方を含め、関係各府省による検討が進められているが、研究開発法人は、国際的な競争環境の下、研究開発の特性(競争性、不定型であること、予見不可能性、不確実性、長期性、高度の専門性、分野融合や重複競争の必要性等)を踏まえたグローバル基準のマネジメント(運営)が必要であるとの方針が示されている。具体的には、「国立研究開発機関」(仮称)制度の創設とともに、国際的な水準を踏まえた給与人事システムの構築、研究開発の特性に応じた予算執行の柔軟化、外部資金の獲得や施設共用の促進、府省を超えた取組の推進等によるマネジメント改革、外部意見の取入れや監査機能の強化、グローバルな視点を取り入れた評価の実施等によるガバナンス(統治)改革などについて提言(※1)された。


※1 研究開発を担う法人の機能強化検討チーム中間報告(平成22年4月)

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科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年08月 --