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平成21年版科学技術白書 第2部 第3章 第3節

第3節 科学技術振興のための基盤の強化

1  施設・設備の計画的・重点的整備

(1) 国立大学等の施設の整備

 国立大学等の施設は、独創的・先端的な学術研究や創造性豊かな人材育成のための活動拠点であり、世界一流の優れた人材の育成や創造的・先端的な研究開発を推進し、科学技術創造立国を目指す我が国にとって不可欠な基盤である。
 文部科学省では、基本計画を受け、平成18年度~平成22年度の5年間で緊急に整備すべき施設を盛り込んだ「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(以下「5か年計画」という。)を平成18年4月に策定し、国立大学等施設の重点的・計画的整備を推進している(第2‐3‐21図)。

第2‐3‐21図 第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成18~22年度)

第2‐3‐21図 第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成18~22年度)

 5か年計画は、老朽化した施設の再生を最重要課題とし、併せて施設の狭隘(きょうあい)化の解消を図ることで、優れた人材の養成の基盤となる施設や、世界水準の先端的な研究等を行う卓越した研究拠点などの再生を図ることとしている。国立大学等において緊急に整備が必要な約540万㎡を整備目標としており、平成20年度までに約303万㎡の整備を行っている。
 さらに、施設の整備と併せて、施設の効率的・弾力的利用等を目指した施設マネジメントや寄附の受入れによる施設整備等の新たな整備手法による整備等のシステム改革を一層促進することとしている。
 また、平成21年2月に5か年計画後の施設整備のあるべき姿についての調査研究に着手し、今後の施設整備の在り方について中長期的な対応方策を含む基本的な考え方を取りまとめていくこととしている。

(2) 国立大学等の設備の整備

 基礎研究を推進していくためには、その基盤となる研究設備の整備充実が必要不可欠である。国立大学法人等における研究整備については、科学技術・学術審議会の下に設置された学術研究設備作業部会において、「国公私立大学を通じて学術研究設備の充実を図る」ための検討が行われ、平成17年6月に報告書が取りまとめられた。
 これを受けて、国としては、国立大学法人等の設備マスタープランに基づく中・長期的な視野の下で計画された研究基盤としての設備や、特色ある研究の推進に必要な設備の整備への取組に対して、より効果的な支援の充実を図っている。

(3) 私立大学の施設・設備の整備

 我が国にとって、学術研究の高度化等を推進するための施設や設備等の研究環境を整備することは極めて重要である。私立大学は、我が国の高等教育の約8割を占め、多様な研究者を有するとともに、特色ある研究活動を積極的に展開するなど、高等教育の発展に大きな役割を果たしており、今後、ますます期待が寄せられているものと考えている。このような状況を踏まえ、優れた研究プロジェクトに対し研究施設・設備等の一体的な支援を行う「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」を推進し、私立大学の研究基盤の強化を図っている。

(4) 研究開発施設等の整備・共用の促進

 科学技術振興のための基盤である研究開発施設及び設備(以下、研究開発施設等という。)は基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支えるために不可欠であるため、それらの整備や効果的な利用を図る必要がある。また、平成20年6月に成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法律第63号)(研究開発力強化法)おいても、独立行政法人・大学等が保有する研究開発施設等の共用の促進を図るため、国が必要な施策を講じる旨が規定されている。
 そのため、文部科学省では、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成6年法律第78号)(以下、「共用法」という。)で規定する特定先端大型研究施設[次世代スーパーコンピュータ、大型放射光施設(SPring‐8)、X線自由電子レーザー(XFEL)施設]の施設整備や共用のための必要な経費の支援等を通じて、産学官の研究者等による共用を促進している。また、大強度陽子加速器施設(J‐PARC)の中性子線施設についても、新たに特定先端大型研究施設として位置付けるために、第171回通常国会に共用法の改正案を提出している。
 そのうち、SPring‐8おいては、平成20年度に、登録施設利用促進機関である財団法人高輝度光科学研究センターにより、共用ビームライン利用研究課題約1,400件が採択され、「植物ホルモン“ジベレリン”の信号の受容体の原子構造を世界で初めて決定」や「45億年前の太陽系でおこった大規模な物質移動を示唆する物的証拠を世界で初めて発見」等の大きな成果を上げてきている。
 また、文部科学省では、特定先端大型研究施設以外のその他の独立行政法人・大学等が保有する研究開発施設等の共用を促進するために、平成19年度より「先端研究施設共用イノベーション創出事業」を実施している。また、これらの施設等の共用を促進し、成果を創出するためには、その利用に係る基本的な情報(所在地、利用用途、利用可能時間等)が不足していることを踏まえ、インターネットを通じた総合窓口として「共用ナビ」(研究施設共用総合ナビゲーションサイト)を開設している(第2‐3‐22図)。

第2‐3‐22図 「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の実施機関

第2‐3‐22図 「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の実施機関

2 知的基盤の整備

 研究開発等の安定的・効率的な推進のためには、実験、計測、分析、評価等といった研究開発の基本となる活動を支える材料、標準、手法、装置等の質・量両面での安定供給及び安全性・信頼性の確保等が必要である。このため、知的基盤[生物遺伝資源(バイオリソース)等の研究用材料、計量標準、計測・分析・試験評価方法やそのための先端的なツール、データベース]の整備を体系的に推進する必要があり、第2期科学技術基本計画において、平成22年(2010年)までに世界最高の水準を目指して整備を促進することとされたことを踏まえて、平成13年8月に科学技術・学術審議会において、「知的基盤整備計画」を策定した。
 その後、第3期科学技術基本計画において、量的観点のみならず質的観点を指標とした整備を行うよう「知的基盤整備計画」を見直し、平成22年(2010年)年に世界最高水準を目指して重点整備することや、知的基盤の各領域について、中核的なセンターの体制構築の必要性が位置付けられた。これを受け、平成19年9月に、科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会において、戦略目標への質的観点の取入れや中核的な役割を担う機関等の位置付けなどの事項の付加について取りまとめた。また、研究開発力強化法においても、独立行政法人・大学等が保有する知的基盤の供用の促進を図るため、国が必要な施策を講じる旨が規定された。
 文部科学省においては、ライフサイエンス分野の研究を支えるため、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」や「統合データベースプロジェクト」を実施している(第2部第2章第2節1(4)参照)。
 計測・分析・試験評価方法やそのための最先端の技術や機器を独自に研究開発していくことは、それらが研究開発活動を支える基盤であるばかりでなく、その研究開発自体が多くのノーベル賞を受賞していることからも分かるように、我が国が科学技術で世界のフロントランナーとしての役割を果たしていくためには極めて重要な課題である。しかしながら、我が国の先端計測・分析機器の海外依存割合は高く、ほとんどを海外企業に依存している(第2‐3‐23図)。このような状況を踏まえ、世界最先端の研究者ニーズやものづくり現場にこたえられるオンリーワン/ナンバーワンの計測分析技術・機器開発を推進する先端計測分析技術・機器開発事業を実施している。平成20年度は、実用化に向けた取組を強化するために、世界トップレベルのユーザーとのプロトタイプ機の性能実証や応用開発も推進している。

先端計測分析機器(三次元眼底断層撮像装置)

先端計測分析機器(三次元眼底断層撮像装置)
光により、生体の内部構造を生きたままで非侵襲計測する断層映像装置
写真提供:科学技術振興機構

第2‐3‐23図  主な先端計測・分析機器の国内・国外企業別販売高(平成19年度)

第2‐3‐23図  主な先端計測・分析機器の国内・国外企業別販売高(平成19年度)

 厚生労働省においては、ライフサイエンス、特に医学・薬学分野における研究に必要なヒト及び動物由来の培養細胞及び遺伝子の収集・保存を行うマスターバンクを医薬基盤研究所に設置するとともに、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団を通じ研究者等に対する供給を行っている。また、ヒト組織について、平成10年12月16日厚生科学審議会先端医療技術評価部会(答申)「手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方について」を踏まえ、生命倫理問題にも配慮しながら、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団が、医療機関の協力を得て、研究利用に係る同意の得られた組織を収集し、必要な研究者に分譲する事業を実施している。このほか、医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターにおいて、良質な資源の確保が難しくなってきている薬用植物について、同一形質を持つクローン植物の増殖(マイクロプロパゲーション)技術の研究を行うとともに、薬用植物資源の体系的な収集、保存及び提供を行っているほか、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターにおいて、カニクイザル等の繁殖、共同利用施設を利用する国内の研究者に研究用サルの供給を行っている。
 農林水産省では、ジーンバンク事業として農林水産業に関する植物、動物、微生物、林木、水産生物等の生物遺伝資源を収集、分類・同定、特性評価、増殖及び保存するとともに、これらの遺伝資源及び特性情報を独立行政法人試験研究機関、民間企業、大学等に提供している。また農業生物資源研究所ではゲノムリソースセンターを設置し、我が国が中心となって解読したイネゲノムの全塩基配列データをはじめとするイネゲノムデータベースや、データを利用するためのツール類を整備し、国内外の民間企業・大学等へ提供している。さらに「農林水産生物ゲノム情報統合データベース」については、このイネゲノム情報に加え、カイコ、ブタ等農林水産物のゲノム情報を統一的に運用できるデータベースを整備するとともに、他生物ゲノム情報等とのリンクによる高精度情報検索システムの構築を行うことで、保有するデータベースの利便性の向上に取り組んでいる。
 経済産業省では、産業構造審議会産業技術分科会及び日本工業標準調査会の合同会議である知的基盤整備特別委員会において、毎年知的基盤整備目標の見直しを行っている。計量標準の整備については、産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ(1))が、国家計量標準機関として計量標準の整備・拡充を行うとともに国際相互承認に向けた取組を行っており、NMIJが開発したものを中心に、平成20年度末までに物理標準291種、標準物質270種の標準が整備されている。また、平成13年度より平成20年度までの計画で遠隔校正のための研究開発を新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究開発として実施している。
 生物遺伝資源情報基盤については、製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源保存部門において、平成19年度には約5,000件の微生物を新たに収集・保存(微生物株総計約4.5万件)し、それらを分譲するとともに、国内の主要な生物遺伝資源機関のデータベースを統合し運営・管理主体として公開している。また、生物遺伝資源開発部門においては、生物多様性条約にのっとり、アジア諸国と覚書きを締結し協力体制を構築し、共同で微生物探索を行うなど、微生物資源の利活用を図っている。ゲノム解析部門においては、生物遺伝資源の利活用を促進するため、産業上有用な微生物7菌について塩基配列を確定するとともに、ヒトインフルエンザの遺伝子解析を行っている。特許微生物寄託センターにおいては、特許に係る微生物、動物細胞及び受精卵の受託と分譲を行っている。さらに、微生物資源の共同管理・利用を目的とした世界初のアジア地域における政府レベルでの多国間協力の枠組みである「微生物資源の保存と持続可能な利用のためのアジア・コンソーシアム」において、統合データベース構築により参加各国の微生物株情報のネットワーク化を推進するほか、微生物の移転に関する共通指針を作成するタスクフォースを新たに設置するなど、アジア諸国における生物遺伝資源有効活用の基盤整備や利用に関する国際的ルールづくりへの貢献も行っている。また、産業技術総合研究所では、ヒト遺伝子・タンパク質データベースを新たに公開するとともに糖鎖関連遺伝子データベースにレクチンデータベース、グライコプロテインデータベースを追加するなどゲノム情報及びプロテオーム情報を用いたデータベース整備を行うとともに、同研究所特許生物寄託センターにおいて特許に係る微生物及び動植物細胞の受託・分譲等を行っている。
 化学物質安全管理基盤の整備としては、化学物質のハザード(有害性)データの収集・整理、それらの安全性の評価を的確に実施するための簡易・代替試験方法、内分泌かく乱物質のスクリーニング試験方法等の開発を行うとともに、新エネルギー・産業技術総合開発機構で化学物質のリスク評価手法開発等の研究開発も行っている。
 人間生活・福祉関連基盤の整備については、製品評価技術基盤機構において、製品の安全で使いやすい設計に資する基本人間特性にかかわるデータの充実・更新、維持管理を行うとともに、福祉用具の機能や性能に関する評価手法の開発等を行っている。
 産業技術総合研究所では、地質情報について、平成20年度に新たに8種類の地質図幅を作成するなど地質の調査を推進している。また、また、既出版の各種の地質図類を統合表示する「統合地質図データベース(GeoMapDB)」など、これまで地質情報にかかわる様々なデータベースを整備・更新してきている。そのほか、材料データベースの高度化に関する開発等を行っている。研究情報公開データベース(RIO‐DB)としてオージェ電子分光標準スペクトルを新たに公開し、糖鎖関連遺伝子データベースのほか、有機化合物のスペクトルや分散型熱物性など80種類余りの各種データベースを整備・更新している。
 国土交通省においては、「地理空間情報活用推進基本法」に基づく「地理空間情報活用推進基本計画」(平成20年4月閣議決定)の主要施策である「基盤地図情報」(2)を整備・提供している。また、地理空間情報の活用に関する調査研究の実施等を行っている。
 なお、各府省による知的基盤の保存・供給施設の整備状況については第2‐3‐24表のとおりである。


1 NMIJ:National Metrology Institute of Japan

2 基盤地図情報:電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となるもの

第2‐3‐24表 知的基盤の主な整備状況  

府省名 開始年度 整備機関名 供給・保存する知的基盤
総務省 昭和15年 情報通信研究機構 周波数国家標準、標準時
文部科学省 昭和55年 理化学研究所 微生物系統
平成9年 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所
生物遺伝資源情報総合センター 
生物遺伝資源データベース
平成9年 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所
系統生物研究センター 
マウス、イネ、大腸菌
平成9年 東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センター 医用細胞
平成9年 岡山大学資源生物科学研究所大麦・野生植物資源研究センター 大麦・野生植物
平成9年 九州大学農学研究院遺伝子資源開発研究センター カイコ
平成10年 熊本大学生命資源研究・支援センター 遺伝子改変動物
平成11年 京都工芸繊維大学ショウジョウバエ遺伝資源センター ショウジョウバエ
平成12年 理化学研究所 高等動植物の培養細胞・遺伝子
平成13年 筑波大学生命科学動物資源センター 遺伝子改変動物
平成14年 ナショナルバイオリソースプロジェクト参画機関
(理化学研究所等) 
マウス、シロイズナズナ、ES細胞等
厚生労働省 大正11年 医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター 薬用植物の種子、培養細胞等
平成17年 医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター 霊長類
平成17年 医薬基盤研究所 遺伝子(バンク)
平成18年 医薬基盤研究所 細胞(バンク)
農林水産省 昭和60年 農業生物資源研究所等 植物、微生物、動物遺伝資源
昭和60年 森林総合研究所 林木遺伝資源
昭和60年 水産総合研究センター 水産生物遺伝資源
平成7年 農業生物資源研究所等 DNA
平成15年 農業生物資源研究所イネゲノムリソースセンター イネ突然変異系統、cDNA等
経済産業省 明治15年 産業技術総合研究所地質調査総合センター 地質情報(20万分の1全124図幅の約96%、及び5万分の1地質図全1274図幅の約74%等) 
明治36年 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準(物理標準291種、標準物質270種)
平成5年 製品評価技術基盤機構 有用微生物、そのゲノム情報、DNAクローンなど生物遺伝資源(微生物約4万株、DNAクローン約4万クローン)
平成8年 製品評価技術基盤機構 化学物質総合管理情報 約4,600物質
国土交通省 昭和45年 港湾空港技術研究所 全国港湾海洋波浪情報網による我が国沿岸における波浪・津波観測情報
昭和37年 港湾空港技術研究所 沿岸域の強震観測情報
環境省 昭和58年 国立環境研究所 微生物系統及び絶滅危惧(きぐ)種藻類(約2,000株)

 3 知的財産の創造・保護・活用

 独創的かつ革新的な研究開発成果を生み出し、それを社会・国民に還元するためには、知的財産の創造・保護・活用という知的創造サイクルの活性化が不可欠であり、そのための主体的かつ多様な取組を推進している。
 総合科学技術会議では、知的財産と密接に関連する科学技術を巡る動向として、オープンイノベーションやiPS細胞等の革新的技術を踏まえた知的財産戦略の検討を行い、「先端医療分野における適切な知的財産保護のあり方について直ちに検討を開始し早急に結論を得る」等の各種提言を盛り込んだ「知的財産戦略」を平成20年5月に決定し、関係大臣に意見具申した。

(1) 大学等における知的財産体制等の整備

 平成15年度から5年間実施された大学知的財産本部整備事業により、大学等における知的財産の機関一元管理の体制や知的財産ルールの策定など知的財産に関する整備が進み、大学等における特許出願件数や実施件数は年々増加しており、知的財産本部は、大学等において産学官連携を支える組織として重要な役割を担いつつある(第2‐3‐25表)(第2‐3‐26図)。また、事業終了後に科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会大学知的財産本部審査・評価小委員会において取りまとめた事業評価結果報告書では、一部の大学において、組織的な産学官連携活動を推進する体制の整備が進み、事業化支援、人材育成、技術指導等、多面的な産学官連携活動を行う体制へと移行する動きも見られた。このため、平成20年度より、大学等の戦略的な知的財産活動を支援する産学官連携戦略展開事業を開始し、大学等の研究成果の円滑な社会還元を促進している(第2‐3‐27図)。

第2‐3‐25表 知的財産の管理活用体制(大学知的財産本部等)の整備状況(平成19年度)

第2‐3‐25表 知的財産の管理活用体制(大学知的財産本部等)の整備状況(平成19年度)

※上段(  )書きは前年度実績

第2‐3‐26図 大学等における知的財産の創造・保護・活用

(1)大学等における特許出願件数

(1)大学等における特許出願件数

(2)大学等における特許保有件数

(2)大学等における特許保有件数

(3)大学等における特許実施件数

(3)大学等における特許実施件数

第2‐3‐27図  「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」実施機関 地域別分布

第2‐3‐27図  「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」実施機関 地域別分布

 経済産業省では、従来から、承認TLOに対する技術移転事業の立ち上げ及び大学研究成果に係る外国特許取得の支援を実施するとともに、平成20年度から、組織間の連携強化や一体化等を促進するとともに大学研究成果の戦略的な実用化・事業化を遂行する広域TLOに対する支援を実施している。

(2) 知的財産活動の推進

 大学等が優れた知的財産について適切に権利を取得し活用していくことができるよう、文部科学省では科学技術振興機構の実施する技術移転支援センター事業により海外特許出願関連の支援を行っている。
 また、質の高い優れた研究成果が得られるよう、科学技術振興機構では、様々な研究開発支援情報及び研究成果情報をデータベース化し、インターネットを通して広く情報提供を行っている。
 具体的には、大学等の公的研究機関に関する機関情報、研究者情報、研究課題情報、研究資源情報をデータベース化した情報提供システム(ReaD)や、大学等の公的研究機関で得られた研究成果を、関連の特許と併せてデータベース化した情報提供システム(J‐STORE)、インターネットを用いて大学等が公開している技術シーズ情報集の一元的な検索と企業による研究者等への直接アクセスを可能とするシステム[e‐seeds.jp(イーシーズ)]がある。
 経済のグローバル化や、イノベーションのオープン化が進展する中にあって、特許庁ではイノベーションを促進する新たな知財システムの構築に取り組んでいる。
 まず、急増する世界の特許出願への対応として、1つの発明がグローバルかつ効率的に特許として保護されるよう、特許制度の国際調和や特許審査における国際的なワークシェアリングを推進している。その取組として、最初に特許出願が成された国で特許可能と判断された出願について、他国において簡易な手続で早期に審査が受けられる制度である「特許審査ハイウェイ(PPH)」を米国・韓国・イギリス・ドイツ・デンマークとの間で実施し、国際会議などを通じて、ネットワークの更なる拡大を図っている。
 加えて、特許の権利化のタイミングに対する出願人の多様なニーズにこたえるため、重要性の高い出願について、申請から1か月以内に一次審査を行うスーパー早期審査制度を創設し、平成20年10月1日から試行を行っている。近年の企業活動のグローバル化や、東アジア諸国・地域の急速な追い上げ、模倣品問題等を背景として、我が国企業における知的財産戦略にも変革が求められている。特許庁では、企業の経営者等との意見交換を積極的に進め、グローバルな観点での企業の戦略的な知財管理の充実やその体制整備を慫慂(しょうよう)することをはじめ、更なる先行技術調査環境の充実、企業の知財戦略策定に資する情報提供を行っている。
 また、大学等における知的財産活動については、近年活発化しているものの、その実効性を高めるため、重要な発明については海外でも積極的に権利を取得するとともに、取得した権利の活用を図るといった特許戦略の構築に向けた取組が重要となっている。
 農林水産省では、平成19年3月に「農林水産省知的財産戦略」を策定し、研究開発分野については、新需要・新産業創出、農林水産知的財産ネットワークの構築及び知的財産実務者の人材育成等を推進している。また、「農林水産研究知的財産戦略」に基づき平成20年度から競争的研究資金の審査項目に知的財産の観点を新設し評価を実施している。このほか、試験研究独立行政法人の研究成果の産業界における実用化を図るため、「農林水産技術移転促進事業」を通じ、農林水産大臣認定TLOの活動を支援している。
 特許庁では、工業所有権情報・研修館を通じて、これから知的財産管理体制を構築する大学に「大学知的財産アドバイザー」を派遣し、大学独自の知的財産管理体制の構築を促している(平成20年度は24大学に派遣)。さらに、大学等が取得した特許であって他者の実施に供する意思のあるもの(開放特許)が中小・ベンチャー企業等において有効に活用されるよう、技術移転機関(TLO)や自治体等に対し、特許流通アドバイザーを派遣して(平成21年3月現在106名)両者のマッチングを図っている。また、開放特許の情報を特許流通データベースを通じて広く公開するとともに、ライフサイエンス分野のリサーチツール特許等の円滑な使用を促すため、リサーチツール特許データベースを構築した(1)。
 一方、研究開発を進める上で知的財産の視点が重要になってきており、周辺技術も含めた知的財産の確保が大切である。そのため、研究開発の政策立案等の段階においても特許情報を研究開発戦略に活(い)かす等、知的財産政策と研究開発との連携が求められている。
 特許庁では、第3期科学技術基本計画における重点推進4分野、推進4分野を中心に調査テーマを選定し、「研究開発動向」「市場動向」等を踏まえて「特許出願動向」を総合的に分析した技術動向の調査を行っており、企業や大学等における研究・技術開発や特許戦略の構築に資するため、その結果を公表している。
 さらに、工業所有権情報・研修館を通じ、企業・大学等が優れた研究成果を質の高い特許として権利取得し活用していけるように、インターネット上で特許情報等の検索・閲覧を可能にする特許電子図書館(IPDL)の整備、運用を行っている。特許電子図書館では、毎年、ユーザーの利便性向上やサービスの拡充を図っており、平成20年度には、一部のサービスに実装されている文献単位PDFダウンロード機能を特許・実用新案検索サービスすべてに追加等を行った。平成18年5月23日には、総合科学技術会議において、我が国の知の創造拠点である大学等が知的財産権を円滑に使用し、自由な研究活動を推進するため、「大学等における政府資金を原資とする研究開発から生じた知的財産権についての研究ライセンスに関する指針」が取りまとめられた。また、先端技術分野であるライフサイエンス分野における研究開発を促進し、その成果をイノベーションにつなげ、我が国の国際競争力を向上させるため平成19年3月1日には、総合科学技術会議において、遺伝子改変動物やスクリーニング方法等、ライフサイエンス分野における研究を行うための道具となるリサーチツール特許に関し、これらが大学等や民間企業の研究において円滑に使用されるための基本的な考え方を示す「ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用の円滑化に関する指針」が取りまとめられた。


1 「リサーチツール特許データベース」は、「ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許等に係る統合データベース」を構成する主要データベースであって、リサーチツール特許及びその特許に係る有体物が登録されている。

4 標準化への積極的対応

 情報通信審議会の答申「我が国の国際競争力を強化するためのICT研究開発・標準化戦略」(平成20年6月)を受けて、我が国のICT分野の国際標準化に係る取組を総括する拠点として「ICT標準化・知財センター」が7月に設立された。当該センターにおいては、標準化動向などの分析や、標準化人材の育成計画の検討等が行われている。
 総務省では、研究成果が国際標準に反映されるなど将来的に国際競争力の強化に資することを条件とした公募研究として「国際競争力強化型研究開発」を実施しており、平成20年度は2件を新規に採択した。さらに、ITU(1)においては、ユビキタスネット社会の実現に不可欠な基盤技術であるNGN(2)やホームネットワーク、IPTV(3)等の標準化に貢献するとともに、アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP(4))を通じてアジア諸国との標準化活動の連携を強化し、ITUに対する国際標準の共同提案を推進している。
 経済産業省では、我が国発の技術を核とした国際標準を戦略的に獲得していくために、国際標準化戦略目標を設定するとともに、研究開発と標準化の一体的推進を図るため、研究開発プロジェクトにおける標準化戦略の明確な位置付けを促進しつつ、ナノテクノロジー、ロボット、光触媒等我が国が優位にある分野を中心に重点的に推進すべきテーマを選定し、積極的な国際標準化活動を展開している。また、新技術等の開発・普及を促進する観点から、「基準認証研究開発事業」において、「MEMS(5)デバイス機構材料の特性計測評価方法に関する標準化」など、標準化のための研究開発を柱とした規格開発を45テーマ(平成20年度現在)実施しており、新エネルギー・産業技術総合開発機構においても、研究開発成果を確実に国際標準につなげるためのフォローアップ研究事業を実施している。
 標準化に関する人材育成については、広く大学(学部、大学院)及び企業の教育現場においての活用を目的とした「標準化」の教材の開発や、国際標準化活動において活躍できる標準専門家育成に関する研修を実施している。


1 ITU:International Telecommunication Union

2 NGN:Next Generation Network

3 IPTV:Internet Protocol Television

4 ASTAP:Asia‐Pacific Telecommunity Standardization Program

5 MEMS:Micro Electro Mechanical Systems

5 研究情報基盤の整備

 研究情報基盤は研究活動に不可欠ないわば生命線としての性格を有するとされており、情報通信技術の急速な進展に対応して、研究情報基盤の整備を進めることは、我が国の研究開発の国際競争力を確保する上で重要である。このため、政府は具体的取組として、研究機関間のネットワークの整備・高度化、データベースの構築・提供等を進めている。

(1) ネットワークの整備

 現代社会の基幹システムを構成しているコンピュータネットワークは研究開発の現場において開発された後、様々な分野に応用されてきたものであり、先端的な研究開発を進めるに当たりネットワークの性能の一層の向上が求められている。
 総務省では、情報通信研究機構が運営する最先端の研究開発テストベッドネットワーク(JGN2plus(1))により、我が国の技術力の向上、産学官連携の強化、新ビジネスや新産業の創出、地域における情報化推進、ICT人材育成等、幅広い波及効果を目的として、情報通信分野における研究開発や実証実験を推進している。
 文部科学省では、国立情報学研究所が大学等の研究者が必要とする学術情報を流通させるための基幹的ネットワークとして、最速40Gbpsの回線で接続する世界最速レベルの学術情報ネットワーク(SINET3(2))を構築・運用しており、平成21年3月末現在で707機関が接続している。
 農林水産省では、農林水産関連の研究機関を相互に接続する農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN(3))を構築・運営しており、平成21年3月末現在で94機関が接続している。MAFFINはフィリピンと接続しており、海外との研究情報流通のバックボーンともなっている。

(2) データベースの構築・提供

 閲覧・複写・貸出等による論文等の原文献(1次情報)の提供サービスは、図書館のほか、様々な情報サービス機関において行われている。また、コンピュータを利用して抄録・索引等(2次情報)をデータベース化することにより、増大する情報の迅速、正確かつ容易な検索が可能となっている。
 1次情報のデータベース化については、我が国で発行されるすべての出版物が納本される国立国会図書館において、収集・保管資料に関するデータベースが作成され、オンラインで提供されている。
 文部科学省では、国立情報学研究所が全国の国公私立大学等の協力を得て、大学図書館等が所蔵している学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供しているほか、学術研究に関するデータベースを作成し提供している。
 科学技術振興機構では、平成21年3月から、国内外の科学技術文献、特許、研究者等に関する基本情報のデータベースを整備し、各情報を関連付けて提供するサービス(J‐GLOBAL)の提供を開始した。また、科学技術文献の日本語抄録等を作成してデータベースを整備し、インターネットを通じて有料で文献情報検索サービス(JDreamⅡ(4))の提供等を行っている。
 農林水産省では、国内で発行されている農林水産関係学術誌の論文等の書誌データベースJASI(5)等、農林水産関係の文献情報や図書資料類の所在情報を構築・提供している。また、試験研究独立行政法人や国公立試験研究機関、大学の農林水産分野の研究報告等をデジタル化した全文情報データベース、国内外の農学文献データベース、気象衛星画像データベース、試験研究機関で実施中の研究課題データベース等を構築・提供している。
 平成20年度の主な研究情報基盤関連施策の概要は、第2‐3‐28表のとおりである。


1 JGN2plus:全国規模のIPネットワーク、光波長ネットワーク、光テストベッドの研究開発環境を提供している。また、対米回線、対アジア回線を整備し、国内外の研究機関とも連携して研究開発を推進している。

2 SINET3:Science Information Network 3

3 MAFFIN:Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Network

4 JDreamⅡ:JST Document REtrieval system for Academic and Medical fieldsⅡ

5 JASI:Japanese Agricultural Sciences Index

第2‐3‐28表  主な研究情報基盤関連施策(平成20年度)  

府省庁 実施機関等 施策名
国会 国立国会図書館 ・国立国会図書館科学技術関係資料収集整備費
内閣府   ・政府予算による研究開発の情報収集機能の強化
総務省 情報通信研究機構 ・最先端の研究開発テストベッドネットワーク(JGN2plus)の構築
文部科学省 科学技術振興機構 ・基本的な科学技術情報の整備と活用促進(J‐Global等)
・技術者能力開発・失敗知識データベースの運用(Webラーニングプラザ等)
・バイオインフォマティクス推進センターの運用(BIRD、GBIF等)
・科学技術論文の電子化・国際化(J‐STAGE等)
・科学技術に関する文献情報の提供(JDreamⅡ等)
海洋研究開発機構 ・情報基盤業務費
国立情報学研究所 ・学術情報ネットワークの整備(SINET3)
厚生労働省 国立感染症研究所 ・感染症情報センター経費
・生物学的製剤の安全性関連情報収集、解析、評価に係る研究事業費 
農林水産省 農林水産技術会議事務局 ・農林水産研究情報総合センター(JASI、MAFFIN等)
特許庁 工業所有権情報・研修館 ・特許電子図書館(IPDL)の運営
国土交通省 海上保安庁海洋情報部 ・海洋情報の収集・管理・提供業務の推進
・海域地理情報システム(GIS)基盤情報の整備 
環境省   ・生物多様性情報システム整備推進費
内閣府
文部科学省
特許庁
科学技術振興機構
工業所有権情報・研修館 
・特許・文献情報統合検索システムの整備
内閣府
特許庁
関係府省
工業所有権情報・研修館 ・リサーチツール特許等統合データベース(RTDB)の構築

6 学協会の活動の促進

 学協会は、大学などの研究者を中心に自主的に組織された団体であり、個々の研究組織を超えて、研究評価、情報交換あるいは人的交流の場として重要な役割を果たしており、最新の優れた研究成果を発信する学術研究集会・講演会・シンポジウムの開催や、学会誌の刊行などを通じて、学術研究の発展に大きく寄与している。
 文部科学省では、このような学協会の活動を支援するため、学協会が諸外国の研究者の参加を得て日本国内で開催する国際会議、青少年や社会人を対象に最新の研究成果などを普及・啓発するためのシンポジウムの開催及び学術定期刊行物の刊行などに対して、科学研究費補助金「研究成果公開促進費」による助成を行っている。日本学術会議では、学協会の自己改革を促進する方策等について継続的に審議を行うとともに、学協会や研究者等の幅広い参加を得てシンポジウム「新法人法への対応シンポジウム‐学協会の公益性の確立に向けて‐」を開催した。

(学協会の国際競争力の強化)
 科学技術振興機構では、我が国からの研究成果の情報発信機能を強化するために、学協会の学会誌・論文誌における論文の投稿から査読・審査、公開までの工程を電子化して行う科学技術情報発信・流通総合システム(J‐STAGE(1))を整備し、学会誌・論文誌の国際化の支援を行っている。

7 公的研究機関における研究開発の推進

 基本計画では、独立行政法人は、その長の裁量の下、自らの経営努力により、研究資金の柔軟かつ弾力的な運用や、公正で透明性の高い競争的な人事・給与システムの導入など、自律的・自発的な運営・改革に取り組むこととされている。平成20年6月に成立した研究開発力強化法において、研究開発法人を定義し、国による資源配分から研究成果の展開に至るまでの研究開発システム改革を行うことによる、公的研究機関、大学、民間も含めた我が国全体の研究開発力の強化をうたうとともに、法人の人件費や自己収入の取扱いについて配慮をすることとされている。


1 J‐STAGE: Japan Science and Technology information AGgregator, Electronic

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科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年03月 --