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平成21年版科学技術白書 第2部 第3章 第1節

第1節 人材の育成、確保、活躍の促進

1 個々の人材が活(い)きる環境の形成

 日本の科学技術の将来や国際競争力の維持・強化は、我が国に育まれ、活躍する「人」の力如何(いかん)に係っており、若手研究者や女性研究者、さらには外国人研究者などの多様多才な個々人が意欲と能力を発揮できる環境を形成することが重要である。以下に、各府省における主な施策について、項目ごとにまとめた。

(1) 若手研究者の自立支援

 我が国が科学技術創造立国を目指す上で、将来の研究活動を担う創造性豊かな優れた若手研究者を養成・確保し、活躍を促進することは極めて重要である。このため、研究機関において、公正で透明な人事評価に基づく競争性の下、自立と活躍の機会を与えることや、大学において、助教の確保と活躍の場の整備が成されることなどが望まれている。
 総務省では、ICT分野の研究者として次世代を担う若手人材を育成するために、戦略的情報通信研究開発推進制度において「若手ICT研究者育成型研究開発」を実施し、若手研究者が提案する研究開発課題に対して研究資金を支援している。
 文部科学省では、若手研究者の活躍を促進するために、平成18年度から、科学技術振興調整費により、「若手研究者の自立的研究環境整備促進」を実施し、平成20年度現在、30課題(28機関)において、テニュア・トラック制(大学等において、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積み、厳格な審査を経てより安定的な職を得る仕組み)の導入、自立した研究活動に必要なスタートアップ資金の提供や研究スペースの確保等研究環境の整備を支援している。
 また、科学研究費補助金においては、柔軟な発想と挑戦する意欲を持った若手研究者の育成の充実を図っており、平成20年度には、「若手研究(B)」、「若手研究(スタートアップ)」に新たに30%の間接経費を措置するなど、約343億円を計上し、若手研究者を対象とした競争的資金の拡充に努めている。
 さらに、優れた若手研究者に対して、日本学術振興会が実施する特別研究員事業を通じ、自由な発想の下に主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えるとともに、海外特別研究員事業などを通じ、国際経験を積み海外研究者と切磋琢磨(せっさたくま)する機会を提供することで、国際舞台で活躍できる研究者の養成・確保に努めている。
 厚生労働省では、将来の厚生労働科学研究を担う研究者の育成を推進するために、「厚生労働科学研究費補助金」において「若手育成型」の研究課題の公募を行っている。
 農林水産省では、「農林水産研究における人材育成プログラム」の一環として優れた功績を上げた40歳未満の個人を対象に若手農林水産研究者表彰を実施し、若手研究者の一層の研究意欲向上に努めている。
 また、農業・食品産業技術総合研究機構では、若手研究者のイノベーション的研究を支援するために若手研究者支援型の研究推進事業を実施している。さらに、農業生物資源研究所では、大学院博士課程の学生を対象に、研究所に勤務しながら進学が可能なジュニアリサーチャー制度を施行し、若手研究者の自立と研究意欲向上に努めている。
 経済産業省では、新エネルギー・産業技術総合開発機構において若手研究者が取り組む産業応用を意図した研究開発への助成を行っている。
 環境省では、若手研究者による研究を推進するため、競争的資金において特別枠を設け、若手研究者の研究支援をしている。

(2) 人材の流動性の向上と自校出身者比率の抑制

 創造性豊かで広い視野を有する研究者を養成し、競争的で活力ある研究開発環境を実現するためには、研究者の流動性の向上や創造的な研究環境の形成を図り、多様な研究者が様々な研究の場を経験することが重要である。基本計画においても、大学及び公的研究機関は任期制の広範な定着に引き続き努めることとされており、各機関において任期制の導入が進められている(第2‐3‐1表、第2‐3‐2表)。また、各大学においては、教員の自校出身者比率に十分注意を払い、その比率が過度に高い大学にあってはその低減が図られることが期待される。

第2‐3‐1表  国の研究機関等の任期制の導入状況

  機関数 任期付
常勤研究者数 
常勤研究者に占める
任期付研究者の割合
国立試験研究機関 29 175 7.6%
研究開発独法(注) 29 3,016 23.64%

注:科学技術関係業務を行う独立行政法人のうち、内部に研究開発機能を有するもの
資料:
内閣府「独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査結果(平成19事業年度)」
文部科学省調べ(平成19年3月31日現在)

第2‐3‐2表  大学等の教員等の任期制の導入状況

  大学等数 適用者数 任期付教員の
占める割合
国立大学 81 11,156 18%
公立大学 47 2,840 24%
私立大学 414 17,371 18%
大学共同利用機関 14 281 21%

資料:文部科学省調べ(平成19年度現在)

(3) 女性研究者の活躍促進

 我が国は、研究者数に占める女性の割合が欧米諸国に比べ低い状況にある。男女共同参画の観点はもとより、今後の科学技術関係人材の裾野(すその)を広げるためにも、女性研究者の活躍を促進することは重要な課題である。
 基本計画においては、女性研究者の活躍を促進するために様々な取組を進めることとされており、文部科学省では、平成18年度から、出産・育児により研究活動を中断した優れた研究者が円滑に研究現場に復帰する環境を整備するため、日本学術振興会が実施する特別研究員事業において、研究奨励金の支給による支援を行っている。
 また、平成18年度から科学技術振興調整費により、大学等の研究機関が行う研究と出産・育児との両立に関する支援のモデルとなる取組を公募し、優れた提案を支援する、「女性研究者支援モデル育成」を実施しており、現在33機関において取組が進められている。
 科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業においては、出産・育児等に当たって研究者が研究の中断・延長をすることを可能とするほか、研究に参加する研究員が出産・育児等から復帰する際に支援をする制度を設け、支援を行っている。
 さらに、女子生徒の科学技術分野への興味・関心を喚起するため、女子中高生に対し、女性研究者との交流機会の提供や実験教室、出前授業等を行う「女子中高生の理系進路選択支援事業」を実施している。
 内閣府では、「チャレンジ・キャンペーン~女子高校生・女子学生の理工系分野への選択~」として、女子高校生・女子学生を対象に理工系分野に関する情報提供・意識啓発を実施している。
 産業技術総合研究所では、男女共同参画室において、男女共同参画シンポジウム、女子学生向けの採用セミナーの開催などを行うとともに、勤務環境整備のための方策として介護支援に関する調査、勉強会等を実施するなど、介護と仕事の両立支援策の検討を行った。また、大学と研究機関からなるコンソーシアムを組織して(産業技術総合研究所を含め平成21年1月現在12機関加入)、勤務環境改善や女性研究者のキャリア形成・意欲向上を連携して進め、対策の普及拡大を図った。

(4) 外国人研究者の活躍促進

 多様な人材の活躍を促進する中で、人材の確保のみならず、我が国の研究活動の国際化、水準の向上に資するという観点から、優秀な外国人研究者が我が国に来て活躍できる環境づくりは重要である。
 しかしながら、高度技能を有する人材一般の中で外国人の占める割合が我が国は国際的に非常に低く、研究者についても1万1,000人程度(1)と、我が国の研究者全体の1.34%にすぎない。
 「知」を巡る大競争時代の中、米国、欧州諸国、中国などにおいて、国際的に熾烈(しれつ)な頭脳獲得競争が行われている状況にある。我が国としても、優秀な外国人研究者を我が国に惹(ひ)き付けるため、平成18年度の出入国管理制度の改正により、従来は「外国人研究者受入れ促進事業」を行う構造改革特区でのみ認められていた研究者の在留期間を3年から5年に延長する措置を全国展開し、また、大学国際戦略本部強化事業により、国内の研究環境の国際化を支援するなど、優秀な外国人研究者を日本に惹(ひ)き付ける制度の実現に向けて積極的に活動している。日本学術振興会においても、外国人特別研究員事業や外国人招へい研究者事業等により、海外の優秀な外国人研究者を年間約5,700人日本に招へいしている。


1 法務省「在留外国人統計」において、在留資格が「教授」と「研究」の者の統計数

(5) 優れた高齢研究者の能力の活用

 国際的に見て真に優秀と認められる研究者が年齢を問わず活躍し成果を上げていくことは、我が国の科学技術水準の向上にとって重要である。
 産業技術総合研究所では、改正高年齢者雇用安定法に対応して、最終的には65歳までの雇用を確保するための再雇用制度を平成19年度より施行し、高齢研究者の活用に積極的に取り組んでいる。

2 大学における人材育成機能の強化

(1) 大学における人材育成

 知の創造と活用において創造性豊かで国際的にリーダーシップを発揮できる広い視野と柔軟な発想を持つ人材を育成するに当たり、その要(かなめ)である大学における人材育成機能に求められる役割は大きい。各大学においては、教育内容の改善を図る取組が積極的に行われているところであるが、例えば、専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させる主専攻・副専攻制を導入する大学は年々増加し、平成19年度現在、学部段階では152大学、研究科段階では89大学において導入されている。また、教育環境の改善・充実を図るため教員の教育力向上のための組織的な取組(ファカルティ・ディベロップメント)を平成19年度は664大学が実施しており、教員の教育面の業績評価も平成19年度は学部段階では319大学、研究科段階では235大学が実施している。
 文部科学省では、各大学の個性・特色を活(い)かした教育研究の展開を促すため、国公私立大学を通じた大学教育改革への優れた取組を支援している。

(2) 大学院教育の抜本的強化

 高度に科学技術が発展するとともに、知の専門化、細分化が進み、国際競争が激化する現代社会においては、新たな学問分野や急速な技術革新に対応できる深い専門知識と幅広い応用力を持つ人材の育成が緊迫の課題である。その人材育成に中核的な役割を果たす大学院については、平成11年度から20年度までの10年間で、大学院学生が約7万人増加するなど、その量的な整備は順調に行われてきたが、今後はその教育の質の一層の向上を図ることが必要である。
 このような状況を踏まえると、各大学院において社会ニーズをくみ取りつつ自らの課程の目的を明確化した上で、これに沿って、学位授与へと導く体系的な教育プログラムを編成・実践し、そのプロセスの管理及び透明化を徹底する方向で、大学院教育の実質化(教育の組織的展開の強化)を推進することが必要である。文部科学省では、平成19年度から、「大学院教育改革支援プログラム」を実施し、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度な人材を育成する大学院における優れた組織的・体系的な教育の取組を支援している。平成20年度までに、83大学192件を採択した。

(3) 大学院教育の改革に係る取組計画の策定

 文部科学省では、中央教育審議会答申「新時代の大学院教育」(平成17年9月)の提言や基本計画を踏まえ、大学院の充実・強化に向けた5年間の体系的・集中的な取組計画である「大学院教育振興施策要綱」を平成18年3月に策定した。この要綱では、大学院教育の実質化、国際的な通用性、信頼性の確保、国際競争力ある卓越した教育研究拠点の形成、の改革の方向性を示しており、これに基づき、国際的に魅力ある大学院づくりを推進している。

(4) 博士課程在学者への経済的支援の拡充

 優れた資質や能力を有する人材が博士課程(後期)進学に伴う経済的負担を過度に懸念することなく進学できるようにすることは、優れた研究者を確保する観点から必要であり、基本計画においても、博士課程在学者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指すとされている。
 このため、文部科学省では、日本学術振興会が実施する特別研究員事業における博士課程在学者への支援を重点的に拡充するとともに、大学院生に教育的配慮の下に教育補助業務を行わせるティーチング・アシスタント(TA)や、大学等が行う研究プロジェクトに博士課程在学者を参画させるリサーチ・アシスタント(RA)としても活用できる競争的資金の拡充等を行っている。科学技術振興機構が行う戦略的創造研究推進事業においても、平成20年度から、優秀な博士課程在学者のRAとしての雇用に対する支援が行われている。
 また、日本学生支援機構の奨学金事業について、特に優れた業績を上げた者の返還を免除するとともに、採用決定時期の早期化等改善を図っている。

3 社会のニーズにこたえる人材の育成

(1) 産学が協働した人材育成

 我が国が産業技術力を維持し持続的に発展していくためには、産業界等社会のニーズを踏まえつつ、その変化に対応できる人材を育成することが重要であり、大学と企業等が人材育成に関する協力関係を構築し、連携を図ることが不可欠となっている。
 このため、大学界と産業界が人材育成における対話と行動を行う場として、文部科学省と経済産業省では、平成19年度から「産学人材育成パートナーシップ」を推進している。また、経済産業省と文部科学省が連携し、アジア等からの優秀な留学生を日本に惹(ひ)き付け、日本企業での活躍を促進する「アジア人財資金構想」事業を平成19年度から実施している。    
 文部科学省では、地域や産業界と連携したものづくり技術者の育成を支援する「ものづくり技術者育成支援事業」や、サービスにおける生産性を向上させ、イノベーションの創出に寄与し得る人材の育成を図る「サービス・イノベーション人材育成推進プログラム」の開発を行い、大学における産学協働による人材育成を推進している。
 また、アジア諸国等からの留学生と我が国の学生が共に学びつつ、途上国における環境問題の解決に向けたリーダーシップを発揮する人材(環境リーダー)を育成する拠点を形成するため、平成20年度から、科学技術振興調整費により、「戦略的環境リーダー育成拠点形成」を実施し、現在5機関において取組が進められている。
 経済産業省では、上述した「産学人材育成パートナーシップ」の創設に合わせ、平成20年度から、産学人材育成パートナーシップの検討成果を踏まえた産学連携による人材育成プログラムの開発を支援している。
 また、2007年から団塊の世代が順次定年に達しており、中小企業を支える技術人材の育成は我が国産業の競争力維持・強化にとって重要な課題である。このため、経済産業省では、高等専門学校等の設備を活用した中小企業の若手技術者育成カリキュラムの開発、各地域の産業界・工業高校・行政等の連携による専門高校生に対する実践的教育プログラムの充実など人材育成支援策を講じた。加えて、大学において、社会で求められる能力を産学が協働して育成する取組を推進するため、大学の様々な科目等において、コミュニケーション能力や実行力等の「社会人基礎力」を体系的に育成するモデル事業を実施している。
 また環境省では、平成20年3月に「持続可能なアジアに向けた大学におけるアジア環境人材育成ビジョン」を作成し、アジアの持続可能な社会づくりを担う人材育成の考え方や方策を具体化した。そのビジョンに基づき、平成21年3月には、経済社会のグリーン化を担う人材の育成を促進するプラットフォームとして、「環境人材育成コンソーシアム準備会」を立ち上げたところである。

(2) 博士号取得者の産業界等での活躍促進

 近年、科学技術と社会とのかかわりが一層深化・多様化する中、ポストドクター等科学技術に関する専門性を有する人材が、大学や公的研究機関のみならず、産業界や行政機関など社会の多様な場で活躍することが期待されている。
 しかしながら、ポストドクター期間終了後のキャリアパスが不透明であり、活躍の機会が十分に与えられていないことなどの指摘があるため、文部科学省では、平成18年度から、博士課程学生やポストドクター等のキャリアパス多様化に向けた組織的支援と環境整備を行う取組を支援する「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」を実施しており、現在、12機関において取組が進められている。また、平成20年度からは「イノベーション創出若手研究人材養成」(科学技術振興調整費)を開始し、10機関において、若手研究者等が狭い学問分野の専門能力だけでなく、国内外の多様な場で創造的な成果を生み出す能力を身に付ける研究人材養成システムの構築を推進している。
 産業技術総合研究所では、企業との共同研究事業で雇用した博士号取得者を企業の即戦力人材として育成するため、平成17年度から、企業との連携・協力協定に基づいて博士号取得者の採用を行っている。また、産業界でイノベーションに貢献できる人材を育成するため、産業界において必須となる知識等を博士号取得者等に提供する産業技術人材育成研修を実施するとともに、企業説明会を開催した。また産総研内の博士号取得者を対象として、より広い視野を持ち、異なる分野の専門家と協力するコミュニケーション能力や協調性を有する人材の輩出を目指す事業である「産総研イノベーションスクール」を平成20年度より実施した。

(3) 知の活用や社会還元を担う多様な人材の養成

(知的財産・技術経営等に係る人材の養成)
 イノベーションの創出を図っていくには、知的財産を創造し、保護し、活用する人材や、技術と経営の双方を理解し研究開発を効果的に市場価値に結実させる人材などの育成が必要である。
 文部科学省では、知的財産に関する優れた教育プロジェクトに対する支援などを通じ、大学の自主的な取組を促進している。技術経営など高度専門職業人の養成に関しては、平成19年4月現在149専攻の専門職大学院が設置されている。

(科学技術コミュニケ‐ターの養成)
 内閣府の「科学技術と社会に関する世論調査(平成19年12月)」によると、近年、科学技術に関する知識は、実際に体験したり、分かりやすく説明されれば大抵の人は理解できると考える人が多いが、一方、科学技術について知りたいことを知る機会や情報を提供してくれるところは十分にないと考える人も多い。これらの状況に対応するためには、科学技術を分かりやすく国民に伝え、あるいは社会の問題意識を研究者・技術者の側にフィードバックするなど、研究者・技術者と一般国民の間のコミュニケーションを促進する役割を担う人材「科学技術コミュニケーター」の養成・活躍を推進していくことが必要である。
 文部科学省では、科学技術振興調整費の「新興分野人材養成」プログラムにおいて、科学技術コミュニケーターの養成コースを設ける大学を支援している。また、国立科学博物館は「サイエンスコミュニケータ養成実践講座」を、日本科学未来館は「科学コミュニケーター研修プログラム」をそれぞれ開設するなど、科学コミュニケーターの養成・活躍の促進に積極的に取り組んでいる。

(技術者の養成・確保)
 科学技術創造立国の実現を目指す我が国としては、技術基盤の強化とともに、イノベーションによる産業フロンティア創出と産業の国際競争力の観点から、質が高く、かつ、十分な数の技術者を養成・確保することが重要な課題となっている。このため、以下の施策を通して優秀な技術者の養成・確保を図っている。

1.技術士制度
 技術士制度は、昭和32年に制定された技術士法(昭和58年改正)により創設され、科学技術に関する高等な専門的応用能力を持って計画、設計等の業務を行う者に対し、「技術士」の資格を付与し、その業務の適正を図り、科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的としている。
 技術士となるためには、21の技術部門ごとに、高等の専門的応用能力を有するか否かを判定する国家試験に合格し、登録を行うことが必要であり、毎年、技術士試験を実施している。平成20年度においては、第1次試験については8,383名、第2次試験については、4,143名が合格した。また、平成20年12月末現在の技術士登録者及び技術士補登録者は、それぞれ6万3,567名、2万3,061名であり、部門別分布は第2‐3‐3図のとおりである。

第2‐3‐3図 技術士の技術部門別分布

第2‐3‐3図 技術士の技術部門別分布

2.技術者資格の国際相互承認への対応
 1995年(平成7年)にAPEC首脳会議で採択された大阪行動指針を受け、域内における有資格技術者の移動を促進するための「APECエンジニア相互承認プロジェクト」が進展中であり、我が国としては、技術士資格と海外の対応する資格の相互承認の実現に向けて本プロジェクトにおける検討に積極的に参加している。
 2000年(平成12年)11月、APECの場における検討結果が「APECエンジニア・マニュアル」として公表され、2008年(平成20年)12月時点で、我が国を含め13エコノミーが参加している。

3.技術者の継続的な能力開発の支援
 科学技術振興機構では、技術者が科学技術の基礎知識と失敗知識を幅広く習得することを支援するために、科学技術の各分野及びそれらを横断するインターネット自習教材[http://weblearningplaza.jst.go.jp/(Webラーニングプラザのホームページへリンク)]と、科学技応用理学術分野における失敗事例をその教訓とともに収録した失敗知識データベース[http://shippai.jst.go.jp/(JST失敗知識データベースホームページへリンク)]を提供している。

4.その他
 特許庁では、工業所有権情報・研修館を通じて、知的財産に関する正しい知識と基礎実務の習得を目的として、高等学校(専門科)・高等専門学校・大学生向け産業財産権標準テキストを作成し、希望校に無償提供している。また、知的財産を尊重する意識を学校教育段階から醸成するため、小学校・中学校・高等学校用知的財産教育用副読本を作成し、希望校に無償提供している。これらのテキストや副読本等を使って、児童・生徒・学生や教職員向けのセミナー等を全国各地で開催し、知的財産マインドの醸成、啓発、教育支援を行っている。
 さらに、高校生、高等専門学校生及び大学生に対し、実体験を通じての知的財産マインドの醸成と知的財産権制度の理解を図ることを目的に、文部科学省、特許庁、日本弁理士会、工業所有権情報・研修館の共催によりパテントコンテストを行っている。応募された発明のうち優れたものについては実際に生徒、学生が特許出願し、権利の取得を目指すことになる(第2‐3‐4表)。
 平成19年度からは、中学生が知的財産を尊重することの大切さを知るきっかけとなることを目的に、中学生ものづくり知的財産報告書コンテストを行っている(第2‐3‐5表)。
 産業技術総合研究所では、多様な研究と先端的な研究インフラなどを活用し、研究開発に有効な技術を身に付けた高度な専門技術者を育成するため、平成19年度に引き続き「専門技術者育成事業」を実施した。

第2‐3‐4表 平成20年度パテントコンテスト特許出願支援対象発明案件一覧

  発明の名称 発明者氏名 学校・大学名
主催者賞 粘性液体の収納容器 宇田川  洋一
(うだがわ よういち)
東邦大学
醤油差し 森岡 佑太
(もりおか ゆうた)
徳山工業高等専門学校
特許出願支援対象者 介護の補助具 神 真夏
(じん まなつ)
自由ヶ丘産能短期大学
粘性液体の収納容器 宇田川  洋一
(うだがわ よういち)
東邦大学
ロケット分離・放出機構 関 啓亮
(せき けいすけ)
秋田大学
粘着テープを切断するための補助具 金井 夏樹
(かない なつき)
上村 友孝
(うえむら ともたか)
森本  尚揮
(もりもと なおき) 
湯下 清史
(ゆした きよし)
岐阜工業高等専門学校専攻科
地震を検知して自動で閉まる棚 塚田 貴文
(つかだ たかふみ)
堀田 尚志
(ほった ひさし)
森井 智貴
(もりい ともき)
木村 善平
(きむら ぜんぺい)
松井 寛子
(まつい ひろこ)
岐阜工業高等専門学校専攻科
電子鍵 堀瀬 友貴
(ほりせ ゆき)
宮武 巧
(みやたけ たくみ)
詫間電波工業高等専門学校専攻科
ステープラー 町田 竜太郎
(まちだ りゅうたろう)
久留米工業高等専門学校専攻科
醤油差し 森岡 佑太
(もりおか ゆうた)
徳山工業高等専門学校
ドッグフード 風穴 瑞生
(かざあな みずき)
村下 綾乃
(むらした あやの)
佐藤 勇志
(さとう ゆうじ)
青森県立三本木農業高等学校
輪ゴム銃 野口 翔吾
(のぐち しょうご)
蓮見 優太
(はすみ ゆうた)
風間 涼汰
(かざま りょうた)
小沢 駿介
(おざわ しゅんすけ)
埼玉県立川越工業高等学校
面取り機 亀甲 康嗣
(かめこう やすし)
櫻井 健志郎
(さくらい たけしろう)
平野 正将
(ひらの まさゆき)
古川 翔希
(ふるかわ しょうき)
松元 仁希
(まつもと まさき)
鹿児島県立鹿屋工業高等学校
染料による着色廃水処理方法 飯尾 香那美
(いいお かなみ)
菊川 雄貴
(きくがわ ゆうき)
吉田 明夫
(よしだ あきお)
愛媛県立今治工業高等学校

第2‐3‐5表  中学生知財コンテスト  ロボットアイディアチャレンジ表彰者一覧

賞名 報告書名 学校名 チーム名 生徒氏名
最優秀賞 狙え!巨人の指~リングを飛ばす、取り込む、また飛ばすロボット~ 広島県広島市高取北中学校 ADF 飛鳥 達也
(あすか たつや)
坂田 将人
(さかた まさと)
安村 翔太
(やすむら しょうた)
優秀賞・報告書部門 『PET素材の曲がり具合をうまく生かすロボット』製作報告書 岐阜県土岐市立西陵中学校 SEIRYO one 2.0 加藤 寛喬
(かとう ひろたか)
びっくり箱 広島県広島市高取北中学校 びっくり箱 助守田 優
(すけもり すぐる)
金谷 健士
(かなたに たけし)
倉本 稔己
(くらもと としき)
梶 聖人
(かじ まさと)
優秀賞・設計部門 Team Clost 押し出し機構の開発~スムーズかつ効率的な押し出し機構を求めて~ 茨城県稲敷郡阿見町立朝日中学校 Team Clost 横山 沙也香
(よこやま さやか)
中西 華澄
(なかにし かすみ)
野末 春那
(のずえ はるな)
中根 泉
(なかね いずみ)
奇跡!2秒で8得点 岐阜県土岐市立泉中学校 IZUMI WBB 大東 明
(だいとう あきら)
水野 雄太
(みずの ゆうた)
田中 敬大
(たなか たかひろ)
甲斐 翼
(かい つばさ)
優秀賞・ネーミング部門 いかに、スムーズになおかつすばやくアイテムを置けるかを目標にしたロボット作り 製作案 新潟県新潟市立小針中学校   浅岡 優和
(あさおか まさかず)
缶境?のために分別しよう 新潟県新潟市立小針中学校   岩船 皓介
(いわふね こうすけ)
審査委員特別賞 なすえもん特性自由自在ハンド! 長野県伊那市東部中学校 スズ竹なすえもん 田代 宗一郎
(たしろ そういちろう)
小椋 陸
(おぐら りく)
神林 優
(かんばやし ゆう)
大杉 望
(おおすぎ のぞむ)

 4  次代の科学技術を担う人材の裾野(すその)の拡大

 次代を担う科学技術関係人材を育成するため、初等中等教育段階から、子どもが科学技術に親しみ学ぶことができる環境を充実するとともに、理数に興味・関心の高い子どもの能力を伸長することができる効果的な環境を提供するため、以下のような取組を総合的に推進し、理数教育の充実を図っている。
 総合科学技術会議は、トップレベルの人材の育成や外部専門人材による指導体制の強化等学校教育の充実、科学技術コミュニケーターの育成や研究機関のアウトリーチ活動の強化等多様な戦略的アプローチの強化について検討・施策の強化を求め、平成21年度の関係省庁の予算等に反映された。

(1) 知的好奇心に溢(あふ)れた子どもの育成

(理科支援員等配置事業)
 科学技術振興機構では、理科授業における観察・実験活動の充実と、教員の資質向上を図るため、研究者・技術者や大学(院)生、退職教員等の外部人材を理科支援員や特別講師として小学校に配置する取組を支援している。平成20年度は、全国62都道府県・指定都市において本事業を実施している。

(社会人講師活用型教育支援プロジェクト)
 経済産業省では、文部科学省と連携して、企業の技術者等の社会人講師の発掘や地元企業が有する技術等と小学校の理科授業を結びつけたカリキュラムの作成、産業界や教育界等関係機関の地域ネットワーク構築等の取組を実施した。

(理数系教員指導力向上研修事業)
 科学技術振興機構では、教育委員会と大学・科学館等の連携による、科学技術、理科・数学に関する観察・実験等の体験的・問題解決的な活動における理数系教員の実践的指導力を育成するための教員研修を支援する事業を実施している。

(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)
 科学技術振興機構では、児童生徒の科学技術、理科・数学に関する興味・関心と知的探求心などを一層高めるため、学校や教育委員会等と大学・科学館等が連携した体験的・問題解決的な取組を支援している。具体的には、第一線の研究者・技術者を講師とする観察、実験等の学習活動や、最先端の研究現場における合宿型の学習活動(サイエンスキャンプ)等が行われている。

(理科、算数・数学教育に使用する設備の整備)
 不足や老朽化が著しい理科、算数・数学教育に使用する小・中・高等学校等の実験器具等の設備の充実を図るため、理科教育振興法に基づき、設備の計画的な整備を進めている。

(先進的な科学技術・理科教育用デジタル教材の開発)
 科学技術振興機構では、児童生徒の知的好奇心、探求心に応じた学習の機会を提供するため、理科教育用デジタル教材を開発し、インターネット等を通じて全国の学校などへの提供を行うとともに、教育委員会等と共同で学校現場での活用に関する実証的試験・評価を行っている。

(キャリア教育民間コーディネーター育成・評価システム開発事業)
 経済産業省では、子どもたちに対して、ものづくり等の体験を通じて働くことへの理解を促すキャリア教育を支援している。平成20年度は、地域産業界等と学校を結ぶコーディネーターニーズの高まりを受け、キャリア教育の更なる普及の観点から、コーディネーターの育成事業を実施している。

(早期工学人材育成事業)
 経済産業省では、中高生を対象に地元産業界の技術者や施設等を活用し、知識と社会とのつながりや、エンジニアのキャリア等を示すことにより、将来への職業観を高め、授業の効果を向上させることを目的として、協力企業の発掘や産業技術と教育から得られる基本的知識を関連付けたプログラムの開発・実証、産業界や教育界等関係機関のネットワーク構築等の取組を実施した。

(2) 才能ある子どもの個性・能力の伸長

(スーパーサイエンスハイスクール)
 文部科学省では、平成14年度から、理数教育を重点的に行う高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、科学技術振興機構の支援により、将来の国際的な科学技術関係人材の育成のための取組を推進している。具体的には、大学と連携した先進的な理数教育や、理科・数学に重点を置いたカリキュラム開発等を実施している。平成20年度においては、全国102校の高等学校等が特色ある取組を進めている。

(国際科学技術コンテスト支援事業)
 科学技術振興機構では、高校生等の科学技術や理科・数学に対する興味・関心や目的意識、意欲・能力を高め、科学技術をリードする人材を育成するため、数学、物理、化学、生物学、情報等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援を行っている(平成21年度に国際生物学オリンピックが、平成22年度に国際化学オリンピックが日本で開催予定)(第2‐3‐6表)。

(未来の科学者養成講座)
 科学技術振興機構では、理数に関して卓越した意欲・能力を有する児童生徒に対して、学校外で高度で発展的な学習環境を年間を通して継続的に提供する大学等の取組を支援することにより、質の高い科学者の卵の育成を図る「未来の科学者養成講座」を平成20年度から新たに実施している。

(高等学校と大学の接続)
 才能ある児童・生徒の個性・能力の伸長が図られることが重要であり、そのための高大接続の改善が必要である。例えば、志願者の能力・適性・意欲等を総合的に判定するアドミッション・オフィス(AO)入試については、平成20年度入試において約7割以上の大学が導入している。

第2‐3‐6表 平成20年度国際科学技術コンテスト受賞者

第2‐3‐6表 平成20年度国際科学技術コンテスト受賞者

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科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年03月 --