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平成21年版科学技術白書 第1部 第3章 第2節

第2節 世界に開かれた魅力的な研究環境の整備等に向けて

1  諸外国における研究環境の整備に向けた取組

(1) 諸外国における人材獲得施策の推進

 第1章第2節で述べたように、諸外国においては、イノベーションの創出に向けて、優秀な人材を自国に惹(ひ)き付けるための受入れ政策や環境整備を積極的に展開している。その内容は、入国管理制度の改善、自国の研究者の海外への派遣や呼び戻し、海外研究者の積極的な受入れ、在外研究者のための国際的な広報活動等まで多岐にわたっている(第1‐3‐18表)。
 なかでも米国は、これまで長期にわたり、世界各国から優秀な研究人材を惹(ひ)き付け、イノベーション創出の牽引(けんいん)役として世界をリードしてきた。しかしながら、2001年9月に発生した米国同時多発テロ以降、移民法の改正により、特殊技能を要する職業のためのビザ(H‐1Bビザ)発行の上限数が原則として年間6万5,000人に削減され、留学生や外国人研究者に対しても審査が厳しくなった。その後、修士号以上の学位を取得した労働者に対しては、ビザ追加発行を認める法案が可決されたものの、留学生や外国人研究者の移動が今後も制限されるおそれがあるとして、ビザ発行数の更なる拡大を求める動きが広がっている。
 また、「自主創新(独自のイノベーション)」等を掲げ、科学技術の発展とイノベーションの創出を重視する中国においては、科学技術水準の向上と先進国へのキャッチアップのために、海外で活躍する自国の優秀な研究人材を帰国させるための呼び戻し政策や、海外からの研究者の招へいを積極的に展開している。こうした研究人材が、中国国内における研究開発の中心的な役割を担っているとの指摘もある。

第1‐3‐18表 諸外国における主な人材獲得政策

  受入れ制度 代表的な海外人材の招へい政策
米国 ○就労目的永住者の受入れ
 能力等により5つのカテゴリーに区分した専門的・技術的分野の労働者の受入れ
○滞在期限付き外国人労働者の受入れ
 数学、工学、物理学、医学等の特殊技能を要する職業への期限付従事者に特殊技能従事者ビザ(H‐1B)を発給
○国際教育サミット
 2006年1月に全米50の大学学長を集め、国務省が開催。政府と大学が協力し、優秀な留学生や研究者の受入れを促進
※優秀な研究人材の確保の方策は、NSF等の政府機関、研究機関、大学ごとの自発的な取組による
英国 ○高度技能移民プログラム(HSMP)
 大卒者、医師、金融専門家等を対象に受入れ。受入れ審査にポイント制(学歴、職歴、過去の収入、就労希望分野での業績等の分野を点数化)を導入。5年在住後に永住許可の申請が可能
○「研究メリット賞」(Research Merit Award)制度 引き止めておきたい研究者、産業界や外国から招へいする研究者の給与引上げを可能とする制度
※2006年10月の「グローバル科学・イノベーションフォーラム」において作成した戦略では、「研究の卓越性」を優先領域の1つとし、国際協働を強化するとともに最良の研究者を英国に惹(ひ)き付けることとしている。
ドイツ ○高度技能移民の受入れ
 新移民法(2005年)に基づき、学者、教授、科学者、一定所得以上の専門家・幹部職員等の高度技能労働者を受入れ(無制限の滞在資格を授与)
○正規に学業を修了した留学生に対し、ドイツ国内での求職活動のため、卒業後1年間の滞在を許可
○エクセレンス・イニシアティブ
 国際的に知名度の高い中核的な研究機関の構築を目指し、科学の観点において優れた大学を政府が支援
○人材呼び戻し策の展開
 米国、英国等への頭脳流出の抑止対策として、研究環境を良好にして人材を呼び戻す取組に注力
フランス ○高度技能者の入国条件や受入れ手続の緩和措置
 新規に入国する外国人のうち、上級管理職等、一定の条件を満たす高度技能労働者に対し、臨時滞在許可証を迅速に発行
○CNRS(フランス国立科学研究センター)等において、研究者の海外流出防止と優秀な海外研究者の引き寄せのため、特に若手研究者の処遇を改善
 EU ○ブルーカード制度
 EU域内の自由な労働移動を目的に、EU加盟条約(2003年4月署名)を根拠とする新規加盟国から旧加盟国への労働者の移動に、最大7年間の経過措置
○マリー・キューリー・アクションの拡充
 欧州域内の研究人材育成のための奨学金制度の活用を中心に、域内全体での研究者の流動性を高め、頭脳流出の抑止、域外研究者の獲得と呼び戻しを目指すプログラム
中国   ○111計画(世界トップ100の大学・研究機関から、1,000人以上の科学者を招き、国内の優秀な研究者との合同研究チームを約100か所形成)を展開
○中国科学院の実施する百人計画や教育部と李嘉誠基金会の実施する長江学者奨励計画において、国内外の優秀な研究者を登用する人材政策を展開
○中国に帰ることを前提とした海外への人材派遣
 中国に帰ることを前提に、国家ハイレベル研究者公費派遣プロジェクト、訪問学者公費派遣プロジェクト等の博士課程以上の学生を中心に海外に派遣するプログラムを実施
韓国 ○ゴールドカード(ナノテク、バイオ、環境等の8分野)、ITカード、サイエンスカード(修士・博士)高度人材受入促進策としてカード制度を導入。カード保持者に対するビザの有効期限の延長等
○ビザ発給の時間を大幅に短縮
○Study Korea Project
 2010 年までに外国人留学生数を3倍とする計画。2007年に目標を達成
○ブレイン・プール・プロジェクト
 公的又は民間研究機関で、2年を上限として海外の優秀な科学者やエンジニア等の獲得を目的
○新政府の科学技術投資戦略
 2012年までに 海外の研究者1,000人を韓国内に招へい
○WCU(注)事業
 今後大学が注力すべき分野に、研究能力が高い優れた海外研究者を招へいし、国内の大学の教育・研究競争力を世界的水準に高める。
シンガポール ○Pパス、Qパス
 一定の学歴・資格を有し、一定所得以上の専門的・技術的分野の労働者を人数制限なく受入れ。Pパスは企業幹部クラス、Qパスは高度専門職・管理者クラス等が該当
○高度人材への永住権、市民権等の積極的付与
 ○コンタクト・シンガポール
 ボストン、ロンドン、上海、チェンナイ、シドニー等に海外事務所を設置し、シンガポールの就業情報等を提供
○海外・多国籍企業誘致のための研究基盤を整備
○科学技術研究庁(A※STAR)高官の個人的コネクション等を活用した高名な研究人材の積極的な招へい活動
○積極的に海外からの人材を求めるシンガポール人材誘致委員会を設立

(注)World Class University

資料:
科学技術振興機構研究開発戦略センター、科学技術政策研究所、内閣府資料、OECD“The Global Competition for Talent: Mobility of the Highly Skilled”等を基に文部科学省作成

 加えて、海外から多くの人材を受け入れていることで知られるシンガポールでは、人材開発庁等を中心に、世界的に著名な人材を自国に招へいし、その知識や技術を国内に導入する取組のみならず、将来有望な人材を確保するため、東南アジア地域の優秀な若手学生を国内の大学に受け入れて育成し、シンガポールの市民権を与えるなどの優遇政策を展開している。

 さらに、韓国でも、「新政府の国家研究開発投資戦略」(2008年5月国家科学技術委員会)において、研究能力が高い優れた1,000人の海外研究者の招へいを掲げるとともに、そのような海外研究者を招へいし、国内の大学の教育・研究競争力を世界的水準に高める点に主眼を置いたWCU事業に着手している。

(2) 諸外国における研究拠点の整備に向けた取組

 米国や欧州等においては、多くの優秀な研究者を獲得するために、国・州レベルに加え、大学等が主体的に魅力あるトップクラスの研究拠点の整備と、それを実現するためのシステム改革を行っている。個々の研究拠点は、その歴史的背景や成り立ちなどが異なるため単純な比較はできないが、トップクラスの研究拠点に見られる主な特徴は以下のとおりである。

1.研究者を惹(ひ)き付ける世界トップクラスのリーダーと拠点としての明確なビジョンの存在
 世界トップクラスのリーダーと組織としての明確なビジョンの存在が多くの優秀な研究者を惹(ひ)き付けている拠点の例として、デジタル技術の社会における創造的な活用を目指し、先見的かつ創造性に富んだ研究を進めている米国のMITメディアラボが挙げられる。同拠点が研究者を惹(ひ)き付けている要因の1つは、物理学、計算機科学及び数学の分野における世界最高レベルの研究リーダーの存在である(1)。また、この拠点では「今までになかった新しい流れをつくり出したか」、「その新しい流れは人類にとって意味を持つのか」という2つの明確なビジョンが示されており、それもまた多くの優秀な人材を惹(ひ)き付けている。

2.他に類を見ない革新的な取組の実施
 他に類を見ない革新的な取組により、研究者を惹(ひ)き付けている拠点の例として、米国スタンフォード大学のBio‐Xが挙げられる。同拠点では、学内における生物学や医学、工学、物理学、化学等の複数の分野を橋渡しすることにより、生命科学の重要な課題に関する分野融合研究を促進するという革新的な取組が実施されている。具体的には、研究者の視野を広げ、新たな流れをつくり出していく環境をソフト及びハードの両面から構築している。例えば、研究スタイルに合わせて柔軟なアレンジができる研究室、会話が弾むスペース等のハード面の整備に加え、ソフト面では分野横断的につないだプロジェクトが昼夜実施されているほか、分野の違う研究者が互いに通じ合わない専門用語ではなく、同じ汎用(はんよう)的な用語で会話することを心がけているという。このように、何らかの新しい発見や創造が期待できるという、他に類を見ない革新的な取組の実施が研究者を惹(ひ)き付けている。

3.研究者を惹(ひ)き付ける魅力的な研究環境
 魅力的な研究環境を整備しているトップクラスの研究拠点として、英国の分子生物学研究所(2)が挙げられる。同研究所は、これまでに12人のノーベル賞受賞者を輩出した著名な研究所である。リスクは高いが重要な研究の継続を長期的に可能とする研究費配分や、優秀な若手をグループリーダーに起用するとともに、雑務を極度に制限して研究に集中できる環境を設けるといった取組が、多くの研究者を惹(ひ)き付けている。


1 同研究所における物理学、計算機科学、数学の分野における論文の被引用数はそれぞれ世界第1位、2位、8位である。

2 MRC Laboratory of Molecular Biology

2 卓越した研究拠点の整備と研究人材の獲得に向けて

(1) 留学生・研究者獲得のための環境整備に向けて

 我が国における外国人研究者や留学生の受入れについては、平成15年には「留学生受入れ10万人計画」の目標を達成するとともに、情報技術者等の受入れ拡大に向けた取組も成されてきた。しかしながら、我が国の留学生受入れの状況は、第1章第2節で述べたとおり、他の主要先進国と比べると低調である。また、我が国ではアジア諸国からの留学生の受入れが多いが、アジア諸国の優秀な人材は欧米諸国を第一の留学先として選択する傾向が強いという指摘もある。
 このような状況の中、平成20年度には、我が国を世界により開かれた国とし、アジア、世界の間のヒト・モノ・カネ、情報の流れを拡大するグローバル戦略を展開する一環として、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指す「留学生30万人計画」が策定された(1)。同計画では、優秀な留学生の積極的な獲得をこれまで以上に進めていくことを目指し、留学の動機付けのための情報発信、留学希望者のための一元的窓口サービスの展開や、入試・入学・入国の入口面の改善、大学等の教育機関や社会における受入れ体制の整備、さらには卒業・修了後の就職支援等の出口面に至るまでの取組を包括的に推進し、我が国への留学の円滑化を図るものである。
 また、留学生の積極的な獲得と併せて、各大学等における研究の目的や段階に応じ、研究者等を機動的に受け入れていくことも重要である。このため、日本学術振興会では、「外国人特別研究員」、「外国人招へい研究者」、「外国人著名研究者招へい」といった、諸外国の若手研究者からノーベル賞級の著名な研究者まで、それぞれの研究ステージや招へい目的に応じた多様な招へい事業を行い、我が国の研究環境の国際化や共同研究等を通じた学術研究水準の向上等を図っている。
 今後、このような取組を維持・拡大することで海外の研究者や研究機関とのネットワークの形成を図り、我が国の研究水準を高めていくことが必要である。


1 「留学生30万人計画」骨子(平成20年7月文部科学省、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)

(2) 世界中から人材を集めるための魅力ある場の形成に向けて

 国内外の優秀な研究者の獲得に向けて、研究者に魅力ある活動の場を提供できるトップクラスの研究拠点を構築することは、国際的大競争の中で我が国の研究水準の向上を図る上で不可欠である。このため、文部科学省では平成19年度より、世界から注目される第一線の研究者が集い、優れた研究環境と極めて高い研究水準を誇る「目に見える拠点」として、世界的に高い評価を受けるようなトップレベルの研究拠点の形成を目指した「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」を開始している。
 「世界トップレベル研究拠点」形成の成否のかぎを握るのは、リーダーシップを十分発揮できる拠点長の存在と、拠点長や拠点にいる研究者を強力に支える事務部門長の存在である。このため、同プログラムでは、「目に見える拠点」の顔である拠点長に強力なリーダーシップを与えるとともに、世界トップレベルにふさわしい研究体制として、拠点長のリーダーシップの下、海外から優秀な教授や准教授クラスの外国人主任研究者を主任研究者全体の1~2割程度以上招へいすることや、短期滞在者を含めて、常に研究者全体の3割程度以上を外国人研究者とすることを求めている。また、事務部門長には、拠点長や研究者が常に研究に専念できる環境を管理運営面から強力に支えることを求めている。これらの目標を達成するため、各拠点では、拠点長に対する学長以上の給与の支給、教員選考やプロジェクトの決定に係る拠点長への権限委譲、英語による事務処理に長(た)けた事務部門の設置や豊富な経験を持つ技術スタッフによる英語での技術支援、定年後の特任教員の特例雇用や研究員の契約期間の弾力化といった様々な工夫を自主的に行っているほか、外国人研究者等の生活支援も含めた研究環境の整備にも力を入れて取り組んでいる。
 今後、世界トップレベルの研究環境を実現するため、それぞれの拠点が、従来の制度や慣習にとらわれないシステム改革をより精力的に進めるとともに、拠点の施設・設備を充実し、世界トップレベル研究拠点の拡充を図っていく必要がある。 

3 我が国研究者の海外研鑽(けんさん)機会の拡大等に向けて

 我が国にとって、革新的な科学技術によるイノベーションの創出は喫緊(きっきん)の課題であるが、その原点は「人」である。多様な価値観や文化的背景を持つ研究者と切磋琢磨(せっさたくま)する経験は、研究者の創造性を高め、視野を広げる観点から極めて重要であり、海外とのネットワークを有し、国際的に活躍できる人材を育成するためにも、海外研鑽(けんさん)機会を拡大し、我が国の研究者の国内外の流動性を高めていくことが大きな課題となっている。

(1) 欧米における取組

 研究者の国際流動が重視される中、米国の大学や研究機関では公募による実力主義、競争主義に基づく採用が徹底しており、研究者は自身の出身大学であっても、修了後にそのまま職に就くことができるとは限らない状況にある。結果として、若手研究者はテニュアを得るまでに異なる研究機関を経験することになり、人材の流動化が促進されている。また、実際に大学等に雇用されている研究者であっても、所属機関からは1年間のうち一定期間しか給料が支払われず、残りの期間は外部から資金を獲得する必要が出てくる場合があり、研究者に対し、必然的に外に出て研究や情報発信を行うインセンティブ(誘因)が働いているという指摘もある。このように、米国には研究者の流動化が進む素地が存在している。
 また、欧州では、FP7において、頭脳流出の抑止、域外研究者の獲得と呼び戻しを目的として、欧州域内における研究者の流動性を高めるとともに研鑽(けんさん)機会の充実を図ることで、欧州内外の研究者のキャリア構築を行うプログラムを実施している。
 加えて、米国や欧州においては、学生や若手研究者に対して、海外の機関での教育や研究を経験できるコースやプログラムの充実を図っている。例えば、NSFにおいては、「国際研究教育(PIRE)(1)プログラム」を創設し、学生や若手研究者に対する海外研鑽(けんさん)機会の充実を図っているほか、欧州においても、さきに述べたFP7の一環として、機関レベルでの組織的な若手研究者の交流及び育成を支援する「イニシャル・トレーニング・ネットワーク事業」(2)を行っている。


1 Partnerships for International Research and Education

2 Marie Curie Initial Training Networks(ITN)

(2) 我が国研究者の海外研鑽(けんさん)機会の拡大等に向けて

 我が国においても、各大学の自主的な取組を含め、研究者に対する海外研鑽(けんさん)機会の提供が行われてきた。例えば、日本学術振興会の「海外特別研究員」事業では、我が国の将来を担う、国際的視野に富む有能な研究者を養成・確保するため、優れた若手研究者を海外の大学等に2年間派遣し、自らの研究計画に基づく研究に専念できるよう支援してきたところである。また、文部科学省では、海外の大学等パートナー機関における研究教育活動へ参加する機会を若手研究者に対して組織的に提供するための「若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)」による支援を平成19年度より開始している(第1‐3‐19図)。ITPは、大学院生、ポストドクター、助教等の若手研究者を対象とし、より若い世代への研鑽(けんさん)機会の提供と組織的な送り出しの支援の強化を目指したもので、我が国の大学と海外のパートナー機関との組織的な連携により、若手研究者にパートナー機関における研究教育活動へ参加する機会を提供するものである。
 しかしながら、第1章第2節で述べたとおり、我が国の研究者の海外への異動や派遣は低調であり、国際的な流動性の高まりの中で、我が国の研究者が国際的な研究者のネットワークから取り残されつつあることが懸念されている。このような問題意識から、研究開発力強化法においても、若手研究者等の能力の活用の促進に必要な施策を講ずることや、大学等や研究開発法人における研究者への休暇制度の導入等により人事交流の促進を図ることなどを規定している。また、科学技術・学術審議会の人材委員会においても、長期的な視野で若手研究者を育てる重要性を指摘した上で、我が国の優秀な研究者が海外に挑戦できる環境をより一層整備することや、海外に派遣した優秀な研究者が、我が国に戻って活躍できるような方策を検討すること、海外における我が国の研究者のネットワーク形成等の一層の推進が必要であることが提言されている。
 「我が国の科学技術人材の流動性調査(平成21年1月)」によると、我が国の研究者の海外への流動性が低い理由として、帰国後のポストへの不安や、海外機関へ移籍するためのコネクションがないことを挙げる者が多い(第1‐3‐20図)。また、「科学技術の状況に係る総合的意識調査(定点調査2008)(平成21年3月)」によると、若手研究者が海外の大学・研究機関へ就職・研究留学しない大きな要因として、帰国後のポジションへの不安や、海外への留学に見合う経済的なリターンが期待できないことが挙げられており、海外での研鑽(けんさん)機会が、研究活動を続ける上で必ずしもプラスの要素として働いておらず、研究者のキャリア形成に十分に寄与していない状況にある。加えて、競争的資金等の獲得に必要な研究成果の創出に向けた貴重な戦力である若手研究者が海外に行くことで、大きな戦力低下が起こるとして、若手研究者が所属する研究機関で積極的に海外研鑽(けんさん)を勧められないとの指摘も挙がっている。
 そのため、今後、我が国の将来を担う若手研究者や大学院生・大学生等を海外の大学や研究機関に機動的かつ集中的に派遣するなど、海外での研鑽(けんさん)機会の抜本的拡充を図り、我が国の国際競争力強化の源となる人材の育成を行うことが必要である。また、我が国の大学等や研究開発法人の海外展開、帰国時のポストの確保、研究者の公募・採用時や競争的資金の審査における海外実績の考慮、さらには、海外派遣先とのネットワーク形成の支援等について検討を行うことや、現に海外で活躍している我が国の研究者に対しては、帰国時のポストを可能な限り確保するなどし、我が国に戻って活躍できる機会を十分に与えていくことも重要である。

第1‐3‐19図 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラムの概要

第1‐3‐19図 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラムの概要

資料:文部科学省作成

第1‐3‐20図  我が国から海外への流動性が先進主要国に比べ低い理由

第1‐3‐20図  我が国から海外への流動性が先進主要国に比べ低い理由

資料:科学技術政策研究所・文部科学省「我が国の科学技術人材の流動性調査」(調査資料 No.163)

お問合せ先

科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年03月 --