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平成21年版科学技術白書 第1部 第2章 第3節

第3節 サービスの振興に向けて

1 サービス科学・工学の振興の必要性

 GDPに占めるサービス産業の割合の推移を見ると、 1970年代以降、 世界的な増加傾向にあり、世界経済の中でサービス産業の重要性が高まっている (第1‐2‐8図) 。

第1‐2‐8図  主要国のGDPに占めるサービス産業の割合の推移

第1‐2‐8図  主要国のGDPに占めるサービス産業の割合の推移

資料:経済産業省「通商白書 2007 」
(備考)ここでいう「世界」とは世界銀行「 WDI 」における「 World 」を指す。
(資料)世界銀行「 WDI 」から作成

 我が国においても、サービス産業がGDPの約7割を占め、多くの雇用を支えているが、欧米諸国に比べて生産性が低いなどの問題がある (第1‐2‐9表) 。このため、サービスに科学的・工学的手法を導入することでサービス産業の生産性を向上させるとともに、生活の質の向上、新たな付加価値の創出、新規の学問分野の開拓等を実現することが必要であり、サービス科学・工学 の振興が不可欠となっている (第1‐2‐10図) 。
 サービスを科学的にとらえようとする動きは、特に米国において先進的であり、米国競争力法ではサービス科学の振興が規定されている。また、欧米諸国では、研究資金の措置や専門研究機 関の設立等の振興策が進められており、例えば、英国では、保健等の公共サービスにおけるイノベーションを対象とする「公共サービス・イノベーション研究所」(1)が設立されたところである。


1   Public Services Innovation Laboratory  

第1‐2‐9表  主要国における製造業とサービス産業の労働生産性上昇率の比較
労働生産性上昇率( 1995 ー 2003 )

  製造業(%) サービス産業(%)
米国 3.3 2.3
英国 2.0 1.3
ドイツ 1.7 0.9
日本 4.1 0.8

資料: OECD “ Compendium of Productivity Indicators 2005 ”を基に文部科学省作成

第1‐2‐10図 日常生活に見られるサービス科学・工学の事例

(1)便利な1枚のカード
(非接触型ICカード)
 Felica(フェリカ)は、ソニーが開発した非接触型のIC内蔵カードで、自動改札機やレジでの支払に広く用いられている技術である。平成20年末では国内で約1億枚が発行されている。
 Felicaを初めて採用したのは、1997年に発行された香港のオクトパスカード(Octopus Card)であり、我が国ではJR東日本が平成15年にSuicaで初めて採用した。その後、シンガポール、インド、タイでも用いられるようになるなど、その技術は世界に広がっている。
 朝夕の改札口の混雑緩和に役立つほか、電子マネーとして使用することもできるため、駅の構内や鉄道会社と提携した街中の商業施設でも、たった1枚のカードで様々なサービスを受けられるようになっており、今後も利用機会の増加が期待される。

便利な1枚のカード

資料:ソニー株式会社 Felica ホームページ

(2)動画共有サービスにおけるイノベーション
(Synvie)
 近年、ブロードバンド通信基盤の整備とともに、投稿された動画をインターネットで共有する動画共有サービスが大きな成長を遂げている。
 有名なものとして、米国のYouTubeが挙げられ、世界中から多数の視聴者を集めるだけでなく、2008年の米国大統領選挙では各候補が大規模に活用して話題となった。また、任天堂や角川書店等は広告媒体として活用し、多くの宣伝効果を上げている。
 このような動画共有サービスに係る日本発のイノベーションとしてニコニコ動画の事例が挙げられる。ニコニコ動画は、動画共有サービスにコメントを投稿し掲示できる機能を組み合わせるという優れたアイデアにより、平成19年度のグッドデザイン賞を受賞しただけでなく、メディアアートに革新をもたらした者を表彰するアルス・エレクトロニカ賞を平成20年に受賞した。
 現在行われている動画を通じたコミュニケーションの高度化に関する研究開発の事例としては、名古屋大学大学院博士課程で動画の研究を行っていた山本大介氏(現在は名古屋工業大学助教)が、情報処理振興機構の未踏ソフトウェア創造事業による支援を受けて開発した「Synvie」が挙げられる。この技術は、平成17~19年度には、科学技術振興調整費「生活者支援のための知的コンテンツ基盤」プログラムの支援を受けるなど、名古屋大学大学院情報科学研究科長尾研究室においてその機能等が拡張され、現在も非営利の公開実験サービスが続けられている。
 今後も、動画等を通じたインターネットによるコミュニケーションは世界的に拡大すると想定され、世界的規模でのコミュニケーションによる集合知の形成などのコミュニケーションの高度化をもたらすことが期待される。

動画共有サービスにおけるイノベーション

資料:山本大介・名古屋工業大学助教

2 サービス科学・工学の推進

 これまで、我が国におけるサービス科学・工学に対する取組は米国等に比べ後れていたが、研究開発力強化法第47条において「国は、(中略)社会科学又は経営管理方法への自然科学の応用に関する研究開発の推進の在り方について、調査研究を行い、その結果を研究開発システム及び国の資金により行われる研究開発等の推進の在り方に反映させるものとする」と規定されたことなどを契機として、本格的な取組が開始されつつあるところである。
 同法の成立を受け、文部科学省では「サービス科学・工学の推進に関する検討会」を開催し、平成21年1月には報告書が取りまとめられている。 今後、報告書の提言に基づき、サービス科学・工学の振興を推進していく必要がある。

お問合せ先

科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年03月 --