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平成21年版科学技術白書 第1部 第1章

第1章  我が国の科学技術を取り巻く環境の変化

 2008年のノーベル物理学賞を南部陽一郎・シカゴ大学名誉教授、小林誠・高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授、益川敏英・京都大学名誉教授が、ノーベル化学賞を下村脩・ボストン大学名誉教授ほか2名が受賞した。我が国からの4名の研究者によるノーベル賞の同時受賞は初の快挙であり、同一の賞を複数の日本人が受賞したのも初めてのことであった。この快挙は、これまでの官民による弛(たゆ)まぬ科学技術振興の成果である我が国の研究開発力の高さを世界に示すものであり、我が国の研究者はもとより、広く国民に大きな喜びと誇りを与えることとなった。
 しかしながら、現在、世界的な経済危機が生じており、また、国内においては少子高齢化の急速な進行により、国力の源泉である労働力人口の減少が急速に進んでいる。さらに、地球温暖化問題に代表される地球環境問題が、経済社会の持続的な発展の制約要因として顕在化してきている。
 このような中、我が国は、従来の競争相手であった先進国だけでなく、極めて安い労働コストや優秀な研究人材等を武器に世界市場に参入してきた中国、インド等の新興国との競争にもさらされるところとなっている。これを乗り越えていく上では、4名の研究者のノーベル賞同時受賞に象徴されるような、我が国の高い研究開発力を活いかした革新的な科学技術による新たな価値の創出と経済社会の変革、すなわち、イノベーションの創出によって国際競争力の維持・強化を図っていく以外に道はない。
 しかし、世界では前述の経済危機が起きているだけでなく、イノベーションの在り方そのものまで大きく変わろうとしており、我が国はイノベーションを巡る新たな潮流に直面している。例えば、我が国の企業はいわゆる「自前型」、「垂直統合型」の研究開発システムの下、多くのイノベーションを成し遂げてきたところであるが、グローバルな競争の激化等によってイノベーションのオープン化が進み、基礎研究を担う大学等や研究開発法人(1)の重要性が増している。また、新興国への生産工程等の移行は、エレクトロニクス産業など我が国の強みであったものづくりの競争力を大きく揺るがしている。加えて、知識融合によるイノベーションやシミュレーションの研究開発への活用など、新たなイノベーションの態様が出現するとともに、世界的な研究開発投資の大規模化等を受けて政府の関与が重要になってきている。さらに、イノベーションのオープン化、グローバル化に伴い、研究人材の国際流動の増大とその獲得競争の激化も起きている。
 このため、第1章においては、まず、世界の大転換期において、我が国の科学技術を取り巻く環境にどのような変化が生じているのかを分析する。


1 研究開発力強化法第2条第8項の「研究開発法人」を指す。

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科学技術・学術政策局調査調整課

(科学技術・学術政策局調査調整課)

-- 登録:平成22年03月 --