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コラム7 「ヤング・レポート」に見る米国の競争力政策

 米国が、内外の動きに危機感を抱き、科学技術・イノベーション政策の強化を打ち出したのは今回が初めてではない。
 1980年代、自動車、鉄鋼、半導体等の分野における我が国等との競争により、大幅な貿易赤字を抱えるに至った米国は、様々な対策を講じたが、その中の代表的なものとして、1985年に競争力評議会が取りまとめた「ヤング・レポート」が挙げられる。莫大な貿易赤字と財政赤字のいわゆる「双子の赤字」の状況にあった当時、危機感を抱いた産業界が主体となり、産学官の有識者によって組織された競争力評議会が、競争力強化の施策を求めてレーガン大統領に提出した報告書である。
 同報告書においては、研究開発税制の優遇措置の拡大、共同研究に関する独占禁止法の障壁撤廃、知的財産の保護強化、赤字の解消、政府・産業界・労働組合との間の実効性ある対話等の提案が行われ、その後の米国の科学技術・イノベーション政策に大きな影響を与えた。
 「ヤング・レポート」発表後、マサチューセッツ工科大学が産業生産性調査委員会を発足し、自動車、半導体・コンピュータ等の日米欧の産業競争力のベンチマーク及び今後の米国の政策の在り方をまとめた「Made in America」を1989年に取りまとめている。
 同時に、米国は、新たな先端技術のフロンティアに対する取組も加速させてきている。クリントン政権における全米情報基盤(NII(注))構想の1993年の発表など、米国はIT、バイオテクノロジーなどの新たな分野の研究開発の振興を強く打ち出した。今日、これらの分野において米国が世界を大きくリードするに至っている。

「ヤング・レポート」の4項目の提言

項目 問題点 提言
1新技術の創造・実用化・保護
  • 防衛・宇宙分野重点化による商業化分野の遅れ
  • 民間の研究開発投資不足
  • 大学教職員不足
  • 品質管理等製造プロセスの軽視
  • 模造品等による知的所有権侵害に対する防護の必要性増加
  • 取締規制による阻害
  • 科学技術省創設
  • 研究開発税優遇措置増進
  • 共同研究のため独禁法障壁撤廃
  • 製造技術の改良による新技術商業化
  • 知的所有権の保護強化
  • 産業競争力のニーズと規制の均衡化

2資本コストの低減

(生産資本の供給増大)
  • 低貯蓄率等を背景とした不適正な資本供給
  • 企業資本コストの高騰
  • 税制策と取締規制政策による資本の流れの歪み
  • 赤字解消
  • 税制改革
  • 通貨政策の安定化
  • 資本の流れの効率化を阻害する障壁撤去

3人的資源開発

(労働力の技能・順応性・意欲の向上)
  • 政策立案に当たっての関係者の意見の対立
  • 伝統的な労使の敵対関係
  • 衰退部門の労働者の再就職支援体制の不足
  • 雇用者による従業員訓練不足
  • 大学の資金不足と設備老朽化
  • 初中等教育における中途退学・コンピューター教育の遅れ
  • 政府、産業界、労組の間の実効性ある対話
  • 労使協調化
  • ストックオプション等従業員奨励策の強化
  • 解雇労働者支援
  • 大学・研究所の技術教育支援
  • 実務学校の支援
  • 教育面での連邦と民間の協力
  • 教育技術促進

4通商政策の重視

(貿易を国家優先事業とする)
  • 通商政策決定過程の不統一性
  • 外国の不当な慣行に対処する貿易政策の欠如及び独占禁止法の国際競争の対応の遅れ
  • 多岐に亘る輸出統制
  • 輸出企業への助成不足
  • 国際貿易制度(GATT)の欠陥(サービス・投資面の規程の欠如、不適正な農産物貿易の規程、外国による産業政策拡大・独禁法緩和・研究開発補助金・対外投資規制等の非関税措置に対する適応能力の欠如)
  • 通商政策と投資政策の改善
  • 外国の不当な貿易慣行対処に向けた内国貿易法の見直し
  • 独占禁止法緩和に向けた改正
  • 輸出制限の緩和に向けた輸出管理法の改正
  • 他国並のCOCOM規制の緩和
  • 輸出援助制度拡大
  • 貿易情報の普及
  • 輸出入銀行を活用した輸出融資
  • 国際商社設立の立法化
  • 多国間貿易制度促進

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