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第2部 第3章 第3節 2 知的基盤の整備

 研究開発等の安定的・効率的な推進のためには、実験、計測、分析、評価等といった研究開発の基本となる活動を支える材料、標準、手法、装置等の質・量両面での安定供給及び安全性・信頼性の確保等が必要である。このため、知的基盤(生物遺伝資源(バイオリソース)等の研究用材料、計量標準、計測・分析・試験評価方法やそのための先端的なツール、データベース)の整備を体系的に推進する必要があり、第3期科学技術基本計画において、平成22年(2010年)までに世界最高の水準を目指して整備を促進することとされている。これを受け、平成13年8月に文部科学大臣に答申した「知的基盤整備計画」について、科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会において、平成19年9月に戦略目標への質的観点の取入れや中核的な役割を担う機関等の位置付けなどの事項の付加について取りまとめた。
 文部科学省においては、平成14年度から、ライフサイエンス分野の研究を支えるため、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」を実施している(第2部第2章第2節1(4)参照)。
 計測・分析・試験評価方法やそのための最先端の技術や機器を独自に研究開発していくことは、それらが研究開発活動を支える基盤であるばかりでなく、その研究開発自体が多くのノーベル賞を受賞していることからも分かるように、我が国が科学技術で世界のフロントランナーとしての役割を果たしていくためには極めて重要な課題である。しかしながら、我が国の先端計測・分析機器の海外依存割合は高く、ほとんどを海外企業に依存している(第2−3−19図)。このような状況を踏まえ、平成16年度より世界最先端の研究者ニーズに応えられる世界初のオンリーワン/ナンバーワンの技術・機器開発を推進するための先端計測分析技術・機器開発プロジェクトを実施している。平成19年度は、科学に立脚したものづくりイノベーションを促進するために、ものづくり現場での活用が想定される機器開発についても推進している。厚生労働省においては、ライフサイエンス、特に医学・薬学分野における研究に必要なヒト及び動物由来の培養細胞及び遺伝子の収集・保存を行うマスターバンクを医薬基盤研究所に設置するとともに、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団を通じ研究者等に対する供給を行っている。また、ヒト組織について、平成10年12月16日厚生科学審議会先端医療技術評価部会(答申)「手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発の在り方について」を踏まえ、生命倫理問題にも配慮しながら、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団が、医療機関の協力を得て、研究利用に係る同意の得られた組織を収集し、必要な研究者に分譲する事業を開始した。このほか、医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターにおいて、良質な資源の確保が難しくなってきている薬用植物について、同一形質を持つクローン植物の増殖(マイクロプロパゲーション)技術の研究を行うとともに、薬用植物資源の体系的な収集、保存及び提供を行っているほか、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターにおいて、カニクイザル等の繁殖、共同利用施設を利用する国内の研究者に研究用サルの供給を行っている。農林水産省では、ジーンバンク事業として農林水産業等に係る植物、動物、微生物、林木、水産生物等の生物遺伝資源について、収集、分類・同定、特性評価、増殖及び保存を行うとともに、生物遺伝資源及び生物遺伝資源情報を国立試験研究機関、民間企業、大学等に提供している。また、ゲノム研究等遺伝子レベルの研究成果であるDNA及びDNA情報を収集、蓄積、提供するDNAバンク事業を行っている。さらに、農業生物資源研究所イネゲノムリソースセンターを設置し、ゲノム研究データと試料の一括管理による利便性の向上と民間企業・大学等への円滑な供給体制の確立を図るとともに、一括管理した試料等が有する情報の管理、分析等により、高い精度で関連付けされた試料及びデータ等を提供している。「農林水産生物ゲノム情報統合データベース」については、イネ、カイコ、ブタ等農林水産物のゲノムや遺伝子の情報等を大学・民間企業等の研究者に提供するため、当該情報を統合したデータベースの整備や他生物ゲノム情報等とのリンクによる高精度情報検索システムの構築に取り組んでいる。


先端計測分析機器
(低速・軽イオン励起特性X分析装置)

X線励起源として、電子銃、並びに低速・軽(ガス)イオン銃、Ga(ガリウム)イオン銃を用い、X線検出にエネルギー分散型、並びに小型波長分散型を用いる軽元素分析装置
写真提供:科学技術振興機構

第2−3−19図 主な先端計測・分析機器の国内・国外企業別販売高(平成18年度)

 経済産業省では、産業構造審議会産業技術分科会及び日本工業標準調査会の合同会議である知的基盤整備特別委員会において、毎年知的基盤整備目標の見直しを行っている。計量標準の整備については、産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ(注1))が、国家計量標準機関として計量標準の整備・拡充を行うとともに国際相互承認に向けた取組を行っており、NMIJが開発したものを中心に、平成19年度末までに物理標準271種、標準物質260種の標準が整備されている。また、平成13年度より平成20年度までの計画で遠隔校正のための研究開発を新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究開発として実施している。
 生物遺伝資源情報基盤については、製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源保存部門において、平成19年度には約5,000件の微生物を新たに収集・保存(微生物株総計約4.5万件)し、それらを分譲するとともに、国内の主要な生物遺伝資源機関のデータベースを統合し運営・管理主体として公開している。また、生物遺伝資源開発部門においては、生物多様性条約にのっとり、アジア諸国と覚書きを締結し協力体制を構築し、共同で微生物探索を行うなど、微生物資源の利活用を図っている。ゲノム解析部門においては、生物遺伝資源の利活用を促進するため、産業上有用な微生物7菌の微生物について塩基配列を確定するとともに、ヒトインフルエンザの遺伝子解析を行っている。特許微生物寄託センターにおいては、特許に係る微生物、動物細胞及び受精卵の受託と分譲を行っている。さらに、微生物資源の共同管理・利用を目的とした世界初のアジア地域における政府レベルでの多国間協力の枠組みである「微生物資源の保存と持続可能な利用のためのアジア・コンソーシアム」において、統合データベース構築により参加各国の微生物株情報のネットワーク化を推進するほか、微生物の移転に関する共通指針を作成するタスクフォースを新たに設置するなど、アジア諸国における生物遺伝資源有効活用の基盤整備や利用に関する国際的ルールづくりへの貢献も行っている。また、産業技術総合研究所では、糖鎖関連遺伝子データベースを新たに公開するなどゲノム情報及びプロテオーム情報を用いたデータベース整備を行うとともに、同研究所特許生物寄託センターにおいて特許に係る微生物及び動植物細胞の受託・分譲等を行っている。
 化学物質安全管理基盤の整備としては、化学物質のハザード(有害性)データの収集・整理、それらの安全性の評価を的確に実施するための簡易・代替試験方法、内分泌かく乱物質のスクリーニング試験方法等の開発を行うとともに、新エネルギー・産業技術総合開発機構で化学物質のリスク評価手法開発等の研究開発も行っている。
 人間生活・福祉関連基盤の整備については、製品評価技術基盤機構において、製品の安全で使いやすい設計に資する基本人間特性にかかわるデータの充実・更新、維持管理を行うとともに、福祉用具の機能や性能に関する評価手法の開発等を行っている。
 産業技術総合研究所では、地質情報について、平成19年度に新たに7種類の地質図幅を作成するなど地質の調査を推進している。また、これまで地質情報にかかわる様々なデータベースを整備・更新してきている。平成19年度には、WebGIS技術を取り入れ、既出版の各種の地質図類を統合した「統合地質図データベース(GeoMapDB)」を正式公開した。そのほか、材料データベースの高度化に関する開発等を行っている。研究情報公開データベース(RIO-DB)として有機化合物のスペクトルや分散型熱物性など70種類あまりの各種データベースを整備・更新している。
 国土交通省においては、平成19年5月に制定された「地理空間情報活用推進基本法」に基づき、地理空間情報(注2)の位置を定めるための基準となる「基盤地図情報」の整備に着手した。また、地理空間情報の活用に関する調査研究の実施等を行っている。
 なお、各府省による知的基盤の保存・供給施設の整備状況については第2−3−20表のとおりである。

第2−3−20表 知的基盤の主な整備状況

府省名 開始年度 整備機関名 供給・保存する知的基盤
総務省 昭和15年 情報通信研究機構 周波数国家標準、標準時
文部科学省 昭和55年 理化学研究所 微生物系統
平成9年 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所
生物遺伝資源情報総合センター
生物遺伝資源データベース
平成9年 情報・システム研究機構国立遺伝学研究所
系統生物研究センター
マウス、イネ、大腸菌
平成9年 東北大学加齢医学研究所
医用細胞資源センター
医用細胞
平成9年 岡山大学資源生物科学研究所
大麦・野生植物資源研究センター
大麦・野生植物
平成9年 九州大学農学研究院
遺伝子資源開発研究センター
カイコ
平成10年 熊本大学
生命資源研究・支援センター
遺伝子改変動物
平成11年 京都工芸繊維大学
ショウジョウバエ遺伝資源センター
ショウジョウバエ
平成12年 理化学研究所 高等動植物の培養細胞・遺伝子
平成13年 筑波大学生命科学動物資源センター 遺伝子改変動物
平成14年 ナショナルバイオリソースプロジェクト参画機関(理化学研究所等) マウス、シロイズナズナ、ES細胞等
厚生労働省 大正11年 医薬基盤研究所
薬用植物資源研究センター
薬用植物の種子、培養細胞等
昭和53年 国立感染症研究所
筑波医学実験用霊長類センター
霊長類
昭和59年 国立感染症研究所 遺伝子(バンク)
昭和59年 国立医薬品食品衛生研究所 細胞(バンク)
農林水産省 昭和60年 農業生物資源研究所等 植物、微生物、動物遺伝資源
昭和60年 森林総合研究所 林木遺伝資源
昭和60年 水産総合研究センター 水産生物遺伝資源
平成7年 農業生物資源研究所等 DNA
平成15年 農業生物資源研究所
イネゲノムリソースセンター
イネ突然変異系統、cDNA等
経済産業省 明治15年 産業技術総合研究所
地質調査総合センター
地質情報(20万分の1全124図幅の約93パーセント、及び5万分の1地質図全1,274図幅の約73パーセント等)
明治36年 産業技術総合研究所
計量標準総合センター
計量標準(物理標準271種、標準物質260種)
平成5年 製品評価技術基盤機構 有用微生物、そのゲノム情報、DNAクローンなど生物遺伝資源(微生物約4万株、DNAクローン約4万クローン)
平成8年 製品評価技術基盤機構 化学物質総合管理情報 約4,600物質
国土交通省 昭和45年 港湾空港技術研究所 全国港湾海洋波浪情報網による我が国沿岸における波浪・津波観測情報
昭和37年 港湾空港技術研究所 沿岸域の強震観測情報
環境省 昭和58年 国立環境研究所 微生物系統(1,717株)

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