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第2部 第3章 第2節 3 イノベーションを生み出すシステムの強化

(1)世界トップレベル研究拠点の形成

 優れた頭脳の獲得競争が世界的に激化してきている中、我が国にも、トップレベルの研究者が世界中から集う研究拠点を構築していく必要があるとの問題意識の下、我が国の強い分野における優れた拠点構想に対し集中的な支援を行い、第一線の研究者が是非そこで研究したいとして世界から多数集まってくるような、優れた研究環境と極めて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指す「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPIプログラム)」を推進している(第1−3−2図参照)。本プログラムは、平成19年度から開始されたものであり、この様な「目に見える拠点」を構築していくために、一件当たり十数億円規模の支援を10年から15年にわたって行うこととしており、支援規模、期間の両面で今までにない大型のプログラムとして、平成19年10月に採択された以下の5拠点が活動を開始しているところである。

  • 東北大学「原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)」
  • 東京大学「数物連携宇宙研究機構(IPMU)」
  • 京都大学「物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)」
  • 大阪大学「免疫学フロンティア研究センター(IFReC)」
  • 物質・材料研究機構「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)」

 事業開始後も「世界トップレベル研究拠点プログラム委員会」を中心とした強力なフォローアップ体制を構築し、進捗状況の確認等を行うことにより、「目に見える拠点」の確実な実現を目指している。

(2)研究開発の発展段階に応じた多様な研究費制度の整備

(イノベーション創出を狙う競争的研究の強化)

 基礎研究で生み出された科学的発見や技術的発明については、単に論文にとどまることなく、社会的・経済的価値創造に結びつけ、社会・国民へ成果を還元する必要がある。このため、目的基礎研究や応用研究においては、研究者の知的好奇心の単なる延長上の研究に陥ることのないよう適切な研究のマネジメントが必要である。科学技術振興機構においては、戦略的創造研究推進事業として、イノベーション創出を目指して国が定めた戦略目標の達成のため、研究進捗管理等を行う責任と裁量あるプログラムオフィサーの下、戦略重点科学技術を中心とした基礎研究を戦略的に推進している。また、大学等の研究成果を社会還元するための応用研究として、産学共同シーズイノベーション化事業や独創的シーズ展開事業等を推進している。
 農業・食品産業技術総合研究機構が実施する「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」においては、農林水産・食品産業等への貢献を目指した事業趣旨を研究課題の選考・評価委員に明確に伝えた上で、採択に当たっての審査及び実施課題の評価を行っている。このうち、中間年次となった研究課題については、研究成果の総括及び今後の研究の進め方について中間評価を実施している。これらの結果をプログラムオフィサーが研究者に伝えるなど、事業趣旨に合致した研究課題の実施に向けた取組が行われている。

(先端的な融合領域研究拠点の形成)

 第3期科学技術基本計画では、イノベーションの創出に向けては、世界を先導し得る研究領域を生み出すとの視点から、産業界の協力も得ながら、特定の先端的な研究領域に着目して研究教育拠点の形成のための重点投資を行うことが有効であるとしている。
 文部科学省では、平成18年度から科学技術振興調整費により、先端的融合領域において、産学官の協働による、将来的な実用化を見据えた基礎的段階からの研究開発を行う拠点を形成する機関を支援する「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラムの公募を実施しており、現在18の研究機関において取組が進められている。

(府省を越えた研究費制度の改革)

 総合科学技術会議では、科学技術基本計画の策定、資源配分の調査・審議等に必要なマクロ分析に活用する「政府研究開発データベース」について、所要データの蓄積など構築を行い、公的研究費制度改革を図っている。
 各府省の研究費制度や産学官の研究機関における研究開発は、基礎的段階から実用化段階まで広範にわたっているが、制度や機関を越えて切れ目なく研究開発を発展させ、実用化につないでいく仕組みの構築が求められている。平成19年度には、内閣府所管の沖縄イノベーション創出事業では、関係機関との情報共有を行い、実際に府省を越えて他省の事業との連携事例も創出されている。また、厚生労働省所管の厚生労働科学研究費補助金では、他省庁の研究事業と評価委員会の共有やマッチングファンドを行う事業があり、他省庁との事業の連携及び開発の分担を通じた研究成果の実用化の促進を図っている。そして、農林水産省では、他府省の基礎・基盤的研究で生まれた技術シーズや他分野の研究成果を農林水産分野に応用する研究を実施している。

(3)産学官の持続的・発展的な連携システムの構築

 21世紀は、「知の世紀」と言われており、「知」の創造とその活用を図ることが、我が国の将来の発展に不可欠であり、産学官連携は絶えざるイノベーション創出のための手段として重要である。我が国の産学官連携は最近大きく進んでいるが、世界トップレベルの我が国の大学の研究ポテンシャルから見て必ずしも十分なものではなく、今後の一層の促進が必要であり、各種取組の強化を図っている。
 平成19年6月、産学官連携の一層の推進を図るため、全国の企業・大学・行政等のリーダーや実務者による「第6回産学官連携推進会議」を開催した。産学官の代表による講演に加え、具体的な課題について、分科会形式で実務者レベルでの協議を行った。また、同会議において産学官連携功労者表彰式を実施。産学官連携に多大な貢献をした優れた成功事例に対し、内閣総理大臣賞1件を含む11件の表彰を行った。
 また、平成19年11月には、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、日本学術会議の主催で「第7回産学官連携サミット」を開催した。長期戦略指針「イノベーション25」に描かれる日本を実現するために、持続的なイノベーションの創出と産学官の本格的な協働が求められる中、その具体化に向け、産学官のトップが一堂に会し、産学官の役割と連携の新たな展開について議論を行った。経済産業省は、新エネルギー・産業技術総合開発機構等の協力の下、将来の社会・国民のニーズや技術の進歩・動向等を見据えた『技術戦略マップ』を平成17年に策定、その後毎年改訂しており、平成19年4月には「技術戦略マップ2007」として公表した。経済産業省はこの技術戦略マップを研究開発マネジメントに活用するとともに、幅広く産学官に提供し、研究開発の企画・実施に携わる人々のコミュニケーションツールとしても活用している。
 このような各種取組は我が国におけるイノベーションの創出に寄与するものであると期待されている。

(本格的な産学官連携への深化)

 平成16年4月の国立大学法人化等に伴い、産学官連携は着実に実績をあげており、平成18年度には、大学等と民間等との共同研究件数は1万4,000件を超えた(第2−3−7図)。さらに、特許実施許諾件数は、2,872件にのぼり、大学発ベンチャー数は平成19年3月末時点で累計1,565社を数えている。

第2−3−7図 共同研究実施件数・受入額の推移

 このような産学官連携の実績を踏まえ、更に戦略的・組織的な産学官連携を促進するため、情報通信研究機構では、同機構が構築・運用する最先端の研究開発テストベッドネットワークによる産学官連携研究の推進を行っている。
 文部科学省では、大学等における研究成果を基に将来起業が期待されるものを対象に、基礎研究と製品化開発研究との間の研究開発支援が不足している段階(いわゆる「死の谷」)の研究開発を行おうとする大学等の研究者に対して研究開発費及び事業化に向けた事業化計画作成等のマネジメント経費を助成しているほか、大学等において企業との共同研究の橋渡し等を行う産学官連携コーディネーターを全国の大学・高等専門学校に87名配置(平成19年4月現在)している(第2−3−8図)

第2−3−8図 産学官連携コーディネーター配置図(平成19年4月現在)

 農林水産省では、アグリバイオ実用化・産業化研究により、独立行政法人の有する技術シーズを基に産学官連携による実用化・産業化研究を推進するとともに、企業、大学、独立行政法人、行政機関が一堂に会し、農林水産・食品分野における共同研究・製品開発、事業化や技術移転、市場開拓等のビジネスチャンスにつなげるための交流の場として、アグリビジネス創出フェアを開催している。また、地域の民間企業、大学、地方公設試、地域農業研究センター等で組織された地域バイオテクノロジー懇談会と連携して、講演会・セミナー・展示会等を通したマッチングの促進や共同研究のコーディネート等、産学官連携を進めるための多様な活動を行っている。
 産業技術総合研究所においては、産業技術アーキテクト(研究成果についての知識と、使用者のニーズをともに熟知し、両者を適切につなぐ産業化シナリオを描く職員)を産業界より更に一名採用しその機能を充実させた。産業技術アーキテクト主導の下で実施し、技術シーズから新産業への明確なシナリオを企業、大学、産総研で共有した上で技術、資金、人材を結集してプロトタイプ開発を目指す、産総研産業変革研究イニシアティブについて、持続的社会の礎となる再生可能エネルギー産業の創出を目指すプロジェクトを開始した。また、研究成果の社会還元を加速するため、共同研究の結果得られた共有知財の取扱いを改正し、研究資金の提供等一定の条件を満たす共同研究機関が実施する場合には不実施補償料を請求しないなどの多様な選択肢を導入し、企業との連携の強化を図った。
 また、競争的資金においては、基礎から応用・実用化までの様々な段階、目的に対応した産学官による研究開発事業を実施し、産学官連携による共同研究を支援している。各府省における競争的資金については、科学技術振興機構における産学共同シーズイノベーション化事業、農林水産省における先端技術を活用した農林水産研究高度化事業、経済産業省における大学発事業創出実用化研究開発事業、環境省による環境技術開発等推進費等の制度があり、総合的なプロジェクト研究が推進されている。

(産学官連携の持続的な発展)

―産学官の信頼関係の醸成―

 産学官連携の強化を促進するためには、産業界と大学等の公的研究機関の共通認識の醸成を図ることが不可欠である。このため、国においては、企業と大学が対話する場を提供するとともに、大学等の公的研究機関においては、各機関において成果発表会の開催、年報等の定期刊行物の刊行等を行っているほか、各種学会や学術刊行物への研究論文の発表、特許の公開等により、成果の公開、情報提供が行われている。
 さらに、文部科学省と経済産業省は、科学技術振興機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構と協力し、大学及び公的研究機関における最先端技術の研究成果について、産業界等へ情報発信する全国規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2007−大学見本市−」を開催した。

―大学等の自主的な取組の促進―

 産学官連携活動を推進するに当たり、各大学や研究機関において日常的に生じ得る「利益相反」(注1)に適切に対応していくことが極めて重要となっている。
 特に、臨床研究・臨床試験についてはより慎重な対応が求められるため、文部科学省では、徳島大学に委託し、「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」(平成18年3月)に引き続き、平成19年3月、「利益相反マネジメントのための事例解析集」を公表し、各大学におけるポリシー策定を促進している。
 また、国立大学法人法(平成15年法律第112号)において、承認TLOへ出資することが知的創造サイクルの好循環と研究成果の社会還元の一層の促進が図られるものとして可能となっている。

  • (注1)利益相反:12の双方を含む概念。1教職員又は大学が産学官連携活動に伴って得る利益(実施料収入、兼業報酬、未公開株式等)と、教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状況。2教職員が主に兼業活動により企業等に職務遂行責任を負っていて、大学における職務遂行の責任と企業等に対する職務遂行責任が両立し得ない状態

―大学知的財産本部や技術移転機関(TLO)の活性化と連携強化―

 文部科学省では、大学における特許等の研究成果の原則個人帰属から原則機関帰属への移行を踏まえ、大学から生まれる特許等知的財産の管理・活用を戦略的にマネジメントできる体制を整備するため、平成15年度から、大学知的財産本部整備事業(43件を選定)を開始し、支援に努めている。
 さらに、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号)に基づき、平成20年3月末現在46のTLOが承認を受けており(第2−3−9表)、平成19年3月までの特許実施許諾件数は3,633件となっている。

第2−3−9表 承認TLO一覧

平成20年3月現在:承認TLO 46機関

  機関名 法人格 承認年月日 主な提携大学
外部型(8) 株式会社筑波リエゾン研究所 株式会社 平成11年4月16日 筑波大学
株式会社東京大学TLO(CASTI) 株式会社 平成10年12月4日 東京大学
財団法人生産技術研究奨励会 財団法人 平成13年8月30日 東京大学生産技術研究所
農工大ティー・エル・オー株式会社 株式会社 平成13年12月10日 東京農工大学
株式会社キャンパスクリエイト 株式会社 平成15年2月19日 電気通信大学
株式会社豊橋キャンパスイノベーション 株式会社 平成17年9月5日 豊橋技術科学大学
有限会社山口ティー・エル・オー 有限会社 平成11年12月9日 山口大学
株式会社産学連携機構九州 株式会社 平成12年4月19日 九州大学
広域型(23) 北海道ティー・エル・オー株式会社 株式会社 平成11年12月24日 北海道大学ほか道内の大学等
株式会社東北テクノアーチ 株式会社 平成10年12月4日 東北大学ほか東北地域の国立大学等
タマティーエルオー株式会社 株式会社 平成12年12月4日 首都圏の大学
よこはまティーエルオー株式会社 株式会社 平成13年4月25日 横浜国大、横浜市大ほか神奈川県内の大学等
株式会社新潟ティーエルオー 株式会社 平成13年12月25日 新潟大学ほか新潟県内の大学等
株式会社オムニ研究所 株式会社 平成17年2月24日 長岡技術科学大、長岡高専、兵庫県立大
有限会社金沢大学ティ・エル・オー 有限会社 平成14年12月26日 金沢大学ほか石川県内・北陸地域の大学等
株式会社信州TLO 株式会社 平成15年4月18日 信州大、長野高専
財団法人浜松科学技術研究振興会 財団法人 平成14年1月17日 静岡大学ほか静岡県内の大学等
財団法人名古屋産業科学研究所(中部TLO) 財団法人 平成12年4月19日 名古屋大学ほか中部地域の大学等
株式会社三重ティーエルオー 株式会社 平成14年4月16日 三重大学ほか三重県内の大学等
関西ティー・エル・オー株式会社 株式会社 平成10年12月4日 関西地域の大学等(京都大学、立命館大学等)
財団法人大阪産業振興機構 財団法人 平成13年8月30日 大阪大学ほか大阪府内の大学等
財団法人新産業創造研究機構(TLOひょうご) 財団法人 平成12年4月19日 神戸大学ほか兵庫県内の大学等
財団法人岡山県産業振興財団 財団法人 平成16年4月28日 岡山大学ほか岡山県内の大学等
財団法人ひろしま産業振興機構 財団法人 平成15年10月9日 広島大学ほか広島県内の大学等
株式会社テクノネットワーク四国 株式会社 平成13年4月25日 四国地域の大学等
財団法人北九州産業学術推進機構 財団法人 平成14年4月1日 九州工業大学ほか北九州地域の大学等
株式会社長崎TLO 株式会社 平成16年10月15日 長崎大学ほか長崎県内の大学等
財団法人くまもとテクノ産業財団 財団法人 平成13年8月30日 熊本大学ほか熊本県内の大学等
有限会社大分TLO 有限会社 平成15年8月26日 大分大学ほか大分県内の大学等
株式会社みやざきTLO 株式会社 平成15年5月16日 宮崎大学ほか宮崎県内の大学等
株式会社鹿児島TLO 株式会社 平成15年2月19日 鹿児島大学ほか鹿児島県内の大学等
内部型(15) 知的資産センター 学校法人 平成11年8月26日 慶應義塾大学の学内組織
産官学交流センター 学校法人 平成12年6月14日 東京電機大学の学内組織
科学技術交流センター 学校法人 平成15年9月30日 東京理科大学の学内組織
産官学連携知財センター(NUBIC) 学校法人 平成10年12月4日 日本大学の学内組織
知的財産・ベンチャー育成(TLO)センター 学校法人 平成15年2月19日 日本医科大学の学内組織
知的資産センター 学校法人 平成13年4月25日 明治大学の学内組織
産学官研究推進センター 学校法人 平成11年4月16日 早稲田大学の学内組織
群馬大学TLO 国立大学法人 平成19年12月18日 群馬大学の学内組織
千葉大学産学連携・知的財産機構 国立大学法人 平成18年7月7日 千葉大学の学内組織
東京工業大学産学連携推進本部 国立大学法人 平成19年4月2日 東京工業大学の学内組織
富山大学知的財産本部 国立大学法人 平成19年6月12日 富山大学の学内組織
佐賀大学TLO 国立大学法人 平成17年7月7日 佐賀大学の学内組織
奈良先端科学技術大学院大学産官学連携推進本部TLO部 国立大学法人 平成19年12月18日 奈良先端科学技術大学院大学の学内組織
東海大学産官学連携センター 学校法人 平成20年3月21日 東海大学の学内組織
東京医科歯科大学技術移転センター 国立大学法人 平成20年3月31日 東京医科歯科大学の学内組織

―知的財産活動の円滑な展開―

 大学や研究機関等の研究開発成果の実用化については、科学技術振興機構において、優れた研究成果の発掘、特許化の支援から、企業化開発に至るまでの一貫した取組を進めている。大学等における研究成果の戦略的な海外特許取得を支援、特許等研究成果の開発あっせん・実施許諾の実施、これらの活動の基盤となる人材を育成するとともに、新たに研究成果の応用・発展性の評価分析等による「つなぐ仕組み」の構築を推進するなど、総合的に技術移転活動を支援する技術移転支援センター事業を実施している。また、大学・公的研究機関の研究成果について、技術フェーズや技術移転の形態に応じた各種研究開発プログラム(大学発ベンチャー創出推進等)を実施しており、新たに革新的な研究開発型ベンチャーを活用した開発を推進するプログラムを開始した。

(4)研究開発型ベンチャー等の起業活動の振興

 大学発ベンチャーに係る産学官の各般の取組により、これまでに、全国的には、1,500社を超える大学発ベンチャーが設立されている。科学技術振興機構では、大学発ベンチャー創出に係る研究開発支援として、平成11年度より「プレベンチャー事業」、平成15年度より「大学発ベンチャー創出推進事業」を実施し、平成20年1月末までに64社の新規企業が設立されるに至っている。
 理化学研究所では、研究者が自らの研究成果を中核として創業したベンチャー企業に対し、共同研究における優遇措置等により、研究成果の迅速な普及と実用化を促進する制度を設置している。
 農林水産省では、バイオテクノロジー等生物系先端技術による新産業創出や起業化を促進するため、独創的な発想や研究シーズを生かしてバイオベンチャー創出を目指す民間企業、大学等の研究者による研究開発を支援している。
 経済産業省では、「広域的新事業支援ネットワーク等形成事業」を実施し、大学発ベンチャーを支援するネットワーク構築において、量的拡大のみならず、質的強化を図るための支援をしている。

(5)民間企業による研究開発の促進

 研究開発や産学官連携の成果から新しい製品等の形で市場価値を創造し、最終的にイノベーションの実現につなげていくのは民間企業であることから、民間企業の研究開発を活性化させることが重要である。国としても、民間の自助努力を基本としつつ、その意欲を高めるため、研究開発活動に資する税制措置の活用や、事業化に至るまでの研究開発のリスクを軽減する技術開発制度の充実を図る。

(税制による民間における研究開発活動の促進)

 民間における研究活動の振興を図るため、表のとおり、様々な税制上の措置が設けられている。このうち、平成20年度税制改正の要綱において、試験研究費に係る税額控除については、試験研究費の総額に一定の控除率が適用される従来の措置に加え、試験研究費の増加額に係る税額控除又は売上高に占める試験研究費の割合が10パーセントを超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる措置が平成21年度までの2年間の特例として盛り込まれた(第2−3−10表)

第2−3−10表 主な科学技術振興関係税制

事項 趣旨 内容 根拠 備考
研究開発税制 民間等による研究開発投資の促進 試験研究費に係る税額控除制度
  1. 試験研究費の総額に係る特別税額控除制度
    • (1)試験研究費の総額の一定割合(8パーセント〜10パーセント)を税額控除(ただし、法人税額の20パーセント相当額を限度)(法人税)
    • (2)個人事業者の場合も同様(所得税)
  2. 特別試験研究費の税額控除制度
    • (1)公的試験研究機関(独立行政法人を含む)、大学等との共同試験研究及びこれらに対する委託試験研究について、上記1と合わせてこれらの試験研究に係る試験研究費の額の12パーセント相当額を税額控除(ただし、上記1の特別税額控除額と合計して、法人税額の20パーセント相当額を限度)(法人税)
    • (2)個人事業者の場合も同様(所得税)
租税特別措置法第10条(所得税)、第42条の4、第68条の9(法人税)地方税法附則第8条第1項 平成15年度創設
  1. 中小企業技術基盤強化税制(12の制度に代えて適用)
    • (1)中小企業者等の試験研究費の額の12パーセント相当額を税額控除(ただし、法人税額の20パーセント相当額を限度)(法人税)
    • (2)個人事業者の場合も同様(所得税)
    • (3)(1)の税額控除額を法人住民税の課税標準から控除(地方税)
昭和60年度創設
  1. 試験研究費の増加額等に係る特別税額控除制度
    • (1)以下1又は2を選択適用(1又は3とは別に、法人税額の10パーセント相当額を限度)(法人税)
      • 1試験研究費の額が直近3事業年度の平均額を超え、かつ直近2事業年度の額を超える場合、その平均額を超える額の5パーセント相当額を税額控除
      • 2試験研究費の額が売上高の10パーセント相当額を超える場合、その超える額の一定割合を税額控除
    • (2)個人事業者の場合も同様(所得税)
平成20年度創設
(平成21年度まで)

(出融資等による民間における研究開発活動の促進)

 民間における研究開発活動を促進するため、様々な政府系機関により、技術開発に対する出融資等の制度が設けられている。以下、主なものを紹介する。

・日本政策投資銀行

 新技術の企業化等を通じた我が国産業の国際競争力強化のため、第3期科学技術基本計画で位置付けられた政策重点分野等における新技術の開発に対して日本政策投資銀行が新技術開発融資制度により低利かつ円滑な資金の融資を行っている。

(補助金等による民間における研究開発活動の促進)

1イノベーション実用化助成事業

 民間企業・大学の有する有用な技術シーズの実用化に向けた開発への取組を支援するため、第3期科学技術基本計画における政策重点分野における実用化開発を行う民間企業・TLO等に対し、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ、他の経営資源の活用を考慮した上で、研究成果を最大限に利用した経営(知的資産経営)が実践されるよう、経営者から当該企業の知的資産経営の内容を確認した上で、技術開発費の補助を行っている。

2民間基盤技術研究支援制度

 民間において行われる鉱業、工業、電気通信業、放送業に係る基盤技術に関する試験研究を促進することを目的として実施した。通信・放送技術に関するものについては情報通信研究機構を通じ、鉱工業技術に関するものについては新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ、提案公募により採択した案件につき、継続で委託研究事業を行っている。

3産業技術研究開発事業(中小企業支援型)

 中小企業が有する先進的な技術シーズの実用化を目的として、委託事業により、公的研究機関との共同研究による技術開発を実施した。具体的には、委託を受けた産業技術総合研究所による調達が見込める検査・計測機器に係る研究課題を公募し、採択した案件について中小企業と共同研究を実施することにより、調達機器の事業化・市場化を行った。

(知識融合支援(インテレクチャル・カフェ)事業)

 経済産業省では、先進的な知識融合の取組事例集を作成するとともに、イノベーションの創出に必要な「異分野技術の融合」、「知識の融合」活動に関する普及活動の一環として、平成19年11月、経済協力開発機構(OECD)と共催で「インテレクチャル・カフェ国際シンポジウム」を東京にて初めて開催した。

(産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業)

 農林水産・食品産業分野における新産業・新事業の創出や、食料産業等が直面する諸課題や政策課題の解決に資するため、民間企業等が大学・独立行政法人等の公的研究機関の有する技術シーズを活用して、これらの機関と連携して行う技術開発を推進している。

(民間実用化研究促進事業)

 農林水産業、飲食料品産業、醸造業等の向上に資する画期的な生物系特定産業技術の開発を促進するため、委託事業により民間における実用化段階の研究開発を推進している。

(中小企業技術革新制度(SBIR(注2))

 SBIR制度は、中小企業の新技術を利用した事業活動を支援するため、関係省庁が連携して、中小企業による研究開発とその成果の事業化を一貫して支援する制度である。中小企業の新たな事業活動につながる新技術の研究開発のための補助金・委託費等が、中小企業者に支出される機会の増大を図るとともに、特許料等の軽減や債務保証に関しての枠の拡大等の措置を講じている。平成19年度は、関係7省(総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)で合計89の特定補助金等を指定し、中小企業への支出目標額を約390億円に定めた。

  • (注2)SBIR:Small Business Innovation Research

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