文部科学省本文へ

大臣の部屋 お知らせ 組織関連情報 政策関連情報 公表資料 申請・手続き等 基本・共通 教育 科学技術・学術 スポーツ 文化

第2部 第2章 第2節 7 社会基盤分野

 社会基盤分野は、国民生活を支える基盤的分野である。豊かで安全・安心な社会を実現するために、社会の抱えているリスクの軽減や、国民の利便性の向上に資する研究開発を推進している。

(防災)

 自然災害が多発する我が国において、平成19年も、「平成19年(2007年)能登半島地震」、「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」等、多大な被害を伴う自然災害が発生しており、これらの自然災害による被害の軽減に向けて、災害の未然防止、被害の拡大防止、復旧・復興等に関する科学技術の研究開発を推進していくことは極めて重要である。
 我が国の地震調査研究については、地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号)に基づき設置された地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣。以下「地震本部」という。)の定める「地震調査研究の推進について(平成11年4月)」等の方針の下、関係行政機関等が密接な連携・協力を行い推進している。平成19年度においては、平成21年度から10年程度の地震調査研究の方針となる「新しい総合的かつ基本的な施策(仮称)」の策定に向けた検討を進めた。なお、地震本部では、全国の主要断層帯の評価結果等を基にこれまでの地震調査研究の成果を総合した「全国を概観した地震動予測地図」の改訂版を平成19年4月に公表した。
 地震・火山噴火予知研究については、科学技術・学術審議会の建議による「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)」及び「第7次火山噴火予知計画」(共に平成16〜20年度)に基づき、大学等の関係機関が連携して、総合的・計画的に推進しており、平成19年度においては、21年度から5年間の計画となる「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について」の建議に向けた検討を開始した。
 防災科学技術の研究開発については、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会が平成18年7月に策定した「防災に関する研究開発の推進方策について」等に基づき推進している。
 文部科学省においては、地震本部の方針等に基づき、宮城県沖の海溝型地震、糸魚川−静岡構造線断層帯を対象とした重点的調査観測や、地震計、水圧計等の各種観測機器を備えた海底ネットワークシステムを東南海地震の想定震源域に敷設するための技術開発等を実施している。また、平成19年度より新たに、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトを開始し、複雑なプレート構造の下で発生し得る首都直下地震の発生メカニズムの解明や高層建築物の耐震化に資する研究等を進めている。これらの研究開発プロジェクトにより、地震発生メカニズムの解明や、地震予測精度の向上、さらには地震発生時の被害の軽減等に資することを目指している。さらに、平成19年4月より「防災教育支援に関する懇談会」を開催し、防災科学技術の知見を防災教育に活用していく方策を検討し、同年8月に中間取りまとめを公表した。
 また、「平成19年(2007年)能登半島地震」及び「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」の発生後は、科学研究費補助金及び科学技術振興調整費による緊急調査研究を実施し、これらの地震に関する貴重なデータを取得した。
 防災科学技術研究所においては、鉄骨・橋梁(きょうりょう)構造物等の破壊過程に関するデータを取得・蓄積するため、実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)を利用した耐震実験研究等、地震被害の軽減に資する研究開発を実施している。また、MPレーダ(注1)を用いた土砂・風水害の発生予測に関する研究や、雪氷災害発生予測システムの実用化とそれに基づく防災対策に関する研究、火山噴火予知と火山防災に関する研究等を実施している。さらに、国際協力として、米国、ロシア、イタリア等との間の科学技術協力協定、天然資源の開発利用に関する日米協力(UJNR)の枠組みの下で、防災科学技術に関する二国間の研究協力が進められている。
 衛星等による自然災害観測・監視技術については、宇宙航空研究開発機構において、地図作製、災害状況把握等を目的として平成18年1月に打ち上げられた陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の運用や、準天頂衛星を利用した高精度測位実験技術の研究開発等を行っている。これらは、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」の構成要素として技術開発・運用を行っており、我が国の総合的な安全保障に欠かせない全球規模での人工衛星による観測監視体制を確立し、国内外への貢献を目指しているものである。
 総務省消防庁では、地震発生時等における危険物施設の安全性の確保等に関する研究や災害の被害軽減技術及び災害対応技術の研究等について、消防研究センターを中心として消防防災に関する研究開発を推進している。
 国土交通省等においては、「国土交通省技術基本計画」(平成15年11月国土交通省)、「情報通信研究開発基本計画」(平成12年2月郵政省電気通信技術審議会)等に基づき、先端技術を活用した国土管理技術の開発等の総合的な国土利用に関する研究開発を重点的に推進している。国土地理院では、電子基準点(注2)によるGPS連続観測のほか、超長基線電波干渉計(VLBI)や干渉SAR等の最先端技術を用いた地殻変動やプレート運動の観測、更には同観測データの分析を実施している。
 気象庁では、観測施設の設置・運営に加え、関係機関からの観測データも含めた一元的な情報提供を行うとともに、一般への提供を開始した緊急地震速報の更なる高度化のための技術開発を防災科学技術研究所等と協力しつつ進めている。
 海上保安庁では、海域における測地、海底地形や活断層等の調査を推進している。
 このほか、研究者コミュニティの代表的な機関である日本学術会議では、気候変動災害の予測、地震災害の社会的メカニズムの分析等を行い、平成19年5月、安全・安心な社会の構築へのパラダイム変換等について答申を行った。


今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図
提供:地震調査研究推進本部

  • (注1)MPレーダ(マルチパラメータレーダ):水平と垂直の二種類の偏波を使う気象レーダ。従来のレーダに比べ、高い精度と分解能での降雨量の推定や、雨や雪の区別等が可能となる。
  • (注2)平成20年3月末現在で、全国に1,238か所設置

(テロ対策・治安対策)

 国際的なテロや治安の悪化が指摘される今日、犯罪の少ない安全な社会を実現することは国民にとって最も身近なニーズであり、テロ・治安対策のために最新の科学技術を活用した取組を更に強化することが極めて重要である。
 テロ対策について、文部科学省においては、有害危険物を事前に速やかに検知するため、科学技術振興調整費等に加えて、平成19年度から新たに安全・安心科学技術プロジェクトを開始し、我が国の優れた技術を基盤とした爆発物や生物剤、化学剤検知システムやこれらの危険物を安全に処理する方法の研究開発を行っている。
 犯罪対策については、限られた人的資源の中で犯罪の少ない社会の実現に向けて、犯罪防止・捜査支援・鑑定等の現場等で活用可能な技術・システム開発を重点化して推進することが求められていることから、警察庁では、インターネットの匿名性を悪用する犯罪に対処するための技術、行動科学による犯罪防止・捜査支援、最新の情報処理技術を応用した鑑定・検査手法の開発、3次元顔画像個人識別、DNAプロファイリング、毒物や微細証拠鑑定のための物質同定技術、学校及び通学路における子どもの安全を守る技術に関する研究開発を行っている。また、科学技術振興機構社会技術研究開発センターにおいて、犯罪からの子どもの安全に関する研究開発を推進している。

(交通・輸送システム)

 国民の身近な足としての交通・輸送機関の安全性・信頼性の回復は喫緊の課題であり、今後の航空交通の需要増加や交通機関のオペレータのヒューマンファクター、車両運転者の「発見」、「判断」、「操作」に配慮して、予防安全を徹底するための新たな技術の活用を重点化して推進する必要がある。
 警察庁、国土交通省では、インフラ協調による安全運転支援システムの実用化に向けた取組や、運転者に必要な情報処理能力に関する研究開発を推進している。
 また、将来のより安全・安心で快適な交通・輸送システムの実現に向けた先進的な研究開発に取り組んでいる。
 国土交通省では、将来の高速輸送を目的とする超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けて研究開発を促進するため、財団法人鉄道総合技術研究所への助成等を行っている。また、「大深度地下利用に関する技術開発ビジョン」に基づき、大深度地下を利用する各事業が横断的に必要とする汎用(はんよう)性の高い技術の開発を促進している。
 さらに、航空輸送システムについては、安全性・環境適合性の確保や向上を支えるのみならず、情報通信、ナノテクノロジー・材料等の幅広い分野での技術波及効果も期待されている。
 文部科学省では、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会による「航空科学技術に関する研究開発の推進方策について」(平成18年7月)を踏まえて、新需要対応航空機国産技術、交通・輸送予防安全新技術の研究開発を推進している。具体的には、YS-11以来40年ぶりの国産旅客機の実現に向けて、世界に先駆けた低コスト複合材の大型構造模型の製作、騒音発生メカニズムの解明等の効果を上げている。また、上記分科会による「静粛超音速機技術の研究開発の推進について」(平成19年7月)を受けて、世界をリードする優位技術の獲得を目指した研究開発も進めている。さらに、運航数の増加に対応するため、安全性や効率を向上させる次世代運行システムの研究開発にも取り組んでいる。
 経済産業省では、新需要対応航空機国産技術の研究開発として、環境適応型高性能小型航空機研究開発を推進しており、燃費20パーセント向上、静粛性の向上、安全性向上等高性能なジェット旅客機の開発にも活用される、空力設計技術、炭素繊維複合材技術、操縦・コックピットシステム技術等の要素技術の開発を産学官連携により実施している。また、環境適応型小型航空機用エンジン研究開発において、燃費効率、静粛性等を抜本的に向上させた50席クラスの小型旅客機用エンジンの実用化に向けた技術開発を実施している。さらに、航空機の大幅な軽量化による省エネルギー化、CO2(二酸化炭素)排出量削減を実現するための次世代航空機用構造部材創製・加工技術開発を実施し、その成果を基に日仏産業間の協同研究を進めている。そのほかにも、通常の航空機の巡航速度であるマッハ0.8〜0.9を上回る高速での巡航が可能な航空機の開発に必要な技術に関する調査を、フランスのエコロジー・持続可能な開発・整備省と連携し、関係機関の協力の下実施している。また、航空機の安全性向上及び運行コスト低減に資する先進システム基盤技術の開発、防衛省の次期輸送機(C-X)や救難飛行艇(US-2)等を民間用途に活用する可能性を追求することを目的とした調査を実施している。
 電子航法研究所では、航空交通の安全の確保と円滑化を図るための技術として、空域の有効利用及び航空路の容量拡大に関する研究開発、混雑空港の容量拡大に関する研究開発、予防安全技術・新技術による安全性・効率性向上に関する研究開発などに関する研究を重点的に実施しており、これらの研究は今後の航空輸送の発展を図る上で重要なものとして期待されている。

 なお、平成19年度における社会基盤分野の主な研究課題は第2−2−10表のとおりである。

第2−2−10表 社会基盤分野の主な研究課題(平成19年度)

府省名 研究機関等 研究課題
警察庁 科学警察研究所
  • バイオテロに対応するための生物剤の検知及び鑑定法に関する研究
  • 爆発物の現場処理技術に関する研究
  • 3次元顔画像を用いた個人識別の高度化に関する研究
  • 一塩基多型(SNPs)分析による生体資料からの異同識別検査法の開発
  • 錠剤型麻薬プロファイリングに関する研究
  • 新しい音声通話方法に適応できる話者認識手法に関する研究
  • 連続事件の事件リンク分析と犯人像推定の高度化に関する研究
  • 少年の犯罪被害の防止と被害少年の支援に関する研究
  • 運転者の情報処理能力に関する認知科学的研究
  • 高度な交通事故分析技術の開発
総務省 消防庁
  • 屋外タンク貯蔵所のやや長周期地震動に係る安全対策に関する検討
  • 消防防災技術研究開発制度に要する経費
消防研究センター
  • 現場消火・救助活動、消防装備の飛躍的向上と防災活動支援情報システム
  • 大規模地震時の危険物施設等の被害軽減
  • 様々な用途の建築・施設における火災挙動の把握
文部科学省 研究開発局
  • 首都直下地震防災・減災特別プロジェクト
  • 地震・津波観測監視システム
  • 地震調査研究推進(重点的調査観測)
  • 観測データ集中化の促進
科学技術・学術政策局
  • 安全・安心科学技術プロジェクト
科学技術振興機構
  • 先進的統合センシング技術
理化学研究所
  • ナノ加工薄膜を用いた高感度毒ガス検知装置の開発
防災科学技術研究所
  • 実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)を利用した耐震実験研究
  • 実大三次元震動破壊実験施設の保守・点検等
  • 高感度地震観測施設の更新
海洋研究開発機構
  • 掘削孔長期モニタリングシステム
宇宙航空研究開発機構
  • 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の運用
  • 準天頂高精度測位実験技術
  • 次期災害監視衛星等の研究
  • 国産旅客機高性能化技術の研究開発
  • 静粛超音速研究機の研究開発
科学技術振興調整費
  • 水中セキュリティソーナーシステムの開発
  • テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発
  • 化学剤・生物毒素の一斉現場検知法の開発
  • 手荷物中隠匿核物質探知システムの研究開発
厚生労働省 労働安全衛生総合研究所
  • 災害多発分野におけるリスクマネジメント技術の高度化と実用化に関する研究
経済産業省 新エネルギー・産業技術総合開発機構
  • 環境適応型高性能小型航空機プロジェクト
  • 環境適応型小型航空機用エンジン研究開発
国土交通省 総合政策局技術安全課
  • 緊急・代替輸送支援システムの開発
  • 交通機関におけるテロ対策強化のための次世代検査技術の研究開発
  • ヒューマンエラー事故防止技術の開発
大臣官房技術調査課
  • 高度な画像処理による減災を目指した国土の監視技術の開発
  • 社会資本の管理技術の開発
道路局
  • 運転者から直接見えない範囲の交通事象の情報提供、注意喚起、警告等を行う技術
港湾局
  • 大規模地震に対する構造物の耐震化等の被害軽減技術
  • 津波による局所的現象の予測・シミュレーション技術
  • 巨大地震等による超過外力に対応する技術
  • 国土の保全と土砂収支
  • 漂砂バランス管理技術の開発
  • 構造物の点検・診断と健全度の評価・予測技術
  • 社会資本等のライフサイクルコスト低減技術
航空局
  • IT技術活用による航空交通管理・運航支援技術
国土技術政策総合研究所
  • 降水量予測情報を活用した水管理手法に関する研究
  • 国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究
  • 下水道管渠の適正な管理手法に関する研究
  • ヒューマンエラー抑制の観点からみた道路・沿道環境のあり方に関する研究
国土地理院
  • 地震、火山噴火等による被害軽減のための地殻変動モニタリング・モデリングの高度化と予測精度の向上
土木研究所
  • 衛星情報等を活用した降雨の面的分析情報把握技術
  • 大規模地震に対する構造物の耐震化等の被害軽減技術
  • ロボット等による施工システムの開発
  • 豪雨・地震による土砂災害に対する危険度予測と被害軽減技術の開発
  • 治水安全度向上のための河川堤防の質的強化技術
  • 国土の保全と土砂収支
  • 社会資本等の管理の高度化とライフサイクルコストの低減
建築研究所
  • 普及型耐震改修技術の開発
  • 人口減少・少子高齢化社会に対応した都市・建築の再編手法の開発
  • 既存ストックの再生・活用技術の開発
  • 住宅・建築物における事故リスク評価と安全・安心性能の向上のための技術開発
気象庁気象研究所
  • 東海地震の予測精度の向上及び東南海・南海地震の発生準備過程の研究

前のページへ

次のページへ