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第2部 第2章 第2節 5 エネルギー分野

 我が国は、「エネルギー政策基本法」(平成14年6月法律第71号)に基づく「エネルギー基本計画」(平成19年3月閣議決定)を定め、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進している。

(1)エネルギー源の多様化

(原子力エネルギーの利用の推進)

 原子力エネルギーは、発電過程において二酸化炭素を排出せず地球温暖化対策に資するほか、供給安定性に優れている準国産エネルギーである。今日では、原子力発電は我が国の総発電電力量の約3分の1を占め、今後とも基幹電源として位置付け推進していくこととしている。
 我が国の原子力の研究、開発及び利用は、「原子力基本法」(昭和30年12月制定)にのっとり、厳に平和目的に限り、安全の確保を前提に行っており、政府は「原子力政策大綱」(平成17年10月)や「エネルギー基本計画」の下、原子力の研究開発利用を着実に推進している。

1次世代軽水炉

 現在、我が国の原子炉の主流である軽水炉については、2030年(平成42年)前後から見込まれる国内既設原子力発電所の大規模な代替需要に備え、世界市場で競争力を有する日本発の次世代軽水炉を官民一体となって開発することとし、平成18年度からこれに向けたフィージビリティスタディを実施している。

2高速増殖炉(FBR)サイクル技術

 高速増殖炉(FBR)サイクル技術は、「第3期科学技術基本計画」に基づく「分野別推進戦略」(平成18年3月)において戦略重点科学技術及び国家基幹技術として位置付けられた。政府は、「エネルギー基本計画」において、高速増殖炉サイクル技術を、「国として最重点課題の一つとして推進する」としている。また、経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力部会は「原子力立国計画」(平成18年8月)を、文部科学省科学技術・学術審議会原子力分野の研究開発に関する委員会は「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」(同年10月)を、原子力委員会は「高速増殖炉サイクル技術の今後10年程度の間における研究開発に関する基本方針」(同年12月)をそれぞれ取りまとめた。
 これらの報告書では、「ナトリウム冷却高速増殖炉、先進湿式法再処理、簡素化ペレット法燃料製造」の組合せを、現在の知見で実用施設として実現性が最も高いと考えられる実用システム概念(主概念)に選定するとともに、今後は高速増殖炉サイクルの本格的な実証・実用化段階への移行を目指した「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」を実施するとし、国際協力も活用しつつ、主概念を中心に要素技術の研究開発を進めることとした(第2−2−5図、第2−2−6図)


高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)
写真提供:日本原子力研究開発機構

第2−2−5図 ナトリウム冷却炉における技術開発課題

第2−2−6図 先進湿式法再処理、簡素化ペレット法燃料製造の技術開発課題

 特に高速増殖原型炉「もんじゅ」については、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核と位置付け、平成20年度に運転を再開し、10年程度以内を目途に発電プラントとしての信頼性の実証及びナトリウム取扱技術の確立等の所期の目的を達成するとしている。日本原子力研究開発機構においては、平成19年8月に改造工事を完了し、プラント全体の健全性の確認試験を行うなど、運転再開に向け安全を第一として取組を実施している。
 現在、平成22年には実用施設に採用する革新技術を決定し、平成27年には安全性、経済性、資源有効利用性、環境負荷低減性、核拡散抵抗性に係る開発目標を達成できる高速増殖炉サイクルの実用化に至るまでの研究開発計画を、国による評価を実施した上で提示する予定である。
 また、研究開発側と導入者側とが連携協力し、研究開発段階から実証・実用化段階に円滑な移行を図ることが今後の実用化に向けて重要であるとの認識の下、平成18年7月には経済産業省、文部科学省、電気事業者、メーカー、日本原子力研究開発機構の関係者からなる、「高速増殖炉サイクル実証プロセスへの円滑移行に関する五者協議会」を設置し、所要の検討を開始した。当該協議は同年12月に、明確な責任体制の下で効率的に高速増殖炉開発を実施できるよう、中核メーカー1社に責任と権限及びエンジニアリング機能を集中することとする方針を決定し、平成19年4月に、中核企業を選定した(第2−2−7図)

第2−2−7図 研究開発の推進体制

3ウラン濃縮・新燃料

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存する我が国は、将来の世界のエネルギー需要を展望し、長期的なエネルギー安定供給の確保と環境への負荷の低減を図るため、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの確立に向けた取組を進めている。
 プルトニウム利用に当たっては、核拡散についての国際的な疑念を生じないよう、核物質管理に厳重を期すことはもとより、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を一層明らかにする観点から、プルトニウム利用の徹底した透明化を進めている。具体的には、毎年、「我が国のプルトニウム管理状況」を関係府省が原子力委員会に報告・公表するとともに(平成19年は9月18日に報告)、「国際プルトニウム指針」にのっとり、IAEAに報告しているほか、電気事業者等が当該年度に抽出する予定のプルトニウムの利用目的等を記載したプルトニウム利用計画を公表し、原子力委員会が公表された利用目的の妥当性の確認を行っている(平成20年度のプルトニウム利用計画は、平成20年3月7日に公表)。
 エネルギー安定供給確保の観点から我が国の軽水炉に必要となるウラン資源や核燃料サイクル各工程の役務を将来にわたって安定的に確保していくために、原子力発電の燃料である濃縮ウランについては、経済性を考慮しつつ、国内でもウラン濃縮事業を展開している。現在、平成22年度ごろからの導入を目指し、より高性能で経済性に優れた新型遠心分離機の研究開発を官民一体となって進めている。

4使用済燃料再処理技術

 我が国は使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則としており、青森県六ヶ所村に我が国初の商業用再処理工場(年間再処理能力800tU(トン・ウラン))を建設し、平成20年5月の竣工を目指して、使用済燃料を用いた最終的な試験(アクティブ試験)を実施している。六ヶ所再処理工場の建設・運転により商業規模での再処理技術の着実な定着を目指しており、核燃料サイクルの確立に向けた展開を図っている。
 また、現在、東海再処理施設では、新型転換炉「ふげん」の使用済燃料の再処理を実施している。なお、これまでに再処理した使用済燃料は累積で1,140t(トン)に達している。プルトニウム、回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特徴を持つ原子炉として自主開発を進めてきた新型転換炉「ふげん」については、平成15年3月に運転を終了し、平成15年9月末に成果を取りまとめ、事業を終了した。平成20年2月に原子炉廃止措置研究開発センターに改組し、安全性実証等の調査研究を行いつつ、機器等の解体を順次実施し、平成40年度までに完了する予定としている。

5高レベル放射性廃棄物等の地層処分

 戦略重点科学技術である高レベル放射性廃棄物等の地層処分技術に関する研究開発は、国による安全規制を支える技術を確立し、高レベル放射性廃棄物等の最終処分を進める上で不可欠であり、着実に推進する必要がある。現在、日本原子力研究開発機構を中心に、関係研究機関との密接な協力の下、研究開発を進めており、日本原子力研究開発機構では、岐阜県瑞浪市(結晶質岩)及び北海道幌延町(堆積岩)において深地層の研究施設計画を推進している。

6原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物処理・処分

 原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分については、原子力施設の設置者及び放射性廃棄物の発生者としての責任において計画的かつ効率的に進めていくことが重要である。日本原子力研究開発機構においては、発生する放射性廃棄物の安全で合理的な廃止措置や放射性廃棄物の処理・処分、放射性廃棄物量の低減や資源の再利用の実現に向け、廃止措置エンジニアリングシステムや放射能測定評価技術などの技術開発を進めている。

7核融合エネルギー

 将来のエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーについては、国際協力を効率的に活用しながら、日本原子力研究開発機構、核融合科学研究所、大学等が、相互に連携・協力して研究開発を推進している。
 国内においては、トカマク方式(注1)(日本原子力研究開発機構、臨界プラズマ試験装置JT-60)、ヘリカル方式(注2)(核融合科学研究所、大型ヘリカル装置LHD)、レーザー方式(注3)(大阪大学レーザーエネルギー学研究センター、激光102号)の3方式による研究開発を進め、世界を先導する成果を上げている。

臨界プラズマ試験装置JT-60
写真提供:日本原子力研究開発機構
大型ヘリカル装置LHD
写真提供:核融合科学研究所
爆縮レーザー「激光102号」(右)と加熱レーザー「LFEX」(左)
写真提供:大阪大学

 さらに、我が国は、核融合エネルギーの科学的及び技術的可能性の実証を目指したITER(イーター:国際熱核融合実験炉)計画(注4)に主導的に参画するとともに、ITER(イーター)計画を補完・支援する先進的研究開発プロジェクトとして、核融合エネルギーの実現に向けた日・欧州原子力共同体核融合エネルギー協定(以下、「幅広いアプローチ協定」)を、日欧協力により我が国で実施している。幅広いアプローチ協定は2007年(平成19年)6月、イーター国際核融合エネルギー機関設立協定(以下、「ITER(イーター)協定」)は2007年(平成19年)10月に発効し、本格的に活動を開始した。
 また、核融合分野における二国間協力では、米国、欧州、韓国に続き、2007年(平成19年)12月に、中国と核融合研究協力実施取決めを結んだ。


ITER(イーター)機構の発足(平成19年10月)
写真提供:ITER(イーター)機構

  • (注1)トカマク方式:コイルとプラズマ電流が作る磁場によりねじれた磁場をつくり出すことで、加熱プラズマを閉じこめ、核融合反応を起こす方式
  • (注2)ヘリカル方式:コイル自身をねじり、ねじれた磁場をつくり出すことで、加熱プラズマを閉じこめ、核融合反応を起こす方式
  • (注3)レーザー方式:レーザーを照射して爆縮された超高密度の核融合燃料を、超高強度レーザーで加熱することによって、核融合反応を起こす方式
  • (注4)ITER(イーター)計画:日本・欧州・米国・ロシア・中国・韓国・インドの7極の協力の下、フランスにおいて、核融合実験炉の建設・運転を行う国際共同研究開発プロジェクト

8原子力基礎・基盤研究開発

 原子力基礎・基盤研究開発は、原子力利用に係る技術基盤を高い水準に維持するとともに、新たな知識や技術を創出するなど、原子力の利用と発展を支えるものとして重要である。日本原子力研究開発機構では、核工学・炉工学研究、燃料・材料工学研究、環境・放射線工学研究、先端基礎研究、高度計算科学技術研究等の基礎・基盤研究を行っている。

9核不拡散への取組

 我が国では、1975年(昭和50年)に核不拡散条約(NPT)を批准したことに対応して、IAEAと1977年(昭和52年)に包括的保障措置協定を締結し、核物質が核兵器等に転用されることを防止するための手段であるIAEAの「保障措置」を受け入れるとともに、関係法令に基づき国内保障措置体制を整備した。また、国際的な指針を踏まえて核物質の盗取や原子力施設への妨害破壊行為を防ぐための「核物質防護」を実施しているほか、これらに必要な技術開発を進めている。
 保障措置については、協定締結以降、IAEAより「申告された核物質の核兵器等への転用はない」旨の結論を得てきた。また、1999年(平成11年)には保障措置強化のための追加議定書を締結し、IAEA保障措置の強化・効率化に積極的に対応した結果、2004年(平成16年)には、IAEAより2003年(平成15年)の我が国について、未申告の核物質が存在せず「すべての核物質が平和的活動の中にとどまっている」との結論が初めて得られ、以後同結論が維持されている。この結論により、査察回数の削減によりIAEA保障措置を効率化する「統合保障措置」が実施されている。
 また、保障措置上重要な施設で、平成20年に本格操業の開始が予定されている六ヶ所再処理施設及び今後着工が予定されている六ヶ所MOX(混合酸化物)燃料加工施設の効果的・効率的な保障措置を実施するため、保障措置手法の確立・高度化などの体制整備を行っている。さらに、核物質計量管理技術向上のための国際トレーニングコースを開催した。
 日本原子力研究開発機構では、保障措置のための技術開発や効率的・効果的な核物質管理に資する技術開発、次世代原子力システムのための保障措置技術開発を進めている。また、核不拡散関連の技術開発を積極的に進め、先進的リサイクル技術の研究開発など、核不拡散にも配慮した研究開発に取り組んでいる。
 このほか、あらゆる核爆発を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准しており、放射性核種に関する国際監視制度の整備等に取り組んでいる。

10高温ガス炉等の革新的原子力システム

 日本原子力研究開発機構では、多様なエネルギー供給を可能とする高温ガス炉技術及び水素製造等の熱利用技術の確立を目的として、高温工学試験研究炉(HTTR)の試験運転による高温ガス炉の特性評価、水を熱分解することにより水素を製造するISプロセスの研究開発等を進めている。平成19年度には、HTTRにおいて初めて定格出力30MW(メガワット)(出口温度850度)で30日間の連続運転を達成した。


高温工学試験研究炉(HTTR)
(茨城県大洗町、大洗研究開発センター)

写真提供:日本原子力研究開発機構

(原子力安全の確保)

 原子力研究開発利用に当たっては、安全の確保が大前提であり、厳重な規制と管理、安全研究の実施等を通じて、安全確保に万全を期すことが必要である。また、事故発生の可能性を100パーセント排除することはできないとの前提に立って、事故が生じた場合の周辺住民等の生命・健康等への被害を最小限度に抑えるための災害対策を整備する必要がある。
 我が国の原子力研究開発利用については、原子炉等規制法等に基づいて施設の設計・建設・運転の各段階において、他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制を行っている。同様に、医療、農業、工業など様々な分野で利用されている放射性同位元素や放射線発生装置についても、その利用に伴う放射線障害を防止するため、放射線障害防止法に基づいた安全規制を実施している。
 原子力防災対策としては、「原子力災害対策特別措置法」に基づき、原子力防災専門官の配置、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)の整備・維持、防災訓練の実施といった取組を行い、原子力防災対策の充実・強化を進めている。
 環境放射能調査としては、文部科学省を中心とした関係省庁、都道府県及び原子力事業者において、原子力施設周辺における放射能調査を引き続き実施しているほか、我が国の環境放射能水準に関する調査及び原子力艦寄港に伴う放射能調査等を行っている。平成20年夏に予定されている横須賀港への米国原子力空母の母港化に向け、放射能調査に係る対応・体制の強化を図っている。
 また、原子力安全委員会では、平成16年7月に策定した「原子力の重点安全研究計画」(以下、「重点安全研究計画」という。)の実施から3年が経過し、重点安全研究計画の進捗状況や成果の活用状況等について中間評価を実施した。本中間評価結果を踏まえ、重点安全研究計画の必要な見直しを行っている。
 なお、平成19年初頭に、電力会社において原子炉の自動停止に係る未報告事例が公表されたことを踏まえて、文部科学省では、日本原子力研究開発機構及び大学等に対して原子炉の自動停止に係る報告漏れの有無に関する調査の指示を出し、法令に基づく報告漏れはなかったことを確認した(平成19年4月27日発表)。また、平成19年6月に日本原子力研究開発機構において管理区域外の放射能汚染が未報告であった事例が確認されたことを踏まえ、調査を指示したところ、安全性や設備の健全性が損なわれるものはなかったが、46件の不適切な事例が確認されたため、厳重注意を行った(平成19年8月31日発表)。
 さらに、近年、核物質や放射性物質を用いたテロ行為を防ぐことの重要性が高まっていることを踏まえ、「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」の的確な実施を確保するため、「放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(放射線発散処罰法)」が平成19年5月に公布された(同年9月施行)。

(原子力科学技術の推進と原子力の研究・開発・利用の基盤整備)

1原子力科学技術の推進

 原子力科学技術には、加速器や高出力レーザーを利用した量子ビームテクノロジーの開発や利活用により、自然界の基本原理を探究するとともに、ライフサイエンスや物質・材料等の様々な科学技術分野の発展を支える基礎・基盤的な研究がある。
 量子ビームテクノロジーについては、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で、世界最高強度の陽子ビームを発生・利用して、生命科学、物質・材料科学、原子核・素粒子物理学等の新展開をもたらす「大強度陽子加速器(J-PARC)計画」を推進しており、平成20年度からのビーム供用開始を目指して建設・整備を進めている。また、理化学研究所においては、水素からウランまでの全元素の放射性同位体(RI)を世界最大の強度で発生させる加速器施設「RIビームファクトリー」計画を推進しており、平成18年度からRIビーム発生系施設を稼働させたほか、本格実験の開始を目指して実験設備の整備を進めている。
 また、各府省の所管する国立試験研究機関等において、物質・材料、生体・環境、システムの3基盤技術分野の先端的基盤研究を進めているほか、個別の研究機関単独では速やかに成果を得ることが困難な多岐にわたる技術開発要素の研究開発を、複数の研究機関間の積極的な研究交流の下に推進するクロスオーバー研究も実施している。

2放射線利用の普及

 放射線は基礎・応用研究から医療、工業、農業等の実用に至る幅広い分野で活用されており、研究開発を進めつつ放射線利用の普及を図っていくことが重要である。
 各種分野における放射線利用の状況としては、医療分野において、放射線による診断やがん治療が一部実用化されており、現在、より生活の質(QOL)の高い、陽子線、中性子線、重粒子線等の粒子線によるがん治療の研究開発が行われている。粒子線による治療は、麻酔や切開を伴う手術の必要がないため患者への負担が少ないなどの利点がある。特に、重粒子線がん治療は、線量の集中性が高いため、ピークの部分をがんの患者に合わせることによる正常組織の障害を少なくすることができる治療法である。例えば、放射線医学総合研究所においては、平成19年8月までに3,400例を超える治療が行われた。また、装置の小型化研究等も進められ、その成果を基に、平成18年度から群馬大学で技術実証機の建設を開始している。筑波大学陽子線医学利用研究センター等では陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。
 農業分野では、農作物の品種改良やばれいしょの発芽防止等に、工業分野では、非破壊検査や工業計測、高分子材料の改質などに放射線が利用されている。そのほか、イオンビーム、ガンマ線、電子線などによる環境保全技術等の開発を進めている。

3研究施設等廃棄物の処分

 現在、研究施設、医療施設等から発生する放射性廃棄物(研究施設等廃棄物)は処分されず、各事業者において貯蔵されている状況であるが、この廃棄物の処分の実現は、今後も原子力の研究、開発及び利用を推進していく上で重要な課題である。
 このため、文部科学省では、早急に処分を実現することを目指し、研究施設等廃棄物の発生量が最も多く、かつ技術的能力を有する日本原子力研究開発機構が、自ら及び他の事業者の廃棄物を合わせて処分するという体制を整備すべく、検討を進めている。

4信頼確保に向けた取組と立地地域との共生

 原子力研究開発利用の円滑な推進のためには、まず原子力に対する国民の信頼を得ることが極めて重要である。そのためには、原子力関係者が安全運転の実績を積み重ねていくとともに、国民との相互理解を図る努力が不可欠である。このため、広聴・広報活動を通じて国民との双方向の対話と透明性の確保を図り、また、教職員を対象とした原子力・エネルギーに関するセミナーや簡易放射線測定器の貸出し等により、学校教育における取組を支援するなど、原子力に対する理解増進活動を行っている。
 また、立地地域と原子力研究施設の共生に向け、電源三法交付金等を活用し、立地地域が主体的に行う取組を支援している。

5原子力国際協力

 原子力国際協力に当たっては、平和利用、核不拡散の担保、安全の確保、核セキュリティの担保を求めることを大前提として、積極的な協力を行っている。
 アジア諸国との原子力協力については、我が国が主導するFNCA(注5)の枠組みの下、ワークショップを開催し、技術交流を進めている。2007年(平成19年)12月に我が国で開催された第8回閣僚級会合においては、「持続的発展に向けた原子力エネルギーの平和利用に関する共同コミュニケ」を発出した。また、IAEA活動の一環であるRCA(注6)の枠組みの下、技術支援等を行っている。また、アジア諸国を対象とした研修事業を実施し、原子力関係者の資質向上を図っている。
 次世代原子力システムの研究開発については、GIF(注7)において、ナトリウム冷却高速炉に関する議論を主導するなど、積極的に参画している。
 また、米国が提唱したGNEP(注8)に我が国も参加し、運営グループの副議長を務めるなど、中心的役割を担っている。2007年(平成19年)5月の第1回閣僚級会合(日本・米国・フランス・中国・ロシア)では、核不拡散に合致する核燃料サイクル推進及び原子力発電拡大における協力の必要性に関する共同声明を発出した。同年9月の第2回閣僚級会合では、GNEPのパートナー国の拡大及びGNEPの基本構造を示す「運営文書」を策定し、当初の5か国に11か国が加わって、「原則に関する声明」に署名を行った。その後5か国が新たに署名し、パートナー国は2008年(平成20年)2月現在21か国となっている。
 このほか、IAEA、OECD/NEA(注9)への特別拠出金事業等を通じた多国間協力を継続して行っている。

  • (注5)FNCA:Forum for Nuclear Cooperation in Asia(アジア原子力協力フォーラム)
    アジア諸国が原子力技術の平和的で安全な利用を進め、社会・経済的発展を促進することを目指す枠組み。参加国は、日本、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの10か国
  • (注6)RCA:Regional Cooperative Agreement for Research, Development and Training Related to Nuclear Science and Technology(原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定)IAEA活動の一環として、アジア・太平洋地域の開発途上国を対象とした原子力科学技術に関する共同の研究、開発及び訓練の計画を、締約国間の相互協力及びIAEAとの協力により、促進及び調整することを目的とする枠組み。締約国は、日本、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムの17か国
  • (注7)GIF:Generation-4 International Forum(第4世代原子力システムに関する国際フォーラム)
    次世代(第4世代)の原子力システムの研究開発を国際協力により進めるための取極に基づいた協力で、参加国は、日本、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、中国、フランス、韓国、ロシア、南アフリカ共和国、スイス、英国、米国の12か国とユーラトム
  • (注8)GNEP:Global Nuclear Energy Partnership(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)
    米国が提唱した、核不拡散を確保しつつ原子力発電を世界的に発展拡大させるための構想。現在のパートナー国は、日本、米国、フランス、中国、ロシア等、21か国
  • (注9)OECD/NEA Organisation for Economic Co-operation and Development / Nuclear Energy Agency(経済協力開発機構/原子力機関)

(再生可能エネルギー等の利用の推進)

 太陽光、バイオマス・廃棄物、風力等の再生可能エネルギーについては、現時点で出力の不安定性やコスト面での課題があるものの、地球温暖化対策に資することや資源制約が少ないなどの長所があることから、課題を解決し、導入・普及の促進を図るため技術開発を積極的に推進していくことが必要である。

1太陽光発電

 太陽光発電は価格の低下等により導入が進みつつあるが、早期の市場自立化を実現するためには、なお一層のコストダウン技術の開発等が不可欠である。このため、経済産業省では低コスト・高効率化の実現に向けた技術開発を推進するとともに、リサイクル・リユース技術等の開発を進めている。

2バイオマスエネルギー

 「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成18年3月閣議決定)を踏まえ、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省において、家畜排せつ物、木質系廃棄物、有機汚泥、食品廃棄物等のバイオマスを活用し、高効率にエネルギー転換する技術等の研究開発を進めている。
 特にバイオ燃料については、平成19年2月に関係府省から成る「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」において策定し、内閣総理大臣に報告した国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表に基づき、北海道(2か所)や新潟県においてバイオエタノールの本格的導入に向けた大規模実証事業を実施するとともに、食料供給と競合しない稲わらや間伐材等のセルロース系原料等からエタノールを効果的に生産する技術開発を重点的に推進している。

(水素/燃料電池)

 環境特性に優れ、様々なエネルギー資源の利用が可能であるとともに、民生部門や運輸部門における省エネ効果が見込まれる燃料電池システム及びその燃料である水素の製造・貯蔵・輸送技術に関する研究開発の推進が必要である。
 特に、水素等の燃料と酸素の化学反応により直接電力を得る燃料電池は、高効率で窒素酸化物(NOX)・硫黄酸化物(SOX)を排出しないことから、エネルギー・環境技術のキーテクノロジーとして期待されている。燃料電池については自動車用、定置用等を中心に開発が進んでいるが、その実用化・普及には耐久性等の性能や経済性向上等が課題である。このため、文部科学省では燃料電池の性能向上のため新素材等の開発を、経済産業省では燃料電池本体の要素技術の研究開発、水素燃料の製造・輸送・貯蔵等の水素エネルギー利用技術等周辺技術の研究開発、大規模な家庭用燃料電池システムの実証や燃料電池自動車及び水素供給設備等の実証研究等を実施し、国土交通省では集合住宅用燃料電池システムの実証試験等を支援している。
 また、総務省消防庁では、燃料電池の普及の動向を注視し、情報の収集や安全確保対策の充実に努めている。

(化石燃料の開発・利用の推進)

1石油

 原油の重質化や石油製品需要の軽質化への対応が求められており、製油所の高度化を促進するために、経済産業省では、重質油から付加価値の高い石油化学原料を得る技術をはじめとする革新的な石油精製技術の開発等を進めている。
 また、石油精製の高度化・効率化や石油コンビナートにおける異業種間の連携による省エネルギー・省資源の取組を進めるための技術開発が重要となっている。このため、経済産業省では、製油所におけるプロセスの効率化、石油コンビナートにおいて生ずる副生成物の有効活用等の技術開発を進めている。

2石炭

 石炭は石油等に比べ供給安定性に優れているが、他の化石エネルギーに比べ燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が多いことなどから、環境への負荷低減を図るための技術開発が必要である。このため、経済産業省では、石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)による高効率発電技術など石炭のクリーンな利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)の開発を進めている。
 さらに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術について、中長期的な観点から研究開発を進めている。

3天然ガス等

 天然ガスは他の化石エネルギーと比べて、燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が少ないなど環境負荷が小さいことから、その利用促進に資する研究開発を進めることが重要である。このため、経済産業省では、液体燃料等への形態変換により利用範囲の拡大を図ることを目指した天然ガス等の液体燃料化(GTL)やジメチルエーテル(DME)の製造・利用技術等に関する研究を進めている。また、日本近海に相当量の賦存が期待されているメタンハイドレートをエネルギー資源として利用するため新たな採取技術の開発を進めている。

(2)省エネルギー対策の推進

 地球温暖化防止、有限なエネルギー資源の有効活用などの観点から、個々の機器、要素技術の効率性向上とともに、未利用エネルギーの活用など社会システム全体においてエネルギー供給及び利用の効率性向上等を図るための研究開発を推進することが重要である。また、各種製品の生産、利用、再利用、廃棄及び各種サービス等で直接・間接に消費されるすべてのエネルギー(ライフサイクルエネルギー)の低減を視点とした研究開発を推進することが必要である。
 このため、経済産業省では、省エネルギー技術開発の実効性を高めるために、シーズ技術の発掘から実用化に至るまでの省エネルギー技術戦略を構築し、同戦略に沿って研究開発等を戦略的に進めている。

(3)その他

 エネルギーと環境の問題は、自然科学と社会科学の両面からの研究を必要とする総合的な課題である。また、2008年(平成20年)7月に北海道洞爺湖で開催されるサミットにおいては、環境問題が主要テーマの一つとなる。当サミットに向け、日本学術会議は、インターアカデミーカウンシル(IAC)が2007年(平成19年)10月に公表した報告書「持続可能なエネルギー:未来への指針−“Lighting the Way: Toward a Sustainable Energy Future”」の取りまとめ及び広報に協力した。
 平成19年度におけるエネルギー分野(原子力以外)の主な研究課題は第2−2−8表のとおりである。

第2−2−8表 エネルギー分野(原子力を除く)の主な研究課題(平成19年度)

府省名 研究機関等 研究課題
総務省 消防庁
  • 新技術・新素材の活用等に対応した安全対策の確保
文部科学省 大学等
  • 新エネルギー・省エネルギーに関する研究
  • 一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化
  • 従来型に比べて高性能・低コストな燃料電池の開発
物質・材料研究機構
  • 超高温で長時間の使用に耐える新耐熱材料の開発
  • エネルギーの効率利用に寄与する、加工性に優れた超軽量・高強度の構造材料の開発
農林水産省 農業・食品産業技術総合研究機構
  • 地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発
経済産業省  
  • 燃料電池システム等実証研究
  • 省資源低環境負荷型太陽光発電システムの開発
  • 原油の重質化などに対応した革新的な石油精製等技術の開発
  • コンビナート域内における石油精製の高度機能を融合させる技術の開発
  • 水素エネルギー技術の開発
  • 液体燃料化天然ガス、ジメチルエーテル燃料関連技術の開発
  • メタンハイドレート技術開発
  • クリーン・コール・テクノロジーの研究開発
  • 噴流床石炭ガス化発電プラントの開発・省エネルギー技術の開発
    • −CO2(二酸化炭素)ヒートポンプ給湯器の高効率化・小型化の研究開発
    • −高効率ガスタービン実用化要素技術の開発
    • −有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)を用いた高効率照明の開発
    • −カーボンナノチューブを利用した電気二重層蓄電器開発
    • −自動車軽量化のための炭素繊維強化複合材料の研究
    • −次世代低消費電力半導体に関する基盤技術の開発
    • −高性能パワーデバイス(電力素子)によるインバータの基盤技術の開発
  • 分散型エネルギーシステムの平準化に関する基盤技術の開発
  • 二酸化炭素固定化・有効利用に関する技術の開発
産業技術総合研究所
  • 分散型エネルギーネットワーク技術の開発
  • クリーンディーゼル等の新燃料技術の開発
  • 木質系バイオマスからのエタノール製造技術の開発
新エネルギー・産業技術総合開発機構
  • 小型可搬電源となり得る小出力燃料電池の技術開発
  • 定置用燃料電池の大規模な実証
  • イオン交換膜を電解質として用いる燃料電池(固体高分子形燃料電池)の実用化に向けた技術開発
  • 水素社会の構築に関する共通基盤の整備
  • 石炭のガス化や石炭からの水素製造に関する技術の開発
  • 水素の安全利用等に関する基盤技術の開発
  • 新エネルギー技術の研究開発
  • 次世代蓄電池システムの実用化に向けた技術開発
  • 風力発電電力系統安定化等技術開発
  • エタノール3パーセント混合ガソリン(E3)普及に関する大規模実証
  • 超電導応用基盤技術の研究開発
  • エネルギー利用の合理化
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
  • 石油、天然ガスの開発・利用促進
国土交通省  
  • 高効率な集合住宅用燃料電池システムの開発
港湾空港技術研究所
  • 沿岸および洋上における風況出現特性の把握と風力エネルギー活用に関する研究

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