文部科学省本文へ

大臣の部屋 お知らせ 組織関連情報 政策関連情報 公表資料 申請・手続き等 基本・共通 教育 科学技術・学術 スポーツ 文化

第1部 第3章 第2節 2 国際的に通用する人材の育成・確保

 第1部第2章第1節のとおり、イノベーション創出のための研究システム改革については、諸外国も国内外の優秀な人材の確保策に力を入れて取り組んでいる。第3期科学技術基本計画でも、政策の視点として、ハード面でのインフラ整備など「モノ」を優先する考え方から、優れた人材を育て活躍させることに着目して投資する考え方に重点を移している(「モノから人へ」)。国際競争力の維持・強化のためには、若手研究者や女性研究者、更には外国人研究者などの多様多才な個々人が意欲と能力を発揮できる環境を形成する必要があり、科学技術活動の基盤となる施設・設備の整備・充実に当たっても、国の内外を問わず優秀な人材を惹(ひ)き付け、世界一流の人材を育てる必要がある。

(1)優秀な外国人研究者を我が国に惹き付ける制度の実現

1世界の頭脳が集まる拠点づくり

 第1部第1章で紹介したとおり、今後、先進国の中で類を見ない速さで少子高齢化と人口減少が進む我が国にとってイノベーション創出は喫緊の課題であるが、その原点は「人」である。世界の優秀な外国人研究者を我が国に集め、様々な知的活動の中で自らの才能を発揮してもらうことが必要である。同時に、優秀な外国人研究者と我が国の研究者が切磋琢磨し合い、相乗効果を上げることが重要である。
 第1部第2章第1節で紹介したとおり、科学技術については、世界各国が国力の根幹としての意識を一層強めており、優れた研究者を自国に惹き付けるための人材獲得競争が激化している。また、世界に冠たる研究拠点をつくるためには、優秀な外国人研究者が長期にわたり我が国に滞在して研究成果を継続的に生み出す環境づくりが欠かせない。
 そこで、我が国においては、高いレベルの研究者を中核とした世界トップレベル研究拠点形成を目指す構想に対して集中的な支援を行い、システム改革の導入等の自主的な取組を促すなどの取組を進め、第一線の研究者が是非そこで研究をしたいとして世界から多数集まってくるような、優れた研究環境と極めて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を促進していく必要がある(第1−3−2図)

第1−3−2図 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPIプログラム)

 また、優秀な外国人研究者を我が国に惹き付けるためには、入国管理制度や査証制度、住居、医療保険、職場環境等、様々な面での改善を図る必要がある。さらに、大学の事務局等のコミュニケーション能力の抜本強化や大学のネットワーク化による受入体制の整備など、研究開発に直接かかわらない面における取組も重要と考えられる。

2研究者が研究に専念できる環境(研究支援の強化)

 創造的な研究開発活動の推進には、研究者が研究活動に専念できるような環境の整備が必要であり、研究支援体制の充実は、その重要な要素の一つである。第1部第2章第2節で示したとおり、我が国の研究者数はこの四半世紀の間、ほぼ一貫して増加している一方、研究支援者に関しては、ここ20年間、ほぼ一貫して減少傾向にある。文部科学省が実施した「我が国の研究活動の実態に関する調査報告(平成17年度)」によれば、研究者の支援体制が不十分で「補助的業務が多く、研究活動に専念できない」とする回答が63パーセントに上り、補助的業務の負担感が高いことが示されている(第1−3−3図)

第1−3−3図 研究活動以外の補助的業務に対する意識

 一方、研究支援者のキャリアパスは明確でなく、長年同じ設備や仕事に従事する傾向が強いため研究内容や技術の進歩に対応できないことや、研究支援者の非常勤化に伴い、研究支援者の給与・昇進等の待遇や雇用環境の低下、あるいはそれらの結果としての技能レベルの低下など様々な問題が顕在化しており、優秀な研究支援者を確保するための人事・待遇面での工夫が不可欠である。
 また、研究機関を取り巻く財政状況は厳しく、研究支援体制を充実していく上でも、競争的資金の間接経費を活用することは有効な方策の一つであり、競争的資金の間接経費30パーセント措置をできる限り早期に実現すべきである。

(2)大学・大学院の国際競争力の向上

 我が国が研究面でのグローバルな競争に勝ち抜くためには、国際的に活躍する人材を我が国の大学・大学院から輩出するとともに、留学生・外国人研究者を惹き付けられる魅力ある研究環境を構築することが不可欠である。
 諸外国が博士号取得レベルの研究人材を中心に研究開発を推進している中で、我が国が持続的にイノベーションを創出していくためには、我が国においても博士課程の魅力を高め、グローバルな競争環境下で活躍できる研究人材を育てるとともに、産業界においても、博士号取得レベルの研究人材を企業自らのイノベーション創出における研究戦力として活用していくことが必要である。
 なお、企業における研究開発は、市場等の状況や企業自身の戦略によって、研究開発のテーマ・内容が変更となったりするため、大学等における自由度の大きい研究開発とは異なる面がある。したがって、企業の研究開発をリードする人材を養成するためには、自分の専門外も含む様々なテーマに柔軟な発想で立ち向かえることなどの能力の育成も重要となる。

1研究人材育成の改革

(博士の社会的好循環の構築)

 まず、大学において、社会ニーズを踏まえた教育研究組織の在り方を見直すとともに、博士課程入学者受入基準の明確化等により、博士課程の入口において、当該課程に相応(ふさわ)しい能力を有する者を確保することが必要である。その上で、国際的水準のコースワークを実現するため、多様なキャリアパスを前提として学修課題を体系的・組織的に履修させ、インターンシップ等を活用しつつ、社会の様々な分野で活躍できるような幅広く深い教養に裏打ちされた専門知識、リーダーシップ力等を涵養(かんよう)し、また、修了に当たっては、博士に相応しい能力を獲得できているか十分審査した上で学位を授与し、博士の学位の国際的通用性を保証することが必要である。
 企業においては、採用活動の早期開始を自粛し、大学院における教育成果を十分見極めた上で、優れた博士人材を積極的に採用するとともに、成果主義を基本に魅力ある処遇を行うことが期待される。
 これらにより、博士課程の魅力の増大、博士課程入学希望者の増加につながり、さらに続いて、博士人材の質の更なる向上、企業や官公庁等における採用増加等に及ぶなど全体として研究人材の社会的好循環の形成につながることが期待される。

(ポストドクター等の多様な場での活躍促進)

 近年、科学技術と社会とのかかわりが一層深化・多様化する中、ポストドクター等(注)の人材が、社会の多様な場で活躍することが期待されている。しかしながら、現状、我が国において研究機関以外への進路に関するキャリア形成支援は組織的には行われておらず、博士号取得者が民間企業に在籍する割合が米国の半分程度にとどまるなど、高度な専門性を有する人材に多様なキャリアパスが開かれているとは言えない状況である。
 現在、文部科学省では、ポストドクター等のキャリアパス多様化に向けた組織的支援と環境整備を行う取組を推進している。さらに、平成20年度からは、科学技術振興調整費のプログラムにおいて、イノベーション創出の中核となる若手研究人材が、狭い学問分野の専門能力だけでなく、国際的な幅広い視野や産業界などの実社会のニーズを踏まえた発想を身に付けることを支援するため、「イノベーション創出若手研究人材養成」を実施することとしている。今後とも、大学や公的研究機関及び産業界における人材養成システム改革等を促すことにより、若手研究者の社会の多様な場における活躍促進を図ることが重要である。

  • (注)ポストドクター等:博士号を取得した者又は博士課程に標準修業年限以上在学して所定の単位を取得の上退学した者のうち、研究機関において任期付きで研究業務に従事している者(教授、准教授、講師、助教、助手、主任研究員等の職にある者を除く)

第1−3−4図 イノベーション創出若手研究人材養成

(我が国の研究人材の海外での活躍の場の拡大)

 我が国が、米、欧と並ぶ研究人材の国際的循環の一つの極となるためには、我が国の研究環境の魅力を高めることが最も重要であるが、その他、我が国の研究人材の海外での活躍、研究成果の海外への発信の強化も大きな課題であると考えられる。このため、国際的な研究者コミュニティで活躍できる人材を養成することを目指し、博士課程在籍者等の海外派遣の拡充など、若手研究者の海外経験の機会の提供の拡充に取り組む必要がある。さらに、博士課程修了者の海外での就職も支援し、双方向の交流を目指すことも重要である。また、我が国の研究者の国際的流動性を阻害している要因の分析を行うなど、制度面からも検討していくことが必要である。

(外国人研究者等の受入れの拡充)

 外国人研究者の受入れの拡充については、その重要性は広く認識されているものの、実際には十分に進展しているとは言えない。このため、研究者の国際公募、外国人研究者のスタートアップ時の支援、柔軟な給与体系の整備等を実施するなど、大学等の組織全体として外国人の受入れの拡充に取り組むことが重要である。
 また、留学生や外国人ポストドクターの受入れを拡充するためには、大学院教育の内容・方法の改善、国内での就職を見据えた産学連携の強化、事務局等の英語対応の促進に加え、生活環境等も含め、国際的にも魅力ある教育・研究環境を整備することが重要である。

2大学等における研究環境の活性化

(インターンシップの拡充)

 社会のニーズに適切に対応し、研究開発の出口を見据えて科学技術関係人材を養成・確保するためには、人材養成に関する需要側である産業界と、養成側である大学等との間のパートナーシップとしてのインターンシップの普及・促進が極めて有効である。
 インターンシップを教育課程に位置付けて実施している大学等の割合は、平成8年度の18パーセントから18年度は約66パーセントと大きく増加しているが、そのほとんどが依然として3週間未満の短期インターンシップである(文部科学省「平成18年度インターンシップ実施状況調査結果」)。
 大学院段階では、これまでの主として就業体験や職業意識の形成を目的とするインターンシップではなく、社会の抱える諸問題や産業界の取組を理解し知識基盤社会を多様に支える「高度専門人材」の育成につながる、より高度なインターンシップの実施が求められるようになっている。
 このため文部科学省では、平成17年度から、大学院レベルにおける長期インターンシップの開発・普及に向けて、大学と企業等との連携協力の在り方や、質の高い長期インターンシッププログラム(3か月間以上(事前・事後教育を含む))の開発等を目指す取組を支援している。今後もこのような取組を拡充していくとともに、企業等においても、研究人材の育成に資する取組として、積極的な参画が期待される。

(退職金前払制度と年俸制)

 研究機関等の間で研究者が移動する際に経済的に問題となる制度としては、退職金がある。退職金については、民間、公的機関を問わず、勤続30年程度経過するまでは低い水準に抑えられている組織が多い。これは、30〜40歳代の研究者が組織間を移動する意欲を著しく抑制させると考えられる。研究者については、各機関が退職金前払分を従前の給与に上乗せすることや、業績評価と連動した年俸制を導入することが、優秀な人材の確保及び新規人材の獲得に有意義であると考えられる。

(3)次世代の科学技術を担う人材の裾野の拡大

1理数好きな子どもの裾野(すその)の拡大

 「知識基盤社会」の到来とともに、科学技術に関する世界的な競争がこれまで以上に激化しており、我が国においても、次世代を担う科学技術系人材の育成が必要である。
 それと同時に、科学技術の成果が社会の隅々にまで活用されている今日、国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上が極めて重要である。
 この2つの観点から、科学技術の土台となる理数教育の充実を図ることは喫緊の課題である。
 また、2006年(平成18年)に実施のOECDのPISA2006年調査の結果からは、科学的リテラシーについては、国際的に見て上位にあり、2003年(平成15年)の同調査との同一問題での比較では、変化がなかったものの、1「科学的証拠を用いること」に比べ、「科学的な疑問を認識すること」や「現象を科学的に説明すること」に課題があること、2論述式問題での無答率が高いこと、3科学への興味・関心や楽しさを感じる生徒の割合が低いことなどの課題が改めて明らかになった。
 このような課題も踏まえ、学習指導要領全体の見直しを進めてきた中央教育審議会の答申(平成20年1月)では、1観察・実験やレポートの作成、論述、自然体験などに必要な時間を十分確保するため、理科等の授業時数を増やすこと、2国際的な通用性や小中高の学習の円滑な接続等を図る観点から、必要な指導内容の充実を図ること、3教育内容の充実に加え、それを支える教育条件の整備を図ることなどが提言されている。
 この答申を受け、平成20年3月に告示した小学校・中学校の学習指導要領においては、国語、社会、算数・数学、理科、外国語、体育・保健体育の授業時数を10パーセント程度増加しており、特に、小学校算数は869時間から1,011時間に、小学校理科は350時間から405時間に、中学校数学は315時間から385時間に、中学校理科は290時間から385時間に増加するなど、算数・数学、理科について重点的に授業時数を増加した。
 また、算数・数学では、1発達や学年の段階に応じた反復(スパイラル)による指導を充実すること、2国際的な通用性、内容の系統性の確保や小・中学校の学習の円滑な接続等の観点から、必要な指導内容を充実すること、3学ぶことの意義や有用性を実感できるよう、数量や図形についての知識・技能を実際の場面で活用する活動などを充実することとしている。
 理科では、1小・中学校を通じた内容の一貫性を重視すること、2国際的な通用性、内容の系統性の確保や小・中学校の学習の円滑な接続等の観点から、必要な指導内容を充実すること、3科学的な思考力・表現力等の育成の観点から、観察・実験の結果を分析し解釈する学習活動、科学的な概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動等を充実すること、4科学を学ぶことの意義や有用性の実感及び科学への関心を高める観点から、日常生活や社会との関連を重視し改善することとしている。
 なお、学習指導要領については、小学校については平成23年度から、中学校については平成24年度から完全実施することになるが、実施できるものについては、平成21年度から先行して実施する予定である。また、小学校の理科授業における実験・観察活動の充実や教員の資質向上を図るため、外部人材を理科支援員や特別講師として活用する取組や、中・高等学校において大学や科学館、企業等と連携した発展的な理数教育に関する取組、理数系の教員を対象とする研修活動への支援などの取組を行っているところである。

2理数に興味・関心の高い児童・生徒・学生の個性・能力の伸長

 我が国の科学技術の発展には、理数への興味・関心が高い児童・生徒・学生に、高度で先進的な理数学習の機会、「異」とのふれあいにより国際感覚・職業観を育(はぐく)む機会を充実し、将来、科学技術の舞台で主役となり得る卓越した人材を育成する必要がある。そのために、高校生等を対象とした科学オリンピックをはじめとする科学技術コンテスト(数学、物理、化学、生物学、情報、課題研究等の各分野)への支援を行っている。また、理数教育に重点を置く高等学校等(スーパーサイエンスハイスクール)の取組を推進するとともに、海外の理数教育重点高校との間の国際交流支援を行っている。さらに、卓越した意欲・能力を有する児童・生徒を対象に高度で発展的な学習機会を提供する大学等の支援にも取り組んでいる(第1−3−5図)

第1−3−5図 イノベーション人材育成のための理数教育強化施策

前のページへ

次のページへ