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第1部 第1章 国際競争の激化とイノベーションの必要性

 現在、IT技術の進展等により、研究開発のような知的労働も容易に国境を越えて行われる時代となった。優秀な人材を持つ中国、インド等BRICs諸国は、大きな経済成長を遂げて、財・サービスの供給主体として成長し、同時にエネルギー、穀物等の需給バランスにも無視できない影響を与えること等により、世界の勢力地図を大きく変化させつつある。
 また、エネルギーや穀物などの原材料の高騰、技術のコモディティ化(注1)による加工貿易の収支への悪影響等により、世界経済における我が国の優位がより大きく損なわれる状況も考えられる。
 このように国際競争がますます激化する大競争時代において、いわゆる「失われた10年」以降顕在化した経済的優位の縮小や少子高齢化等により見込まれる国際競争力の低下に対応していくためには、イノベーションの創出、とりわけ、科学技術によるイノベーションの創出が不可欠である。
 以下、このような科学技術を巡る現状を具体的に紹介する。

1 IT化、グローバル化の進展

 今日、世界は、光ファイバー等のネットワークでつながり、地理的な距離を非常に安いコストで、一気に越えてコミュニケーションを行うことができる。基本的にコンピュータ操作による仕事は地球上どこにいてもでき、インターネットが社会のあらゆる局面で、広範に利用され、金融、メディア等における情報伝達はグローバルに行われている。このような状況に関して、第1部第2章で紹介する全米アカデミーズの「強まる嵐を越える」という報告書では、「今や、アイルランド、フィンランド、中国、インド、あるいは経済が成長中の何十という国の、マウスをクリックするだけで届くところに住む競争者と向き合わねばならない」とされている。
 このような現象は、米国のIT産業がインドへのアウトソーシングや研究開発拠点の設置を行っていることに典型的に見られるように、知的生産活動に海外の地域及び人材の活用が日常化していることが挙げられる(第1−1−1図、コラム1)

第1−1−1図 米国・西欧等の企業が2005年に国内と中国に新たに設置した研究開発拠点の数

  • 資料:全米アカデミーズ「Here and There ?」(2006年)

 加えて、米国に世界中から高度な知的作業を担う人材が集まり、研究開発や医療などの知的作業を多くの中国人、インド人等の外国人が担っていることに見られるように、多くの知的人材が国境を越え、イノベーションを引き起こすことに貢献している。
 このようなIT化、グローバル化の進展に伴い、製薬業界等に典型的に見られるような世界的な企業の再編が進み、我が国の各分野のトップ企業に匹敵ないし遙(はる)かに凌駕(りょうが)する巨大企業が誕生したり、従来からグローバル化が進展していた製品の製造・販売だけでなく、国境の壁を越えることが少なかった研究開発や医療のような知的労働ですら容易に国境を越える状況が生まれている(第1−1−2図)
 また、グローバル化により人材、企業や財・サービスの移動が容易になる一方で、移動する主体は、より有用な情報やより良いビジネス機会等を得られるハブ(拠点)に集積する傾向(ローカル化)がある。ニューヨーク、ロンドン、東京等への企業の本社機能、金融や情報等の発信機能の集積や、米国のシリコンバレーに代表される研究開発拠点がこの事例である。後述するBRICs諸国では、中国の中関村(北京市内)、インドのバンガロールに研究開発拠点が形成されている。このほか、台湾の新竹市やアラブ首長国連邦のドバイも世界的なハブとして注目されている。このようなグローバル化とローカル化が一体的に進行する現象は「グローカリゼーション(Glocalization)」(注2)と呼ばれることもあるように、近年より顕著になっている。優秀な人材を確保でき、交通や社会基盤等が整備された世界的なハブを国内に有することもその国の国際競争力の強さの大きな要因の一つであると考えられる。

  • (注2)Roland Robertson (1995): Glocalization: time-space and homogeneity-heterogeneity. Global Modernities (Featherstone, M., Lash, S. and Robertson, R. eds.), Sage.

第1−1−2図 世界の製薬業界における再編の動向

  • 資料:厚生労働省「新医薬品産業ビジョン」

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