コラム6 21世紀COEプログラムの具体的成果(東北大学 物質創製・材料化国際研究教育拠点)

○研究概要

 東北大学では、その創設期より世界をリードしてきた物質・材料に関する潜在的学術研究教育能力を最大限に発揮するために、学内の金属材料研究所を中心とした研究所と大学院研究科等に所属する物質・材料のそれぞれ特徴ある優れた研究者の融合研究を推進する体制を確立することにより、特殊構造物質・材料を研究対象とする世界最高水準の「物質創製・材料化国際研究教育」拠点を構築してきた。
 本拠点で萌芽(ほうが)させ育成された特殊構造物質創製・材料化技術は、新規物性発現のための原子、分子、ナノスケールでの究極の材料創製技術である。この技術によって、今後我が国を発信源とする様々な特性を示す材料開発への迅速な対応が実現することが期待される


「若手学校」での講演風景

写真提供:東北大学

○研究活動を通じた人材育成

 東北大学は、研究第一主義を理念として掲げ、特に金属材料研究所は、世界トップレベルの研究者が世界トップレベルの研究を行う環境でこそ、第一級の研究者を育成することができるとのポリシーで研究教育活動を行っている。金属材料研究所には歴史的に優れた研究者が集結してきており、そのような環境を求めてますます優れた研究者が集結し、さらに育成されるという好循環作用がある。
 このような研究環境の下、未知な材料科学の領域に果敢に挑戦する活力に富んだ若手人材を世界から発掘し、拠点研究者が連携して、自由な発想で自主的に独創性あふれる研究を推進できる研究生活環境を保証し、斬新(ざんしん)な発想の萌芽的研究を積極的に育成し、継続的に世界最高水準の研究を実現できる拠点の構築に努めてきた。
 具体的には、特殊構造物質・材料の新創製プロセス開発や新規物性発現機構解明等を目標とする新規性に富む萌芽的な研究申請を世界中の若手研究者から広く募集し、20名のポストドクター(以下、「COEフェロー」と言う。)を採用した。COEフェローは、21世紀COEプログラムを実施する5年間に、国際会議での講演70件、第一著者としての論文147件を含め、全体として347件の研究発表を行い、量的だけでなく質的な成果を上げている。
 また、大学院生が韓国の学生と連絡をとり、企画・運営をして、学生同士の国際交流セミナーを開催したことによって、大学院生の国際感覚が養われ、自立性と研究意欲の向上につながった。このような取組によって生まれた国境を越えた交友関係は、大学院生にとっても、また、我が国にとっても貴重な財産となる。
 さらに、国内外の研究機関や企業等との共同研究による優秀な研究者との出会いや、「若手学校」と呼ばれる合宿形式のサマースクール(第一線で活躍する研究者を世界から招へいし交流する機会)によって、若手研究者の視野を広げ、研究活動の活性化に大いに役立った。
 これらの研究活動を通じた人材育成によって、将来の特殊構造物質材料に関わる独創的研究と本分野を担う人材を、国内外の研究機関や民間企業等に輩出することができた。特にCOEフェローの4分の1は海外の大学に就職している。世界中から優秀な若手研究者を発掘し、育成し、世界へと飛び立たせていくような取組を組織的・継続的にできたことは、21世紀COEプログラムの重要な成果であったと言える。

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