第1章 科学技術政策の展開

第2節■総合科学技術会議

2 科学技術関係施策の戦略的重点化と総合的推進

 総合科学技術会議は、PDCAサイクルによる科学技術関係施策の質の向上等を図るとともに、一層メリハリの効いた科学技術関係予算の充実に向けて取組を強化している。平成18年度においては、第3期科学技術基本計画や分野別推進戦略の着実な実行のため、科学技術関係予算の改革を進めつつ、「選択と集中」の徹底により科学技術関係施策の戦略的な重点化を図り、真に重要な研究開発等が着実に実施され、その成果が社会や国民に広く還元されるよう、取組を推進した(第3-1-4図)

第3-1-4図 科学技術予算の充実のためのPDCAサイクルの概念図

(1)平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針[平成18年6月14日決定、意見具申]

 第3期科学技術基本計画や分野別推進戦略を踏まえ、平成19年度に重点的に取り組むべき事項等を明らかにした「平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針」を決定し、関係大臣に意見具申した。
 同方針においては、国家基幹技術を含む戦略重点科学技術の推進、基礎研究の充実、理数教育の抜本的充実等、平成19年度予算において優先すべき重点課題を「選択と集中」を徹底した上で明示した。また、研究費配分における無駄の徹底排除の強化、国民への説明責任・成果発信の徹底、優先順位付けの改革等、科学技術関係予算の充実・改革に向けた取組の強化についても併せて言及した。

(2)科学技術関係施策に対する優先順位付け(平成18年10月)

 真に重要な施策に資源を重点配分するため、「平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針」に基づき、関係府省が予算要求を行った科学技術関係施策について、ヒアリング等を通じてその内容を詳細にチェックし、外部専門家の助言を得ながら優先順位(SABC)付けを実施した(第3-1-5図)
 平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けに当たっては、より戦略的かつ詳細に内容をチェックするため、戦略重点科学技術等の重点課題を中心に優先順位付け対象の拡大、審査体制の改善等、実施方法を改革して実施した。

第3-1-5図 平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けの概要

(3)独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめ(平成18年10月)

 科学技術関係活動を行っている独立行政法人、国立大学法人等は、主に運営費交付金により活動しており、予算編成段階で、その使途の内容や業務、配分額を把握するには限界がある。このため、科学技術基本計画の的確な実施を確保する観点から、法人のアウトプットである各種指標等について調査を実施した。
 調査結果に基づき、進展が見られる事項や今後取組を充実すべきと考えられる事項について、総合科学技術会議有識者議員が所見を取りまとめた。

(4)平成19年度科学技術関係予算の編成に向けて[平成18年11月21日決定、意見具申]

 優先順位付けの結果等を踏まえ、メリハリの効いた科学技術関係予算が十分に確保されるよう、平成19年度予算編成に向けての重点事項や、研究費の配分における無駄の排除と不正使用等防止の徹底について取りまとめ、総合科学技術会議において決定し、関係大臣に意見具申した。
 なお、平成19年度予算においては、科学技術の振興が成長の源泉として位置付けられ、社会保障関係費を除くほとんどの主要経費が対前年度減となる中、科学技術振興費は対前年度比1.1パーセント増の1兆3,462億円となっている。また、科学技術振興費以外の経費も含めた科学技術関係予算の総額は、同1.8パーセント減の3兆5,113億円となっている。

(5)科学技術連携施策群の推進(平成18年11月)

 平成17年度より、関係府省の縦割りによる弊害の排除、連携の強化を図る新たな手法として、国家的・社会的に重要で、府省の連携の下に推進すべき八つのテーマ(1ポストゲノム−健康科学の推進−、2新興・再興感染症、3ユビキタスネットワーク−電子タグ技術等の展開−、4次世代ロボット−共通プラットホーム技術の確立−、5バイオマス利活用、6水素利用/燃料電池、7ナノバイオテクノロジー、8地域科学技術クラスター)について科学技術連携施策群を推進しているところである。平成18年度においては、これまでの連携施策群の取組と成果について中間的な取りまとめを行い、第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略(平成18年3月総合科学技術会議決定)を効果的に推進するため、連携施策群の手法を戦略重点科学技術に拡大して活用することとした。

(6)研究開発評価の実施

1大規模研究開発の事前評価のフォロ−アップ(平成18年10月)

 平成17年度に大規模研究開発として事前評価を実施した「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」について、評価専門調査会においてその評価結果への対応状況等をフォローアップし、改善点等について本事業を所管する文部科学省に提示した。

2各府省等における中間評価及び事後評価の実施状況のとりまとめ(平成18年9月)

 継続中の研究開発のうち平成18年度予算額が10億円以上のものについて、各府省による中間評価の実施状況を把握するとともに、平成17年度中に終了した研究開発のうち平成16年度又は17年度予算額が10億円以上のものについて事後評価の実施状況の把握を行い、各府省等が今後も中間・事後評価を適切に実施し、第3期科学技術基本計画等に基づく施策の推進に資するよう求めた。

3国家基幹技術の評価[平成18年7月26日決定、意見具申]

 分野別推進戦略において精選された国家基幹技術のうち、平成17年度に大規模研究開発として事前評価を行ったものを除く、「高速増殖炉サイクル技術」、「宇宙輸送システム」及び「海洋地球観測探査システム」の3件について評価を実施し、評価結果を関係大臣に意見具申した。

4大規模研究開発の事前評価[平成18年11月21日決定、意見具申]

 平成19年度から新たに実施が予定されている大規模研究開発(国費総額が約300億円以上のもの)に該当する「ターゲットタンパク研究プログラム」及び「太陽エネルギーシステムフィールドテスト事業」について事前評価を実施し、評価結果を関係大臣に意見具申した。

前のページへ

次のページへ