第2章 研究人材

第3節■研究人材の輩出と雇用

(学位取得者数の動向)

 我が国における自然科学系の修士及び博士の学位取得者数は、大学院の拡充により増加を続けてきたが、平成12年度は博士が直近のピークとなり、その後減少に転じ平成14年度は平成10年度と同じレベルまで戻った。5年間で見ると、平成9年度に比べ平成14年度には修士が1.11倍(年平均の伸び率2.1パーセント)、博士が1.11倍(年平均の伸び率2.2パーセント)となっている。平成14年度の専攻分野別で見ると、修士課程では工学分野の2万8,893人、博士課程では保健分野の6,853人が最も多い(第2-2-21図)

第2-2-21図 我が国の学位取得者数の推移(自然科学系)

 修士及び博士の学位は、国の文化や学位制度の違いにより様相も異なり、また、その取得者数も産業構造、学齢人口、高学歴化など種々の社会的要因により推移し、一律に比較はできないが、ここでは、主要国における自然科学系の修士、博士等の学位取得者数の特色を見る。
 米国の学位取得者数は、他の主要国を引き離して多く、我が国の3倍強であり、1980年度(昭和55年度)との比較では工学系及び保健系の割合が増加した。我が国は、米国に次いで学位取得者数が多く、工学系の比率が高いのが特色となっている。続いて、英国、フランス、ドイツの順となっている。この中でドイツは理学系及び保健系の比率が高く、英国は理学系及び工学系の比率が高いことが特色となっている。また、博士号だけに限ると、理学系での日本の学位取得者数は、主要各国と比較するとかなり少ない(第2-2-22図)

第2-2-22図 主要国の学位取得者数(自然科学系)

 全学生数に占める大学院学生数の割合を主要国と比較すると、我が国は最も低い(第2-2-23図)

第2-2-23図 主要国における学部・大学院に在籍する全学生数に占める大学院学生数の割合

(研究人材の雇用)

 大学で教育を受けた研究人材が、卒業後円滑に産業界や研究機関等に受け入れられ、活躍できることが望まれる。
 ここでは、大学卒業時、修士課程修了時及び博士課程修了時の自然科学系出身者の進路から、我が国の研究人材の雇用状況について見る。大学卒業段階では、理学専攻者の進学率が43.5パーセントで他の専攻者と比べて高い。修士課程修了段階では、工学専攻者の進学率が低く(7.1パーセント)、大半(87.4パーセント)が就職する傾向が見られる。博士課程修了段階では、理学及び農学で、博士号取得後の進路が確定していない割合が4割以上と高くなっている(第2-2-24図)

第2-2-24図 大学の学位別進路動向(平成18年3月)

 いくつかの産業について自然科学分野出身者の専門別採用状況の特徴を見ると、電気機械器具、輸送用機械器具といったほとんど工学専攻者によって占められている製造業がある一方で、化学工業のように理学、工学、農学、保健分野から幅広く採用する製造業もある。また、電気機械器具製造業をはじめとして、製造業における修士課程修了者の採用割合が高いのに対し、博士課程修了者の採用割合は低い(第2-2-25図)

第2-2-25図 主要産業における専門別・学位別採用状況(平成18年3月)

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