第1章 科学技術の振興の成果

第2節■人類の知的資産の創造 −知の創造−

要旨

 自然や社会は様々な謎に満ちている。人類は、このような謎を解明するための努力をたゆまず続けてきた。この知的探求活動としての研究の成果は、我々の自然や人間、社会への理解を深めるとともに、社会の様々な場面に適用される技術の基礎ともなっている。そして、新たな技術の進歩は、強力な観測や実験の手段となって、科学の発展を支えている。
 我が国の研究者も、この人類の知的資産の創造に力強い貢献を行ってきた。本節では、我が国の研究者により行われた新分野の開拓や新たな発見などの科学上の大きな進展について、近年の成果を中心に紹介する。

1 知の創造の成果

 かつてニュートンは、「もし私が少しばかり遠くを見たとしたら、それは巨人の肩に立ったからだ。」と言った。人類は先人の築いた知識に新たな知見を加え、それを体系的な理論に整理して科学を発展させてきた。20世紀の基礎科学の飛躍的な発展は、全く新たな技術を生み出し、その技術が更に科学を発展させた。このダイナミックな過程の結果、基礎科学の研究者が当初は思いもしなかったことが実現され、現在の社会が創り上げられている。この科学技術の目覚ましい発展により、人類は自然について多くのことを知り、その認識も大きく変化している。ニュートンはまた「真理の大海は私の前に発見されずに横たわっている。」と語ったが、これは現代を生きる我々にとっても変わりはない。知の創造に挑み続ける科学者たちの足跡の一端を以下に紹介する。

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