刊行に寄せて

文部科学大臣 伊吹文明

 我が国の経済発展と国民の豊かな暮らしを支えるのは、勤勉な労働力と多様なイノベーションです。その条件を国として確保するには、初等教育から高等教育までの充実により、知徳体のバランスのとれた科学マインドのある人材を育成しなければなりません。日本がここまで経済成長を果しえたのも日本にこのような人材の蓄積があったからです。

 さて、現在の状況はどうでしょう。安倍内閣が教育再生を内閣の最優先課題の一つとしているのは、まさにこの点への不安があるからです。「知」をめぐる国際的な大競争時代において、大学や研究機関、民間が各地で世界を牽引するような人材を養成・確保し、その能力を最大限に発揮する条件を整えねばなりません。理数教育の充実とともに、若手、女性、外国人研究者も伸び伸びと活躍できる条件を整えることが大切です。

 本年は第3期科学技術基本計画の2年目に当たりますが、同計画では、科学技術政策やその成果を分かりやすく説明することで国民の理解と支持を得ることを基本施策の柱の一つとして位置づけています。

 以上を踏まえて、今回の科学技術白書では、特集テーマを「科学技術の振興の成果―知の創造・活用・継承―」とし、科学技術の振興の成果を具体的な事例に即し、多角的に分かりやすく紹介しています。

 本書が、国民の皆様が科学技術をより身近に感じ、科学技術政策について理解を深めていただく上での一助となることを期待いたします。

平成19年6月