ここからサイトの主なメニューです
コラム■ナンバー10

産学官共同研究で成功した研究

(平成17年6月第4回産学官連携推進会議産学官連携功労者表彰)

○ユビキタスコンピューティング技術の研究(内閣総理大臣賞)
  TRONプロジェクトは、身の回りのいろいろな機器に国産の基本ソフト(OS)であるTRONを組み込み、それらをネットワークで結ぶことにより、人々の生活を助けるユビキタスネットワーク社会の構築を目的として始められたプロジェクトである。このTRONプロジェクトの一環として設計された「ITRON」は、OSの小型軽量化に適しており、これまで多くの家電製品やAV機器、OA機器、自動車などの工業製品に採用されてきた。しかし、近年コンピュータ技術の発展とそれに伴う機能の高度化により、開発効率重視の設計がなされるようになり、それに対応できる、ポータビリティの高いハードアーキテクチャ込みのリアルタイムシステム開発環境が求められるようになった。そのため、OSを標準化し、機能の拡張を容易にしたものが、大学における計算機科学の基礎研究の成果であるT-Kernelであり、そのプラットホームとしてのT-Engineである。T-Kernelの活用により、小規模なシステムから高度で大規模なシステムまで対応することが可能となり、T-Kernelを組込OSとして数々の製品が世界的に普及している。現在、研究成果である電子タグや携帯端末を用いて、物流、在庫管理、食品トレーサビリティ、薬品・投薬管理、観光ガイド等のユビキタスネットワーク社会の構築に向けた数多くの実証実験が推進されている。

○ウォーターオーブンヘルシオの研究(日本経済団体連合会会長賞)
 少子高齢化に伴う人々の健康志向に応える商品を求める産業のニーズと大学の基礎研究である環境浄化技術をマッチングさせ、家庭用調理器としてウォーターオーブンが製品化された。大学においていわゆる環境ホルモンを抽出・分析・測定するための手法として研究が進められていた過熱水蒸気の生成、特性などに関わる知見をベースに、既存の大型過熱水蒸気発生装置を家庭用のサイズに使用できるように小型化し、一定電圧で従来式オーブンの8倍の熱量を実現することで過熱水蒸気を効率的に利用するシステムを産学共同で開発することで実現した本製品は、「水で焼く」という新しい調理の世界を作り出し、脱油・脱塩や低酸素調理によるビタミンCやコエンザイムQ10等の抗酸化物質の破壊抑止効果があるとされている。

○「極低温電子顕微鏡装置」の開発・実用化及び膜たんぱく質の構造解析(科学技術政策担当大臣賞)
 電子顕微鏡は可視光線よりも波長のずっと短い電子線を用いて観察することにより、原子レベルの物質を観察することができる顕微鏡であるが、高エネルギーの電子線を観察対象に照射するため、結合の弱い分子や結晶が壊れてしまうなど観察対象の選定には幾つかの制約が存在していた。大学と企業が共同開発した極低温電子顕微鏡では、電子線による分子や結晶の損傷が、マイナス270度付近の極低温になると大幅に低減される現象を利用して、従来の電子顕微鏡では観察することができなかった液体中の構造や電子線に弱い有機物を観察することに成功した。
 また、極低温下での膜たんぱく質の乾燥による試料の変性を防ぐ急速冷却法、たんぱく質周辺の水分からなる氷から散乱する電子によるノイズを抑えるためのエネルギーフィルター、操作性の飛躍的向上を可能とする自動試料交換装置等を開発することにより、分解能を世界最高性能まで向上させた。このことにより、これまで観測することが困難であった、薬物のターゲットとして非常に重要なヒトの細胞膜中の膜たんぱく質の構造解析が可能になった。これまで構造解析された6種類の膜たんぱく質のすべてが極低温電子顕微鏡で解析されており、創薬産業等への大きな波及効果が期待されている。


前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ