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コラム■ナンバー02

ヒト染色体のハプロタイプ地図の完成

 ヒトゲノムの塩基配列は血縁関係にない人でも約99.9パーセントが同じであり、残りの0.1パーセント程度に個人間での多様性が生じており、その一部は病気の発症リスクや薬剤に対する感受性などの個人差に関係すると考えられている。ヒトゲノムの多様性が生じている場所やそのパターンと、疾患の発症や薬物に対する反応性の状態を関連して分析することは、疾病の発症原因の解明や、新たな治療法の開発などにつながると考えられる。そのためには、ゲノムの多様性の位置を記したゲノム地図が必要である。
 ゲノムの多様性を示す指標として、SNPs(一塩基多型)がある。4種類(A,T,G,C)の塩基が、特定の場所で、ある人々ではA、それ以外の人々ではGであるような違いをSNPsという。ヒト集団全体で考えると数百塩基対に1か所くらい、合計で約1,000万個のSNPsが、ゲノム全域に存在していると考えられている。
 約1,000万個のSNPsから医学的に重要な多型を見つけるには、必ずしもすべてを調べる必要があるわけではない。染色体上で近隣に並んでいる遺伝子やSNPsは組み合わせとして親から子に受け継がれるため、ハプロタイプと呼ばれるこの組み合わせを単位にして個人差を調べることが効率的である(参考)。そこで、ハプロタイプがヒトゲノム上にどのような形で存在しているかを示す、ハプロタイプの地図の作成が日本、米国、英国、カナダ、中国の5か国14センターによる国際共同グループにより行われた。我が国からは理化学研究所・遺伝子多型研究センターが参加し、ゲノムの24.3パーセントに相当する7本の染色体の解析を分担した。
 このプロジェクトは2005年(平成17年)10月に完了し、アフリカ、日本を含むアジア、ヨーロッパのヒト集団計269人から提供されたサンプルを対象に約110万か所のSNPsが解析され、5,000塩基対に最低1か所ずつのSNPsを配置した高密度のハプロタイプ地図ができあがった。
 このプロジェクトの結果、集団を構成している民族が比較的均一な日本人や中国人では全1,000万か所のSNPsのうち、25万か所を調べれば全ゲノムの98.5パーセントの領域をカバーできることが明らかとなった。がんや生活習慣病は複数の遺伝的要因と環境要因の組み合わせで起きるが、このハプロタイプの地図の完成により、これらの頻度の高い病気や薬の有効性や副作用などに関係する遺伝子の研究がより効率的になり、遺伝的要因が発見できれば革新的な診断・治療の開発につながることが期待される。

(参考)
図A 理論上のハプロタイプの種類 図B 実際の集団で観察されるハプロタイプ<例>

 図Aのように、3か所にSNPs(一塩基多型)が存在する場合、同一染色体上に存在しうる組み合わせは理論上2かける2かける2イコール8種類ある。しかし、3か所の多型間の物理的距離が比較的近い場合には、対象とする集団には、図Bのように、数種類のハプロタイプしか見られない場合が多い。これらの状況は染色体上の場所により異なるため、ゲノム全領域にわたって把握することが必要である。


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