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3.産学官連携の強化のための情報流通・研究交流の仕組みの改革

(1)情報発信の充実
 産学官連携の強化を促進するためには、産業界と大学等の公的研究機関の共通認識の醸成を図ることが不可欠である。このため、大学等の公的研究機関においては、各機関において成果発表会の開催、年報等の定期刊行物の刊行等を行っているほか、各種学会や学術刊行物への研究論文の発表、国有の特許の公開等により、成果の公開、情報提供が行われている。
 文部科学省と経済産業省は、科学技術振興機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構と協力して、ナノテクノロジー・材料、医療・バイオテクノロジー、情報関連・IT、環境関連、製造技術など、大学及び公的研究機関における最先端技術分野の知財について産業界等へ情報発信する全国規模の産学マッチングイベント「イノベーション・ジャパン2005-大学見本市」を開催した。
 また、新産業創出に寄与することを目的として、科学技術振興機構では、様々な研究開発支援情報及び研究成果情報をデータベース化し、インターネットを通して広く情報提供を行っている。具体的には、大学等の公的研究機関に関する機関情報、研究者情報、研究課題情報、研究資源情報をデータベース化した情報提供システム(ReaD)や、大学等の公的研究機関で得られた研究成果を、関連の特許と併せてデータベース化した情報提供システム(J-STORE)がある。
 農林水産省では、平成17年3月に策定した「農林水産研究基本計画」に示された「研究情報基盤の整備と多面的な活用」に基づき、研究成果等をはじめ農林水産業の技術開発等に資する各種情報のデジタル化等の整備を行いインターネットを通じて広く提供している。具体的には、農林水産省の試験研究独立行政法人や国公立試験研究機関、大学の農林水産分野の研究報告等をデジタル化した全文情報データベース、国内外の農学文献データベース、気象衛星画像データベース、試験研究機関で実施中の研究課題データベース等を統合した農学情報資源システム(Agropedia(注))として整備し、一元的に提供している。

(2)研究交流の促進
 近年の研究開発は、高度化かつ複雑化し、境界領域、複合領域に拡大してきており、今後、創造的な科学技術の振興を図るためには、研究組織の枠を超えた人的・物的研究交流を推進するとともに、限られた研究資源の効率的かつ効果的な活用を図るため、大学等の公的研究機関の研究成果の企業等への移転と大学等の公的研究機関の研究への企業等のニーズの反映を促すことが重要である。

●共同研究及び受託研究
 国立大学等と民間等との共同研究の実施件数は着実に増えており、平成16年度には、国公私立大学を合わせて10,000件を超えた(第1-2-30図参照)。国立大学等では、平成16年4月の国立大学法人化に伴い、各大学の個性・特色に応じた柔軟な産学官連携活動が可能となり、これまで以上に共同研究・受託研究等への取組を進めていくことが期待されている。
 各府省における産学官の連携による共同研究の推進については、科学技術振興調整費により平成14年度から開始した「産学官共同研究の効果的な推進」(マッチングファンド)のほか、農林水産省における先端技術を活用した農林水産研究高度化事業、経済産業省における大学発事業創出実用化研究開発事業、総務省における戦略的情報通信研究開発推進制度のうち産学官連携先端技術開発、情報通信研究機構が構築・運用する最先端の研究開発テストベッドネットワークによる産学官連携研究の推進、環境省による環境技術開発等推進費などの制度により総合的なプロジェクト研究が推進されている。

(3)人的交流の促進
 現在、研究者の交流に関する制度としては、各府省の客員研究官制度や国立試験研究機関における研究者の流動的かつ独創的な研究活動を推進する流動研究員制度等により、外部の研究者が国の試験研究機関において研究に参加しているなど、研究者の交流が推進されている。
 基本計画に示されている産学官連携の仕組みの改革に資するため、前年に引き続き平成17年11月に、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、社団法人日本経済団体連合会、日本学術会議の主催で、全国規模の「第5回産学官連携サミット」を開催した。同サミットにおいては、「産学官連携の新展開の方向を先進事例をもとに考える」をテーマに大学・企業等のトップを招き、パネルディスカッションを行い、科学技術関係人材の育成・確保や、本格的な産学官連携への深化と研究成果移転への支援、大学改革の推進、地域の科学技術振興、知的財産の戦略的保護と活用、科学技術に関する政府研究開発投資の拡充について、積極的に推進する「第5回産学官連携サミット共同宣言」を採択した。また、平成17年6月には、産学官の連携のより一層の推進を図るため、全国の企業・大学・行政等のリーダーや実務者による「第4回産学官連携推進会議」を開催し、分科会形式で大学、研究機関、技術移転機関(TLO)などによる実務レベルの協議が行われた。
 同会議では、大学・企業等における産学官連携活動において大きな成果を収め、当該活動の推進に多大な貢献をした産学官連携の優れた成功事例を選定し、内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞をはじめ関係主催の各賞から成る「第3回産学官連携功労者表彰」を実施し、その功績を顕彰した(第3-3-10表)。
 国立試験研究機関の研究者が、民間等の研究に係る活動を行うことは、産学官連携による我が国の科学技術振興に資するとともに、自らの能力をかん養し発揮する機会となることから、国の研究者が勤務時間外に民間等で研究・指導等に従事する場合の兼業許可については、円滑な運用に努める必要がある。国立大学教員については、平成16年4月1日の国立大学法人化に伴い、各法人の判断により兼職・兼業を行うことができることになった。

第3-3-10表産学官連携功労者表彰(平成17年度)

(4)利益相反への対応
 産学官連携活動を推進するに当たり、各大学や研究機関において日常的に生じうる「利益相反」に適切に対応していくことが極めて重要となっている。
 特に、臨床研究・臨床試験についてはより慎重な対応が求められるため、文部科学省では、平成18年2月、「第2回臨床研究の倫理と利益相反に関するワークショップ」を開催し、各大学における臨床研究に係る利益相反ポリシー及びマネジメントルール策定の参考となるガイドラインについて検討を行い、各大学における知識の共有を図った。

(5)研究施設等の共同利用の促進
 科学技術における研究活動は、研究者の独創性に依存することに論を待たない。しかしながら、複雑化・多様化する科学技術の先端分野においては研究成果の質・量ともに、利用する研究施設に左右される面があり、研究施設の研究活動に果たす役割は極めて大きなものがある。
 とりわけ、先端分野における大型の研究施設(先端大型研究施設)は、その整備そのものが先端研究分野の結晶として科学技術の発展に大きく貢献するものではあるものの、国全体の研究開発を推進し、科学技術の水準の向上を目指すためには、これらを最大限活用することが重要である。この点については、「整備・運用に多額の経費を要し、広く共用に供することが世界最高水準の成果の創出につながる」と第3期の科学技術基本計画で述べられており、先端大型研究施設が科学技術の広範な分野における産学官の研究者に幅広く利用されることによって優れた研究成果の創出が期待されている。
 先端大型研究施設の共用について文部科学省は、平成9年度より「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」に基づき、世界最高水準の性能を有する大型放射光施設(SPring-8)について、その利用者・課題の選定における競争的環境の整備、利用者への技術的サポートの充実等を行っている。平成17年度は利用研究課題として、約1,180件の課題を放射光利用研究促進機構が採択し、「ホウ素を高濃度に添加したダイアモンド超伝導体の電子構造の解明」や「遺伝情報をタンパク質に正しく転写する合成酵素の立体構造の解明」などの大きな成果を上げている。
 さらに、文部科学省は、このように効率的かつ効果的に研究成果を創出しているSPring-8の共用の促進の仕組みを活用し、一層の研究成果の創出を図るため、上述の「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」を改正した。具体的には、SPring-8と平成18年度から開発等が行われる次世代スーパーコンピュータを特定先端大型研究施設として法律上に位置づけ、次世代スーパーコンピュータの開発を理化学研究所において行うとともに、これらの施設の設置者から独立した登録機関による利用者選定と利用支援を実施することにより、公平かつ効率的な共用の促進を図ることを目的とした「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」が平成18年5月に成立したところである。
 加えて、これら特定先端大型研究施設に限らず、独立行政法人等が所有する汎用性の高い大型研究施設についても、当該独立行政法人等の本来のミッションに支障のない範囲において、広範な産学官の研究者の利用に供することが、我が国の研究の潜在能力を活用するうえで重要である。
 しかしながら、これらの研究施設については、その利用に係る基本的な情報(所在地、利用用途、利用可能時間等)が不足していること、施設側に利用者をサポートするための体制が整わない等の問題点がある。このため、平成18年5月に「研究交流促進法」を改正し、これらの研究施設の共用を促進するための情報の提供を国(文部科学省)が行うことにより共用を促進することとした。また、利用者のサポートについても、平成17年度から先端大型研究施設戦略活用プログラムを実施し、地球シミュレータ等における産業界を中心とした新規の利用者の拡大を図るための利用者のサポート体制の充実を図っている。

  Agropedia:農(Agriculture)に関する知の泉(Encyclopedia)を意味する合成語。

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