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2.主要な研究機関における研究開発の推進と改革

(1)大学等
 大学等は、学術研究の中心として、我が国の学問的基盤の確保と水準の向上を図ることを基本的な使命の一つとしている。大学等における学術研究は、研究者の自由な発想と自主的な研究活動を源泉として、創造性豊かな新しい知見を生み出すことを本質としており、その主な特色は、人文科学、社会科学及び自然科学の広範な領域にわたる学問の発展を目指していること、研究者の自主性の尊重がその発展にとって不可欠であること、研究と教育が総合的に推進されていることなどである。
 文部科学省では、これまでの学術審議会の答申・建議も踏まえ、我が国の学術研究基盤の計画的・重点的な整備を図るとともに、学術研究の進展に柔軟に対応できる、世界に開かれた学術研究体制の整備を図るため、研究費の充実、大学の研究施設・設備の改善、優れた研究者の養成・確保、基礎研究の重点的推進、卓越した研究教育拠点(COE)の形成、研究評価の充実、学術情報基盤の整備充実など、総合的な施策を積極的に展開している。
 また、国立大学及び大学共同利用機関については、予算、組織、人事等の運営上の自律性を拡大することにより、社会に開かれた経営体制を確立して、教育、研究、社会貢献に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学等となるよう、平成16年4月に国立大学法人法(平成15年法律第112号)により法人化したところである。
 さらに、内閣府を中心に、我が国そして世界の科学技術の進歩の一翼を担い、また、沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させることを目的として、「国際性」や「柔軟性」などを基本コンセプトとした新たな発想を持った世界最高水準の科学技術大学院大学を沖縄県恩納村(おんなそん)に設立することを目指した取組を行っている。平成17年9月には大学院大学の設立準備等を行う沖縄科学技術研究基盤整備機構が設立された。

●大学等における学術研究
 我が国の学術研究は、大学の学部、研究科、研究所、研究施設などに加え、特定の大学に属さず全国の大学等の研究者が共同で利用し、研究を行う大学共同利用機関を中心に進められている。
 大学には、特定の専門分野についての研究に専念することを目的に研究所が附置されており、学部・大学院における教育研究との連携の下、特色ある研究が進められている。国立大学には、平成17年度現在、59の研究所(うち20は全国共同利用の附置研究所)が設置され、ニュートリノ研究(東京大学宇宙線研究所)などは、世界最高水準の研究成果を上げている。
 大学共同利用機関は、平成16年度の法人化に伴い、既存の16研究所が4つの機構(人間文化研究機構、自然科学研究機構、高エネルギー加速器研究機構、情報・システム研究機構)に再編されたが、引き続き、全国の大学などの研究者が共同研究を推進する拠点として、また、特色ある大型の施設・設備や資料の共同利用の場として、各分野の発展に大きく貢献するとともに、Bファクトリー計画(高エネルギー加速器研究機構)、大型光学赤外線望遠鏡「すばる」(自然科学研究機構国立天文台)などにより、世界最先端の研究を推進している。また、各機構では、連携組織を設け、異分野の研究者間の交流を促進するなど、既存の組織・分野の枠組みを超えた新分野の創出などの新たな取組を行っている。
 国立大学法人及び大学共同利用機関法人の予算は、平成16年4月から使途が特定されない渡し切りの運営費交付金として配分されている。また、法人化後は、各法人の判断によるより自主的な研究組織の改廃が可能となり、一層機動的な研究活動が展開できるようになった。さらに、各法人の個性に応じた意欲的な取組を重点的に支援する経費として「特別教育研究経費」が設けられており、各法人が提案・要望する戦略的な研究活動や、国際的な取組、地域貢献に資する活動等に必要な経費に対する支援を行っている。

大型光学赤外線望遠鏡「すばる」写真提供:自然科学研究機構国立天文台

●私立大学への支援充実
 我が国の大学の学生数の約75パーセントを占めるとともに、それぞれ独自の建学の精神に基づき、特色のある教育研究活動を積極的に展開している私立大学を支援するため、文部科学省では次の施策を実施している。
 経常費に対する補助のうち、「私立大学教育研究高度化推進特別補助」において、世界水準の優れた大学づくりを目指す観点から、教育・研究の取組状況等に応じた重点的支援を推進している。
 また、施設・設備等に対する補助により、「私立大学学術研究高度化推進事業」で選定された優れた研究プロジェクトの実施に必要な研究施設・設備等の一体的な整備や、マルチメディアに対応した施設の改造工事、学内LANの整備等を支援している。
 税制面においては、教育研究事業に係る法人税や事業税が非課税となる等の種々の優遇措置が設けられているが、さらに、学校法人に対する個人寄附に係る税制については、平成18年分より、所得税法上の寄附金控除の適用控除下限額が、従来の1万円から5千円に引き下げられ、学校法人における多様な民間資金の導入のための条件整備が図られた。

●科学技術・学術審議会における審議
 科学技術・学術審議会は、文部科学大臣の諮問に応じて科学技術の総合的な振興に関する重要事項や学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うとともに、文部科学大臣に対し自ら意見を述べること等を行うものであり、同審議会には、大学等を中心に行われる学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うため学術分科会が設置されている(第3-1-6表参照)。

(2)日本学術会議
 「日本学術会議」は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立ち、我が国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年1月、内閣総理大臣の所管の下に「特別の機関」として設立された。我が国の約79万人の科学者の代表として選出された210人の会員により組織され、独立して、1科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること、2科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させることを職務として活動している。
 平成16年4月に日本学術会議の所轄、組織、会員の選考方法等の改正を内容とした「日本学術会議法の一部を改正する法律」が成立したことを受け、平成17年4月に内閣府に移管、同年10月に組織、運営面での改革を行い、新体制が発足した。
 新体制下の日本学術会議は、総合科学技術会議と「車の両輪」として、我が国の科学の向上発達に寄与するため、以下に重点を置いた活動を推進していくこととしている。
  1 政策提言
 政策決定者に対し、科学者としての専門的かつ信頼性のある見解の提示・助言を行う。
  2 科学者に関する連絡・調整
 科学者間の交流を促進し、科学者コミュニティ内の連携・協力体制の強化を図ることにより緊密な科学者間ネットワークの構築を図る。
  3 科学に関する国際交流
 地球的規模の課題に対し各国の科学者と連携して、科学的知見に基づく提言を行うなど、科学者の国際協力体制の構築を図る。
  4 社会とのコミュニケーション
 学術会議会員自らが、社会に対して分かりやすい言葉で科学や研究の意義について語ることにより、科学についての世論を啓発し、特に青少年の科学力増進を図る。

●審議活動
 今後の科学技術政策の戦略的在り方について、日本学術会議としての声明を「日本の科学技術政策の要諦」として取りまとめて、平成17年4月、日本学術会議会長から内閣総理大臣に対し手交した。これは、国家ビジョンとして2050年までに「品格ある国家」、「アジアの信頼」構築を実現することを掲げ、そのための目標ミッションを設定し、建議したものである。
 また、「日本の科学技術政策の要諦」の基本的考え方に立脚しつつ、最も緊急性のある課題の一つである「大都市における地震災害時の安全の確保について」の勧告を、平成17年4月、日本学術会議会長から内閣総理大臣に対し手交した。
 なお、平成17年度においては、勧告1件、要望・声明7件、対外報告68件を行った。

●国際学術交流
 日本学術会議は、国際学術会議(ICSU(注1))、インターアカデミーカウンシル(IAC(注2))をはじめ48の国際学術団体に我が国を代表して加入するとともに、地球圏-生物圏国際協同研究計画(IGBP(注3))等6の国際学術協力事業に積極的に参画するなど、諸外国との連携に努めている。
 特に、日本学術会議を含むG8各国の学術会議では毎年のG8サミットの議題に関して、共同で提言(共同声明)を発出するとともに、G8開催国でG8の各学術会議の代表が一堂に会して議論をしていく枠組みを構築する方向で一致し、2005年(平成17年)からG8学術会議の活動が開始された。同年7月には、英国のグレンイーグルズで開催されたG8サミットにおける主要議題であった「気候変動」及び「アフリカ開発」に関して、これに先立つ6月に、G8各国及び関係国の学術会議が共同で声明を発出し、G8サミットの議論ひいては声明に大きな影響を及ぼした。日本学術会議は、アジア地域で唯一同会議に参画することから、積極的かつ主導的な役割を担っていくこととしている。
 アジア地域の各国と学術研究分野での連携・協力を図ることを目的とし、日本学術会議が事務局となり、会員各国持ち回りで開催する国際学術団体「アジア学術会議」(SCA(注4))は、アジアの持続的発展をテーマに毎年各国で会議を開催しており、2005年(平成17年)5月に第5回会議をベトナムで開催した。
 また、2005年(平成17年)9月、京都において、「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2005-アジアのダイナミズムと不確実性-」を開催した。同会議では、議長総括が採択され、経済と環境の調和などについての踏み込んだ議論を基に、科学者が挑戦して行くべき課題などが盛り込まれた。
 このほか、日本学術会議は、我が国で開催される重要な学術関係国際会議について、閣議の了解を得て学術研究団体と共同主催しており、平成17年度においては、「第18回世界心身医学会議」をはじめ、8件について共同主催した。

●公開講演会、シンポジウム
 日本学術会議は、学術の成果を国民に還元するための活動として、主催講演会等を開催している。また、各部や分野別委員会等が中心になり、学協会との連携の下に、各種の学術上の問題を捉えて、積極的にシンポジウムなどを開催している。
 なお、平成17年度は、公開講演会3件、シンポジウム等107件を開催した。
 さらに、産学官連携を推進するため、平成17年6月に「第4回産学官連携推進会議」(京都)、同年11月に「第5回産学官連携サミット」(東京)を内閣府及び社団法人日本経済団体連合会などと共同主催するとともに、同年9月(札幌)及び平成18年3月(金沢)の計2回「地域振興フォーラム」を主催した。

●科学者間ネットワークの構築
 日本学術会議は、我が国の科学者コミュニティの中核として、人文科学、自然科学を問わず、科学者の意見を集約している。学術の動向を把握し、将来計画の立案及び研究条件の整備などについて検討するとともに、関係する研究機関及び学術研究団体との連絡調整を行っている。学術研究団体については、「日本学術会議協力学術研究団体」となっている約1,200余の学協会と連携している。
 また、地域の科学者と意思疎通を図るとともに、学術の振興に寄与することを目的として、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄の7つの地区会議を組織している。

(3)国立試験研究機関、公設試験研究機関、独立行政法人研究機関等
 国立試験研究機関、独立行政法人研究機関、特殊法人研究機関等では、政策目的の達成を使命とし、我が国の科学技術の向上につながる基礎的・先導的研究及び政策ニーズに沿った具体的な目標を掲げた体系的・総合的研究を中心に重点的に研究開発を行うことが重要である。また、地方公共団体に設置されている公設試験研究機関は、地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導に重要な役割を担っている。
 国立試験研究機関(国土地理院、海上保安庁海洋情報部等を含む。)、独立行政法人研究機関、特殊法人研究機関における平成17年度の試験研究費・人件費・施設費などを含めた科学技術関係経費の総額は、1兆3,626億円となっている。

(4)民間企業
 国の活動とあいまって重要な役割を担う民間の研究開発を活性化させるべく、国は、民間の自助努力を基本としつつ広く民間の研究開発の意欲を高めることが重要である。

●税制による民間における研究活動の振興
 民間における研究活動の振興を図るため、第3-3-5表のとおり、様々な税制上の措置が設けられている。このうち、平成18年度税制改正において、試験研究費に係る税額控除について、試験研究費の総額に一定の控除率が適用される従来の仕組みに加え、試験研究費の増加額に対して控除率を上乗せする措置が2年間の特例として講じられるとともに、所得税の寄付金控除の適用下限額が5千円に引き下げられるなどの措置が講じられた。

第3-3-5表主な科学技術振興関係税制

●出融資等による民間における研究活動の振興
 民間における研究活動を促進するため、様々な政府系機関により、技術開発に対する出融資等の制度が講じられている。以下、主なものを紹介する。
1農業・生物系特定産業技術研究機構
 農業・生物系特定産業技術研究機構は、民間において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究を促進することを目的として、産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として、条件付利子減免融資、出資、共同研究のあっせん等の事業を行った。
2その他の融資制度
 我が国産業の技術水準の著しい向上に寄与すると認められる新技術の開発を図るため、企業の行う新技術に係る技術開発資金に対して日本政策投資銀行が新技術開発融資制度により低利かつ円滑な資金の融資を行っている。

●補助金等による民間における研究活動の振興
 民間の事業化へ向けた研究開発を支援するため、研究開発活動に対する支援制度が講じられている。以下、主なものを紹介する。
1希少疾病用医薬品等の助成金交付事業
 我が国で極めて患者数が少ない疾病の治療薬等の研究開発を支援するため、当該医薬品等の試験研究に係る費用の助成を行っている。
2民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業
 アグリビジネスの活性化を図るため、研究成果の実用化を担う民間企業等が、大学、独立行政法人のポテンシャルを活用して取り組む研究開発を支援している。
3地域食料産業等再生のための研究開発等支援事業
 農林水産・食品関連産業などの食料産業等活動現場において、直面している緊急的に解決すべき諸課題に対し、民間企業等の研究機関が行う短期集中的な研究開発等を支援している。
4生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業
 産学官における研究開発能力を結集し、異分野の研究者が共同して行う融合研究や起業化を促進するための研究開発を提案公募方式で実施するとともに、連携の構築支援を実施している。
5創造技術研究開発費補助金
 中小企業の技術開発、技術力向上等の観点から、中小企業の行う創造的な新製品開発、新技術研究開発のための費用に対する補助を行っている。
6先進技術型研究開発助成金
 将来的にニュービジネスの創出に結び付くような通信・放送技術に関連する先進的な研究開発を行うベンチャー企業等に情報通信研究機構を通じ研究開発費の助成を行っている。
7高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成金
 高齢者・障害者向け通信・放送サービスの開発に必要な研究開発を行う民間企業等に対し、情報通信研究機構を通じ、研究開発費の助成を行っている。
8地域新規産業創造技術開発費補助事業
 地域において新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図るため、中堅・中小企業による新分野進出やベンチャー企業による新規創業といった、リスクの高い実用化技術開発を支援している。
9民間基盤技術研究支援制度
 民間において行われる鉱業、工業、電気通信業、放送業に係る基盤技術に関する試験研究を促進することを目的として、通信・放送技術に関するものについては情報通信研究機構を通じ、鉱工業技術に関するものについては新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ、それぞれ提案公募による委託研究事業を行っている。
10産業技術実用化開発補助制度
 産業技術力の強化を図るために、新たな市場創出や社会ニーズに対応する実用化に向けた技術開発を行う民間企業等に対し、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ、技術開発費の補助を行っている。
11中小企業技術革新制度による補助金・委託費等
 (「第3部第3章第2節4「研究開発型ベンチャー企業活性化のための環境整備」の項目に記載)
12医薬品・医療機器実用化研究支援事業
 保健医療の向上に役立つ医薬品や医療機器に関する技術の実用化段階における研究開発を行う民間企業等に対し、医薬基盤研究所を通じ公募による研究委託事業を行っている。

●その他
 中小企業、ベンチャー企業など、特に開業間もない企業においても優秀な人材の確保が図れるよう、起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための産業界と大学等との人的交流の促進、大学等の先導的な起業家育成講座等に関する実証研究の実施、ベンチャー企業等へのインターンシップ(学生の就業体験制度)の一層の促進、ストックオプションに係る規制緩和、大学新卒者のベンチャー企業等への就業意欲を喚起するなど施策を進めている。
 企業内起業・分社化等による新事業創出を支援するため、分社化、持株会社化等の企業組織の変更が円滑に行われるよう株式交換・株式移転制度を導入する。また、会社分割法制の整備についても検討に着手する。
 また、民間による整備が困難な大型で、かつ高価な共同利用施設及び設備については、国により整備がなされ、民間との共同利用施設・設備として提供されている(第3-3-6表)。

第3-3-6表民間には整備が困難な大型かつ高価な共同利用施設・設備の整備状況

注1  ICSU:International Council for Science
注2  IAC:Inter Academy Council
注3  IGBP:International Geosphere-Biosphere Programme
注4  SCA:Science Council of Asia

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