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5.エネルギー分野

 「エネルギー政策基本法」(平成14年6月法律第71号)に基づき策定された「エネルギー基本計画」(平成15年10月閣議決定)において、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために、重点的に推進すべきエネルギー研究開発施策が示された。当該計画では、エネルギーの安定供給の確保、環境問題への対応等の重要な政策的な意義等にもとづき国の重点的な取組が必要とされている。

(1)原子力の研究、開発及び利用について
 我が国の原子力の研究、開発及び利用は、「原子力基本法」にのっとり、厳に平和目的に限り行われてきた。また、平成17年10月11日に原子力委員会が「原子力政策大綱」(以下、「大綱」という。)を策定し、政府は、10月14日、大綱を我が国の原子力政策の基本方針として尊重し、原子力の研究開発利用を推進する旨の閣議決定を行った。これを受けて、政府は、大綱に沿って、原子力の研究開発利用を着実に推進している。
 今日、原子力発電は電力供給の約3分の1を占める基幹電源として位置付けられるとともに、地球温暖化対策に資するエネルギー源として重要な役割を果たしており、また、加速器等原子力科学技術は、基礎科学分野における新たな知見をもたらすのみならず、ライフサイエンスやナノテクノロジー・材料分野等に欠かせない研究手段を提供している。また、放射線利用についても、医療、農業、工業、環境保全など広範な分野で普及しており、原子力は我が国のエネルギー供給の安定性確保と国民生活の質の向上等に大いに貢献している。
 一方、我が国における原子力の研究開発体制については、「特殊法人等整理合理化計画」において、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構を廃止した上で統合し、新たに原子力研究開発を総合的に実施する独立行政法人を設置することとされ、平成17年10月に日本原子力研究開発機構が設立された。

●安全確保・防災対策
 原子力研究開発利用に当たっては、安全の確保が大前提であり、厳重な規制と管理の実施、安全研究の実施等を通じて、安全確保に万全を期すことが必要である。また、事故発生の可能性を100パーセント排除することはできないとの前提に立って、事故が生じた場合の周辺住民等の生命、健康等への被害を最小限度に抑えるための災害対策が整備されていなければならない。
 このような観点から、我が国の原子力研究開発利用は、施設の設計、建設、運転の各段階において他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制が行われてきたほか、環境放射能調査や万一の場合を考慮した防災対策等各般の安全確保対策が講じられてきている。
 原子力施設の安全確保に関し、経済産業省ほか関係行政機関は、核物質防護体制の強化、クリアランス(注)制度の導入、原子力施設の解体・廃止に係る規制制度の充実を目的とした核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正案を第162回国会に提出した。なお、本法案は、平成17年5月に可決・成立し、平成17年12月1日より施行された。
 原子力防災対策については、平成11年に制定された「原子力災害対策特別措置法」に基づき、原子力防災専門官の配置、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)の指定等、放射線測定設備その他の必要な資機材の整備、原子力事業者防災業務計画の作成、防災訓練の実施といった取組を行いつつ、原子力防災対策の充実・強化を進めている。
 一方、環境放射能調査については、文部科学省を中心とした関係省庁、都道府県及び原子力事業者において、原子力施設周辺における放射能調査が引き続き実施されているほか、我が国の環境放射能水準に関する調査及び原子力艦寄港に伴う放射能調査等が行われている。
 2001年9月に米国において発生した同時多発テロ以降、放射性物質等を取り扱う事業者における放射性物質等の管理、緊急時の連絡体制の確認等の徹底を図っている。
 国際原子力機関IAEA(注1)等の定めた国際標準値(規制対象下限値)の導入及びそれに伴う放射性同位元素の規制の合理化を図るため、平成16年に改正された「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(注2)」が平成17年6月に施行された。
 また、原子力の安全確保に当たっては、安全規制等の技術基盤となる安全研究の推進が重要である。このため、原子力安全委員会は、安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)及び「原子力の重点安全研究計画」を策定し、計画的に安全研究の推進を図っている。これらの計画に基づき、各研究機関等で実施された分野別安全研究は以下のとおりである。
 原子力施設等安全研究については、日本原子力研究開発機構等を中心に、確率論的安全評価手法の高度化、軽水炉燃料の高燃焼度化等に対応した安全評価、高経年化機器・構造の健全性評価、核燃料施設の臨界・閉じ込め安全性、高速増殖炉(FBR(注3))の事故防止・緩和・事故評価等の研究が実施された。
 環境放射能安全研究については、放射線医学総合研究所等を中心に、放射線の被ばく線量評価に関する安全研究、放射線影響の基礎・基盤的な安全研究等が実施された。
 放射性廃棄物安全研究については、日本原子力研究開発機構等を中心に、浅地中処分に関する安全研究、地層処分に関する安全研究並びにクリアランスレベルの検認技術に関する安全研究等が実施された。

 クリアランス:自然界の放射線レベルに比較して十分小さく、人の健康への影響が無視できる放射性物質を「放射性物質として扱う必要がないもの」として放射線防護の規制からはずすこと
注1  IAEA:International Atomic Energy Agency
注2  平成16年の放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律改正においては、
 
1 機器製造者に対する設計認証制度の創設
2 販売業・賃貸業を許可制から届出制へ合理化
3 事業所に対する安全性の向上のため、定期確認制度の創設
4 放射線取扱主任者に対する能力向上のため、定期講習制度の創設
5 廃棄物埋設処分の規定の整備等
  の改正が行われた。
注3  FBR:Fast Breeder Reactor

●信頼確保に向けた取組と立地地域との共生
 原子力研究開発利用の円滑な推進のためには、まず原子力に対する国民の信頼を得ることが極めて重要である。そのためには、第1に原子力関係者が安全運転の実績を積み重ねていくとともに、国民との相互理解を図るための努力が不可欠である。このため、国民との双方向性と透明性の確保を図り、広聴・広報活動の充実を行うとともに、教育支援や簡易放射線測定器の貸出し等の理解増進活動を行っている。
 また、立地地域と原子力研究施設の共生に向け、ソフト事業へも使途が拡大された電源三法交付金等を活用し、立地地域のニーズに応じた取組を推進している。

●原子力発電と核燃料サイクル
1原子力発電
 原子力発電は、我が国のエネルギーの安定供給を確保するための主要なエネルギー源の一つとして、また、発電過程において二酸化炭素、窒素酸化物などを排出しないことから、地球環境保全の面でも優れたエネルギー源の一つとして、安全性の確保及び平和利用を前提としてこれまで着実にその研究開発利用が進められてきた。
 現在の我が国の主流の原子炉である軽水炉については、政府、電気事業者、原子力機器製造事業者等が協力して、我が国の自主技術による軽水炉の安全の確保を大前提とした稼働率の向上及び従業員の被ばく低減を目指して技術開発を実施してきたところであり、これまでの運転経験を反映して、安全性と経済性の向上を目指した軽水炉技術の高度化が進められてきた。

2核燃料サイクルの技術開発等
 エネルギー資源の大部分を輸入に依存する我が国は、将来の世界のエネルギー需要を展望しながら、長期的なエネルギー安定供給の確保を図るとともに、環境への負荷の低減を図っていくため、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの確立に向けた取組を進めている。
 プルトニウム利用を進めるに当たっては、核拡散についての国際的な疑念を生じないよう、核物質管理に厳重を期すことはもとより、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を一層明らかにする観点から、プルトニウム在庫に関する情報の公表を行うなどプルトニウム利用の徹底した透明化を進めている。具体的には、プルトニウム利用の透明性向上のための国際プルトニウム指針を採用し、毎年の我が国のプルトニウム管理状況をIAEAを通じて公表している。
 原子力発電の燃料である濃縮ウランについては、核燃料サイクル全体の自主性を確保する観点から、経済性を考慮しつつ、国内でもウラン濃縮事業を展開している。
 原子力発電所から生じる使用済燃料の再処理については、これまで、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設に委託された一部を除いて、英国核燃料会社(BNFL社)及びフランス核燃料会社(COGEMA)への再処理委託契約により実施してきた。今後、我が国は使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則としていることから、青森県六ヶ所村に民間再処理工場(年間再処理能力800tU)を建設しており、平成19年8月の操業開始を目指して、現在段階的な試験を実施している。民間再処理工場の建設・運転により商業規模での再処理技術の着実な定着を目指しており、核燃料サイクルの確立に向けた展開が図られている。
 また、東海再処理施設は、電気事業者と契約している軽水炉使用済ウラン燃料の再処理を進めてきたが、平成18年3月に役務再処理を終了した。なお、これまでに再処理した使用済燃料は累積で約1,100トンに達している。
 使用済燃料の中間貯蔵に関しては、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことを可能にするので、核燃料サイクル全体の運営に柔軟性を付与する手段として重要である。平成11年には、中間貯蔵に係る法整備が行われ、民間事業者は平成22年までに操業を開始するべく準備が進められている。
 プルトニウム、回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特徴を持つ原子炉として自主開発が進められてきた新型転換炉「ふげん」については、平成15年3月に運転を終了し、平成15年9月末に成果を取りまとめ、事業は終了した。現在は、今後の本格的な廃止措置に備えた研究開発を行っている。

3放射性廃棄物の処理及び処分
 放射性廃棄物の処理、処分及び原子力施設の廃止措置は、整合性のある原子力利用の推進及び国民の理解と信頼を得る観点から最も重要な課題の一つである。放射性廃棄物は、放射能レベルの高低、含まれる放射性物質の種類等が多種多様であることから、発生源にとらわれず処分方法に応じて区分し、具体的な対応を図ることとしている。
 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発については、日本原子力研究開発機構を中核的推進機関として、産業技術総合研究所、大学等の関係研究機関の密接な協力の下、研究開発が進められている。また、研究を進める上で重要な施設の計画としては、日本原子力研究開発機構が、岐阜県瑞浪市(結晶質岩)及び北海道幌延町(堆積岩)において深地層の研究施設計画を推進している。
 また、平成12年5月に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、同年10月に処分実施主体である原子力発電環境整備機構が設立され、平成14年12月に同機構が処分地選定のための調査地区について全国の市町村を対象に公募を行っている。
 原子力発電の運転に伴い発生する低レベル放射性廃棄物については、既にその一部が平成4年12月から青森県六ヶ所村の日本原燃株式会社低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて受け入れられており、平成18年1月末までに200リットルドラム缶約18.2万本が同センターで受け入れられている。
 経済産業省においては、平成17年7月に総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の下に、原子力部会を設置し、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の処分事業形態の在り方についての検討を進めているところである。
 文部科学省においては、平成17年11月に科学技術・学術審議会/研究計画・評価分科会/原子力分野の研究開発に関する委員会の下にRI(注)・研究所等廃棄物作業部会を設置し、処分事業の具体的な実施主体等についての検討を進めているところである。
 規制に関する法令については、平成16年6月「放射性同位元素等による放射性障害の防止に関する法律(以下「放射線障害防止法」という。)」が改正され、埋設処分に係る規定が整備されるとともに、平成17年5月には核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律が改正され、クリアランス制度の導入、原子炉施設の解体・廃止に係る規制の充実が行われた。また、同法の政省令の改正が行われ、平成17年6月に改正された「放射線障害防止法」が施行された。
 原子力施設の廃止措置については、現在、日本原子力研究開発機構において、前述の「ふげん」を含め、核燃料サイクル関連施設の廃止措置に関する調査及び技術開発が行われている。

 RI:Radioisotope(放射性同位元素)

●高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発
 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術(以下、「高速増殖炉サイクル技術」という。)は、ウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができ、将来実用化されれば、現在知られている技術的・経済的に利用可能なウラン資源だけでも数百年にわたって原子力エネルギーを利用し続けることができる可能性や、高レベル放射性廃棄物中に長期に残留する放射能を少なくして環境負荷を大幅に低減させる可能性を有するものであり、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点からその開発に着実に取り組むことが重要である。
 高速増殖原型炉「もんじゅ」は、高速増殖炉サイクル技術のうち最も開発が進んでいるMOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術を用いた原子炉で、かつ発電設備を有する我が国唯一の高速増殖炉プラントであり、原子力政策大綱において、我が国における高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付けられている。
 「もんじゅ」は、平成7年12月のナトリウム漏えい事故以来運転を停止しているが、日本原子力研究開発機構は、運転再開に向けて安全性を向上させるための改造工事について国の許可を得るとともに、平成17年2月には、福井県及び敦賀市より改造工事着手の了解が得られたことから平成17年9月より改造工事本体工事に着手している。なお、「もんじゅ」の原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟に関しては、平成17年5月に最高裁において、高裁判決を破棄し、原告住民の控訴を棄却する国側勝訴の判決が下された。
 また、現在、日本原子力研究開発機構は、平成11年7月から電気事業者等と協力して、高速増殖炉サイクルの適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を2015年頃に提示することを目的として「実用化戦略調査研究」を実施している。平成13年度から17年度までのフェーズ2(第2段階)では、安全性・経済性の向上や、環境への負荷の低減、核不拡散等に配慮した高速増殖炉サイクルの実用化候補を明らかにする研究開発に取り組んでおり、平成17年度末にフェーズ2の最終取りまとめを行った。

高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)

●核融合研究開発の推進
 核融合研究開発の推進は、未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から重要である。現在、我が国の核融合研究開発は、日本原子力研究開発機構、核融合科学研究所、大学等が、相互に連携・協力して進めている。また、二国間・多国間の国際協力も積極的に進められている。
 日本原子力研究開発機構では、トカマク方式(注1)について実用化を目指した研究開発を進めている。特に、臨界プラズマ試験装置(JT-60)に関しては、ITER(イーター)(国際熱核融合実験炉(注2))のための物理研究開発や定常核融合炉概念の実証等で世界を先導する成果を上げており、更なるプラズマ閉じ込めの性能向上による高圧力プラズマの長時間運転を目指している。
 核融合科学研究所においては、我が国独自のアイデアに基づくヘリカル方式(注3)による世界最大の大型ヘリカル装置を建設し、新しいプラズマ領域の研究を世界に先駆けて行っている。
 また、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターをはじめ関係大学・独立行政法人において、各種磁場閉じ込め方式及び慣性閉じ込め方式による基礎的研究、炉工学に係る要素技術等の研究が進められている。
 ITER(イーター)計画については、核融合エネルギーの科学的及び技術的可能性の実証を目指した国際プロジェクト(現在、日本、中国、EU、韓国、ロシア、米国、インドが参加)であり、我が国は主体的かつ積極的に取り組んでいる。2005年(平成17年)6月のITER(イーター)閣僚級会合(モスクワ)においてITER(イーター)建設地がフランス・カダラッシュに決定した後、同年11月にはITER(イーター)国際機構の機構長予定者が決定し、2006年(平成18年)4月には、東京で開かれた次官級協議において、ITER(イーター)国際機構設立に向けた政府間協議が終了するなど、ITER(イーター)計画はその実現に向け大きく前進している。
 また、ITER(イーター)建設地の決定と同時に、我が国においてITER(イーター)と並行して補完的に実施する研究開発プロジェクト(幅広いアプローチ)を日欧協力により実施することが決定し、我が国はITER(イーター)計画においてホスト国であるEUと並ぶ重要な役割を担うこととなった。

国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))鳥瞰(かん)図

注1  トカマク方式:ドーナツ状の磁場によるプラズマ閉じ込めの一方式。外部コイルによる環状磁場を有し、かつ、環状方向に電流を流すことによりらせん状磁場をつくり、プラズマを安定に閉じ込める。その優れた閉じ込め性能のために世界各国の研究所でこの形式のプラズマ実験装置が建設され、研究されてきた。
注2  ITER(イーター):ラテン語で「(遠くへ続く)道」を意味する。
注3  ヘリカル方式:トカマク型装置のようにプラズマに電流を流さずに、外部のコイルによって形成したドーナツ型のらせん状磁場でプラズマを閉じ込める方式

●原子力科学技術の推進
 原子力科学技術には、加速器や高出力レーザーを利用した量子ビームテクノロジーの開発や利活用により、自然界の基本原理を探究するとともに、ライフサイエンスや物質・材料等の様々な科学技術分野の発展を支える基礎・基盤的な研究と、核融合や革新的な原子炉の開発といった、将来のエネルギー安定供給の選択肢を与え、経済・社会や生活者のニーズに対応する研究開発という二つの側面がある。
 量子ビームテクノロジーについては、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で、世界最高レベルの強度を持つ陽子ビームを発生・利用して、生命科学、物質・材料科学、原子核・素粒子物理学等の広範な研究分野の新展開を目指す大強度陽子加速器計画(J-PARC(注))を推進している。本計画は、原子力委員会及び学術審議会加速器科学部会が設置した大強度陽子加速器施設計画評価専門部会において平成12年8月に取りまとめられた評価結果を踏まえ、平成13年度から建設に着手しており、平成20年度からのビーム併用開始を目指し、建設・整備を進めている。また、理化学研究所においては、水素からウランまでの全元素のRIを世界最大の強度でビーム化する加速器施設「RIビームファクトリー」計画について、平成18年度中に一部実験の開始を目指し、建設・整備を進めている。

大強度陽子加速器施設(J-PARC)鳥瞰(かん)図
大強度陽子加速器施設(J-PARC)鳥瞰(かん)図

 J-PARC:Japan Proton Accelerator Research Complex

 また、原子力科学技術の基礎・基盤的研究は、原子力の多様性、将来の技術革新につながるようなシーズを生み出し、原子力分野のプロジェクト研究及び他の科学技術分野の発展にも寄与するものである。日本原子力研究開発機構では、先端基礎研究センターにおける放射場科学等の先端基礎研究や、関西光科学研究所(関西学術文化研究都市)におけるX線レーザー開発等の光量子科学研究、兵庫県播磨科学公園都市の大型放射光施設SPring-8を利用した放射光科学研究等を中心に、原子力の新たな展開を図るための基礎研究の充実を図っている。また、各府省の所管する国立試験研究機関等において、物質・材料、生体・環境影響、知的、防災・安全の4基盤技術分野の先端的基盤研究が進められているほか、独立行政法人、大学、国立試験研究機関等の研究機関間の積極的な研究交流の下、これらの研究機関の能力を有機的に結集して取り組む原子力基盤クロスオーバー研究(注1)も実施されている。
 21世紀を展望すると、高い経済性と安全性を持ち、熱利用等の多様なエネルギー供給や原子炉利用の普及に適した革新的な原子炉の開発や、使用済燃料や放射性廃棄物の処理・処分負担の軽減、核拡散抵抗性の向上等の特徴を有する革新的な核燃料サイクルシステムの実現が期待されている。
 文部科学省では、平成14年度より多様なアイデアの活用に留意しつつ、革新的原子力技術に係る公募方式の研究開発を産学官の連携により実施している。また、平成17年度からは競争的資金制度を適用した「原子力システム研究開発事業」が実施されている。
 経済産業省では、将来の原子力発電及び核燃料サイクル技術の選択肢を確保するため、平成12年度より革新的独創的な実用原子力技術に係る提案公募形式の研究開発を実施している。
 また、日本原子力研究開発機構では、高温工学試験研究炉(HTTR(注2))の出力上昇試験を行い、高温熱供給など、エネルギー供給の多様化の可能性を探る高温ガス炉技術の確立、水素製造等の熱利用の研究開発等を推進している。平成16年4月には、原子炉出口温度として世界最高となる950度の高温ガスの取り出しに成功している。

注1  原子力基盤クロスオーバー研究:個の研究機関単独では速やかに成果を得ることが困難な多岐にわたる技術開発要素から成る研究であり、原子力試験研究のうち総合的研究として位置付けられている制度
注2  HTTR:High Temperature Engineering Test Reactor

●放射線利用の普及
 原子力利用の一つとして、放射線は基礎・応用研究から医療、工業、農業等の実用に至る幅広い分野で活用されており、研究開発を進めつつ放射線利用の普及を図っていくことが重要である。
 各種分野における放射線利用の状況としては、医療分野において、X線CT(X線コンピュータ断層撮影)等の放射線による診断や、X線、ガンマ線等を利用したがん治療が既に実用化されており、現在、陽子線、重粒子線等によるがん治療の研究が行われている。特に、放射線医学総合研究所においては、がんに対する高い治療効果が期待される重粒子線がん治療の研究に取り組んでおり、平成15年度に厚生労働省より高度先進医療として承認された。また、第3次対がん10か年総合戦略に基づき、装置の小型化研究等も進められている。大学においても、筑波大学陽子線医学利用研究センター等で陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。農業分野では、農作物の品種改良や、農薬を使わない害虫駆除、ジャガイモの発芽防止等に放射線が利用されている。工業分野では、工業製品の非破壊検査や工業計測、ゴム、プラスティック等の高分子材料の改質などに放射線が用いられている。研究利用では、日本原子力研究開発機構において、イオンビームやガンマ線を用いて資源確保や環境浄化に役立つ新機能材料創製やバイオ技術、電子線を用いて排煙中の有害物質を除去する環境保全技術などの研究が進められている。

●核不拡散対策と原子力国際協力
 我が国の原子力研究開発利用を円滑に進めるには、我が国の原子力政策の考え方を国際社会に明確に伝え、国際社会の理解と信頼を得ることが必要である。また、原子力利用を進める各国共通の関心事である原子力の安全問題や放射性廃棄物処分の問題の解決に向けて、我が国がその技術と経験をもって国際社会と協力して主体的に取り組むことも、国際社会の理解と信頼を得ていく上で重要である。

1核不拡散対策
 原子力の平和的利用を円滑に実施していくためには、核不拡散体制の維持は、安全確保とともに極めて重要であり、核兵器の不拡散に関する条約(NPT(注1))や、それに基づく国際原子力機関(IAEA)による保障措置、包括的核実験禁止条約(CTBT(注2))等、種々の国際的枠組みが創設されてきた。これらの枠組みに加え、我が国の持つ原子力の平和的利用技術と人材能力をもって、今後とも核不拡散体制の強化を目指して主体的に取り組んでいく。

 我が国では、「原子力基本法」にのっとり、厳に平和の目的に限り原子力開発利用を推進しているところであり、従来から、IAEAと締結した保障措置協定などに基づき、核物質について平和的利用を担保するための「保障措置」を受け入れるとともに、国際的な水準に従い、核物質の盗取や原子力施設への妨害破壊行為を防ぐための「核物質防護」を実施しているほか、これらに必要な技術開発を進めてきている。2004年度(平成16年度)に、IAEAより我が国について保障措置下に置かれた核物質の転用を示す兆候も未申告の核物質及び原子力活動を示す兆候もないとの「結論」が得られた。これにより査察の回数の削減を可能とする効率的な保障措置である「統合保障措置」が実施されている。
 また、保障措置上重要な施設である六ヶ所再処理施設の操業開始に向けて、効果的・効率的な保障措置を実施するため、保障措置手法の確立や六ヶ所保障措置分析所、六ヶ所保障措置センターの設置などの体制整備を行っている。さらに、核物質計量管理技術向上のための国際トレーニングコースを開催した。
 また、NPT上要求される義務に加えて、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ、合理的かつ整合性のある計画の下でその透明性の確保に努めることが重要であり、核燃料サイクル計画の透明性をより高めるための国際プルトニウム指針に従って我が国のプルトニウムの管理状況についてIAEAを通じて公表するとともに、より詳細なデータを独自に公表し、可能な限り高いレベルでの透明性の確保に努めている。さらに、核不拡散関連の技術開発を積極的に進め、先進的リサイクル技術の研究開発など、核不拡散にも配慮した研究開発に取り組んでいる。
 このほか、我が国は、1997年(平成9年)7月、核兵器のない世界に向けた歴史的な一歩となる、あらゆる核爆発を禁止するCTBTの批准を行っており、現在、同条約の発効に備え国際監視制度の整備等に取り組んでいる。

2原子力国際協力
 原子力国際協力に当たっては、原子力の研究開発利用や核不拡散の面で、各国共通の課題や研究開発への取組を国際協力の下に進めていくとともに、開発途上国等からの期待に積極的に応えていくことが重要である。
 我が国は、米国、フランス等の10か国と1機関が加盟する、第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF(注3))にも参画しており、2005年(平成17年)2月には、米国、フランス、英国、カナダ、日本の5か国政府間で次世代原子力技術の開発に関する枠組協定を締結した(2005年(平成17年)12月現在、スイス、韓国を加えた7か国が締結)。

注1  NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
注2  CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty
注3  gif:Generation 4 International Forum

 アジア諸国との原子力協力については、アジア原子力協力フォーラム(FNCA(注1))の枠組みの下、大臣級会合における政策対話、研究炉、放射線の医学利用等、原子力の平和的利用に関する情報・意見交換や技術交流が進められている。
 我が国はまた、1978年(昭和53年)からアジア太平洋地域のIAEA加盟国による原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定(RCA(注2))に参加し、工業、医療、放射線防護などの分野で、トレーニングコースの開催、専門家の派遣等、財政面・人的側面での支援をし、途上国の社会・経済の発展に貢献している。
 他方、旧ソ連、中東欧諸国との原子力協力については、原子力施設の廃止措置に関する研究協力、研修事業による原子力関係者の資質向上等の二国間協力、IAEAへの特別拠出金事業などを通じた多国間支援を実施している。ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分に関しては、核軍縮・核不拡散への貢献の一つとして、当事国である米国、ロシアやその他関係国と緊密な連携を図りつつ、これまで我が国が培ってきた平和利用技術を活用して、余剰兵器プルトニウム処分への協力を行うことにしており、日本原子力研究開発機構がロシアの物理エネルギー研究所や原子炉科学研究所と研究協力を実施している。また、平成16年度よりバイパック(振動充填)燃料製造法の信頼性や高速炉への適用性を実証するため、21体の燃料集合体の燃焼試験を開始している。
 欧米との原子力協力については、原子力の平和的利用のための専門家や情報の交換、原子力資機材や役務の受領・供給などの協力を行っており、具体的には、日本原子力研究開発機構と米国エネルギー省やフランス原子力庁との研究協力、理化学研究所と米国ブルックヘブン国立研究所や英国のラザフォードアップルトン研究所との研究協力等を実施している。

注1  FNCA:Forum for Nuclear Cooperation in Asia
注2  RCA:Regional Cooperative Agreement for Research, Development & Training Related to Nuclear Science and Technology

(2)新エネルギーの研究開発
 新エネルギーは、地球温暖化対策やエネルギーの安定供給の確保に資するが、現状では化石燃料に比べエネルギー変換効率が低く発電コストが高いという経済性の問題等がある。
 こうした課題を解決し導入・普及の促進を図るため、燃料電池、太陽光発電、バイオマスエネルギー等の新エネルギーの研究開発を積極的に推進していくことが必要である。

●燃料電池・水素エネルギー利用
 水素等と酸素の化学反応より直接電力を得る燃料電池は、高効率で窒素酸化物、硫黄酸化物を排出しないことから、エネルギー・環境技術の鍵となる重要な技術(キーテクノロジー)として期待されている。燃料電池については自動車用、定置用等を中心に開発が進んでいるが、その実用化・普及には耐久性等の性能や経済性向上等が課題である。このため、文部科学省では燃料電池の性能向上のため革新的な新素材等の開発を、経済産業省では固体高分子形燃料電池に係る基礎的・基盤的な研究開発体制の構築、定置用燃料電池に係る量産技術の確立、燃料電池自動車及び水素供給設備の実証研究等を、国土交通省では住宅用燃料電池の実証試験等を実施している。

●太陽光発電
 太陽光発電は価格の低下等により導入が進みつつあるが、早期の市場自立化を実現するためには、なお一層のコストダウン技術の開発等が不可欠である。このため、経済産業省では低コスト・高効率化の実現に向けた技術開発を推進するとともに、リサイクル(再利用)・リユース(再使用)技術等の開発を進めている。

●バイオマスエネルギー
 「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月閣議決定)を踏まえ、内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省において、家畜排せつ物、木質系廃棄物、有機汚泥、食品廃棄物などの未活用バイオマスをメタン等の気体燃料やエタノール等の液体燃料など汎用性の高い燃料形態へ高効率で転換(ガス化、液化等)する技術や高効率な利用技術等の研究開発を進めている。

(3)クリーン化石エネルギーの研究開発
 地球温暖化防止等の観点から、よりクリーンで高効率な化石燃料利用技術等の研究開発を進めることが必要である。

●石油
 石油の製造・利用に伴って生じる二酸化炭素、窒素酸化物等の環境負荷物質の更なる低減に向けた取組を進めるために、経済産業省では、石油製品の製造工程の高度化・効率化や自動車排出ガスのクリーン化に向けた燃料品質等の研究開発等を進めている。

●石炭
 石炭は石油などに比べ供給安定性に優れているが、他の化石エネルギーに比べ燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が多いこと等から、環境への負荷低減を図るための技術開発が必要である。このため、経済産業省では、石炭ガス化複合発電(IGCC(注1))や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC(注2))による高効率発電技術など石炭のクリーンな利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)の開発を進めている。

●天然ガス等
 天然ガスは他の化石エネルギーと比べて、燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が少ないなど環境負荷が小さいことから、その利用促進に資する研究開発を進めることが重要である。このため、経済産業省では、液体燃料等への形態変換により利用範囲の拡大を図ることを目指した天然ガス等の液体燃料化(GTL(注3))やジメチルエーテル(DME(注4))の製造・利用技術等に関する研究を進めている。また、日本近海に相当量の賦(ふ)存(ぞん)が期待されているメタンハイドレートをエネルギー資源として利用するため新たな採取技術の開発を進めている。

注1  IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle
注2  IGFC:Integrated coal Gasification Fuel cell Combined Cycle
注3  GTL:Gas to Liquid
注4  DME:Dimethyl Ether

(4)省エネルギー・エネルギー効率化技術
 地球温暖化防止、有限なエネルギー資源の有効活用などの観点から、個々の機器、要素技術の効率の向上とともに、分散型システムの導入・活用、未利用エネルギーの活用など社会システム全体においてエネルギー供給及び利用の効率の向上等を図るための研究開発を推進することが重要である。また、各種製品の生産、利用、再利用、廃棄及び各種サービス等で直接・間接に消費されるすべてのエネルギー(ライフサイクルエネルギー)の低減を視点とした研究開発を推進することが必要である。
 このため、経済産業省では、省エネルギー技術開発の実効性を高めるために、シーズ技術の発掘から実用化に至るまで、需要側の課題を克服するため、水和物スラリ空調システム(注)の研究開発等を戦略的に進めている。
 文部科学省では、ガスタービンの高効率化のための超耐熱材料等の研究開発を進めている。

 平成17年度に実施されたエネルギー分野(原子力以外)の主な研究課題をまとめると、第3-2-7表のとおりである。

第3-2-7表エネルギー分野(原子力を除く)の主な研究課題(平成17年度)

 水和物スラリ空調システム:水和物と水溶液の混相媒体を熱搬送材として使用し、高密度で冷潜熱搬送を行い、搬送動力を低減させるシステム。

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