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3.環境分野

 環境分野は、多様な生物種を有する生態系を含む自然環境を保全し、人の健康の維持や生活環境の保全を図るとともに、人類の将来的な生存基盤を維持していくために不可欠な分野である。現在、地球環境問題の解決に向けた、科学技術面での取組の必要性が高まってきており、我が国は以下の施策に取り組んでいる。

(1)地球観測・変動予測をはじめとする地球環境問題解決のための研究
 近年、地球温暖化などの地球的規模での環境問題が顕在化しつつあり、国際的に協力してこれらの問題の解決を図っていくことが強く求められている。
 2003年(平成15年)6月のフランスでのG8エビアン・サミットにおける「持続可能な開発のための科学技術行動計画」での合意を踏まえて、同年7月米国での第1回地球観測サミットに続き、2004年(平成16年)4月に東京で第2回地球観測サミットが開催され、43か国等の参加の下、全球地球観測システム(GEOSS(注))構築のための10年実施計画の枠組みが採択された。その結果を踏まえて、2005年(平成17年)2月のベルギーでの第3回地球観測サミットで10年実施計画が承認された。また、地球温暖化問題に関しては、先進国等における温室効果ガス排出量の削減約束を盛り込んだ「京都議定書」が2005年(平成17年)2月に発効した。2004年(平成16年)12月には、気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP10(注1))がアルゼンチンで開催され、「全球気候観測システム(GCOS(注2))実施計画」の着実な実施等に向けた検討が行われた。

●地球的規模の諸現象の解明に係る研究開発等
 地球環境問題に関わる現象は、国境を越えた問題であるため、研究開発の推進には、地球的規模での協力が重要である。我が国の研究者は世界気候研究計画(WCRP(注3))、地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP(注4))等の国際的な研究計画に参加し共同研究を進めている。
 また、地球的規模の諸現象を解明するためには、地球観測情報の国際的な共有を促進することが重要である。このため、我が国は、2004年(平成16年)4月に第2回地球観測サミットを開催したほか、地球観測衛星委員会(CEOS(注5))、統合地球観測戦略パートナーシップ(IGOS-P(注6))等に参加し、貢献している。
 文部科学省では、世界最高性能のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を活用した精度の高い地球変動予測等の研究開発を推進している。「地球シミュレータ」は2005年の愛知万博にて、地球環境問題解決に大きな貢献をしている21世紀にふさわしい「新たな発展のための技術」として「愛・地球賞」を受賞した。さらに、「地球シミュレータ」を活用した研究開発として、気候変動に関する科学的知見を提供する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC(注7))」第4次評価報告書に寄与できる精度の高い温暖化予測及び将来の水資源・水災害の予測を目指した「人・自然・地球共生プロジェクト」を実施している。また、地球観測サミットの10年実施計画に貢献するため、総合科学技術会議の「地球観測の推進戦略」(平成16年12月)を踏まえ、科学技術・学術審議会に地球観測推進部会を設置した。
 海洋研究開発機構では、気候変動予測、水循環変動予測、地球温暖化予測、大気組成変動予測、生態系変動予測、分野横断型モデル開発等の地球環境予測研究を進めている。また、地球環境観測研究については、気候変動観測、水循環観測、地球温暖化観測、海洋大循環観測等を推進している。さらに、ハワイ大学の国際太平洋センター(IPRC(注8))及びアラスカ大学の国際北極圏研究センター(IARC(注9))において、米国との研究協力を進めている。
 科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業では、「水の循環系モデリングと利用システム」等に関する研究開発を推進している。
 総務省の情報通信研究機構では、日米科学技術協力協定の枠組みの下でアラスカ大学を中心とする米国との国際共同研究として、北極域での地球大気の総合的な観測・計測技術の研究を進めている。我が国の南極地域観測事業は、「南極地域観測統合推進本部」(本部長:文部科学大臣)の下に、関係府省の協力を得て、国立極地研究所が中心となって実施している。平成17年度は、第46次観測隊(越冬隊)及び第47次観測隊が、昭和基地を中心に、気象等の定常的な観測や、地球規模での環境変動の解明を目的とするモニタリング研究観測等を実施した。特に、平成18年1月、ドームふじ基地での氷床掘削により、深さ約3,029メートルの氷床コアの採取に成功した。

3,028.52メートルが記された氷床コア

 GEOSS:Global Earth Observation System of Systems
注1  COP:Conference of the Parties
注2  GCOS:Global Climate Observing System
注3  WCRP:World Climate Research Programme
注4  IGBP:International Geosphere-Biosphere Programme
注5  CEOS:Committee on Earth Global Observation Satellites
注6  IGOS:Integrated Global Observing Strategy
注7  IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change
注8  IPRC:International Pacific Research Center
注9  IARC:International Arctic Research Center

●人工衛星による観測に関する技術
 人工衛星による地球観測は、広範囲にわたる様々な情報を繰り返し連続的に収集することを可能とするなど極めて有効な観測手段であり、地球環境問題の解決に向けて、国内外の関係機関と協力しつつ総合的な推進を行っている。
 情報通信研究機構では、国際宇宙ステーションの日本の実験棟(JEM(注1)愛称「きぼう」)のばく露部に搭載される超伝導サブミリ波リム放射サウンダの開発を進めているほか、宇宙からの地球環境変動計測技術に関する検討を行っている。
 宇宙航空研究開発機構では、米国航空宇宙局(NASA(ナサ))の熱帯降雨観測衛星(TRMM(注2))に搭載されている降雨レーダ(PR(注3))、NASA(ナサ)の地球観測衛星(Aqua)に搭載されている改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E(注4))などからデータを処理し、研究及び利用者へのデータ提供を行っている。また、本年1月には陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS(注5))を打ち上げ、9月から本格運用を開始する予定である。そのほか、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT(注6))、全球降水観測計画/二周波降水レーダ(GPM/DPR(注7))、地球環境変動観測ミッション(GCOM)の開発などを関係機関との協力の下に進めている。
 経済産業省では、NASA(ナサ)の地球観測衛星(Terra)に搭載している資源探査用将来型センサ(ASTER(注8))の運用を行うとともに、ALOSに搭載する次世代合成開口レーダ(PALSAR(注9))の開発を宇宙航空研究開発機構と共同で進めている。また、同センサ等により取得する観測データの地上処理システムの開発・運用及びデータ処理・解析技術の開発を行っている。
 気象庁では、静止気象衛星ひまわり5号(GMS-5)の後継機である運輸多目的衛星(MTSAT(注10))の整備を進め、平成17年2月26日に同新1号の打ち上げを行った。

注1  JEM:Japanese Experiment Module
注2  TRMM:Tropical Rainfall Measuring Mission
注3  PR:Precipitation Radar
注4  AMSR-E:Advanced Microwave Scanning Radiometer-E
注5  ALOS:Advanced Land Observing Satellite
注6  GOSAT:Greenhouse Gas Observing Satellite
注7  GPM/DPR:Global Precipitation Measurement/Dual-frequency Precipitation Radar
注8  ASTER:Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer
注9  PALSAR:Phased array type L-band Synthetic Aperture Radar
注10  MTSAT:Multi-functional Transport Satellite

 農林水産省では、NASA(ナサ)の地球観測衛星(Terra,Aqua)に搭載している中分解能分光放射計(MODIS(注1))等から受信した画像データをデータベース化し、インターネット上に提供している。
 環境省では、「みどり2」に搭載したオゾン層等の後継監視センサ(ILAS-2(注2))から取得した観測データ等を活用し、地球環境の観測、監視及び研究を推進するとともに、GOSATに搭載する温室効果ガス観測センサの開発等を宇宙航空研究開発機構、国立環境研究所と共同で進めている。
 また、こうして得られた人工衛星からのデータ利用を図るため、宇宙航空研究開発機構の地球観測利用推進センター等において、地球環境観測、災害監視・資源管理などに衛星データの活用を促進するための衛星データの情報システムの整備・運用やデータ相互利用、データ解析・利用研究を推進している。さらに、広く一般に対して地球環境の現状への理解を深めるため、ホームページを利用し衛星データ等を公開している。

●海洋観測技術
 海洋は、地球表面の約7割を占め、地球的規模の諸現象に大きく関わっており、その果たす役割の解明が重要な課題となっている。このため、海洋研究開発機構では、次世代型氷海用自動観測ブイ(J-CAD(注3))や全球的な海洋中層観測システム構築のためアルゴフロート等の海洋観測技術の研究開発を推進した。
 総務省では、情報通信研究機構において、沿岸から黒潮等の流速場を長期連続観測可能な遠距離海洋レーダを開発し、石垣島、与那国島に設置して東シナ海南部の黒潮流動場の観測を開始した。
 文部科学省と国土交通省は、全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視・把握するため、海面から水深約2,000メートルまでの水温・塩分データを観測・通報する中層フロートを国際協力の下、全世界で約3,000個を展開する高度海洋監視システムの構築(ARGO(注4)計画)に取り組んでいる。
 経済産業省では、太平洋における二酸化炭素の循環メカニズムの調査研究を推進している。
 環境省では、国連環境計画(UNEP(注5))が推進している日本海及び黄海の一部を対象海域とする北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP(注6))の一環として、海洋環境の特殊モニタリング手法の一つである人工衛星を利用したリモートセンシング技術の活用について研究を推進している。

注1  MODIS:Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer
注2  ILAS-2Improved Limb Atomspheric Spectrometer 2
注3  J-CAD:JAMSTEC Compact Arctic Drifter
注4  ARGO:Jason衛星による観測と連携することから、ギリシャ神話の英雄Jasonの乗った船Argoに因んでいる
注5  UNEP:United Nations Environment Programme
注6  NOWPAP:Northwest Pacific Action Plan

●エネルギー利用に伴う二酸化炭素の排出を抑制するための技術開発
 地球温暖化の原因となる温室効果ガスの総排出量の約9割はエネルギー利用に伴う二酸化炭素であり、二酸化炭素排出抑制対策技術の開発・実用化・導入普及が必要である。
 環境省では、基盤的な対策技術の実用化に向けた開発や、短期間で商品化につながる対策技術の開発を平成16年度から推進している。

 なお、平成17年度において実施された主な研究課題は第3-2-3表のとおりである。

第3-2-3表地球観測・変動予測をはじめとする地球環境問題解決のための研究に関する主な研究課題(平成17年度)

(2)循環型社会構築のための研究
 将来の我が国における経済社会の持続的な発展のためには、資源の有効利用と廃棄物等の発生抑制を行いつつ、資源循環を図る循環型社会構築のための研究開発が不可欠である。
 バイオマスの利活用については、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月閣議決定)に基づき、取組の向上を図ることとしている。
 文部科学省では、廃棄物の無害化処理と再資源化を図るとともにその実用化と普及を目指した影響・安全評価及び社会システム設計に関する研究開発を行う「一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト」を産学官の連携により実施している。
 経済産業省では、自動車リサイクル等対策、リサイクル困難物対策、建築リサイクル対策のための技術開発に取り組むと同時に、その普及促進のための実用化支援事業、リサイクル関連技術及びリサイクル製品の普及啓発に係る調査等を行う知識基盤整備等を併せて実施している。
 農林水産省では、バイオマスの循環・利用技術の開発を実施するとともに、地域のバイオマスを効率よく循環利用していくためのシステム化技術の開発、化石燃料に代替する新エネルギー生産技術の開発を実施している。また、平成16年度からバイオマスプラスチックの製造コスト低減に向けた技術開発を実施している。さらに、食品リサイクルを進める上で、ネックとなる分別・運搬に必要な技術の開発に取り組むとともに、高度利用に必要な再生・変換技術や、成分・品質評価技術の開発を行っている。
 国土交通省では、各種廃棄物を母体とした土質新材料の開発と港湾施設への適用に関する研究、住宅・社会資本の戦略的ストックマネジメント手法の開発、建設廃棄物の発生抑制・リサイクル技術の開発、資源の循環的な利用を促進する静脈物流システム形成、下水汚泥、家畜ふん尿等からのバイオマスエネルギー回収に関する研究等が進められている。
 環境省では、廃棄物処理に伴って発生する有害化学物質の無害化処理技術、プラスチック等のリサイクル技術、最終処分場の管理技術等の研究・開発、廃棄物処理施設等における微量汚染物質の発生機構の解明・排出制御に関する研究や微量汚染物質のリスク制御の研究を行っている。また、循環型社会構築のためのシステム評価、費用負担の在り方、推進方法に関する研究や廃棄物の排出抑制及び再生利用に関する研究など循環型社会の構築に関する研究を推進している。
 総務省消防庁では、バイオマスエネルギーの活用に係る火災予防上の安全対策に関する調査研究を実施している。

 なお、平成17年度において実施された主な研究課題は第3-2-4表のとおりである。

第3-2-4表循環型社会構築に関する主な研究課題(平成17年度)

(3)自然共生型社会構築のための研究・化学物質の総合管理のための研究・その他
●生物多様性に関わる研究開発

 野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進行しているという状況の下、地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全し、生物資源の持続可能な利用を行うこと等を目的とした「生物の多様性に関する条約」と、それに基づく「生物多様性国家戦略」の中では、自然環境の現状と時系列的変化に関する科学的かつ客観的なデータ収集・整備を目的とした基礎調査や生物の生態学的・分類学的知見の充実、生態系の構造・維持機構の解明等を目的とした基礎的研究を進めることが必要とされている。
 文部科学省では、各国に分散する生物多様性に関するデータを、全世界的に利用することを目的とする国際科学協力プロジェクト、地球規模生物多様性情報機構(GBIF(注))への参画を通じて、生物標本等国内資料のデータベース化等を進めている。
 農林水産省では、生物機能を活用した環境負荷低減技術の開発、植物の環境ストレス耐性機構の解明、人と野生鳥獣が共存しつつ、農林業被害を軽減する技術等に関する研究開発等が進められている。
 環境省では、地球環境研究総合推進費等により、生物多様性の減少に関する影響の予測、対策に関する研究等を推進している。

 GBIF:Global Biodiversity Information Facility

●公害防止等に関わる研究開発
 公害の防止等については、公害防止等試験研究費を活用した研究開発を重点的に推進している。特に近年、ダイオキシン類、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)等化学物質の環境リスク対策に資するため、それらの試験法・測定法の開発や化学物質情報の収集・提供等、現在関係府省を中心に調査・研究開発及び知的基盤整備を行っている。
 文部科学省では、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業において「内分泌かく乱物質」に関する研究開発を推進している。

●その他
 総務省では、地球環境データの有効な情報流通を行う「地球環境保全国際情報ネットワーク技術」等の研究を進めている。
 農林水産省では、農業の多面的機能と環境負荷の正負両面を総合評価する環境勘定手法を導入した評価手法の開発、自然と共生した農林水産業を展開するための流域圏における水循環、農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発等に取り組んでいる。
 国土交通省では、流域圏全体を視野に入れた総合的な水循環管理のための流域圏の再生・修復技術の開発を行う自然共生型国土基盤整備技術の開発等が推進されている。
 環境省では、環境技術開発等推進費の「自然共生型流域圏・都市再生技術課題」において、主要都市・流域圏の自然共生化に必要なシナリオの設計・提示を目指した研究が進められている。
 なお、平成17年度において実施された主な研究課題は第3-2-5表のとおりである。

第3-2-5表自然共生型社会構築のための研究・化学物質の総合管理のための研究・その他に関する主な研究課題(平成17年度)

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