ここからサイトの主なメニューです

2.文化財の保存・活用、芸術の創造に資する科学技術

●有形文化財の保存修復に資する科学技術
 有形文化財保存修復について、最近の科学技術を活用した保存修復技術が開発されている。
 例えば、古墳時代の柄頭(つかがしら)(刀の柄の端)の象嵌(ぞうがん)遺物は埋蔵中に腐食するために表面が厚い鉄錆(さび)に覆われ、直接象嵌は見ることができなかったが、水素プラズマを用いて表面だけの鉄錆を取り除く方法が開発され、象嵌遺物に残された文様などを見ることが可能となった(第1-2-42図)。

第1-2-42図柄頭の象嵌遺物

 プラズマによる象嵌遺物の保存修復技術の確立は、繊細な保存修復だけでなく、歴史の解明にも重要な役割を果たしており、このような科学技術開発は文化財としての価値の維持を支える重要な役割を担っている。

●無形文化財の保存・継承に資する科学技術
 陶芸家などの伝統技術のように、人間の動きそのものが歴史的・芸術的価値を持つ技能の保存・継承にも、科学技術が大きく貢献する。
 動き自体に価値のある無形文化財の技能保存・継承は文章や図表などの文書だけでは十分ではない。近年デジタル三次元立体映像技術の進歩により動きを詳細に記録することが可能となった。具体的には、レンズが二つついた特殊なカメラで陶芸家の手の動きを撮影して3Dビデオを作製し、モーションキャプチャー(磁気センサ)とデータグローブを用いて陶芸家の腕と手の動きを計測し、データベース化する。これらをもとに陶芸家の手の動きをコンピュータグラフィックスで構築することにより、通常は隠れて見えなかった裏側の手の動きも観察できるようになり、無形文化財の記録保存の有効な手段として役立つ(第1-2-43図)。

第1-2-43図3D立体視システムとその画像、モーションキャプチャー、データグローブ

●文化遺産オンライン
 文化庁と総務省では、ブロードバンドを通じて国や地方の有形・無形の文化遺産に関する情報を積極的に公開する「文化遺産オンライン構想」を推進している。この構想により、国民が遠く離れた文化財や伝統芸能などの情報を簡単に入手可能となった。これらデジタルアーカイブ技術は遺跡の記録や文化財の保存・普及・活用に大きく貢献している(第1-2-44図)。

第1-2-44図文化遺産オンライン構想

●芸術文化の創造・発信・利用に資する科学技術
 我が国におけるIT/通信技術は急速に発展し、コンピュータ及びインターネットのブロードバンド化が普及してきており、だれもがいつでも好きな情報を閲覧できる時代になった。こうした中、近年デジタル技術の多機能性、柔軟性を活用し映画、アニメーション、CGアート、ゲームソフトなど、いわゆるメディア芸術が新しい芸術分野を創出している。

 石や壁を表現媒体とした時代には、筆・塗料が活躍した。パピルス・紙の時代には製版技術が発達し、さらに活版印刷技術の発明により情報の共有化が進んだ。工学・精密機械技術が進みカメラが登場してからは、写真・映画も新しい創造発信源になった。次に、エレクトロニクス技術の進展によりラジオ、テレビが登場してメディアの大衆化が更に進んだ。さらに、コンピュータ、インターネットの発達により、だれもがいつでも好きな作品を閲覧できる時代になった。今後は閲覧だけでなく、メディアとの双方向の関わり合いを通じて、表現方法の多様化が急速に拡大し、作品の創造・公開も格段に容易になる。これにより、国民の芸術創作への参加が容易になり、デジタル科学技術の発達により、一般の人々でも創造性を発揮しアイデアやコンテンツを発信できる時代が実現する(第1-2-45図)。

第1-2-45図メディアから見た芸術文化の発展の歴史

 現在、これら多様な表現方法の研究開発や誰もがコンテンツを創作し、発信できる時代の実現に向けた研究開発が着実に進められている。我が国における多様な表現方法の研究開発成果は、世界有数のコンピュータグラフィックスの国際会議SIGGRAPH(米国コンピュータ学会グラフィックス分科会)の革新技術プログラムで発表数の約3分の2を占めるなど世界をリードしている。
 また、デジタル映像の制作から上映の過程まで、各種各様の機器が開発され、市場で導入されているが、これらは任意の組合せを行った場合、最良の状態で映像を再現できず映像制作者の意図した映像が正しく上映できないことから、デジタル映像の制作から上映までの映像品質を保つための規格づくりを行う研究開発が進められている(第1-2-46図)。

第1-2-46図デジタルシネマの標準技術に関する研究

 平成17年度のメディア芸術祭においては、アートとテクノロジーの融合についてのテーマシンポジウムや、先端技術の紹介(先端技術ショーケース)が行われ、高い関心を集めた(第1-2-47図)。

第1-2-47図平成17年度(第9回)文化庁メディア芸術祭

●「心の豊かさ」を実感するスポーツ
 スポーツは観戦する楽しみだけでなく自ら参加する喜びも大きい。スポーツに参加することにより身体を動かし、健康増進・体力向上のみならず、爽快(そうかい)感・達成感・連帯感など、精神的な楽しさ、喜びを実感することは「心の豊かさ」に通じる。スポーツの記録向上にはスポーツの基本原理を科学的に解明して、道具・素材を進化させた科学技術の貢献によるところも大きい。科学技術の進歩とともに、道具は素材が変わり、形もどんどん進歩し多くの国民が楽しめるようになった。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ