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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章 科学技術システムの改革
第6節 科学技術振興のための基盤の整備
4.  知的財産権制度の充実と標準化への積極的対応


 知的創造活動を促進する観点から,知的財産権の適切な保護は極めて重要である。特許庁では,先端技術分野における発明を迅速かつ適正に保護すべく,平成15年7月には「人間を手術,治療又は診断する方法」の審査基準を改定するなど,先端技術分野における特許付与の判断基準の明確化を行っている。また,アジア諸国の知的財産庁への協力を推進するため,専門家派遣,現地セミナー開催,研修生受入れ等の人材育成,各知的財産庁における事務の機械化・情報化協力を実施した。さらに,専門サービスの利便性を高める観点から,「弁理士法」の改正による弁理士試験制度の簡素合理化及び業務の拡大を行うとともに,知的財産の活用を促進する観点から,独立行政法人工業所有権総合情報館では,都道府県・TLO等へ対し特許流通アドバイザー等の派遣,特許流通データべースの整備,知的財産の取引を担う人材の育成支援のための研修事業及び国際特許流通セミナーを開催するとともに,特許庁においては,全国各地で特許流通フェアを開催するなど,我が国の特許流通市場の環境整備の施策を行った。

 そのほか,基準認証研究開発事業として,国際標準の獲得が我が国産業の競争力の強化に重要である分野において,国際標準作成のための研究開発を行い,平成15年度現在30テーマについて実施している。また,国際標準創成国際共同研究開発事業として,国際標準創成のための研究を諸外国と実施する国際共同チームに対して実施しており,平成15年度は2チームに対して実施した。

 平成14年度から,医療材料分野における新規開発を促進する観点から,国内標準化及び国際標準化を念頭に置いたインプラント材料(人工骨や人工血管等の生体内に埋め込む材料)の性能評価技術の研究開発を開始し,1チームに対して助成した。

 情報通信分野における我が国発の国際標準の実現,国際競争力の強化を促すため,研究成果を国際電気通信連合(ITU( 注1 ))等の標準化機関に対して提案を行う等,標準化活動への貢献を条件とした公募研究として「国際技術獲得型研究開発」を実施しており,平成15年度は4件を新規に採択した。また,研究開発と標準化の一体的推進が重要との認識の下,将来的な国際標準への貢献を意識して,ユビキタスネットワーク技術,インターネット対応のブロードバンド衛星基盤技術の研究開発等を推進している。このほか,市場ニーズ,ユーザニーズ,技術動向に的確に対応し,実用的な国際標準を迅速・柔軟に策定できるようにするため,ITUの活動体制,作業方法等の改善を図る提案を積極的に実施するとともに,住宅内のネットワーク化を推進する「宅内情報通信・放送高度化フォーラム」等の民間主体のフォーラム活動とITUの標準化の連携を促進している。さらに,アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP( 注2 ))を通じてアジア諸国との標準化活動の連携を強化し,ITUに対する標準案の共同提案を推進している。

 先端科学技術の分野で基礎研究と産業化の結び付きが急速に強まり,国際競争が激化するとともに国内外の研究機関等や産学官の連携や交流が進む中で,知的財産権等の研究成果の適切な保護と活用が一層求められているが,我が国の公的研究機関においては,いまだ研究成果の取扱いに関するルールの不備や意識の低さが問題となっている。

 以上のことから,平成13年12月25日,総合科学技術会議において,「研究機関等における知的財産権等研究成果の取扱いについて(意見)」を策定し,関係府省に対して意見具申を行ったところである。さらに,科学技術・学術審議会の下に置かれた知的財産ワーキンググループでは,大学における知的財産のあり方を検討し,平成14年11月に報告書を取りまとめたところである。本報告書は,大学の知的財産について原則機関帰属が適当(国立大学については法人化以降)とした上で,各大学に対してその取扱いの基本方針を知的財産ポリシーとして作成・公表すること等を求めるとともに,学内のルールづくりに当たって検討すべき事項や学内の体制整備の具体的なあり方を示したものである。

 なお,研究開発成果には,マウス,微生物などの生物遺伝資源,材料試料・サンプル,各種計測データのような有形無形の種々のものがあるが,平成13年5月に理化学研究所研究者が米国経済スパイ法違反の容疑で米国司法当局により起訴された事件が起きたり,研究開発成果の帰属や取扱いのルールが不明確なために,研究開発成果を利用した更なる研究の促進や産業界における商業利用への成果移転が円滑に行われないような事態が生じている。このような状況を踏まえ,文部科学省は,平成14年5月,「研究開発成果の取扱いに関する検討会報告書」を取りまとめ,研究開発成果の帰属や研究開発成果の研究開発の場での広い利用,さらには産業利用を促進するルール等に関する指針を示すとともに,研究開発成果有体物の管理・提供に関するガイドラインを定め,各種会議等で周知を図っている。また,7月には海外の研究機関で研究に従事する研究者に対し,海外における研究活動に関する注意事項を示し,注意喚起を促している。

 また,農林水産省は,平成13年6月から試験研究独立行政法人等と「研究成果・研究材料等の管理の在り方に関する検討連絡会」を設けて検討し,これを踏まえ,平成14年度に各研究機関において,研究成果物の取扱いのルールを明確化する規定を策定した。

 今後,科学技術創造立国の実現に向け研究開発投資を拡充する中,我が国全体として,研究開発投資の拡充に対応した成果の創出と確保を図り,国際競争力の強化に結び付けることが重要である。このため,総合科学技術会議の下に知的財産戦略専門調査会を設け,調査・検討を行い,平成14年12月に「知的財産戦略について」を取りまとめ,大学等における知的財産管理体制の充実,先端技術分野における知的財産法制の整備,知的財産専門人材の養成等について提言を行い,関係大臣に対し意見具申した。なお,文部科学省においては平成14年度から科学技術振興調整費のプログラムの一つとして,知的財産専門人材の養成を行っている。また,重要かつ早急に解決すべき課題,「研究開発・知財戦略・標準化戦略の一体的推進及び大学等の知的財産活動の活性化のために」を中心に調査・検討を行い,平成15年6月に「知的財産戦略について」を取りまとめた。

 さらに,科学技術分野のみならず広く我が国全体の知的財産戦略に関しても政府全体での推進が図られている。平成14年2月に知的財産戦略会議(議長:内閣総理大臣)が設置され,同年7月には「知的財産戦略大綱」が策定された。また,同大綱を踏まえ同年の臨時国会で成立した「知的財産基本法」に基づき,15年3月に知的財産戦略本部(本部長:内閣総理大臣)が設置され,同年7月には「知的財産の創造,保護及び活用に関する推進計画」が策定された。同計画に伴い,計画の重要政策課題に関する3つの専門調査会(権利保護基盤の強化に関する専門調査会,コンテンツ専門調査会,医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会)が設置され,現在,同専門調査会において検討されている。


■注1 ITU:International Telecommunication Union


■注2 ASTAP:APT Standardization Program


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