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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章 科学技術システムの改革
第1節 研究開発システムの改革
2.  主要な研究機関における研究開発の推進と改革



(1) 大学等

 大学等は,学術研究の中心として,我が国の学問的基盤の確保と水準の向上を図ることを基本的な使命の一つとしている。大学等における学術研究は,研究者の自由な発想と自主的な研究活動を源泉として,創造性豊かな新しい知見を生み出すことを本質としており,その主な特色は,人文科学,社会科学及び自然科学の広範な領域にわたる学問の発展を目指していること,研究者の自主性の尊重がその発展にとって不可欠であること,研究と教育が総合的に推進されていることなどである。

 文部科学省では,これまでの学術審議会の答申・建議も踏まえ,我が国の学術研究基盤の計画的・重点的な整備を図るとともに,学術研究の進展に柔軟に対応できる,世界に開かれた学術研究体制の整備を図るため,研究費の充実,大学の研究施設・設備の改善,優れた研究者の養成・確保,基礎研究の重点的推進,卓越した研究拠点(COE)の形成,研究評価の充実,学術情報基盤の整備充実など,総合的な施策を積極的に展開している。

 また,国立大学及び大学共同利用機関については,これらを独立した法人とすることにより,予算,組織,人事等の運営上の自律性を拡大するとともに,社会に開かれた経営体制を確立して教育,研究,社会貢献に積極的に取り組む個性豊かな魅力ある国立大学等を育成するため,平成15年7月に国立大学法人法が成立し,平成16年4月より国立大学法人及び大学共同利用機関法人に移行する。

 さらに,内閣府を中心に,我が国そして世界の科学技術の進歩の一翼を担い,また,沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させることを目的として,「国際性」と「柔軟性」を基本コンセプトとした新たな発想を持った世界最高水準の科学技術大学院大学を沖縄県恩納村(おんなそん)に設立することを目指した取組が行われている。

(大学等における学術研究)

 大学における学術研究は,学部,大学院,研究所,研究施設などに加え,特定の大学に属さず全国の大学等の研究者が共同で利用し,研究を行う大学共同利用機関を中心に進められている。

 近年における研究手法の高度化や研究プロジェクトの大型化に伴い,多くの研究分野で研究者が共同して研究を進める必要性と有用性が増大している。このため,大学共同利用機関や大学に附置されている研究所・研究施設などの共同利用体制の整備に重点を置き,研究組織の整備充実を図っている。また,学術研究の発展に伴う学際的領域の拡大や社会的要請などに対応して,研究組織の弾力化・活性化にも努めている。

 大学共同利用機関は,全国の大学などの研究者が共同研究を推進する拠点として,また,特色ある大型の施設・設備や資料の共同利用の場として,各分野の発展に大きく貢献するとともに,Bファクトリー計画(高エネルギー加速器研究機構),大型光学赤外線望遠鏡「すばる」(国立天文台)などにより,世界最先端の研究を進めている。また,大学教育の一環として,大学院学生の受入れを行うなど,研究と教育を一体的に実施している。平成15年度末現在,13機関16研究所が設置されている。

 また,大学には,特定の専門分野についての研究に専念することを目的に研究所が附置されており,学部・大学院における教育研究との連携の下,特色ある研究が進められている。国立大学には,平成15年度末現在,58の研究所(うち19は全国共同利用の研究所)が設置され,ニュートリノ研究(東京大学宇宙線研究所)などは,世界最高水準の研究成果を上げている。

 これら大学等の研究を推進するための研究費については,基礎的研究活動を支えるための基盤的資金と,適切な審査・評価に基づいて優れた研究に選択的に配分される競争的資金の確保に努めている。

 このうち,経常的な研究費は,研究者の自由な発想に基づく研究を支えるためのものであり,国立大学等においては,教育研究基盤校費,教官研究旅費などの経費が積算されている。また,私立大学に対しては,経常的な研究費や社会的要請の強い研究プロジェクトに要する経費などに対する補助が行われている。競争的資金については,あらゆる分野の優れた学術研究を格段に発展させることを目的とする科学研究費補助金の更なる拡充を図るとともに,知的資産の形成及び先見性を持つ創造性に富んだ研究を重点的に推進する未来開拓学術研究推進事業を実施している。

(私立大学への支援充実)

 我が国の大学の学生数の約75%を占めるとともに,それぞれ独自の建学の精神に基づき,特色のある教育研究活動を積極的に展開している私立大学を支援するため,文部科学省では次の施策を実施している。

 経常費に対する補助としては,世界水準の大学づくりを目指す観点から,平成14年度に創設された「私立大学教育研究高度化推進特別補助」など,教育・研究の取組状況に応じた重点的支援を行っている。

 また,施設・設備等の整備に対する補助としては,優れた研究プロジェクトに対し施設・設備等の一体的な支援を行う「私立大学学術研究高度化推進事業」の実施に必要な研究施設・設備や,マルチメディアに対応した施設の改造や学内LANの整備を支援するための所要の経費を計上している。

 さらに,平成14年4月1日より,私立大学等が他の者の委託に基づいて行う研究に係る一定の事業が法人税の課税対象(収益事業の範囲)から除外された。また,平成15年4月より,個人が財産を寄附した場合のみなし譲渡所得の非課税制度について,私立大学等を設置する学校法人に対する寄附のうち一定の要件を満たすものは,国税庁長官の承認を受けるための手続が簡素化された。

(科学技術・学術審議会における審議)

 科学技術・学術審議会は,文部科学大臣の諮問に応じて科学技術の総合的な振興に関する重要事項や学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うとともに,文部科学大臣に対し自ら意見を述べること等を行うものであり,同審議会には,大学等を中心に行われる学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うため学術分科会が設置されている。平成15年度において学術分科会では,4月に「大学共同利用機関の法人化について(報告)」及び「新たな国立大学法人制度における附置研究所及び研究施設の在り方について(報告)」,10月に「ビッグサイエンスの在り方について(報告)」を取りまとめた。

(日本学術会議の活動)

 我が国科学者の内外の代表機関である「日本学術会議」は,昭和24年(1949年)に設立された。

 平成15年(2003年)7月に第19期が発足し,「日本の計画委員会」と「新しい学術体系委員会」をはじめとする第18期の成果を踏まえ,第19期活動計画を策定し,8件の特別委員会を設置し,検討を要する短期的,長期的課題に機能的に対処し,文理融合をはじめ,各部の専門領域にわたる総合的な視点を重視し,ジェンダー視点からの考察等,今日の学術に求められる新しい視点にも十分配慮して,検討を進めているところである。

 また,「中央省庁等改革基本法」第17条第9号の規定に基づき,総合科学技術会議において行われた日本学術会議のあり方についての検討の結果等を踏まえ,日本学術会議の所轄,組織,会員の推薦方法等を改めるため,「日本学術会議法の一部を改正する法律案」を平成16年2月に第159回国会に提出した(平成16年4月に可決,公布された)。

{1}審議活動

 南極地域観測が,政府全体として継続的に取り組むべき,重要な国家プロジェクトであることから観測船等の輸送手段の整備をはじめ,その継続と充実を実現するために必要な措置を講ずるよう指摘した「南極地域観測の継続と充実について」の要望(平成15年9月)を政府に対して行ったところである。

 また,農林水産省からの諮問「地球環境・人間生活にかかわる水産業・漁村の多面的機能の内容及び評価について」(平成15年10月)に対する答申をまとめるため「水産業・漁村の多面的機能に関する特別委員会」を設置し,人文・社会科学及び自然科学の各分野を統合した幅広い見地から審議を行っているところである。

{2}国際学術交流

 日本学術会議は,国際科学会議(ICSU( ))をはじめ多くの国際学術団体に我が国を代表して加入し,国際的な学術協力事業等に積極的に対応するとともに,諸外国との連携に努めている。

 アジア地域の各国と学術研究分野での連携・協力を図ることを目的とし,平成12年度まで東京においてアジア10か国の科学者の参加を得て開催されていたアジア学術会議(ACSU( 注1 ))は,日本学術会議が事務局となり,会員各国持ち回りで開催する国際学術団体「アジア学術会議」(SCA( 注2 ))として発展的に改組され,アジアの持続的発展をテーマに毎年各国で会議を開催している。平成15年5月に第3回会議がインドネシアで開催された。

 また,平成15年12月に東京において,「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2003-エネルギーと持続可能な社会のための科学-」を開催した。同会議では,エネルギーの面から持続可能な社会を構築するために,国際社会の中で科学者コミュニティが果たすべき役割などについて,関係する国内外の研究者による討議を行い,具体的な提言をまとめた。

 このほか,日本学術会議は,我が国で開催される重要な学術関係国際会議について,閣議の了解を得て学術研究団体と共同主催しており,平成15年度においては,「第23回国際測地学・地球物理学連合2003年総会」をはじめ,8件について共同主催した。


■注 ICSU:International Council for Science


■注1 ACSU:Asian Conference on Scientific Cooperation


■注2 SCA:Science Council of Asia

{3}公開講演会,シンポジウム

 日本学術会議は,学術の成果を国民に還元するための活動として,主催講演会等を開催している。また,このほか各部や研究連絡委員会等が中心になり,学協会との連携の下に,各種の学術上の問題をとらえて,積極的にシンポジウムなどを開催している。

 なお,平成15年度は,公開講演会2件,シンポジウム等98件を開催した。

 さらに,産学官連携を推進するため,平成15年6月に「第2回産学官連携推進会議」(京都),同年11月に「第3回産学官連携サミット」(東京)を内閣府及び社団法人日本経済団体連合会などと共同主催するとともに,同年11月(名古屋),12月(札幌)及び平成16年1月(広島)の計3回「地域振興フォーラム」を主催した。


(2) 国立試験研究機関,公設試験研究機関,独立行政法人研究機関等

 国立試験研究機関,独立行政法人研究機関,特殊法人研究機関等では,政策目的の達成を使命とし,我が国の科学技術の向上につながる基礎的・先導的研究及び政策ニーズに沿った具体的な目標を掲げた体系的・総合的研究を中心に重点的に研究開発を行うことが重要である。また,地方公共団体に設置されている公設試験研究機関は,地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導に重要な役割を担っている。

 国立試験研究機関(国土地理院,海上保安庁海洋情報部等を含む。),独立行政法人研究機関,特殊法人研究機関における平成15年度の試験研究費・人件費・施設費などを含めた科学技術関係経費の総額は,1兆4,366億円となっている。

 なお,研究活動を行う特殊法人等については,他の特殊法人等とともに,「特殊法人等整理合理化計画」に基づき,平成15年10月以降独立行政法人への転換等が行われ,研究活動をより一層効果的・効率的に実施していく体制が整備されることとなっている。


(3) 民間企業

 国の活動とあいまって重要な役割を担う民間の研究開発を活性化させるべく,国は,民間の自助努力を基本としつつ広く民間の研究開発の意欲を高めることが重要である。

(税制による民間における研究活動の振興)

 民間における研究活動の振興を図るための税制上の措置として,試験研究費の総額の一定割合を税額控除する制度,産学官連携の共同研究・委託研究に係る試験研究費の一定割合を税額控除する制度等を設けている。

 平成16年度税制改正においては,バイオテクノロジー研究用資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について,対象設備を見直しの上,平成17年度まで延長が図られた。また,民法第34条の法人が国立大学等との共同研究に必要な施設を当該機関の敷地内に整備した場合の不動産取得税,固定資産税の特例措置について,国立大学及び大学共同利用機関の法人化後も対象となるよう所要の措置を講じた。

 上記制度を含む平成16年4月現在の科学技術振興関係税制の一覧を 第3-3-6表 に示す。

第3-3-6表 主な科学技術振興関係税制

(出融資等による民間における研究活動の振興)

 民間における研究活動を促進するため,様々な政府系機関により,技術開発に対する出融資等の制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

{1}独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構

 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構は,平成15年10月に独立行政法人農業技術研究機構と生物系特定産業技術研究推進機構が統合して設立され,民間において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究を促進することを目的として,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成15年度の産業投資特別会計の出融資額は,15億円である。

{2}医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構

 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構は,民間において行われる医薬品技術等に関する試験研究を促進することを目的として,昭和62年10月に業務を開始し,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成15年度の産業投資特別会計の出融資額は,13億円である。

{3}その他の融資制度

 我が国産業の技術水準の著しい向上に寄与すると認められる新技術の開発を図るため,企業の行う新技術に係る技術開発資金に対して日本政策投資銀行が新技術開発融資制度により低利かつ円滑な資金の融資を行っている。

(補助金等による民間における研究活動の振興)

 民間の事業化へ向けた研究開発を支援するため,研究開発活動に対する支援制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

{1}希少疾病用医薬品等の助成金交付事業

 我が国で極めて患者数が少ない疾病の治療薬等の研究開発を支援するため,当該医薬品等の試験研究に係る費用の助成を行っている。

{2}農林水産業・食品産業等先端産業技術開発事業

 バイオテクノロジー分野における民間研究開発を促進するとともに,試験研究独立行政法人の優れた研究成果の実用化を図る民間の研究開発を促進する助成を行っている。

{3}民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業

 アグリビジネスの活性化を図るため,研究成果の実用化を担う民間企業等が,大学,独立行政法人のポテンシャルを活用して取り組む研究開発を支援している。

{4}新事業創出研究開発事業

 農林水産省では,平成12年度からミレニアム・プロジェクトの一環として,機能性作物等の実現を目指した研究開発を民間企業等を結集した研究共同体方式により実施している。

{5}生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業

 産学官における研究開発能力を結集し,異分野の研究者が共同して行う融合研究を提案公募方式で実施するとともに,連携の構築支援を実施している。

{6}産業基盤強化技術開発事業

 我が国食品産業の技術基盤を強化するため,国が技術課題を提示した上で,企業等から具体的な課題を公募し,外部専門家・有識者による評価によりテーマを選定し,補助を行っている。

{7}創造技術研究開発費補助金

 中小企業の技術開発,技術力向上等の観点から,中小企業の行う創造的な新製品開発,新技術研究開発のための費用に対する補助を行っている。

{8}先進技術型研究開発助成金

 将来的にニュービジネスの創出に結び付くような通信・放送技術に関連する先進的な研究開発を行うベンチャー企業等に通信・放送機構を通じ研究開発費の助成を行っている。

{9}高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成金

 高齢者・障害者向け通信・放送サービスの開発に必要な研究開発を行う民間企業等に対し,通信・放送機構を通じ,研究開発費の助成を行っている。

{10}新規産業創造技術開発支援(補助金)制度

 新規産業創造に資する技術について,地域の視点から特に有望な研究開発を支援し,世界に通じる技術力を有する企業群を育成するため,民間企業等に対して研究開発費の補助を行っている。

{11}民間基盤技術研究支援制度

 民間において行われる鉱業,工業,電気通信業,放送業に係る基盤技術に関する試験研究を促進することを目的として,通信・放送技術に関するものについては通信・放送機構を通じ,鉱工業技術に関するものについては独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ,それぞれ提案公募による委託研究事業を行っている。

{12}産業技術実用化開発補助制度

 産業技術力の強化を図るために,新たな市場創出や社会ニーズに対応する実用化に向けた技術開発を行う民間企業等に対し,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ,技術開発費の補助を行っている。

{13}中小企業技術革新制度による補助金・委託費等

 (「 第3部第3章第2節4. 研究開発型ベンチャー企業活性化のための環境整備」の項目に掲載)

(その他)

 中小企業,ベンチャー企業など,特に開業間もない企業においても優秀な人材の確保が図れるよう,起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための産業界と大学等との人的交流の促進,大学等の先導的な起業家育成講座等に関する実証研究の実施,ベンチャー企業等へのインターンシップ(学生の就業体験制度)の一層の促進,ストックオプションに係る規制緩和,大学新卒者のベンチャー企業等への就業意欲を喚起するなど施策を進めている。

 企業内起業・分社化等による新事業創出を支援するため,分社化,持株会社化等の企業組織の変更が円滑に行われるよう株式交換・株式移転制度を導入する。また,会社分割法制の整備についても検討に着手する。

 「新事業創出促進法」は,技術・人材等の地域の産業資源を活用した新事業創出の促進を目的とし,中小企業者の新技術を利用した事業活動の支援,研究開発から事業化までの総合的支援体制の整備,研究成果を活用した事業展開を促進する施設整備等を図るものである。

 また,民間による整備が困難な大型で,かつ高価な共同利用施設及び設備については,国により整備がなされ,民間との共同利用施設・設備として提供されている( 第3-3-7表 )。

第3-3-7表 民間には整備が困難な大型かつ高価な共同利用施設・設備の整備状況


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