ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章 科学技術システムの改革
第1節 研究開発システムの改革
1.  優れた成果を生み出す研究開発システムの構築



(1) 競争的な研究開発環境の整備

 基本計画は,優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革を重要政策の一つとして掲げている。このうち競争的な研究開発環境の形成に貢献する競争的資金については,基本計画期間中の倍増を目指して拡充するとともに,その効果を最大限に発揮させるため,適切な評価の実施や間接経費の拡充等の改革を図ることとされている。

 各省の競争的資金一覧を示す( 第3-3-1表 )。

第3-3-1表 競争的資金総括表

 平成15年度においては,4月21日に総合科学技術会議において取りまとめられた「競争的研究資金制度改革について(意見)」も踏まえ,{1}間接経費の一層の拡充,{2}競争的資金制度の一連の業務を科学技術の側面から一貫して責任を持ち得る実施体制の整備のために研究経歴のあるプログラムオフィサーを各配分機関に配置,{3}独立した配分機関(Funding Agency)へ配分機能をゆだねる,{4}研究費の交付時期のより一層の早期化等の改革が進められた。

(各省の競争的資金)

{1}総務省

 総務省では,情報通信技術の研究開発力の向上及び競争的な研究環境の形成による研究者のレベルアップを図り,世界をリードする知的財産を創出していくため,戦略的な重点目標に沿った独創性・新規性に富む研究開発を積極的に推進することを目的として,「戦略的情報通信研究開発推進制度」等を実施している。

{2}文部科学省

 文部科学省は,我が国の競争的資金の全体予算の約8割を占めており,次のような特色ある諸制度を運営している。

 科学研究費補助金は,人文・社会科学から自然科学まですべての分野にわたり,基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とし,ピア・レビューによる審査を経て,独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものである。平成15年度は,約8万7,000件の新規応募に対し約2万1,000件の研究課題を採択した。

 戦略的創造研究推進事業は,文部科学省が社会・経済ニーズ等を踏まえて設定した戦略目標の下に独立行政法人科学技術振興機構が研究領域を設け,それぞれの領域において国立試験研究機関,大学等の産学官を問わず研究テーマを公募する等により,新技術の創製に資する基礎研究を推進するものである。平成15年度には「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」,「教育における課題を踏まえた,人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」を新たな戦略目標として設定している。

 科学技術振興調整費は,総合科学技術会議の方針に沿って科学技術の振興に必要な重要業務の総合推進調整を行うものである。平成15年度からは,現行科学技術基本計画後の新たな科学技術政策の方向性の検討に資するプログラムとして,新たに「科学技術振興に関する基盤的調査」を実施している。

 独創的革新技術開発研究提案公募制度は,民間の有する革新性の高い独創的な技術シーズを提案公募の形式により募集するとともに,大学の持つポテンシャルも活用して,より革新的かつ実用的な技術へ育成するための技術開発に対して助成を行っている。

 大学発ベンチャー創出支援事業は,大学発ベンチャーが創出され,これを通じて大学等の研究成果の社会・経済への還元を推進することを目的として,独立行政法人科学技術振興機構において,大学等の研究成果をもとにした起業が実現されるために必要な研究開発を推進している。

 未来開拓学術研究費補助金は,独立行政法人日本学術振興会において,我が国の未来の開拓につながる知的資産の形成が期待される大学主導型の学術研究を推進するものである。

{3}厚生労働省

 厚生労働省では,厚生労働科学研究費補助金により,国民の保健医療,福祉,生活衛生,労働安全衛生等に関し行政施策の科学的な推進を確保し,技術水準の向上を図っている。

 厚生労働科学研究費補助金は,{1}行政政策研究分野,{2}第2次対がん10か年戦略に基づく「がん克服戦略研究」や,「ヒトゲノム・再生医療等研究」等の総合的プロジェクト研究分野,{3}ナノテクノロジーを活用した研究開発の推進を図る「萌芽的先端医療技術推進研究」や,「新興・再興感染症研究」等の先端的厚生科学研究分野,及び{4}「創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業」などの健康安全確保総合研究分野,の4分野に分けて,研究を実施している。

{4}農林水産省

 農林水産省では,農林水産業の生産現場に密着した試験研究の推進を図ることを目的とした「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」,新産業の創出でアグリビジネスの活性化を図ることを目的とした「民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業」に加え,バイオ等生物系先端技術により新産業の創出,企業化を促進することを目的として,「生物系産業創出のための異分野融合研究推進事業」を平成15年度から創設した。また,独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構において,生物機能の高度利用等を促進する基礎研究をはじめ,共同研究等の施策を実施している。

{5}経済産業省

 経済産業省では,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に助成を行い,若手研究者へ研究資金を助成する「産業技術研究助成事業」を実施しており,産業界のニーズや社会のニーズに応える産業技術シーズの発掘や産業技術研究人材の育成を図っている。

{6}国土交通省

 国土交通省では,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構において,「運輸分野における公募型基礎的研究推進制度」により,画期的な技術革新をもたらす可能性を有する新たな発想に立った新技術を創出するための独創性,革新性のある基礎的研究を推進している。また,建設以外の他分野を含めた連携を進め,広範な学際領域における建設技術革新を促進し,それらの成果を公共事業等で活用することを目的に,「建設技術研究開発助成制度」により大学の研究者等に対して研究開発費を助成している。

{7}環境省

 環境省では,「地球環境研究総合推進費」により,関係閣僚会議において策定される地球環境保全調査研究等総合推進計画を踏まえて研究を推進している。また,「環境技術開発等推進費」により,環境技術の開発・普及を重点的・戦略的に推進するとともに,「廃棄物処理等科学研究費補助金」により,廃棄物の排出の抑制と再生利用の促進,適正処理の確保,廃棄物処理対策に関する各種研究の充実を図る。


(2) 任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上

 創造性・独創性豊かで広い視野を有する研究者を養成し,競争的で活力ある研究開発環境を実現するためには,研究者の流動性向上を図り,研究者が様々な研究の場を経験することが重要である。

 こうした研究者の流動性向上に向けて,国立試験研究機関等においては,平成9年に成立した「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」により,任期付研究員の採用が可能となり,これまでの採用状況は 第3-3-2表 のとおりである。

第3-3-2表 「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」に基づく採用状況

 また,大学及び大学共同利用機関等においては,同じく平成9年に成立した「大学の教員等の任期に関する法律」により,各大学等の判断により任期制の導入が可能となっており,この法律に基づく任期制の導入状況は 第3-3-3表 のとおりである。

第3-3-3表 「大学の教員等の任期に関する法律」に基づく任期制の導入状況

 なお,基本計画においては,「国の研究機関等は,任期制及び公募の適用方針を明示した計画を作成するよう努める」こととされており,文部科学省では,平成14年2月に「研究者の流動性向上に関する基本的指針」(平成13年12月総合科学技術会議決定)を関係機関に通知した。今後,国の研究機関等において,任期制の導入や公募の実施など,研究者の流動性向上に向けた取組が積極的に展開されることが期待される。


(3) 若手研究者の自立性の向上

 我が国が科学技術創造立国を目指す上で,将来の研究活動を担う創造性豊かな優れた若手研究者を養成・確保することは極めて重要である。

 基本計画においては,「優れた若手研究者がその能力を最大限発揮できるように,若手研究者の自立性を確保する」とされている。

(若手研究者による独創的な研究活動の支援)

 世界的に優れた研究成果を上げた研究者の多くは,30歳代にその後の研究の基盤となる研究を行っており,関係府省においては,このような時期の若手研究者による独創的な研究活動を支援する各種取組を推進している。

{1}総務省

 平成14年度に創設した「戦略的情報通信研究開発推進制度」において,35歳以下の若手研究者の育成を目的とした「若手先端IT研究者育成型研究開発」を設けている。

{2}文部科学省

 柔軟な発想とチャレンジ精神を持った若手研究者が自立して研究できる体制を整備するため,科学研究費補助金において,若手研究者を対象とする研究費を約209億円措置するなど,若手研究者を対象とした競争的資金の拡充に努めている。

{3}農林水産省

 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において,柔軟な発想と意欲を持った若手研究者が主体的に研究できる条件を整備するため,若手研究者支援型を設け推進している。

{4}経済産業省

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が,平成12年度に若手研究者を対象とする「産業技術研究助成事業」を創設し,研究を推進している。

(ポストドクター等に対する支援)

 研究指導者の下で研究を行うポストドクター等について,基本計画においては,「今後は,研究指導者が明確な責任を負うことができるよう研究費でポストドクターを確保する機会の拡充等を図り,ポストドクトラル制度等の質的充実を図る」とされている。

 こうした中,関係府省においては,競争的資金を拡充する中で,当該資金による研究プロジェクトにポストドクター等を参画させ資質向上等を図る機会を拡充するとともに,ポストドクター等に対する各種の支援制度を推進している。

{1}文部科学省

 独立行政法人日本学術振興会においては,昭和60年度より,優れた研究能力を有するポストドクター等が主体的に研究に専念できるよう支援する特別研究員事業を推進している。本事業においては,平成15年度より,ポストドクターについては原則として出身研究室と異なる場所で活動する者を支援対象とすることにより,多様な研究環境の選択による創造性や広い視野のかん養を図るなど,質的な面での充実に努めている。

 このほかにも,独立行政法人理化学研究所では,独創性に富む若手研究者に同研究所において自発的かつ主体的に研究できる場を提供する基礎科学特別研究員制度など,ポストドクター等に対する多様な支援制度を推進している。

{2}厚生労働省

 厚生労働科学研究推進事業により,計541人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

{3}農林水産省

 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において147人の若手研究者の活用を行うなど計176人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

{4}経済産業省

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する産業技術フェローシップ事業により,平成15年度は170人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。


(4) 評価システムの改革

 科学技術を振興するためには,研究者を励まし,優れた研究開発活動を奨励していくとの観点から適切な評価を実施することが必要である。適切な評価を実施することにより,研究開発活動の効率化・活性化を図り,より優れた研究開発成果の獲得,優れた研究者の養成を推進し,社会・経済への還元等を図るとともに,国民に対して説明責任を果たすことができる。

 基本計画においては,優れた成果を生み出す科学技術システムを実現するための柱の一つとして,評価システムの改革が挙げられている。これに基づき,平成13年11月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」が内閣総理大臣決定され,一層の充実が図られることとなった。各府省においては,同指針に沿って評価方法等を定めた具体的な指針が策定され,評価が進められている。

 また,内閣府は関係省庁の協力を得て,国費により実施される個々の研究開発課題についての研究者,資金,成果,評価者,評価結果等を省庁の枠を超えて一元的にまとめた政府研究開発データベース・システムを開発し,諸データを登録するとともに,内閣府及び関係省庁による分析活用を開始した。

 他方,評価に関わる動きとして,独立行政法人の研究開発機関については,「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)に基づき,業務の実績に関する評価が実施されている。また,「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づく政策評価が平成14年4月から実施されており,研究開発については,先導的な取組が行われてきたことから,多額の費用を要することが見込まれる個々の研究開発課題について事前評価が義務付けられている。


(5) 制度の弾力的・効果的・効率的運用

 研究開発の特性を踏まえて,制度を弾力的・効果的・効率的に運用することが必要である。このため,国立試験研究機関においては,研究実績に応じて所長等の裁量で予算を重点配分すること,研究課題に応じた研究者の配置と研究期間の設定等,研究開発の進展や変化に対応するため,機関内の措置により機動的・弾力的に改変できる組織形態を活用する取組が開始されている。

 また,文部科学省では,科学技術振興調整費を活用して,年度途中に緊急に対応を必要とするような事態に機動的に対処するための「緊急研究」を「先導的研究等の推進」の中に設定しており,平成15年度には 第3-3-4表 のとおりの緊急調査研究等を実施している。

第3-3-4表 先導的研究等の推進(緊急研究課題)

 さらに,平成10年度から,国立大学等の教官が企業等外部から委託された研究等を行う場合において,研究の進展や研究計画の変更に伴う費目の変更に柔軟に対応するため,従来3つに分かれていた費目を統合した新たな費目((目)産学連携等研究費)を創設した。

 また,研究集会における研究成果の発表に関連し,特許法第30条において,「特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもって発表する」場合を新規性の喪失の例外と定められているが,特許庁においては,大学等における研究活動についても,この例外規定を適用することとした。


(6) 人材の活用と多様なキャリア・パスの開拓

 研究活動の活性化を図る観点から,大学や研究機関においては,多様な人材が活躍できるよう積極的な取組が期待される。

 平成15年1月に取りまとめられた科学技術・学術審議会国際化推進委員会報告「科学技術・学術活動の国際化推進方策について」においては,「研究者国際交流の促進」が重点的に推進すべき方策の一つとして掲げられており,諸外国の優秀な研究者の招致,若手研究者の長期海外研究の推進等が必要であるとされている。

 また,平成15年6月に取りまとめられた科学技術・学術審議会人材委員会第2次提言「国際競争力向上のための研究人材の養成・確保を目指して」においても,多様な人材が能力を発揮でき,研究に専念できる環境の実現に向けて,多様性を育む創造的・競争的環境の醸成,女性研究者の参画促進と能力発揮等について提言されている。

 これらの報告,提言を踏まえ,独立行政法人日本学術振興会では海外特別研究員,外国人特別研究員等の研究者交流事業の充実を図っているところである。また,平成15年度より育児休業に伴い科学研究費補助金による研究を中断する女性研究者等を支援するため,1年間の中断の後に研究を再開できる弾力的運用を行っている。同様に,独立行政法人日本学術振興会が実施する特別研究員事業等においては,平成15年7月より,若手研究者本人の希望に基づき,出産や育児を理由とした採用の中断や延長を可能とする運用を開始したところである。

 一方,研究者が,適性に応じて,研究開発の企画・管理等のマネジメント等の研究開発に関わる幅広い業務に携わることができるよう,多様なキャリア・パスの開拓が必要である。

 このような観点から,独立行政法人日本学術振興会及び独立行政法人科学技術振興機構においては,平成15年度より,競争的資金制度に関する一連の業務を一環して責任を持って行う,研究経歴のあるプログラム管理者を設置したところである。


(7) 創造的な研究開発システムの実現

 優れた研究成果を生み出し,新しい時代を拓く研究開発システムを実現するためには,研究所等の一定の規模の組織で,機関の長の優れた構想とリーダーシップにより,研究開発機関の組織改革を進め,国際的に魅力のある卓越した研究開発拠点を創出していくことが重要である。

 このため,平成13年度から科学技術振興調整費を活用した「戦略的研究拠点育成」を開始し,新たな研究開発システムの構築,組織運営の改革等の独創的かつ先導的な試みで,他の研究機関に波及する効果の高い取組を行う研究開発機関を育成・支援している。

 平成15年度は, 第3-3-5表 のとおり3機関が育成対象機関として選定されている。

第3-3-5表 戦略的研究拠点育成(対象機関)


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ