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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章 科学技術の重点化戦略
第2節 国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
4.  ナノテクノロジー・材料分野


 広範な科学技術分野の飛躍的な発展の基盤を支える重要分野であるナノテクノロジー・材料分野は,基本計画において,国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点4分野の一つとして,特に重点を置き,優先的に研究開発資源を配分するべき分野と位置付けられている。特に,ナノテクノロジーは,21世紀においてあらゆる科学技術の基幹をなし,21世紀の産業革命を導くものとして大いに期待されている。

 分野別推進戦略においては,重点領域として,「次世代情報通信システム用ナノデバイス・材料」,「環境保全・エネルギー利用高度化材料」,「医療用極小システム・材料,生物のメカニズムを活用し制御するナノバイオロジー」,「計測・評価,加工,数値解析・シミュレーションなどの基盤技術と波及分野」及び「革新的な物性,機能を付与するための物質・材料技術」の5つの事項が示されるとともに,研究開発現場における競争の活性化とそのための環境整備・異分野間や研究者間の融合の促進・産業化に結び付けていく仕組みの構築,産学官の責任と役割の分担,連携・人材の確保,養成の必要性が指摘された。


(1) 物質・材料分野

 物質・材料は,これまで我が国は高い研究開発水準を維持してきており,今後とも世界に先駆け技術革新を先導していく必要がある。材料技術の推進に当たっては,基本計画において,国は,基礎的・先導的な研究開発や産業化をも視野に入れた基盤的技術の研究開発といった,市場原理のみでは戦略的・効果的に達成し得ない領域の研究開発を重点的に推進すべきことが指摘されている。

 また,物質・材料研究開発に関して,

〇情報通信や医療等の基盤となる原子・分子サイズでの物質の構造及び形状の解明・制御や,表面・界面等の制御等の物質・材料技術
〇省エネルギー・リサイクル・省資源に応える付加価値の高いエネルギー・環境用物質・材料技術
〇安全な生活空間を保障するための安全空間創成材料技術

 等の推進に重点を置くこととされた。

 広範多岐にわたるニーズを背景として,各省において様々な物質・材料に関する研究開発が活発に進められている。

 文部科学省では,平成14年6月に科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会が「ナノテクノロジー・材料に関する研究開発の推進方策について」を取りまとめた。本報告書において物質・材料科学技術に関して,社会ニーズに対応するために「環境保全材料」,「エネルギー利用高度化材料」,「安全空間創成材料」,「評価・加工等基盤技術」並びに「新機能・高度な機能を生み出す物質・材料の発掘」が重点領域として位置付けられている。

 具体的には,物質・材料全体にかかる共通基盤的分野を推進するため,独立行政法人物質・材料研究機構において「安全で安心な社会・都市新基盤実現のための超鉄鋼研究」,「新規超伝導材料研究プロジェクト」等の物質・材料科学技術分野の総合的な研究開発を推進するとともに,戦略的創造研究推進事業(独立行政法人科学技術振興機構),フロンティア研究システム等(独立行政法人理化学研究所),科学技術振興調整費等各種制度により物質・材料科学技術に関する研究を実施している。また,東北大学の金属材料研究所及び多元物質科学研究所,岡崎国立共同研究機構の分子科学研究所,京都大学の化学研究所等を中心として,独創的・先端的な物質・材料研究を展開するとともに,研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として,科学研究費補助金等により大学等における独創性豊かな学術研究を推進すべく,物質・材料科学技術の基礎的研究が行われている。

 農林水産省では,「21世紀最大の未利用資源活用のための『昆虫・テクノロジー』研究」等により,絹タンパクの一種であるフィブロインを加工し抗血栓性等を持つ各種素材や,絹の骨成分との複合化性を利用した人工骨,人工靱帯用素材の開発等の生物素材の利用拡大を目指した研究開発を実施している。

 経済産業省では,材料プロセス革新技術として,「次世代半導体ナノ材料高度評価プロジェクト」,「シナジーセラミックス」,「金属ガラス」等の研究開発を推進している。また,物質・材料系科学技術水準の国際的向上を図るため,国際共同研究助成事業(NEDOグラント)により,国際共同研究チームが行う基礎的先導的研究開発を推進している。

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構を中心に産学官の連携の下に超伝導応用基盤技術の研究開発などを行っている。

市販化された新人工骨補てん材(商品名:ネオボーン)の外観。 顆粒(手前)と各種形状品。

臨床治験の症例 手術直後 2か月 6か月 12か月


迅速な骨再生が可能な新しい人工骨補てん材。生体親和性の高いハイドロキシアパタイトから成り,十分な強度を持ち,取扱いが容易であり,また,種々の形状に加工できる。良性骨腫瘍・骨折・炎症性関節疾患などの骨疾患の治療に効果的である。(物質・材料研究機構,大阪大学,東芝セラミックス(株),(株)エム・エム・ティーとの共同研究)


(2) ナノテクノロジー分野

(ナノテクノロジーに関する主な政策提言)

 基本計画において,ナノテクノロジーの研究開発水準については,我が国は欧米と対等ないしリードしているものの,米国等諸外国の国策的取組が急速に進みつつあると評価されている。

 また,ナノテクノロジーの推進に当たり,基礎的・先導的な研究開発と産業化を視野に入れた研究開発をバランスよくかつ重点的に推進することが重要である旨,異分野間や研究者間の融合及び情報交換を促進する研究ネットワークの構築や新たな融合領域における人材育成などが重要である旨の指摘がなされている。

 総務省においては,情報通信に係る基礎研究の一環として,量子情報通信技術,光機能性デバイス,情報記憶素子等の実現のための研究開発を実施している。平成12年2月から,「量子力学的効果の情報通信技術への適用とその将来展望に関する研究会」(座長:榊裕之・東京大学教授)を開催し,21世紀の革命的な量子情報通信技術の創生に向けて取り組むべき研究課題や研究開発の推進方策等について検討を実施し,同年6月に報告書を取りまとめた。これを受け,総務省では平成13年度より「量子情報通信技術の研究開発」を推進し,比較的近い将来に実用化が期待されている量子暗号技術についての研究開発を通信・放送機構において実施しているところである。平成13年5月から,量子情報通信研究推進会議(座長:江崎玲於奈・芝浦工業大学学長)を開催し,研究開発の現状,方向性,全体戦略等について総合的な検討を行っている。また,情報通信ブレークスルー基礎研究21や戦略的情報通信研究開発推進制度(平成14年度創設),独立行政法人通信総合研究所において,「情報通信デバイスのための新機能・極限技術の研究」を推進しており,大容量信号を高速に制御・処理できる光デバイスの開発など,超小型,超高速,超低消費電力の情報通信デバイスの基礎研究を実施している。

 文部科学省においては,平成14年6月に科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会が取りまとめた「ナノテクノロジー・材料に関する研究開発の推進方策について」の中で,ナノテクノロジーについて,実用化・産業化を展望した研究や萌芽的研究,人材育成,機関や分野を超えた横断的研究支援等の取組の必要性が指摘されている。これを受け,文部科学省では,平成15年度より経済活性化のための研究開発プロジェクト(リーディング・プロジェクト)の中で,「次世代の科学技術をリードする計測・分析・評価機器の開発」,「ナノテクノロジーを活用した人工臓器・人工感覚器の開発」,「ナノテクノロジーを活用した新原理のデバイス開発」,「極端紫外(EUV)光源開発等の先進半導体製造技術の実用化」,「次世代型燃料電池プロジェクト」によりライフサイエンス,情報通信,環境・エネルギーの各分野との融合領域及び共通基盤技術における研究開発を産学連携の下に開始した。

 継続的な取組として,「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト」において,セミナーの開催や若手研究者国際交流等の人材育成や,大型・特殊な施設・設備の外部研究者への利用機会の提供や関連情報の収集・発信,シンポジウムの開催等を実施するなど,研究機関・分野を超えた横断的かつ総合的な支援を実施している。

 また,独立行政法人科学技術振興機構においては,戦略的創造研究推進事業を活用して,「ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ」が研究者の緊密な連携の下に中長期的展望に立った研究開発を実施している。

 独立行政法人物質・材料研究機構においては,ナノデバイス新材料の開発,ナノスケール環境エネルギー物質に関する研究など,ナノ物質・材料に関する研究を実施し,独立行政法人理化学研究所においてはナノレベルの物性・機能計測,制御等に関する次世代ナノサイエンス・テクノロジー研究,新しい情報処理デバイス等の開発を目指した単量子操作研究,自ら変化・反応する材料,時間とともに変化できる材料等を創製する時空間機能材料研究等の基礎的・基盤的な研究を実施しているほか,大学,独立行政法人等において広範な分野にわたり基礎的な研究を実施している。さらに,科学技術振興調整費,科学研究費補助金等の活用等により,ナノテクノロジーの研究テーマを実施している。

 農林水産省では,分子・細胞レベルで得られている生物機能の情報を活用し,産学官連携及び異分野技術の融合により,ナノレベルでの構造制御による画期的な新機能素材の開発,革新的な生物機能の活用技術の開発,マイクロバイオリアクターの構築を推進しているほか,独立行政法人食品総合研究所において,ナノ領域の計測に関する研究を推進している。

 経済産業省では,ナノレベルでの制御により機能・特性の向上,省エネ化,環境負荷低減など,広範な産業技術分野に革新的発展をもたらし得るナノテクノロジーの基盤確立のため,「ナノテクノロジープログラム」を推進しており,平成15年度にはカーボンナノチューブ応用製品の早期実用化のために「ナノカーボン応用製品創成プロジェクト」を立ち上げた。さらに,ナノテクノロジー分野の技術シーズと市場需要のマッチングを実現し新たなビジネスを創出すること等を目的として,多数の企業等が参加しているナノテクノロジー・ビジネス推進協議会(平成15年10月15日設立)を推進している。

 環境省では,平成15年度よりナノテクノロジーによる小型化・高機能化のメリットを活かして環境モニタリング,健康・生態系影響評価及び環境汚染防止対策に関する環境技術の開発を実施している。

 なお,平成15年度に実施されたナノテクノロジー・材料分野の主な研究課題は 第3-2-7表 に示すとおりである。

第3-2-7表 ナノテクノロジー・材料分野の主な研究課題(平成15年度)


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