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第1部   これからの科学技術と社会
第3章 社会とのコミュニケーションのあり方
第1節 科学技術に関する国民意識の醸成
2.  科学技術・理科教育の推進


 国民の科学技術リテラシーを向上させるためには,初等中等教育の果たす役割が極めて重要である。初等中等教育においては,基礎・基本を確かなものとしつつ,学ぶ意欲や自ら考え,より良く判断する力等まで含めた「確かな学力」を育成するとともに,子どもたちに知的な好奇心や能動的に学び考える姿勢を持たせることが,初等中等教育修了後も含めて国民の科学技術リテラシー向上につながると考えられる。

(「確かな学力」の定着)

 学校教育では,平成14年4月から小・中学校で,平成15年4月から高等学校で新学習指導要領が順次実施されている。この新学習指導要領では,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るとともに,学ぶ意欲や自分で課題を見つけ,自ら学び,主体的に判断し,行動し,より良く問題を解決する資質や能力などの「確かな学力」を育むことをねらいとしている。このねらいの実現に向けて,学習指導要領の実施状況を継続的に検証し,不断の見直しを行うこととしており,この一環として,平成15年10月の中央教育審議会答申を受け,同年12月に学習指導要領の一部改正が行われた。具体的には,例えば,児童生徒が学習内容を確実に身に付けることができるよう,学習内容の習熟の程度に応じた指導や発展的な学習・補充的な学習を取り入れた指導を明示し,柔軟かつ多様な指導方法等を導入するなど,個に応じた指導を一層充実するようにしている。このような,学習内容の習熟の程度に応じた指導や発展的な学習・補充的な学習を取り入れた指導などの指導方法の工夫改善と,生徒の科学技術リテラシー向上との関係を示すデータとして,「高等学校教育課程実施状況調査(平成14年度)」において,教師の指導の態様毎にその指導を受けている生徒の標準化した得点平均を比較したものが挙げられる。この結果からは,「発展的な課題を取り入れた授業を行っている」,「理解が不十分な生徒に対し,授業の合間や放課後などに更に指導している」といった回答を教師がする場合,生徒の得点が高い傾向が見られる( 第1-3-7図 , 第1-3-8図 )。

第1-3-7図 発展的な課題を取り入れた授業を行っているかどうかと生徒の得点の関連

第1-3-8図 理解が不十分な生徒に対し授業の合間や放課後などに更に指導しているかどうかと生徒の得点との関係

 また,前述の学習指導要領の一部改正では「総合的な学習の時間」の一層の充実を図ったところであり,実験・観察などの体験的・問題解決的な学習等を通して,自ら学び,考える態度等を育成することをねらいとしているこの時間を活用し,子どもに科学技術に関して自ら考えたり,創造的・知的活動を行ったりする態度を育成するなど学習への動機付けとなることも期待される。

 さらに,「確かな学力」の向上を目指した取組を支援するため,{1}個に応じた指導の充実,{2}学習意欲や学力の質の向上,{3}個性・能力の伸長,{4}英語力・国語力の増進といった柱からなる学力向上アクションプランを推進しているところである。

 また,「確かな学力」の育成のためには,教員の資質向上も重要となる。教員には,科学技術に関する児童生徒の興味や関心を引き出す指導力が求められるが,このためには,身近な現象の科学的な側面や,現在指導している内容に関わる分野についての最先端の科学技術の動向,さらには,科学技術の社会的側面,文化的側面に関しても,児童生徒の興味や関心にしっかりと応えていく能力が必要となる。教員の資質向上に関しては,中央教育審議会において,「今後の教員免許制度の在り方について(答申)」(平成14年2月)の中で,{1}教員の適格性の確保,{2}教員の専門性の向上,{3}信頼される学校づくり,といった課題が指摘されている。この中で,特に理科については,「観察・実験などの過程や得られた結果について考察する中から,科学的な見方や考え方を育成するという特徴を持っており,また,近年の理数離れと指摘されている状況に対応し,児童の興味・関心・意欲を引き出す魅力ある授業を展開していく観点からも,発展的な学習を指導するなど各学校の実情等に応じ,高度な専門性が求められる場面がある。」とされている。具体的には,少人数単位で行われる指導のような場面において,専門性の高い教員を確保することは,早急に対応すべき課題であると指摘されている。また,小学校においても,全教科担任制に加えて専科指導を充実させていくことが求められている。

 また,高い専門性を有する人材による指導を教育現場において充実させていくためには,このほかにも,例えば,教員に加え,研究者など,科学技術を専門とする人材を教員の補助者として活用することも有効であろう。

 現在,教育現場において専門性を備えた人材が教べんを取ることを可能とする取組としては, 第1-3-9表 のような例が挙げられる。

第1-3-9表 教育現場において専門性を備えた人材の活用が可能となる取組の例

 また,教員については,専門性を含めた資質向上のため,地方自治体等の実施主体により各種研修が実施されている。資質向上の機会としては,このほかにも,科学館・博物館における研修や,サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)による大学等における研修(平成15年度の活用事例は112件)等の外部機関における研修,さらには現職のまま大学院において修学できる大学院修学休学制度等,様々な目的に沿う制度も用意されているところである。これらの機会が適切に活用されれば,教員の資質向上に対して大変有効な取組となるが,何より重要なのは,主体的に興味を持ち自ら学び続ける教員自身の意欲や努力であることは言うまでもない。

 このような力量ある教員を教育の場で活躍できるようにするためには,優秀な教員の意欲や努力が報われ,適切な評価や処遇等に反映されていく体制を早急に確立することが求められる。

 さらに,理科教育の内容を充実させるためには,実験器具や観測装置等,設備面での教育環境の整備も欠かせないことから,我が国では戦後間もなく制定された理科教育振興法により理科教育に係る設備の整備・充実が図られてきた。理科教育が,最先端の科学技術をも取り扱うものである以上,その設備にも科学技術の発展を反映させていくことが必要であり,その点で同法の意義は今後も失われるものでない。特に実験・観察等により児童生徒の興味関心を高めようとする観点からは,同法を活用しつつ,着実な基盤整備を進めることが必要である。

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(科学技術への興味関心を高める取組)

 科学技術に興味関心を持ち,現代社会において科学技術が果たす役割を認識することは,科学技術について積極的に学ぼうとする原動力となるため,科学技術のリテラシー向上において大変重要である。

 平成14年度より順次実施されている新学習指導要領の理科においては,観察・実験等の体験的・問題解決的な学習等を重視することにより,知識の表面的な理解にとどまらず,実感を伴った理解を促し,児童生徒の学ぶ意欲や知的好奇心,探究心を高め,理科好きな児童生徒が増えるよう,内容の改善を図っている。

 また,青少年の科学技術・理科に対する学習意欲の向上を図り,科学技術・理科教育の充実のための取組を総合的・一体的に推進する「科学技術・理科大好きプラン」を平成14年度より行っている( 第1-3-10図 )。主な内容として,平成14年度より,科学技術・理科,数学教育を重点的に行う学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し,理科・数学に重点を置いた教育課程や大学・研究機関等との効果的な連携方策についての研究開発を実施している(平成14年度26校,15年度26校,16年度20校,計72校が指定)。平成15年度より,科学技術・理科教育を重点的・一体的に推進する地域及びその地域内の小・中学校を「理科大好きスクール」として指定し,例えば観察・実験を重視した指導法の研究や教材開発,選択教科での課題学習や発展的な学習の充実,小学校における専科教員による授業の実施,地域の大学や研究機関等と連携した出前講座の実施,地域の科学館や博物館と連携して観察や実験,野外観察等を積極的に実施し,児童生徒の興味・関心や学習意欲の向上に資する取組を行っている(平成15・16年度は,19都道府県,小学校105校,中学校62校,計167校が指定)。

 また,同様にSPPの連携プログラムでは,その一環として,大学や研究機関が中・高等学校と連携して講座を行うことを支援し,その適切なあり方について調査研究を行っている。実施後のアンケートによれば,参加者のうち3分の2が「取り扱った内容は難しかった」と回答しているが,9割が「面白かった」,また7割が「自分なりに理解できた」と回答しており,取り扱った内容がやや難しかったにもかかわらず興味や関心の喚起のみならず,内容の理解にもつながったことが分かる(平成15年度)。教育連携講座は,平成15年度には80件の実績があり,今後とも科学技術の世界で活躍している人の熱意に触れる機会を充実させていくことが期待される。

第1-3-10図 科学技術・理科大好きプラン

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 さらに文部科学省では,子どもにも科学技術の振興に関する国の施策を分かりやすく紹介するため,「子ども科学技術白書」を毎年発行している。「子ども科学技術白書」では毎年異なる分野をテーマとして取り上げ,分かりやすい漫画形式で解説している。「子ども科学技術白書」は,全国の主要な科学館や博物館において入場者に無料で配布しているほか,平成14年度からは,教育現場での活用を図るため,すべての小学校にも配布している。

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