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第1部   これからの科学技術と社会
第2章 社会のための科学技術のあり方
第4節 我が国の国際貢献


(科学技術における先駆者としての貢献)

 我が国は,歴史的に海外から多くの科学技術を導入して発展してきており,その意味において国際社会から多くの恩恵を享受してきたと言えよう。現在,我が国はGDP世界第2位の経済大国であり,今や科学技術における世界の先駆者を目指して,科学技術創造立国を国是に,総合科学技術会議や経済財政諮問会議等における検討においても見られるように,科学技術振興を国家の重要課題として取り組んでいる。

 我が国の高い科学技術力は,自動車,電気機器や小型の機器等の優れた成果を生み出し,世界に送り出すことで,世界各地の社会の利便性の向上に貢献してきた。「科学技術と社会に関する世論調査(平成16年2月)」によると,現在,多くの国民が我が国の科学技術は諸外国に比較して進んでいると認識しており( 第1-2-36図 ),同時に,欧米を対象とした対日世論調査によれば,先進国においても我が国の科学技術に関する国際貢献を期待する声が高まっている状況にある( 第1-2-37図 )。

第1-2-36図 日本の科学技術は,諸外国に比べ進んでいるという意識

第1-2-37図 各国において,日本がもっと国際的貢献を果たすべき分野として科学技術を挙げた割合

 このように,今や我が国は,科学技術に関する国際貢献も求められていると言えよう。しかし,科学技術は,人類全体の生活水準を向上させる一方,国家間の格差を助長する可能性もある。例えば,デジタル・ディバイド(情報格差)のように,最先端の科学技術の発展が,それに対応できる国と対応できない国の間での新たな格差を生み出すとともに経済格差を拡大する可能性もある。

 また,現在,大量生産・消費・廃棄型といったこれまで先進国がたどってきた経済発展を世界のあらゆる地域において同時に進めていくことは,資源の枯渇,環境の破壊といった地球の有する物理的な限界により不可能であることが明らかになっている。このため,将来の世代に良き生活環境を残すとともに,現在の我々の世代の生活水準を維持・発展することを目指す「持続可能な開発」のためにも,科学技術の果たす役割はますます重要となっている。

 2002年のヨハネスブルグ・サミットを受けて,我が国は,人材の育成への協力等とともに,地球観測や科学技術による環境政策形成・実施の支援等について具体的に取り組んでいる。2003年のG8エビアン・サミットにおいて,我が国は,世界経済の発展と地球環境の保全を両立させる鍵が科学技術であることを国際社会に表明し,「持続可能な開発のための科学技術G8行動計画」が採択された。これを受けて,我が国は2004年4月に第2回地球観測サミットを東京で開催した。この中で地球観測は,地球を理解し,我々の生活の安全と福祉を強化し,我々の社会の持続的な発展を確保するための鍵となるものであるとの認識の下,「災害による人命及び財産喪失の軽減」,「気候変動への対応」,「水資源管理の向上」等を社会経済的利益の目標として明らかにし,これまでの地球観測の取組を踏まえた,各国・関係機関の協力の下での新たな地球観測システムを構築する今後10年間の地球観測実施計画の枠組みの策定等において積極的な役割を果たしている。

第2回地球観測サミットで各国・国際機関の代表を歓迎する挨拶を述べる小泉内閣総理大臣

 そのほか,科学技術に関する具体的な貢献例として,現在,独立行政法人科学技術振興機構において人道的見地から進められている対人地雷の探知・除去技術開発への取組があり,我が国の先端科学技術を駆使した目に見える国際貢献として期待されている。

 近年,我が国は科学技術を活用した生活の質の向上への貢献のほか,地球環境問題,生命倫理問題等の一国のみでは解決困難で,人類全体が共有する社会的課題に対しても率先して取り組まなければならなくなっている。また,この問題は,科学技術が経済・社会と密接な関係を持つ現在,科学者のみならず国民の各層が一緒に取り組むべきものである。

 このため,地球環境問題や生命倫理等の国際的課題を,科学者,政策担当者,経済人,ジャーナリスト等によって議論する「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(Science and Technology in Society Forum)」が我が国の提唱により,多くの国際的な賛同を得て,平成16年11月に開催され,科学技術と社会の調和ある発展を実現するためのあり方が議論される予定である。

 科学技術に関して国際的な視点での戦略が求められる中,このように,第2節で述べたような社会の安全・安心の確保のための科学技術をはじめ,社会のための科学技術,社会における科学技術に関する様々な取組に主導的な役割を果たしていくことは,我が国による国際社会への貢献の一つであるとともに,国際的存在感を示すための一つの方策として極めて重要であると考えられる。

(アジア地域における貢献のために)

 我が国は,19世紀後半に,近代国家の形成を目指して殖産興業を,戦後には復興を目指した経済成長をそれぞれ国是として,科学技術を国家の近代化,工業化のために利用してきた。一方で,欧米諸国の文化に根ざした科学技術を社会に浸透させる過程において,我が国の社会を一変させ,時には伝統や風習の一部も捨て去ることとなった。このような我が国固有の伝統文化と科学技術との共存のあり方に関する苦悩を経て,我が国は科学技術における先駆者の一員と認識されるようになった。このような欧米と異質の文化を背景として科学技術を導入してきた我が国の経験や歴史は,科学技術の発展を目指す開発途上国,特にアジア諸国にとっても示唆に富むものであると考えられる。

 アジア諸国(ASEAN諸国)を対象とした対日世論調査によれば,国によって関心の所在にばらつきがあるものの,アジア諸国においては,我が国の科学技術について高い関心がある傾向がうかがえる( 第1-2-38図 )。この調査は,対象国の識字層を対象としているため,結果には若干の注意が必要だが,特に,我が国と同様,欧米諸国と異質の文化的背景を擁するアジアの諸国に対しては,様々な研究交流とともに我が国の科学技術の現状やそれに関する経験を周知していく活動も重要であろう。

第1-2-38図 ASEAN諸国における日本に関してもっと知りたいと思う分野

 これまで,アジア諸国と我が国は,科学技術において様々な共同活動を行っている。日本学術会議においては,アジア地域における科学分野の連携協力の推進や相互理解を目的として,アジア10か国の代表により学術分野での意見交換を行うアジア学術会議(Science Council of Asia)の開催等を主唱し,これを受けて,同会議は2001年から毎年開催され,アジア諸国を中心とした国際学術活動の振興に貢献している( 第1-2-39表 )。

第1-2-39表 アジア学術会議の参加国と参画組織

 科学技術の分野において,将来,アジア諸国が米国,欧州と伍する存在に発展するためには,我が国が中心となって長期的な観点からアジア諸国との科学技術分野でのパートナーシップの構築に力を注ぐことが必要である。

 そのためには,科学技術活動を支える人材の養成,確保が重要であり,その観点から,アジアにおける第一線級の研究者を育成するため優秀な若手研究者の招致活動を更に強化するとともに,我が国の研究者のアジア諸国への派遣を進めることが不可欠である。また,地球的規模の課題への取組に当たっても,アジア地域を中心とした活動を展開することが重要である。さらに,欧米との科学技術協力に当たっても,我が国がアジア地域の一員としてアジア諸国と提携して協力・交流を推進することが有効であり,そのためにも,アジア諸国との二国間の政策レベルの対話に取り組むとともに,アジア諸国の研究者・研究機関間のネットワークの形成・強化・活用を図ることが重要である。

 これらの取組を実行する際には,我が国が優れた技術を有している分野を十分に生かしつつ,アジアの中の科学技術立国としてリーダーシップを発揮し,アジア全体の活性化に大きく貢献することが重要である。

 このような具体的な取組の例として,独立行政法人日本学術振興会の拠点大学交流事業では,国際共同研究を二国間もしくは多国間の研究者の交流により組織的に実施しており,アジアにおけるネットワーク形成に貢献している。また,アジア諸国における問題として,水災害・地震等の自然災害,寄生虫等の感染症などが挙げられるが,我が国も共通した経験を有しており,自然災害の防止・軽減,感染症対策について高い技術を有している。これらの分野における技術について,我が国がアジア諸国等に対して国際的なリーダーシップを発揮し,国際フォーラムの開催やその実施に伴う国際的な調査研究,地震災害防止のために行っている開発途上国への研修等による人材育成等を積極的に行っており,このような活動を通じてアジア諸国に貢献している。


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