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第1部   これからの科学技術と社会
第1章 科学技術と社会の関係の深まり
第2節 科学技術と社会に係る世界の政策動向
2.  21世紀における科学技術の新たな責務


 1999年7月,国連教育科学文化機関(ユネスコ)と国際科学会議(ICSU)の共催によりハンガリーの首都ブダペストで開催された世界科学会議(ブダペスト会議)は,これからの科学技術,さらには科学のあり方を科学者の側から見直すという,世界的な転機となった出来事である。

 この会議が開催された背景としては次のようなものであった。過去数十年における科学技術の発展は,経済的豊かさをもたらした一方で,環境問題等の新たに解決しなければならない負の側面も生み出した。こうした負の側面に対しても,やはり科学技術の適時・適切な利用なくしてはその問題は解決できないものであり,そのためには科学界や産業界,政府,国民が同じ場に立つことが必要であるという認識のもと,会議には世界中から科学者,技術者,国会議員,ジャーナリスト,行政官,市民ら約1,800人が集まり,21世紀における科学のあり方が6日間にわたり議論された。

 会議では21世紀のための科学を進める上での新たな責務として,「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」及び「科学アジェンダ-行動のためのフレームワーク」が採択された。

 同宣言の前文においては,「科学は人類全体に奉仕するべきものであると同時に,個々人に対して自然や社会へのより深い理解や生活の質の向上をもたらし,さらには現在と未来の世代にとって,持続可能で健全な環境を提供することに貢献すべきものでなければならない。」と述べている。

 さらに,「今日,科学の分野における前例を見ないほどの進歩が予想されている折から,科学的知識の生産と利用について,活発で開かれた,民主的な議論が必要とされている。科学者の共同体と政策決定者はこのような議論を通じて,一般社会の科学に対する信頼と支援を,さらに強化することを目指さなければならない。」と表明した上で,21世紀の科学の責務として,これまでの「知識のための科学」のほか「平和のための科学」,「開発のための科学」,「社会における科学と社会のための科学」という,4つの概念を打ち出した( 第1-1-21表 )。

 「科学アジェンダ-行動のためのフレームワーク」は,宣言の内容を具体化するために,政府や科学者コミュニティ等の取るべき行動が示されたものである。

第1-1-21表 「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」の概要

 20世紀までの科学は「知識のための科学」をベースに発展し,社会に様々な成果・恩恵をもたらした一方で,環境問題等の負の側面をもたらした。21世紀の科学技術はこうした負の課題の解決にも貢献するものでなければ,社会の信頼と支持を得られないということを,科学者コミュニティが自ら強い危機感をもって認識した結果がこうした宣言を生み出したものといえる。

 2002年のヨハネスブルグ・サミットにおいても,科学者コミュニティの代表として招待されたICSUの吉川弘之会長(当時)は演説の中で「科学・技術コミュニティは教育,訓練,研究,及び技術革新を通じて,全体的かつ統合的に持続可能な開発の課題に取り組む責任を担うものです。科学者や技術者は持続可能な開発について市民社会,民間部門及び政府が解決法や選択肢を編み出すために必要とする知識に関する要望に応えるべく取り組みます。」と明確に述べている。これに先立ち2001年には世界の約90の科学アカデミーからなるインターアカデミーカウンシル(IAC)が設立され,国際連合等の国際機関が行う政策決定に対し,科学者の側から助言を行うことを目的としている。

 現在は,ブダペスト会議の世界宣言の具体化に向けた取組が進められているところである。

 我が国においても,現行の第2期科学技術基本計画において,その基本理念として「科学技術と社会の新しい関係の構築」を掲げ,科学技術と社会のコミュニケーションの確立,科学技術の成果の社会への還元に向けた施策を展開しているところである。また,科学者コミュニティである日本学術会議の今後のあり方についての検討が進められ,2003年7月に具体案が取りまとめられたが,ブダペスト会議の世界宣言を踏まえ,政策提言機能や社会とのコミュニケーション機能を重視した方向となっている。

 なお,ユネスコとICSUでは,ブダペスト会議の世界宣言及び科学アジェンダの進ちょく状況等のフォローアップを行っている。

ブダペスト会議で基調講演を行う吉川弘之ICSU会長(当時)


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