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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第6節  科学技術振興のための基盤の整備
4.  知的財産権制度の充実と標準化への積極的対応


 知的創造活動を促進する観点から,知的財産権の適切な保護は極めて重要である。平成12年度には,ビジネス方法関連発明並びに遺伝子関連発明に関し,日米欧で審査実務の比較研究,特許の審査基準全体の見直しを行い,コンピュータ・ソフトウエア関連発明の審査基準の中でビジネス方法関連発明に関する記述の明確化を行った。また,アジア諸国での知的財産庁との協力を推進するため,研修生受入れ,専門家派遣等の人材育成,各国における事務の機械化・情報化への協力,調査・審査面での協力も実施した。さらに,専門サービスの利便性を高める観点から,弁理士法の改正による業務の追加及び弁理士試験制度の簡素合理化を行うとともに,特許流通アドバイザー派遣等の専門人材の活用,特許流通データベースの整備,全国各地での特許流通フェアの開催,知的財産の取引きを担う人材の育成支援のための研修事業(基盤研修,実務研修)及び国際特許流通セミナーを開催するなど,我が国の特許流通市場の環境整備の施策を行った。

 その他,新規産業支援型国際標準開発事業として,国際標準の獲得が我が国産業の競争力の強化に重要である分野において,国際標準創成のための研究開発を行い,平成12年度現在,32テーマにつき実施している。また,国際標準創成国際共同開発助成事業として,国際標準創成のための研究を諸外国と実施する国際共同チームに対して助成しており,平成12年度は3チームに対して助成している。

 平成10年度から,情報通信分野における国際標準の実現に必要不可欠な技術の研究開発を実施するため,研究成果の国際電気通信連合(ITU( 注1 ))等の国際標準化機関への提案など国際標準化活動への貢献を条件とした公募を行う「国際標準実現型研究開発推進制度」を実施しており,平成13年度は新たに3件を採択した。また,将来的な国際標準への提案を前提として「次世代の住宅情報化に必要な技術の研究開発」や「トータルデジタルネットワーク構築技術の研究開発」等の研究開発も推進している。このほか,ITUにおける標準化活動を市場ニーズや技術革新に即応できるものとするため,その活動体制,作業方法等の改善を図る提案を,アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP( 注2 ))を通じて同地域諸国とも協力して行った。

 先端科学技術の分野で基礎研究と産業化の結び付きが急速に強まり,国際競争が激化するとともに国内外の研究機関等や産学官の連携や交流が進む中で,知的財産権等の研究成果の適切な保護と活用が一層求められているが,我が国の公的研究機関においては,いまだ研究成果の取扱いに関するルールの不備や意識の低さが問題となっている。

 以上のことから,平成13年12月25日,総合科学技術会議において,「研究機関等における知的財産権等研究成果の取扱いについて(意見)」を策定し,関係府省に対して意見具申を行ったところである。本提言は,我が国の研究開発にかかわる関係機関・関係者のすべてが,研究成果の取扱いの重要性と緊急なルール整備の必要性を認識し,関係府省・研究機関等において必要な対策を早急に講じることを求めるものである。具体的には,特許等の知的財産について研究者の個人帰属から研究機関への帰属に転換を図ること,法律に基づく知的財産権のほか研究データ・情報,研究試料,研究材料,実験装置,試作品等の研究成果の取扱いについても一定のルールを定めること,研究者の意識啓発を図ること等である。

 なお,研究開発成果には,マウス,微生物などの生物遺伝資源,材料試料・サンプル,各種計測データのような有形無形の種々のものがあるが,平成13年5月に理化学研究所研究者が米国経済スパイ法違反の容疑で米国司法当局により起訴された事件でも見られるように,研究開発成果の帰属や取扱いのルールが不明確なために,研究開発成果を利用したさらなる研究の促進や産業界における商業利用への成果移転が円滑に行われないような事態が生じている。このような状況を踏まえ,文部科学省は,研究開発成果の研究開発の場での広い利用,さらには産業界での商業的利用を促進するルールを検討する「研究成果の取扱いに関する検討会」を設置し,検討を進めている。

 また,農林水産省は,平成13年6月から試験研究独立行政法人等と「研究成果・研究材料等の管理の在り方に関する検討連絡会」を設けて検討し,これを踏まえ,各研究機関においては,研究成果物の取扱いのルールを明確化する予定である。

 今後,科学技術創造立国の実現に向け研究開発投資を拡充する中,我が国全体として,研究開発投資の拡充に対応した成果の創出と確保を図り,国際競争力の強化に結び付けることが重要である。このため,総合科学技術会議の下に,知的財産戦略専門調査会を設け,知的財産の保護と活用に関する総合的な戦略について調査を行っている。

 現在,内閣総理大臣が主催する知的財産戦略会議においても知的財産戦略大綱の策定に向け検討中であるが,政府全体として有効な戦略が策定できるよう連携して検討を進めている。


■注1 ITU:International Telecommunication Union


■注2 ASTAP:APT Standardization Program


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