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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第1節  研究開発システムの改革
2.  主要な研究機関における研究開発の推進と改革



(1) 大学等

 大学等は,学術研究の中心として,我が国の学問的基盤の確保と水準の向上を図ることを基本的な使命のひとつとしている。大学等における学術研究は,研究者の自由な発想と自主的な研究活動を源泉として,創造性豊かな新しい知見を生み出すことを本質としており,その主な特色は,人文科学,社会科学及び自然科学の広範な領域にわたる学問の発展を目指していること,研究者の自主性の尊重がその発展にとって不可欠であること,研究と教育が総合的に推進されていることなどである。

 文部科学省では,これまでの学術審議会の答申・建議も踏まえ,我が国の学術研究基盤の計画的・重点的な整備を図るとともに,学術研究の進展に柔軟に対応できる,世界に開かれた学術研究体制の整備を図るため,研究費の充実,大学の研究施設・設備の改善,優れた研究者の養成・確保,基礎研究の重点的推進,卓越した研究拠点(COE)の形成,研究評価の充実,学術情報基盤の整備充実など,総合的な施策を積極的に展開している。

 また,国立大学及び大学共同利用機関について,予算,組織,人事等の運営上の自律性を拡大するなどの観点から,「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」を開催し検討を行ってきたところであり,平成14年3月には,同会議において「新しい「国立大学法人」像について」が取りまとめられ,具体的な制度の在り方が示されたところである。

(大学等における学術研究)

 大学における研究は,学部,大学院,研究所,研究施設などに加え,特定の大学に属さず全国の大学等の研究者が共同で利用し,研究を行う大学共同利用機関を中心に進められている。

 近年における学術研究の発展,特に研究手法の高度化や研究プロジェクトの大型化に伴い,多くの研究分野で研究者が共同して研究を進める必要性と有効性が増大している。このため,大学共同利用機関や大学に附置されている研究所・研究施設などの共同利用体制の整備に重点を置き,研究組織の整備充実を図っている。また,学術研究の発展に伴う学際的領域の拡大や社会的要請などに対応して,研究組織の弾力化,活性化にも努めている。

 大学共同利用機関は,全国の大学などの研究者が共同研究を推進する拠点として,また,特色ある大型の施設・設備や資料の共同利用の場として,各分野の発展に大きく貢献するとともに,Bファクトリー計画(高エネルギー加速器研究機構),大型光学赤外線望遠鏡「すばる」(国立天文台)などにより,世界の最先端の研究を進めている。また,大学教育の一環として,大学院学生の受入れを行うなど,研究と教育を一体的に実施している。平成13年度末現在,14機関17研究所が設置されている。

 また,大学には,特定の専門分野についての研究に専念することを目的に研究所が附置されており,学部・大学院における教育研究との連携の下,特色ある研究が進められている。国立大学には,平成13年度末現在,58の研究所(うち19は全国共同利用の研究所)が設置され,ニュートリノ研究(東京大学宇宙線研究所)などは,世界最高水準の研究成果を上げている。

 これら大学等の研究を推進するための研究費については,基礎的研究活動を支えるための基盤的資金と,適切な審査・評価に基づいて優れた研究に選択的に配分される競争的資金の確保に努めている。

 このうち,経常的な研究費は,研究者の自由な発想に基づく研究を支えるためのものであり,国立大学においては,教育研究基盤校費,教官研究旅費などの経費が積算されている。また,私立大学に対しては,経常的な研究費や社会的要請の強い研究プロジェクトに要する経費など経常費に対する補助が行われている。競争的資金については,あらゆる分野の優れた学術研究を格段に発展させることを目的とする科学研究費補助金のさらなる拡充を図るとともに,日本学術振興会に対する出資金を活用し,知的資産の形成が期待される,先見性を持つ創造性に富んだ研究を重点的に推進する未来開拓学術研究推進事業を実施している。

(私立大学への支援充実)

 我が国の大学の学生数の約8割を占めるとともに,それぞれ独自の建学の精神に基づき,特色のある教育研究活動を積極的に展開している私立大学を支援するため,文部科学省では次の施策を実施している。

 経常費に対する補助として,新技術の開発を目指した研究プロジェクトや,大学院・研究所における研究機能の高度化等に必要な経費を重点的に補助する「特別補助」の充実に努めており,平成13年度は887億円を措置している。

 研究施設・設備等の整備費に対する補助として,学外の幅広い人材の受入れや研究成果の公開に配慮された体制の下で行われる研究を支援する「オープン・リサーチ・センター整備事業」を創設するなど平成13年度は252億円を措置している。また,施設・設備等の整備に係る私立大学の負担分について,日本私立学校振興・共済事業団による長期・低利の融資(貸付規模960億円)を実施している。

 さらに,平成14年度税制改正においては,私立大学が行う受託研究で,その実施期間が3カ月以上のもの等については,請負業の範囲から除外し,非課税とする措置がとられることとなった。

(科学技術・学術審議会における審議)

 科学技術・学術審議会は,中央省庁等改革の一環として,科学技術・学術関係の6審議会(航空・電子等技術審議会,海洋開発審議会,資源調査会,技術士審議会,学術審議会,測地学審議会)の機能を整理・統合し,平成13年1月6日に文部科学省に設置され,文部科学大臣の諮問に応じて科学技術の総合的な振興に関する重要事項や学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うとともに,文部科学大臣に対し自ら意見を述べること等を行う。

 平成13年度においては,4月に「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」,「技術士試験における技術部門の見直しについて」,「知的基盤整備計画について」について文部科学大臣から諮問を受け,知的基盤整備計画については8月に答申を行った。そのほか,「科学技術・学術振興に関する当面の重要事項について(建議)」,「競争的資金の在り方について(見解)」を取りまとめた。

 なお,平成13年8月から,高等教育及び学術研究の振興の在り方に関連して科学技術・学術審議会学術分科会と中央教育審議会大学分科会の委員双方が協議を行う大学改革連絡会が開催されており,両審議会の連携が図られているところである。

(日本学術会議の活動)

 我が国科学者の内外の代表機関である「日本学術会議」は,昭和24年(1949年)に設立された。平成12年(2000年)7月,第18期が発足し,

1)人類的課題解決のための日本の計画(JAPAN PERSPECTIVE)の提案
2)学術の状況並びに学術と社会との関係に依拠する新しい学術体系の提案

の2つの課題について,機動的・能動的な審議を行うとともに,科学の能率向上を図るための研究連絡等を行っている。

{1}審議活動等

 日本学術会議は,農林水産大臣の諮問を受け,分野を横断する会員によって構成される「農業・森林の多面的機能に関する特別委員会」を設置して集中的に調査・検討を行って,「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」答申を行った。

 また,平成13年4月に「21世紀における人文・社会科学の役割とその重要性―「科学技術」の新しいとらえ方,そして新しい社会・文化システムを目指して―」を,平成13年10月に「データベースに関して提案されている独自の権利(sui generis right)についての見解」をとりまとめ,声明として公表した。

 さらに,平成13年7月には「遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて」を報告として公表した。

 平成13年1月6日の中央省庁改革に伴い,日本学術会議は総務省に置かれ,内閣府に新設された総合科学技術会議でその在り方について,調査・検討されており,平成14年8月までに中間案を,同年10月までに最終案を取りまとめることで審議が進められているが,日本学術会議においても,自らの社会の中で果たすべき役割及び機能を明らかにするとともに,総合科学技術会議における在り方の検討に適切かつ迅速に対応するため,同年2月,「日本学術会議の在り方に関する委員会」を設置し,この問題に積極的に取り組んでいる。

{2}国際学術交流

 日本学術会議は,国際科学会議(ICSU( 注1 ):会長 吉川弘之日本学術会議会長)をはじめ多くの国際学術団体に我が国を代表して加入し,国際的な学術協力事業等に積極的に対応するとともに,諸外国との連携に努めている。

 アジア地域の各国と学術研究分野での連携・協力を図ることを目的とし,平成12年度まで東京においてアジア10カ国の科学者の参加を得て開催されていたアジア学術会議(ACSC( 注2 ))は,会員各国持ち回りで開催する新たな形態のアジア学術会議(SCA( 注3 ))として発展的に改組され,平成13年5月にアジアの持続的発展をテーマに第1回会議がタイで開催された。

 また,平成14年3月に東京及び京都において,ノーベル賞100周年を記念し「ノーベル賞100周年記念国際フォーラム」を日本学術会議の主催により開催した。同フォーラムでは,ノーベル賞受賞者やノーベル賞授与機関関係者を招き,「創造性とは何か」をテーマに,日本のノーベル賞受賞者による講演とパネル討論が行われた。

 このほか,日本学術会議は,我が国で開催される重要な学術関係国際会議について,閣議の了解を得て学術研究団体と共同主催しており,平成13年度においては,8件について共同主催した。


■注1 ICSU:International Council for Science


■注2 ACSC:Asian Conference on Scientific Cooperation


■注3 SCA:Science Council of Asia

(公開講演会,シンポジウム)

 日本学術会議は,学術の成果を国民に還元するための活動として,主催公開講演会等を開催している。また,このほか,各部や研究連絡委員会等が中心となり,学・協会との連携の下に,各種の学術上の問題を捉えて,積極的にシンポジウムなどを開催している。

 なお,平成13年度は,公開講演会3件,シンポジウム等118件を開催した。


(2) 独立行政法人研究機関,国立試験研究機関,公設試験研究機関等

 独立行政法人研究機関,国立試験研究機関,特殊法人研究機関等では,政策目的の達成を使命とし,我が国の科学技術の向上につながる基礎的・先導的研究及び政策ニーズに沿った具体的な目標を掲げた体系的・総合的研究を中心に重点的に研究開発を行うことが重要である。また,地方公共団体に設置されている公設試験研究機関は,地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導に重要な役割を担っている。

{1}独立行政法人研究機関,国立試験研究機関等における研究活動

 独立行政法人研究機関,国立試験研究機関等(国土地理院,海上保安庁海洋情報部等を含む。)は,それぞれ固有の研究活動を推進している。平成13年度のこれら機関における試験研究費,人件費,施設費などを含めた総経費は,5,067億円となっている。

 文部科学省においては,科学技術振興調整費を活用した各種施策を,下記のとおり推進している。

1)世界の優れた研究者が集まる研究環境を有し,優れた研究成果を世界に発信する「中核的研究拠点(COE)」を国立試験研究機関等を対象に育成するCOE育成
2)柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境を整備するため,国立試験研究機関において任期制を活用した集中的な研究を推進する流動促進研究

 また,若手研究者を国立試験研究機関等に派遣し,その活性化を図る科学技術特別研究員制度(科学技術振興事業団事業)を実施している。

 なお,平成13年4月から,国立試験研究機関の多くは独立行政法人となり,弾力的な運営費交付金が可能となるなど,事業の自律的・効果的実施が図られた。

{2}特殊法人等における研究活動

 特殊法人等(特別認可法人を含む。以下同じ。)における研究活動は,主として政府からの出資金,補助金及び民間からの出資金などによって進められており,国立試験研究機関と並んで政府の研究活動の一環として大きな役割を果たしている。特殊法人等は,国又は民間などから広く人材を結集し得ること,弾力的な運営が可能であること,民間資金の導入が可能であることなどから,目的指向的な研究開発などを効率的に推進するのに適しており,研究開発が大規模化・複雑化し,これに対応して総合的な取組が必要とされる今日において,その果たす役割は大きい。特殊法人等においては,前述( )の競争的資金を活用した基礎研究のほか,科学技術振興事業団の創造科学技術推進事業,理化学研究所の理研フロンティア等が行われている。研究開発を行っている主な特殊法人等の目的及び業務は 第3-3-8表 に示すとおりである。

第3-3-8表 研究開発に関する主な特殊法人等の概要


■注 「第3部第3章第1節1.(1)競争的な研究開発環境の整備」参照


(3) 民間企業

 国の活動とあいまって重要な役割を担う民間の研究開発を活性化させるべく,国は,民間の自助努力を基本としつつ広く民間の研究開発の意欲を高めることは重要である。

(税制による民間における研究活動の振興)

 民間における研究活動の振興を図るための税制上の措置として,試験研究費が増加した際にその増加額の一定割合を税額控除する増加試験研究税制,中小企業者等の試験研究費の一定割合を税額控除する中小企業技術基盤強化税制等を設けている。

 平成14年度税制改正においては,バイオテクノロジー研究開発用資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について平成15年度まで延長が図られた。また,私立大学が行う受託研究で,その実施期間が3カ月以上のもの等については,請負業の範囲から除外し,非課税とする措置がとられることとなった。

 上記制度を含む平成14年4月現在の科学技術振興関係税制の一覧を 第3-3-9表 に示す。

第3-3-9表 主な科学技術振興関係税制


(出融資等による民間における研究活動の振興)

 民間における研究活動を促進するため,様々な政府系機関により,技術開発に対する出融資等の制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

{1}生物系特定産業技術研究推進機構  生物系特定産業技術研究推進機構は,民間において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究を促進することを目的として,昭和61年10月に設立され,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成13年度の産業投資特別会計の出融資額は,31億円である。
{2}医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構  医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構は,民間において行われる医薬品技術等に関する試験研究を促進することを目的として,昭和62年10月に業務を開始し,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成13年度の産業投資特別会計の出融資額は,21億円である。
{3}その他の融資制度  我が国産業の技術水準の著しい向上に寄与すると認められる新技術の開発を図るため,企業の行う新技術にかかる技術開発資金に対して日本政策投資銀行が新技術開発融資制度により低利かつ円滑な資金の融資を行っている。

(補助金等による民間における研究活動の振興)

 民間の事業化へ向けた研究開発を支援するため,研究開発活動に対する支援制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

{1}希少疾病用医薬品等の助成金交付事業  我が国で極めて患者数が少ない疾病の治療薬等の研究開発を支援するため,当該医薬品等の試験研究に係る費用の助成を行っている。
{2}農林水産業・食品産業等先端産業技術開発事業  農林水産・食品分野の体質強化を図るとともに,経済構造改革に資する新産業・新技術の創出を推進していくため,バイオテクノロジー分野における民間研究開発を促進するとともに,試験研究独立行政法人の優れた研究成果の実用化を図る民間の研究開発を促進する助成を行っている。
{3}農林水産新産業技術開発事業 今後,積極的に技術開発を図る必要のある特定領域について民間の持つ研究開発能力を活用して,農林水産分野における新産業創出につながる研究開発を促進する助成を行っている。
{4}新事業創出研究開発事業 農林水産省では,平成12年度からミレニアム・プロジェクトの一環として,生活習慣病を予防し得る機能性作物等の実現を目指した研究開発を民間企業等を結集した研究共同体方式により実施するとともに,平成13年度から地域特性を生かした研究分野の研究開発を地域の産学官を結集した研究共同体方式により実施している。
{5}創造技術研究開発費補助金 中小企業の技術開発,技術力向上等の観点から,中小企業の行う創造的な新製品開発,新技術研究開発のための費用に対する補助を行っている。
{6}先進技術型研究開発助成金 将来的にニュービジネスの創出に結びつくような通信・放送技術に関連する先進的な研究開発を行うベンチャー企業等に通信・放送機構を通じ研究開発費の助成を行っている。
{7}高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成金 高齢者・障害者向け通信・放送サービスの開発に必要な研究開発を行う民間企業等に対し,通信・放送機構を通じ,研究開発費の助成を行っている。
{8}新規産業創造技術開発支援(補助金)制度 新規産業創造に資する技術について,地域の視点から特に有望な研究開発を支援し,世界に通じる技術力を有する企業群を育成するため,民間企業等に対して研究開発費の補助を行っている。
{9}民間基盤技術研究支援制度 民間において行われる鉱業,工業,電気通信業,放送業に係る基盤技術に関する試験研究を促進することを目的として,通信・放送技術に関するものについては通信・放送機構を通じ,鉱工業技術に関するものについては新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ,それぞれ提案公募による委託事業を行っている。
{10}産業技術実用化開発補助制度 産業技術力の強化を図るために,新たな市場創出や社会ニーズに対応する実用化に向けた技術開発を行う民間企業等に対し,新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じ,技術開発費の補助を行っている。
{11}中小企業技術革新制度による補助金・委託費等(「ハイテク・ベンチャー活性化のための環境整備」の項目に掲載)

(その他)

 中小企業,ベンチャー企業など,特に開業間もない企業においても優秀な人材の確保が図れるよう,起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための産業界と大学等との人的交流の促進,大学等の先導的な起業家育成講座等に関する実証研究の実施,ベンチャー企業等へのインターンシップ(学生の就業体験制度)の一層の促進,ストックオプションに係る規制緩和,大学新卒者のベンチャー企業等への就業意欲を喚起するなど施策を進めている。

 企業内起業・分社化等による新事業創出を支援するため,分社化,持株会社化等の企業組織の変更が円滑に行われるよう株式交換・株式移転制度を導入する。また,会社分割法制の整備についても検討に着手する。

 新事業創出促進法は,技術・人材等の地域の産業資源を活用した新事業創出の促進を目的とし,中小企業者の新技術を利用した事業活動の支援,研究開発から事業化までの総合的支援体制の整備,研究成果を活用した事業展開を促進する施設整備等を図るものである。

 また,民間による整備が困難な大型で,かつ高価な共同利用施設及び設備については,国により整備がなされ,民間との共同利用施設・設備として提供されている( 第3-3-10表 )。

第3-3-10表 民間には整備が困難な大型かつ高価な共同利用施設・設備の整備状況


COLUMN

基礎研究における世界的な成果

 我が国の大学及び大学共同利用機関では,諸外国の研究者も参加しながら先端的・独創的な基礎研究が進められており,世界的に注目を集める成果が現れている分野も少なくない。

 高エネルギー加速器研究機構は,電子・陽電子衝突型加速器を用いて,宇宙創生時に同数あったとされる物質と反物質が,現在の物質のみの世界へと変化した原因を解明する「Bファクトリー計画」を推進しており,平成13年7月には物質と反物質とで物理法則の違いがあるという自然界の対称性の破れ(CP対称性の破れ)の存在を実証する成果を発表し注目を集めた。今後,計画の推進により,CP対称性の破れを説明する「小林・益川理論」を検証できれば,物理学における世界最大級の成果となる。

 また,京都大学再生医科学研究所は,胚性幹細胞(ES細胞)から神経細胞を効率的につくり出す技術を開発するなど,再生医学の実用を目指した幹細胞医学研究により,人工臓器の高度化,臓器移植,臓器再生の研究開発の一層の発展に寄与している。平成14年1月には,サルの胚性幹細胞から,神経伝達物質ドーパミンを分泌する成熟した神経細胞と,光を感じる網膜の細胞の2つを効率よくつくることに,世界で初めて成功した。

 さらに,野依良治名古屋大学教授が「不斉合成のための触媒分子の開発」に関する研究で2001年(平成13年)のノーベル化学賞を受賞した。同賞の授賞は,有機化学分野で不斉合成反応の分野を開拓し,高い光学的純度を持つ化合物の作り分けという夢のような研究に成功し,医薬品などの開発に欠かせない技術を世界で初めて確立した業績に対するものである。

 前年の白川博士の受賞に続く野依教授の受賞は,日本人の研究者が高い研究水準を有することを示すとともに,国民全体にとって大きな励みと誇りを与えるものであり,国民の科学技術・学術に対する関心を喚起する貴重な機会となった。

〔2001年ノーベル賞授賞式(於:ストックホルム) 写真提供:共同通信社〕

我が国のノーベル賞受賞者


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