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第1部   知による新時代の社会経済の創造に向けて
第3章  我が国に適したイノベーションシステムの構築に向けて
第4節  戦略的な「知」の展開
1.  企業と大学の連携,協働



(1) 企業と大学の連携の現状

(大学における企業との連携に向けた取組)

 第3節で述べたように,企業は企業間競争が激化しつつある中で,外部研究機関との研究協力を増加させており,その相手先のひとつとして国内の大学を今後重視しようとしているという結果であった( 第1-3-37図 )。

第1-3-37図 国内の大学との研究協力の成果

 このように,企業の大学に対する期待が増大し,連携を深めつつある状況において,大学側としても積極的に企業との研究協力体制を構築しようとする動きが見られる。

〜共同研究等の推進〜

 国立大学においては企業等との連携の拠点として共同研究センターを昭和62年から整備しており,平成13年度で61カ所に設置されている。

 また,昭和58年からはじまった企業等との共同研究の実施件数はこの10年で4.6倍に,受託研究でも2.9倍と順調に増加してきている。

〜研究成果の活用の推進〜

 大学における研究成果の企業への移転を促進し,我が国の産業の技術の向上と大学等における研究活動の活性化を図るため,平成10年には「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(大学等技術移転促進法)が制定され,本法に基づき実施計画を承認された技術移転機関(TLO)は,平成14年1月現在で,全国で26機関に上る。平成13年12月時点でのこれらTLOからの特許の出願件数は国内外合わせ1,707件,保有件数は59件,また,企業への実施許諾件数は282件に上る。

〜企業と大学の人材交流の促進〜

 人材面での連携方策である国立大学教員等の企業役員等の兼業については,平成12年度に「産業技術力強化法」を受け人事院規則が整備され,一定条件の下で人事院の承認を受けて兼業することが可能となった。研究成果活用企業の役員との兼業は平成14年3月現在で65人が承認されている。

(企業と大学の連携の成果)

 以上のような連携体制の進展を受け,企業と大学との研究協力は,ほとんどの場合,成果を上げている( 第1-3-37図 )。

 このように,企業と大学の連携の成果は着実に出てきているものの,企業の海外研究機関への研究費の支出が近年大幅に増加しているのに対して,国内の大学に対する研究費の支出( 第1-3-38図 )及び大学の研究費における企業の負担の割合は横ばいを続けている。もっとも,この海外研究機関への支出の中には,企業の研究開発拠点等海外の関係企業に支出されているものが相当あり,すべてが大学に対するものではない( 第1-3-39表 )。

第1-3-38図 企業の研究費の支出先別推移

第1-3-39表 海外に研究費を支出している企業の割合

 いずれにしても,このように国内の大学に対する研究費の支出が増加してこなかった要因としては,我が国のこれまでの企業と国内の大学との研究協力が,特定の企業と特定の研究室という個人間での関係をベースとした情報交換などが主体であったといわれており,上述のような企業の研究費の支出として統計上表れてこなかったことも背景にあると思われる。

 したがって,一概に国内の大学が海外研究機関に比べ,企業との連携が不十分と決めつけられないが,海外の大学と研究協力を行う企業には,海外でなければならない理由よりも,国内の大学との研究協力を行う上での問題点もあると考えられる。国内の大学と企業が連携しやすいような環境を提供できるようなシステムづくりを双方で一層進めていくとともに,双方が果たすべき役割について相互理解を深めていく必要がある( 第1-3-40図 , 第1-3-41図 )。

第1-3-40図 大学との研究協力を行う目的

第1-3-41図 国内の大学との研究協力の問題点

(大学における産業を通じた社会貢献への意識の向上)

 これまで大学の研究者は,産学官連携,社会貢献の意識が低いといわれることが多かったが,文部科学省が研究者を対象に毎年実施している「我が国の研究活動の実態に関する調査(平成13年度)」の結果によると,研究者自身の研究成果の活用方策については,大学の研究者では,産業上利用可能な技術に発展させたいという回答が最も多くなっており,研究者の意識が変わりつつあることを示している( 第1-3-42図 )。

第1-3-42図 自分自身の研究成果の活用方策について

 これは,近年の産学官連携推進に向けた法制度の整備や研究協力の進展がその背景にあるものと考えられる。

 このため,大学側としても,大学教員の業績評価に関し,企業との研究協力をはじめ,特許取得につながるような研究など産学官連携に対する取組に対して積極的に評価をするような体制を構築し,大学の研究者の意識の変化に的確に対応していかなければならない。


(2) 組織的な取組と人的交流

(組織対組織の連携の促進)

 企業と大学の連携の問題として,今日では企業が新たな価値を創造するため,例えば複数の分野にまたがるような研究協力が大学に求められており,これまでの個人レベル(1企業対1教授)の関係では解決できず,大学の組織的な取組が必要とされるものがある。米国におけるバイ・ドール法制定以降の大学における組織としての特許取得体制や技術移転体制の整備の進展が,産業界へ技術移転を促進し,新規産業の創出につながっていったことを踏まえれば,今後は我が国でも「組織対組織」として,産業界と大学が互いの必要性の認識に基づいた明確なルールづくりの下に連携体制を構築していく必要がある( 第1-3-43図 )。

第1-3-43図 企業と大学の連携促進に必要な方策について

 ただし,企業と大学の連携といっても,共同研究から,技術移転,人材交流等様々な形態の連携方法があるが,大学においては,こうした様々なニーズに対応するために事務局に統一的な窓口を整備することや,学内各学部等が有機的に連携した体制の整備等の組織的な取組が求められるであろうし,企業においても,大学からの研究協力の申入れを受けるための窓口を明らかにし,お互いにワンストップ化で対応できるような体制を整備することが必要である。

 さらに,大学として企業との連携に取り組む研究者の支援を積極的に行わせるためには,大学に対するメリットも必要になる。企業からの受託研究費の間接経費の配分の充実,それによる協力環境の整備等を進める等により,社会貢献に関する取組について大学間競争を活発にすることも必要である。

(企業と大学との人的交流)

 TLOの実績が伸びつつある一方,文部科学省の調査によれば,従来どおりの個人レベルでの付き合いを継続したいという企業もかなりの割合を占めていた( 注1 )。これは,企業にとって,これまでの付き合いも十分メリットがあるということを示している。

 しかしながら,大学が組織としての知的財産権の管理体制の整備へと進みつつある現在,企業もその考えを改めざるを得ない時期にきている。

 このため,企業秘密の取扱い等の協力,連携のルールを整備しつつ,組織的な連携体制の構築し,海外の大学と同じ土俵で競争し得る大学を目指すとともに,学生のインターンシップでの受入れ,博士課程修了者採用,企業研究者の資質向上のための大学への派遣などの人的交流を活発にすることによって,連携をより密接にしていくことが重要である。


■注1 「TLOを活用しない理由」(複数回答)として,従来どおり大学や国研の研究者等との直接の付き合いを継続したいと回答した企業の役割は,資本金500億円以上で約41%,同100〜500億円未満で約35%,同50〜100億円未満で25%,同10〜50億円未満で約18%である(文部科学省「民間企業の研究活動に関する調査(平成12年度)」)。


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