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第1部   知による新時代の社会経済の創造に向けて
第2章  「知」の大競争時代において
第2節  我が国の社会経済とイノベーション
3.  我が国に必要なイノベーション



(1) 知識集約的なプロダクトイノベーション

 今後,我が国が競争力を維持していく上で,その高いプロセスイノベーション能力を維持向上させつつ,独創的なプロダクトイノベーションを連続的に起こすことの可能なイノベーションシステムを構築することが必要である。これにより,資源の乏しい我が国が,オリジナリティを発揮し,高い付加価値を有する製品を世界に発信することが期待される。

 日米の半導体製造業を例にとれば,売上げでは,一時日本が上回っていたが,最近は再逆転しているばかりか,欧米の市場では韓国,台湾等の国々に追い上げられている。米国の半導体製造は知的な要素が高い論理素子が大きな比重を占め,逆に我が国ではDRAM( 注1 )をはじめとする記憶素子の比率が高い。米国の半導体は,パソコンの世界的なデファクトスタンダード(業界標準)のCPU( 注2 )が大きな比重を占めているからである。これには,コンピュータの機能を一つのLSI( 注3 )に集積したマイクロプロセッサの開発で先行したことが大きな要因となっている。米国の半導体製造企業の中には,このような歴史に基づくユーザーの信頼の獲得により,日本や韓国等の企業が製造技術やコストの面で優位となっても,なお競争力を有するものがある。また,シリコンバレーなどにある半導体企業の中には,設計のみを行い,製造は海外で行う,いわゆるファブレスメーカーも多い。特に台湾との結び付きが強いといわれており,1999年の台湾大地震の際には部品が供給されず,西海岸のハイテク企業の活動が停滞したこともある。このような企業をはじめとして,米国の製造業においても,海外進出は相当進んでいるといえる。しかしながら,論理素子のような知識集約的な製品については,製造そのものは海外で行っても,その利益は米国に還元されることとなる。

 このことから,我が国においても,知識集約性の高い製品を開発し,新産業,新市場を創出することにより,経済成長と,雇用の拡大を目指さなければならない。半導体製造においても,次に述べる家庭用ゲーム機をはじめ,デジタル家電における論理素子については我が国は米国に並ぶか,それ以上の競争力があるといわれており,このような分野で主導権をとることが期待される。


■注1 ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ:記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー


■注2 中央処理装置:パソコンの心臓部にあたる。


■注3 大規模集積回路:トランジスタ回路を超小型化して超高密度に集積したもの


(2) 我が国の独創性〜家庭用ゲーム機の例〜

 全体的に独創的な製品やサービスが少ないといわれる我が国産業の中で,デジタル家電と並んで独自の市場を構築している例として,家庭用ゲーム機産業やアニメーション産業がある。ここでは家庭用ゲーム機を例にとって,我が国のオリジナリティを検証することとする。

 IT分野においては,ハードウェアの技術革新と普及に伴って,これに対応するソフトウェアの充実が求められてきており,今後の情報産業の重点はコンテンツにいかに価値を付加していくかということに置かれている。この1ような状況の中で,コンピュータソフトについては,そのほとんどを我が国は輸入に依存している。一方で,家庭用のゲーム機及びゲーム用ソフトについては,我が国は圧倒的な競争力を誇り,我が国からのソフトウェア輸出のほとんどは,家庭用ゲームソフトによるものであり,アジア,欧米に対する強力な優位性を持っている( 第1-2-9図 )。

第1-2-9図 我が国におけるソフトウェア輸出入の推移

 これまで,我が国はハードウェア指向であり,ソフトウェア開発能力は低いといわれてきたが,家庭用ゲームソフトやアニメーションなどの世界では高いコンテンツ開発能力が証明されている。例えば,最近では「ポケットモンスター(ポケモン)」は,欧米などでも人気のあるキャラクターとして,関連商品は大きな市場を形成している。「ドラゴンボール」「ドラえもん」「ハローキティ」「セーラームーン」なども同様に東南アジアを中心に絶大な人気がある。このように我が国は独自のキャラクターを生み出す創造力という強みをもっている。また,ゲーム用ソフトの分野では,2000年中の米国における家庭用ゲームソフトの売上げ上位10本のうち,我が国から生まれたソフトウェアは8本を占める(米国The NPD Groupのデータによる。)。

 家庭用ゲーム機は,構成する技術それ自体は既存のコンピュータ等における情報処理技術の延長であるが,ゲーム利用目的に特化して機能を限定することにより価格を抑えた点,テレビに接続してコントローラで操作するという点等にイノベーションがあったと考えられる。家庭用ゲームソフトに関しては,ハードウェアの性能が向上して,よりリアルさを追求できるようになってきたことに伴い,アニメやCG(コンピュータグラフィックス)技術の導入でバーチャルリアリティの度合いを高め,独自のゲーム世界を構築していった。これには,日本人の豊かな感性や表現力が大きく貢献していると考えられる。このようにハードウェアの技術(工業技術)と,ソフトウェアの技術(情報技術)の融合により新たなエンターテイメント製品を市場に送り出した点に,家庭用ゲーム機のイノベーションはある。

 最近では,ハードウェアとソフトウェアを融合したデジタル家電(デジタルTV,デジタルカメラ,携帯情報端末)のように,利便性や機能を向上させた新たな商品群を「サードウェア」と呼ぼうとする動きがある。デジタル家電の高付加価値化の方法としては,ソフトウェアを直接ハードウェアに組み込む以外に,ネットワーク接続による新たな機能付加なども含まれる。このようなデジタル化やネットワーク化が複合領域での可能性を高め,サードウェアという新たな産業を創造していくこととなる。

 家庭用ゲーム機やデジタル家電以外にも,我が国が高い世界シェアを持つ製品は数多い。これらが世界のトップとなり得た理由は様々であろうが,今後もこのような製品,サービスを次々と生み出していく必要がある。


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